菜根版戦闘員VOW

仮面ライダー(1号〜RX)戦闘員・悲劇の系譜

1 ショッカー
 仮面ライダーの最初の組織はショッカーである。ショッカーの為に改造手術を施され、人間でなくなってしまったことから孤独に打ちひしがれる本郷猛(藤岡弘)の哀愁孤軍奮闘が主題となって始まったと云えよう。
 しかし、本郷の悲劇は周囲の仲間の協力や彼の持つ使命の重大さの前に次第影を潜め、2017年11月現在、それをバネに50年近い奮闘を続けている。しかし戦闘員及び再生怪人の悲劇は当時から今も(戦闘員のいないケースを除いて)変わらない。

 ショッカーの戦闘員の設定は通常人の3倍の強さである。勿論この程度では設定からしてライダーに敵わないが、ライダーとしか戦ってない内はまだ良かった。
 藤岡弘氏が撮影中の事故で全治6ヶ月の重傷を負い、急遽ライダー2号が生まれたわけだが、その間は以前のフィルムを流用しつつ、FBIの特命捜査官・滝和也(千葉治郎)や立花藤兵衛(小林昭二)が奮闘した。この頃からショッカーの戦闘員達は普通の人間とも戦うようになる。つまり悲劇もここに始まった。

 ライダー抹殺に本腰を入れ出したショッカーの首領(声:納谷悟郎)は第11話においてそれまでの改造人間の長所を集めて改造したゲバコンドルを生み出し、そのテストに大勢の戦闘員の中から特に選りすぐったものを集め、戦わせた。
 テストの後、ゲバコンドルはこの時の戦闘員達を率いてライダーに挑むのだが、「選りすぐり」の筈の戦闘員達はライダーと戦う前に滝1人に叩きのめされた。2度目の白兵戦では立花藤兵衛にすら敵わなかった。

 戦闘員ならまだいい。
 次に来るのは二週間後のトカゲロン率いる怪人軍団である。第1話の蜘蛛男から第12話のヤモゲラスまで10体の改造人間が復活し、ライダーを驚かせたが、完璧な雑魚扱いで、ライダーに敗れた経歴からトカゲロンに「負け犬」呼ばわりされ、1度はライダーに勝利したとはいえ、殆どトカゲロン1人の力だし、2度目は11人掛かりでライダーに挑んでボコボコにされ、トカゲロンの蹴り放った爆弾(バーリア破壊爆弾)を蹴り返され、全員仲良くあの世行きとなった。

 その後も戦闘員や再生改造人間の無力振りは云うに及ばずである。ちょくちょく再生怪人が出て来ても、何の戦力にもならないばかりか、味方の仕掛けた毒ガスを滝に利用されあっさり殺られる奴等や、途中で行方不明になる奴まで出る始末であった(←つまりは生死が明確にされないいい加減な扱いだった)。

 ショッカーの次の一斉攻撃はカミキリキッド率いる再生怪人軍団である。地獄大使(潮健児)の悪魔の精霊の儀式により10体近い怪人が甦ったがやっぱり弱い。
 打倒ライダーに燃えるカミキリキッドは再生怪人達を相手に特訓を開始。サイギャングのライダーキックを正面から受け止めて弾き返したカミキリキッドはライダーキックを馬鹿にするが、サイギャング曰く、「本物のライダーキックはこの10倍は凄いんだ。」と云う。云っていて情けなくないかサイギャングよぉ。如何に再生怪人が弱いか雄弁に語っていると云えよう。

 最終的にショッカーは地獄大使の死とともに首領に見捨てられ、新組織・ゲルショッカーによって戦闘員は皆殺しにされた。戦闘員の悲劇の原形はショッカーによって確立し、今なお健在と云える



2 ゲルダム・ショッカー
ショッカーの首領は新たにアフリカの秘密結社ゲルダム団の力を得て、新組織ゲルショッカーを編成した。ショッカーの戦闘員が通常成人の3倍の強さに対し、ゲルショッカー戦闘員は4倍の設定である。
 初登場時、戦闘員達は3色のマントに身を隠し、空中より飛来し、三位一体攻撃やショートテレポートと云った技を見せ、滝に「強い!ショッカーの戦闘員なんか比べ物にならない!」と云わしめている。取り敢えずショッカーの戦闘員より強いことがはっきりしたが、その強さも初めだけであった。

