第1頁 ザラブ星人…相違はいつまでも通じず
名前 ザラブ星人 肩書 凶悪宇宙人 出身地 第8系銀河ザラブ星 初登場 1966年11月13日放映『ウルトラマン』第18話「遊星から来た兄弟」 偽装手段 本人の変装 偽装対象 ウルトラマン、ウルトラマンメビウス 偽装目的 本物の信用失墜、敵地への潜入 偽装完成度 チョット注意すれば分かるレベル 本物との外観上の相違 目つき、つま先、各所の縁取り 看破者 サコミズ・シンゴ、ZAP隊員、宇宙牢獄の警備員 登場作品 『ウルトラマン』、『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟』、『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル NEVER ENDING ODYSSEY』、『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』(注:他にもザラブ星人が登場する作品は多数ありますが、変身能力を発揮したもののみ対象としています)
概略 多くの星を滅ぼし、「凶悪宇宙人」と通称される侵略者。
『ウルトラマン』の作中にて、ザラブ星人自身、「母星語で兄弟という意味」と説明していたが、名前の由来は「兄弟」という英語「brother」のカタカナ表記を逆から読んだものである(←ちゃっかり、科学力に優れる自分達の方を「兄」としていた)。
両肩を覆うほどデカい頭部にはお脳がたっぷり詰まっているのか、頭脳派(と云っても悪知恵だが)の宇宙人で、破壊怪音波とそれを利用した催眠術、指先からの「エネルギーバルカン」、身体から放出する「放射性ガス」に加え、高い耐久性ゆえに動くとより強力に拘束する拘束用テープ、と様々なアイテムを駆使していた。
そして厄介なのが変身能力だった。
まず初登場となる『ウルトラマン』では、突如として地球上に広まった放射性ガスを除去したり、軌道を間違えた地球側の土星ロケットを地球まで誘導したり、と地球人に対して友好的な行動を取ったが、すべては地球人を信用させる為の演技であった。
科学特捜隊員達に様々な謀略を仕掛けて行動不能に陥らせ、防衛会議を盗聴した。更に正体がウルトラマンであることを知るハヤタ隊員(黒部進)を捕獲してベータカプセルを奪おうとしたが、彼がそれを忘れていたために失敗。その後、にせウルトラマンに変身して街を破壊することで、ウルトラマンを地球人の敵と思わせようとした。
だが、ハヤタはホシノ少年(津村彰秀)に救出され、本物のウルトラマンとの戦いに敗れた。
同作品では第38話にて悪質宇宙人メフィラス星人の部下であることを示すかのように、ビル街に宇宙忍者バルタン星人、ケムール人とともに現れたが、すぐに姿を消しており、その後の作品でもメフィラス星人との関連が見られないので、メフィラス星人の虚仮脅し幻影だった可能性が高い。
それから40年近い歳月を経て、劇場版『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟』に宇宙人連合の1人として登場。同じ連合の1人、極悪宇宙人テンペラ―星人がウルトラマンメビウスに敗れると、二番手として参戦。
変身能力によってジングウジ・アヤ(いとうあいこ)を捕らえて彼女に化け、メビウス=ヒビノ・ミライ(五十嵐隼士)に痺れ薬入りのコーヒーを飲ませて動けなくすると、にせウルトラマンメビウスの姿に変身して街を破壊し、わざとメビウスをおびき寄せて挑発しながら戦いを挑んだ。
正体を暴かれた後はメビウスと格闘戦を繰り広げ、バリヤーで攻撃を防いでエネルギーを消耗させるが、光線の押し合いの末に最後はメビュームシュートを食らって倒された。
更に後、『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル NEVER ENDING ODYSSEY』にザラブ星人(NRB)として登場。
同作品人登場する宇宙人にしては珍しくレイオニクスバトラーではなく、宇宙の覇権を狙って戦っているレイオニクスを嫌い、変身能力を駆使してレイオニクスを騙し討ちにし、バトルナイザーを奪っていた。
輸送飛行中のハルナ(上良早紀)を襲い、拘束した彼女に化けてペンドラゴンに潜入したが、探索中にオキ(八戸亮)をレイオニクスと誤解して、自分の正体を見抜いて毒殺しようとしていると思い込んで逃げ出したところに本物のハルナと遭遇し、言動から正体が露呈。とっさににせウルトラマンに変身するが、船内のいざこざで手を傷めていたようでゴモラには殆ど歯が立たず、一命は取り留めたものの敗北。オキが怪獣マニアであることを知り、退散した。
そして更に劇場版『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』に登場。
