最終頁 酒豪と酒乱は紙一重

今一度認識すべき酒の恐ろしさ 日本史上の有名人物の中で、酒好きで有名だった者達の事績やエピソードを追いながら、自分も好きな酒のことを振り返ってみた………つらつら思う…………どうして酒好きと酒の強さには相関関係が無いのだろうか?(苦笑)

 実際、うちの道場主は酒好きではあっても、酒に強い方ではないので周囲が想像するほど頻繁・大量には酒を飲まない。泥酔したことで、学生時代には先輩の胸倉を掴んだこともあり、新人社会人の頃に翌日の出張の新幹線に乗り遅れたこともあり、他にもここに掛けない程恥ずかしいことをしでかしたこともあり、大事ならずとも周囲が酔って調子に乗った道場主(及びダンエモン)の痴態に眉を顰めた例は枚挙に暇がない(恥)。
 道場主の亡き父も酒好きで、同時に酒に強かった。二人いる妹の内、上の妹は笊である(下の妹は全く飲まない)。なのに何故に道場主が酒に強くないのか疑問を通り越して怒りさえ覚えていた(←殆ど八つ当たり的なもの)。

 だが、注意しなければいけないのは酒に強いからと云って問題を起こさないとは限らないし、多量の飲酒で知らず知らずの内に体を蝕まれることも決して少なくない。
 本作で採り上げた面子の中でも、藤原道隆足利義量毛利弘元毛利興元上杉謙信が、酒が遠因近因となって命を落としている。
 また福島正則は酒で調子に乗って家宝を失い、野口英世は危うく自らの医学博士としても未来を潰すところだったし、塙団右衛門黒田清隆はその酒乱振りを敬遠された。
 中には徳川光圀徳川家宣横山大観岡田啓介の様に酒好きでも酒に飲まれなかった者も少なくはないのだが、彼等の場合、酒に強い上に、限界や酔うべき場所も心得てもいたのだろう。逆を云えばどんなに強くても限界を超えた飲み方をしたり、日頃の鬱屈を貯め込んだりしているとどんな酒禍を招くか分かったものじゃないということだ。


 余談だが、道場主の好きな『笑点』のメンバーを例に挙げると結構酒の影響が分かり易い(笑)。

主だった笑点メンバーと飲酒の関係
 
噺家 飲酒傾向 芸風との関係 健康への影響
桂歌丸 全くの下戸 特になし 若い頃から一滴も飲めず。逆にヘビースモーカーで肺に関する病気に多年悩まされ、最期もそれで落命。生涯病苦に悩まされながらもそれなりの長寿を保てたのも酒を飲まなかった故か?
三遊亭好楽 大好き 銀座の高級クラブを渡り歩いているが、その実態はおしぼり配りのアルバイトというネタが一時定番だった。 一日として酒を飲まない日無し。某番組によると笑点メンバーの中で一番健康に問題のある生活と指摘され、休肝日を持つことを強く勧められていた。
林家木久扇 好き(と木久蔵ラーメン店の店員さんが証言していました) 酔っ払いネタ多し 癌を二回患い、その後も定期検診を欠かしていない。
春風亭昇太 そこそこ 特になし 独身生活が長い故、栄養バランスに偏りがあり、たまに林家たい平と飲みに行くことが有り、その悪影響を受けているらしい。
林家こん平 好き おごりに飛びつき、勘定時にトイレに逃げ込むネタ多し(笑)。 師匠だった初代林家三平の急逝を受けて一門を率いたストレスから酒量は多かったらしい。糖尿病や長い闘病生活に酒が影響していると思われる。
林家たい平好き 『笑点』参加直後は外国人パブネタ多し。また恐妻家ネタの多くは飲み屋のママを相手に浮気したネタ(笑)。 24時間テレビで100キロメートルマラソンに出場するため、専門トレーナーについて摂生・禁酒・減量した際は座布団に座った山田君をそのまま抱え上げて摘み出すという力を発揮。そこからも普段の飲酒の影響は大きいと思われる(笑)。
四代目三遊亭小円遊 本来は好きでもなかった 気障キャラだったが、それは本来のキャラクターではなく、地と芸のギャップに苦しんだことも酒量を増やした。 僅かな緊張をほぐすのにも酒に頼っていた。それが祟って糖尿病・長期入院に苦しみ、四三歳の若さで急逝。

 勿論、歴史上有名でない人物の中にも酒でとんでもない失敗をした人物は数多く存在するだろうし、酒で失敗した故に歴史に名を成せなかった人物も多かったことだろう(くどいが、野口英世は正にそうなりかけた)。
 やはり酒は注意して飲まなければならないものだろう、様々な意味で。


 「飲酒運転 絶対アカン 無視すりゃ あの世へ まっしぐら」『笑点』の「東西大喜利」における笑福亭松之助師匠の替え川柳)



それでも酒は良い(笑)! どんなに酒好きな人でも、否、酒好きだからこそ、深酒、悪酔いをしてしまい、「もう酒は飲まん………。」と思ったことのある人は多いだろう。
 体調や失敗の問題から、「禁酒!」をこれまでに(何度も(笑))決意した方々も多いだろう。  だが、そんな方々に限ってまず酒を辞めたりはしない(苦笑)。