 ゲルショッカーの戦闘員には重大な悲劇的弱点が2つあるのだった。
 先ず、第1は先の三位一体攻撃にある。基本戦闘法なのだが、逆にこれしかなく、リーダー格の戦闘員が殺られると戦闘能力を失い退散するのだ。ゲルショッカーの戦闘員は単純計算で3人に2人は役立たずなのか?
 そして第2の悲劇は彼等の裏切り防止策にあった。
 ゲルショッカー戦闘員は裏切り防止の為に「ゲルパー薬」と云う薬を投与されているのである。この薬はいわば麻薬である。一度服用したが最後、3時間毎にこれを服用しないと体が消滅してしまうのである。
 つまりライダー達に捕えられても機密がバレずに済むと云う訳だがはっきり云って投与された戦闘員は悲惨過ぎる(一度服用したが最後、生涯飲み続けなければならない)し、何をしてても3時間以内に中断しなければならず、長時間の任務を著しく困難にしており、場合によってはショッカーの戦闘員より無能になりかねないのである。

 さて、その後の雑魚振りだが、勿論ショッカー同様、滝にすら敵わず、ライダーと怪人の格闘の巻き添えで死んだり、水辺での戦いでは最低1人は水中に転落するなどのお約束通りになってしまっていた。

 戦闘員の悲劇は上記の通りである。次に来るのは珍しく、奮戦した集団である。
 それは6人のショッカーライダーで、ライダー1号と同じ力を持つ怪人6人の出現は単純にその戦闘力だけでもダブルライダーを大いに悩ましただけでなく、ライダーそっくりの姿(マフラーや手袋の色でバレバレと云う突っ込みをここで入れてはいけない)で多くの味方の目を欺いた点などからしてもシリーズ最大最強の敵とも云える。
 しかしその最期は呆気なかった。立花藤兵衛考案の「ライダー車輪」の前に6人まとめて爆死。つまるところは、数が多い→処理が大変→まとめて殺さなくてはならなくなる→死に様があっけなくなる、という図式による元の強弱に関係ない数の悲劇の様である。

 最後に来るのはゲルショッカー首領最後の盾・再生怪人軍団である。滝を捕え、立花藤兵衛以下少年ライダー隊員6人を捕え(ちなみに数人掛かり)、首領の最後の盾とも云える集団なので、そこそこの善戦を期待した俺が馬鹿だった。
 サボテンバットは真っ先に2人掛かりで投げられ、爆死。ライダーキックに殺られたイノカブトンなどマシな方で、ハエトリバチは浜名湖に叩き込まれてそのまま浮いて来ず、エイドクガーは只のパンチの連発の前に爆死。唯一ムカデタイガーのみが炎を吐きまくって2号ライダーを苦しめたが、他の改造人間達を片付けた1号が駆け付けた途端形勢は逆転し、袋叩きの末にぶん投げられて爆死し、再生怪人軍団はお約束通りの呆気ない全滅を遂げた



3 デストロン
 死んだと思われたゲルショッカーの首領は替え玉を使って生き延びていて「最後の組識(首領の自称である。異論はあると思うが)デストロン」を編成した。
 この組識の戦闘員達は通常成人の5倍の強さと云う設定である。しかし勿論弱い。立花藤兵衛があまり格闘戦を演じなかったり、ヒロインの珠純子(小野ひずる)が拉致される際も全く抵抗を見せないなどの背景からさほど弱くは見えないが、ライダーV3の前では何人いても同じであった。

 インターポールのデストロンハンター佐久間ケン(川島健)には数人掛かりで勝ってはいたが、佐久間ケン自身が前作に登場していた滝和也ほどのステータスを得られず、僅か 8週6回の登場で理由も無く姿を消しているので、ケンに勝ったと云ってもあまり強さは感じられない。

 機械合成改造人間を指揮していたドクトルG(仙波丈太郎)の死後、キバ一族やツバサ一族と云った結託部族の指揮下に入るに及んで戦闘員達はその軍装を結託部族風に改めるが、弱さは全く変わらない。それどころか置かれた状況が悪過ぎた。

 キバ一族との戦いでは生死不明だったライダー1号・2号が帰国したため3人掛かりでボコボコにやられる。
 ツバサ一族との戦いではツバサ一族が全般的に強かったために見事な雑魚っ振りだった。
 更にヨロイ一族との戦いに至っては更なる悲劇が待っていた。