ギガバトルナイザーを手に入れ、にせウルトラマンに変身して光の国の宇宙牢獄に侵入し、ウルトラマンベリアルの封印を解く。復活させたベリアルと共に宇宙支配を目論むが、ベリアルにとってはもはや用済みであり、ギガバトルナイザーを渡した直後瞬殺という「ホラー映画でモンスターを復活させた奴は最初にそのモンスターに殺される。」という黄金パターンを見事なまでに実証した(笑)。
偽物としての暗躍 ザラブ星人がにせウルトラマン等に化けたのは、「本物の信用失墜」が7割、「成り済ましによる騙し」が3割ほどである。
前者としては、『ウルトラマン』における夜の市街地を破壊、劇場版『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟』でも神戸の街を破壊し、迎撃に出たGUYSクルーの面々もウルトラマンメビウスに対する信頼を喪失しかけた。
後者としては、劇場版『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟』でシングウジ・アヤに化けてミライに眠り薬を飲ませ、『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル NEVER ENDING ODYSSEY』においてハルナに化けたのもペンドラゴン探索の為という色合いが強く、一応にせウルトラマンに化けはしたが、大して戦わず、逃走した。
成り済ましの最たるものは劇場版『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』で、宇宙牢獄に侵入した際のもので、自身はさっさとくたばったが、これによりべリアルによる光の国蹂躙が始まったことを思えば、元凶として謀略にしてやられた面は小さくない。
正体暴露 ザラブ星人は、地球人に化けるのは完璧に近いが、ウルトラ兄弟に化けるのはお世辞にも上手とは云い難い。
まずにせウルトラマンだが、基本外見だけで、スペシウム光線などの特殊能力や、ウルトラマンに匹敵するパワーなどは持っていない。ウルトラマンの体重が3万5千トンに対し、にせウルトラマンのそれは2万トン。人間で例えると、体重100kgの重量級レスラーに体重57kgの軽量級レスラーが戦うようなもので、実際、肉弾戦におけるザラブ星人は強いとは云えない。
そういう意味では、本物を行動不能にしておいて、その隙に本物の信用失墜の為に暴れまくる作戦は決して間違っていないのだが、問題は本物として振る舞う為の外見である。
はっきり云って、出演者に「何故気付かんのだ?」と云いたくなるぐらい、明らかな相違が見られる。まず目が赤みを帯び異常に吊り上がり、耳やつま先や頭部の鶏冠に顎が尖っていて、ボディの赤いラインに黒縁が見られた。
だがこれほど異なる点を数多く有しながら、ムラマツ(小林昭二)達は見分けが付かずに困惑していた(苦笑)。結局、本物のウルトラマンが現れ、スペシウム光線を浴びせたことで本来の姿が暴露された。
ただ、ムラマツキャップ達の名誉の為に捕捉すると、体長40mのウルトラマンを地上から見上げた場合、目つきや足先の尖りは分かり辛いという識者の論(←柳田理科雄著『空想科学読本6.5』より)もある。
その証明になるかどうか微妙だが、劇場版劇場版『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟』ではGUYSクルージャパンの面々がにせウルトラメビウスに戸惑う中、GUYSガンウィンガーから送られてきた映像で全体像を見たサコミズ・シンゴ隊長(田中実)は外観上の相違から即座に偽物と看破した。
ただ、見破られたとはいえ、この時のザラブ星人は歴代の星人の中にあって化ける能力が劣っているわけではない。それどころか、メビウスの必殺技であるメビュームスラッシュも撃てた分、容姿しか真似できなかった他のザラブ星人よりも遥かに優れていると云えよう。
また、『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』でのザラブ星人が宇宙牢獄を警備するウルトラ一族を騙せたのは一瞬でしかなかったが、その隙を突いてべリアルの解放には成功したから、「光の国に壊滅的な打撃を与えた」という意味においては目的を達している。もっとも、その前にテメーが命を落としているから意味ないが(笑)。
結論、ザラブ星人の変身能力自体はさほど優れたものではないが、「偽物として如何に振る舞うか?」ということについてはそれなりに熟知し、理に叶った戦略を取っている。
特に、事前に本物を捕らえて行動不能にした上で、本物に化けて行動しているのも角度の高い行動である。問題は、捕らえた本物に見張りを付けず、結局は逃げられることになり、今少しの用心深さがあれば、ザラブ星人の難敵としての知名度はかなり高騰するのではないかと思われる。
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令和五(2023)年九月一五日 最終更新