1.恐るべし秘術師・ゴルゴス
改めて解説すると、ゲドンとはアマゾンの奥地で秘術師ゴルゴスによって束ねられた暗黒組織である。つまりは歴代悪の秘密結社の中で例外的に「首領の正体」がはっきりしている稀有な組織である。
組織の創設者がはっきりしている以上、まずはその者を分析してみようと云うのがこの頁の趣旨である。
立場と野心
秘術師ゴルゴスとは、古代インカ文明の末裔たる一族の一人で、その頭である長老バゴー(明石潮)の助手だった。
現実世界でも、古代インカ文明の遺跡からは、外科手術が施された頭蓋骨や、飛行機としか思えない乗り物のブローチや、乾電池までが出土しており、その科学力がどれほどの力を持っていたかは、マヤ文明・アステカ文明・ナスカの地上絵等と並んで、現代に至ってもなお数多い南米の謎の1つである。
バゴーはそんな古代インカの超科学力を有していたが、その超エネルギーを籠め、2つで1つのパワーユニットとして分けたのがギギの腕輪とガガの腕輪であり、ゴルゴスはこれを我が物とし、その超科学力・超エネルギーでもって世界を我が物にせんとの欲に目が眩んだ。
そしてある日、ゴルゴスはその科学力をもって自らの体を改造して「十面鬼」となり、古代インカの秘法である2つの腕輪の内の1つ・ガガの腕輪を自らの左腕に埋め、残る1つであるギギの腕輪を求めて長老バゴーに反旗を翻し、一族の多くを殺した。
何とか逃げ延びたものの、瀕死の重傷を負ったバゴーは一人の日本人野生児・山本大介、通称・アマゾン(岡崎徹)にギギの腕輪移植を始めとする改造手術を施し、マダラオオトカゲの改造人間となった彼に「日本に行け!高坂に会うんだ!」との暗示を与えて力尽きた。
謂わばゲドンとは、一人の科学者が科学力とそれがもたらす覇権に目が眩んで師を裏切ったことで始まったものである。そうなるとゲドンも十面鬼ゴルゴスも意外に俗物だが、かかる動機(つまりは力と、力がもたらす成果が目的で)で師を裏切り、悪行に走る者は現実の世に少なくない。
科学の発達は良きことだが、その科学が持つ力が大きければ大きいほど、それに従事する人間の暴走には警戒を要することをゴルゴスは教えてくれる。勿論「力」という意味では「武力」も「権力」も「また然り」なのだが。
秘術師としての能力
これは推測するしかない。バゴーにした所で、ギギの腕輪・ガガの腕輪・仮面ライダーアマゾンの改造以外に何をしたのか分からないのだから(苦笑)。
ただ一つ断言出来るのは、ゴルゴスが現実の科学を遥かに凌駕する能力を持ち、かなり奇抜な発想を持っていたことである。
それはゴルゴス自身の改造に表れている。特撮のみならずアニメや小説でもポピュラーな改造人間は、現実の世界ではいまだに現れていない(少なくとも表立っては)。人間の体に他人の体の一部を移植する生体間移植さえまだまだ困難な世界で(移植自体上手くいっても、その後の拒絶反応を抑えるのが大変難しい)、ましてや他の動物・機械との融合はどれだけ素体に負担を強いるか分かったものではない。
勿論『仮面ライダーアマゾン』に限らず、特撮番組はフィクションだから、この手の改造手術技術が(少なくとも悪の組織においては)確立しているのが大前提だが、このことを考慮に入れても、超エネルギーの腕輪と巨岩と9人の悪人の頭脳と自分を融合させた発想力は良くも悪くもぶっ飛んでいる (笑)。
「良くも」というのは、十面鬼ゴルゴスが一度見たら忘れられない容姿となり、見た目にも、アクション的にも、設定考察的にも我々を楽しませてくれるところである。フル活用されていれば番組はもっと面白くなっていただろう。
「悪くも」というのは、(出番の短さもあるのだろうけれど)この改造された身体的特徴が活かし切れていないところにある(この点についての詳細は次頁に委ねたい)。
またギギの腕輪に匹敵するであろうガガの腕輪を移植すると云うのは相当な決意もあった筈である。というのもガガの腕輪が持つ能力は不明だが、それと対を為すギギの腕輪は失明を治すわ、体を赤熱化させて千メートルの地下からの脱出を可能にするわ、と最終回含め何でもありな能力を示していたからである。
控え目に見てもガガの腕輪もこれに匹敵する力を秘めている筈で、そんな超エネルギー物質を体に埋め込むと云うことは、凄まじい力の源ともなるだろうけれど、暴走すれば間違いなく命はないという「諸刃の剣」を抱え込むことになる。
実際、アマゾンライダーはギギの腕輪をなくせば死ぬとされ、十面鬼ゴルゴスはガガの腕輪の埋め込まれた右腕を大切断で斬り落とされたことで落命した。
ともあれ、ここまでの考察と仮面ライダーアマゾンを倒せなかった結果から、秘術師ゴルゴスは師である長老バゴーに及ばないものの、古代インカの超科学をかなり習得していたのではないかと思われる。
悪を束ねた才能
では次に改造人間としての十面鬼ゴルゴスを考察したい。
その名が示す様に、十面鬼には「十の面」がある。つまりは自身を含め10人の悪人の頭脳を我が物にせんとして巨岩に埋め込んだ訳で、9人の悪人は(一応だが)個々に意思や意見を持っていた。その9名に関しては下表を参考にして頂きたい。
十面の持ち主
(参考文献:『仮面ライダーOFFICIAL DATA FILE』)
ナンバリング 主の略歴 1の顔 ゴルゴス本人。古代インカ文明の秘術師。長老に離反して一族皆殺しにした。 2の顔 元TV司会者。自作自演でビル破壊事件を起こし、それを喜びながら放送した。 3の顔 元大泥棒。イギリス中を荒らしまわった。 4の顔 元ナチス幹部。大虐殺を敢行。 5の顔 元マフィアの大ボス。アメリカで数々の悪事を裏で糸引いた。 6の顔 元スパイ。第二次世界大戦で暗躍した以外は不明。 7の顔 元殺し屋。悪人仲間からも嫌われていたらしい。 8の顔 元似非牧師。インチキ宗教・ゾンビー教の牧師だった。 9の顔 元研究者。細菌と毒の研究をしていた。 10の顔 元連続怪奇事件の犯人。パリで連続事件を起こした。死体を蘇生させる改造手術を得意とした。
正直、これらの頭脳は「9の顔」と「10の顔」以外はゴルゴスの性格の悪さを増幅しただけという気がするのはシルバータイタンだけだろうか?(笑)
ただ、表にもある様に、集められた9つの頭脳の出身は分かっているだけでもアメリカ・イギリス・ドイツ・フランスと広範囲に渡り、為した悪事も多岐に渡っている。作中では充分に描かれなかったが、ゴルゴスの最終目標は世界征服なので、先を見据えて様々な頭脳を集めたのだとしたらゴルゴスは意外に(笑)賢い。
作中では愚かしい面の目立った十面鬼ゴルゴスだが、世界征服を志し、ゲドンを組織したゴルゴスとしての彼は決して無能ではなく、悪の才能に溢れていることが分かり、これがフル活用された際の恐怖には計り知れないものがある。
では、次頁ではゲドンの首領・“十面鬼”となりて後の彼を考察したい。
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令和三(2021)年六月一〇日 最終更新