 周知の通り、ヨロイ一族との戦いの過程において仮面ライダーライダー4号・ライダーマンが誕生する。このライダーマンを間に3タイプの戦闘員の分類が成立する。

 先ず1つは科学者グループである。彼等はライダーマン・結城丈二(山口豪久)のデストロン科学者時代の部下であり、結城の人格と才能を敬愛しており、結城が逮捕された時もヨロイ元帥(中村文弥)に真っ向から反論し、硫酸のプールで処刑されかかった結城を救い、結城の延命のために改造手術を行い、最後には結城の盾となってカマクビガメに惨殺された。かっこいいのだが悲惨である。
 続くは普通の戦闘員である。非道の大幹部ヨロイ元帥の下にいるだけで悲惨だが、圧巻なのは結城丈二処刑のときで、結城を助けに来た科学者によって硫酸のプールに叩き込まれていた奴がいた。勿論お約束通りの悲喜劇にも見舞われていたし、全ライダー中最弱のライダーマンにすら何人掛かりでかかっても全く敵わなかった。
 そして第3は首領の側近たちである。アクロバティックな技を展開し、強そうなのだが、V3との戦闘シーンしかなく、結局良く見て時間稼ぎ、悪く見て単なる殺られ役だった。

 そしていよいよ最終回。前作同様に再生怪人達(オニビセイウチ、バショウガン、死人コウモリ)による少年ライダー隊への逆襲が始まる。こう書けば聞こえは良いがやっていることは単なる子供イジメである。
 再生怪人の内、死人コウモリと云えば三番目の大幹部・ツバサ大僧正(富士乃幸夫)の正体であり、一度はV3をコテンパンにのしたと云うのに再生怪人となっては見事な雑魚であった。勿論V3には全く敵わない。
 ヨロイ元帥がV3を罠に嵌めて捕えたところで姿を消し、その最期さえ定かではない。過去において如何に善戦しようと再生怪人は弱いという定説を実践してデストロンは滅び、『仮面ライダーV3』は完結した。


4 GOD(Government Of Darkness)
 沖縄の水産大学に通う神敬介(速水亮)は休暇中に実家のある東京でアルバイトしようとしてフェリーで帰省しようとした所を怪しげな男たちに取り囲まれる。
 応戦しようとしたところ、男の一人が、、「人間の分際で我々に逆らうとはいい度胸だ。」と云い放つ。敬介は「すると御前達は人間じゃないのか?」と驚く。これがGOD戦闘工作員の初登場シーンである。何とも不気味な雰囲気を漂わせて登場するが、所詮ヤラれ役なのは周知の通りである。

 鉾槍が標準的な武装だが、時と場合に応じて弓や銃と云った飛び道具も使いこなすのが歴代戦闘員に比べて印象的だったが、その一方で搬送中のダイナマイトをおっことして10人近くが爆死し、バス事故まで併発したと云う開いた口の塞がらないドジ野郎もいる。

 戦闘工作員の雑魚振りで圧巻なのはキマイラの率いていた一団である。超能力を持つ少女一家を攫ったGODだが、一家はXライダーに救出される。Xライダーとキマイラが戦っている間に逃げる一家を再度拉致しようとする戦闘工作員達だが、ジープ(スズキのジムニー)で駆け付けたオヤっさんにボコボコにされる。弱いぞ御前等!!
 しかもこの後、少女と母親がジープの荷台に避難し、父親が運転席に乗り、追いすがる戦闘工作員をオヤっさんが振りきってジープの荷台に乗り、最後の一人がオヤっさんにしがみ付くがジープの発進に振りほどかれ、オヤっさんは振りほどく際にドロップキックを炸裂させている。
 卑しくも組識で動いて戦っている連中が、オヤジ二人の即興のコンビネーションに負けないで欲しいものである。

 戦闘工作員達の名誉のフォローになるかどうかは分からないが、一部の戦闘工作員はかなり重要な役職をこなしている。それを証明するのが、アポロン宮殿である。
 世界各地に設けられた地下要塞で、医務局、人事課、車輌課、作戦研究室、総務課等、役職が細分化し、そのすべてを戦闘工作員が担っているのだ。