 ちなみにうちの道場主は「「馬鹿は死ななきゃ治らない。」というが、俺の飲兵衛と助兵衛は死んでも治りそうにない。」と自身を振り返り………ぐげげげげげげげげ(←道場主のガンジス・バックブリーカーを食らっている)。
 ゲホッ、ゲホッ………まあ、いずれにせよ下戸の方々には理解出来ない境地だが、気心知れた者と美味い物を食いながら金や仕事のことを一切気にせず談笑しながらマイペースで心地良く酔うことの至福は人生における最大級の喜びの一つと思っている。
 勿論、そんなすべてが揃った酒席は滅多にない。

 「気心知れた者と」どころか、仕事上の酒席で嫌な相手と相伴しなくてはならないことも多い。
 「美味い物を食いながら」どころか、金銭問題で粗酒・粗肴に甘んじることも少なくない。
 「金や仕事のことを一切気にせず」どころか、懐具合や、翌日の仕事の関係から存分に飲めないことが大半である。
 「談笑しながらマイペースで心地良く酔う」が毎回出来れば、この世に「悪酔い」や「泥酔」という言葉は存在しないだろう。

 そんなこんなで酒に頭を悩ますことは少なくない。だが上記の条件に少しでも近づくことでやはり酒は上手く、楽しくなる。道場主の友人・知人には下戸も多く、高校時代からの親友二名は一滴も飲めない。だが、彼等を前に飲む酒は楽しい。
 しっかり場を整えば、別段、ザギンでドンペリでなくても、場末の居酒屋でも充分楽しい。
 余談だが、『新ロードス島戦記』1巻にこんな文章がある。

 「彼は酒を愛していた。それは美酒の味を知っているということではなく、どんな酒でもうまく飲める術を知っていたということである。」

 薩摩守も同感であり、至言だとも思う。だからこそ、酒とは真剣に一生付き合いたいと思うし、好きな酒の為に問題は起こしたくないとも思う。



好きだからこそ一線を引こう くどいが道場主は酒好きである。そして酒好きだからこそ、「一生飲める体で在りたい。」とも思っている。特に酒で健康や職業や社会的信用を失った歴史上の人物達の例を見て強く思う。
 道場主は長期間酒が飲めなくなるほど体を壊したことはないが、泥酔した過去を咎められて酒席での酒量を大幅に制限されたり、失業時に酒の飲めない悔しさを味わったり、痛風を患ったり、尿酸値の高さ(数値は9)で自戒を余儀なくされた苦い記憶は数々ある。
 早い話、飲み過ぎれば飲めなくなるし、それでも飲めば様々な大事な物(命・健康・社会的地位・信用・対人関係・etc)を失うことになりかねない。  ゆえに日々、以下のことに気を付けている。

・酒席で不快を覚えたり、機嫌を損ねたりしたら、控え目にする。
・下戸の人に強要しない。
・酒の味が普段と違うと感じたらそれ以上は飲まない。
・飲酒運転などもってのほか(もう時効だから書くが、道場主は泥酔状態で一〇〇qの道のりを、高速道路を飛ばして帰ったことがある。よく死ななかったと思うし、二度とするまいと思っている)。
・肴が尽きてまで飲まない。
・翌日早起きしなくてはならないときはきっぱりと飲まない。

 早い話、危険ラインに至る前に飲むのを止めようという自戒に他ならない。また酒好きだからこそ、酒で批難されるような言動は慎みたい。
 「好きこそものの上手なれ」という言葉があるが、好きな物を楽しみ、それを後々も存分に楽しむためにも、好きな物で問題を起こしたくないのは酒に限らず万事に通ずることだろう。
 それにしても酒の「好き」と「強い」にもう少し相関関係があればなあ…………(苦笑)。母里太兵衛横山大観の強さが羨ましい………。



余談 『こちら葛飾区亀有公園前派出所』という漫画で、主人公の両津勘吉はある話で禁酒を云い渡された。酔っ払いの喧嘩に自分も酔っ払った状態で止めに入り、喧嘩に参加してしまったのが直接の原因だった。
 これに対して何とか云い逃れんとした両さんは、最初「酒を飲んだからです。」と云い訳して、大原部長に「だから禁酒だ!」と叱責されました。
 しまった、と思った両さんは「酒は悪くないです。」と云ったが、「じゃあお前が悪いんだな?」と返され、「私は悪くないし、酒も悪くない………。」と云い淀みましたが、「だから、酒とお前がくっつくと悪いんだ!」ととどめを刺されました(笑)

 ちなみにこの話の終盤で両さんは非番時に悪質キャッチバーで殴られた大学生と遭遇し、悪質業者を一網打尽にする為、「止むなく」(笑)酒を解禁し、ぼったくり料金を突き付けたバー店員一同を相手に大立ち回りの末全員逮捕するという大手柄を立てていました。
 これに対し、大原部長は「確かに手柄だが……。」と複雑な表情をし、中川は「店の酒を半分以上飲んでから逮捕するのはずるいですよ。」と述べていました(笑)。


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令和三(2021)年六月一〇日 最終更新