 アポロガイスト(打田康比古)の再生改造手術やRS装置(極分子復元装置)の開発はちゃんとした科学者がやっていたが、それ以外の重要なことはすべて戦闘工作員がやっているようなのである。ところが、このアポロン宮殿に戦闘工作員達を改めて雑魚に叩き落とす情けない戦闘が展開されるのである。

 アポロン宮殿にはトレーニングジムが有り、案内人の死神クロノスの説明によると世界各地のあらゆる格闘技のチャンピオンクラスを目指して特訓しているとのことである。
 成る程、空手、ボクシング、柔道、レスリングなどの様々な格闘技の訓練が展開されていた。が、この後、潜入を見破られたXライダーが、罠に嵌まった形で、このトレーニングジムに叩き込まれ、勿論訓練中の戦闘工作員達が個々の技をもって挑んだが、悲しいほどに雑魚であった。
 「チャンピオンクラスを目指している」と云うクロノスの言ではあったが、どうも目指しているだけの様だ。

 さて次にお約束の弱い再生怪人軍団を紹介しなくてはなるまい。GODの再生怪人の登場は3回である。内訳はネプチューン1回、ヘラクレス1回、メデューサ2回、アキレス2回、プロメテス1回、キマイラ1回、ユリシーズ1回、クロノス1回、ケルベロス1回、サラマンドラ1回である。アキレスとメデューサの二人が贅沢にも二度甦っているが、却って情けない印象が強い。

 最初の大攻勢は、アポロガイストの命の炎を貰って七体の神話怪人が甦った時である。己の死期を悟ったアポロガイストはXライダーに最後の勝負を挑むため、アキレス、ユリシーズ、プロメテスに立花藤兵衛のコーヒーショップを襲わせ、そこでバイトしている二人の女子大生を人質に取った。
 ここまでは成功するが、店に残ってXライダーに襲い掛かった三人は再生に相応しい雑魚振りを遺憾無く発揮し、あっという間にユリシーズとプロメテスが殺られ、アキレスに至っては生け捕りにされ、強情を張っていたのに、煽てられるやいなやライダーの手先になる
 勿論アポロガイストに看破され、戻った瞬間に即行で射殺された。
 二人の女子大生を救出にやって来たXライダーにヘラクレス、ケルベロス、クロノスが挑むが勿論返り討ちにあう。いよいよXライダーとアポロガイストの一騎打ちかというところにメデューサが姿を現す。立花藤兵衛を人質に取り、断頭台にかけていたのだ。
 「俺に構うな。」と云う藤兵衛、「望み通り殺してやる」といってメデューサは紐を引こうとする。そこへXは「行け、クルーザー、親っさんを救うんだ。」と号令をかけた。
 やってきたXのマシーン・クルーザはメデューサを背後から追突。メデューサはつんのめって藤兵衛をギロチン台から押し出すと自分が台にかかった。当然の様にギロチンはメデューサの首を刎ねた
 そこでアポロガイストは再生怪人達を完全に雑魚扱いする台詞をはいた。
 「Xライダー!役立たずの能無しどもは死んだ!勝負だ!」と。あんまりである。しかし的を得ている。

 次の集団攻撃はキングダーク(声:鈴木和夫)の力で甦ったネプチューンが、講釈師・田辺千鶴(梅津栄)に化け、仮面ライダーの評判を落とす紙芝居をしたことである。藤兵衛の怒りを買い、本物の田辺も敬介に救出され、正体を現し、キマイラ、メデューサとともに敬介に襲い掛かろうとする。そこに登場した仮面ライダーV3・風見志郎。
 元々この話は五人の仮面ライダーの過去をかっこよく語る為のものである。只でさえ、雑魚の再生怪人達がどうなったかは云わずもがなである。

その翌週、三度目の再生怪人の登場がある。強敵・クモナポレオンの配下として、アキレスとサラマンドラが甦るが、完全にクモナポレオンの助手だった。
 クモナポレオンとともにV3を捕えるのに成功するが、クモナポレオン自身が一度はXライダーを破った実力者で、V3はこの時その敗れたXの強化手術のため、輸血で体の血を大量に失っていたことを忘れてはならない。
 その後、手術から覚醒したXはV3を救出し、二人の再生怪人は半病人のV3にボコボコにされ、その死に様さえまともに描かれなかった。
 駄目押しに一言付け加えるならこの間二人とも台詞は全く無かった。相当情けない戦闘工作員と再生怪人達の境遇だが、勿論彼等で終わりではない。


5.ゲドン
 ゲドンの戦闘員達は何と全員女で、「赤ジューシャ」と呼ばれていた。新番組であるにも関わらず、彼女たちの戦闘力は通常成人の一.五倍。いきなり三分の一以下に落ち込むが、彼女達は戦闘員としてはまだ幸せな方である。

 先ず彼女達の立場は基本的に改造人間である獣人達より上である。十面鬼(声:沢りつお)の命令を伝え、時には処刑にも携わる。また、赤ジューシャの任務は隠密活動が主で、時折暗殺も行うが、あまり戦わない。
 そのため、大勢でアマゾンライダーに掛かっていって情けなく叩きのめされるシーンが皆無に近い(やはり子供番組で大の男が若い女性を次々とボコボコにするシーンはまずいのだろう)。
 彼女達の最大の不幸は首領の十面鬼がアホだった事と云える(笑)。


6.ガランダー帝国
 ゲドンの崩壊寸前にアマゾンライダーの前にその姿を現したガランダー帝国の戦闘員・黒ジューシャ。
 ガランダー帝国がゲドンより遥かに強く恐ろしい組識だったのに反して彼等は赤ジューシャよりひどい雑魚振りを露呈する。

 ガランダー帝国はアマゾンのギギの腕輪を狙う一方で世界征服のために行うテロリズムの方を重点的に推し進めた。また黒ジューシャは男で、そのため、アマゾンとの格闘戦も頻繁に起こるようになったのだが、これは勿論彼等に取って不幸な事であった。

 何人で掛かってもアマゾンの敵ではなく、組識での立場も獣人より下に置かれ、作戦失敗のあおりをくって惨死する連中、ゼロ大帝(中田博久)の機嫌を損ねたり、気分次第で殺される連中が続出した。お約束といえばお約束である。


 なお、『仮面ライダーアマゾン』には再生獣人達による一斉攻撃はなかった。元々ギギの腕輪を持つアマゾンに敵わない設定で、十面鬼やゼロ大帝といった恐ろしい上司を持った彼等のせめてもの幸福なのかもしれない。


7.ブラックサタン
 ブラックサタン戦闘員はその風体からして弱そうだ。まるで猫か鼠である。そして弱さも変わらない。
 脳改造に伴う最終的な手術を受けていない電波人間・タックルこと岬ユリ子(岡田京子)にも敵わないし、立場的にも奇っ械人よりも下の様である。お約束の悲劇も勿論だが、ブラックサタンの戦闘員は殊更上司にも恵まれていない。

 特に一つ目タイタン(浜田晃)の死後は悲惨だ。奇っ械人に思いきり冷たいタイタンだったが、意外にも戦闘員をむやみに殺してはいない(根性焼きを喰らわせてはいたが…)。しかし後任の雇われ幹部・ジェネラル=シャドゥ(声:柴田秀勝)は違った。卑怯な事を嫌う好感の持てる奴なのだが、戦闘員に対しては余所見をしただけで「態度が悪い!」として首を刎ねる奴なのだ
 忠実に従っている分には無難なのだが、その後、一つ目タイタンが百目タイタンとして甦ると戦闘員達は直属幹部と雇われ幹部の板挟みとなる。当然双方の顔色を伺わねばならないのだ。

 百目タイタン戦死後、大首領(声:納谷悟郎)はシャドゥを無視し、最高幹部・デッドライオン(声:辻村真人)にすべてを託し、戦闘員もそれに従ったため、首領に信頼と約束を反故にされて怒ったシャドゥに数人が殺された。いわば巻き添えである。しかも形の上では立花藤兵衛に殺られた事になっているのである。

 ブラックサタンにも再生奇っ械人がいた。タイタンの葬儀では三人の奇っ械人とGOD悪人軍団のアリカポネ(????) が棺を運んでいた。只それだけである。そして、首領への最後の壁として数人の奇っ械人が復活してストロンガーに襲いかかるが、勿論まるで歯が立たない。
 そして全滅した途端一匹のサタン虫となったのだ。一体こいつ等は何だったのか未だに謎である。その後大首領も倒れ、ブラックサタンに反旗を翻したジェネラル=シャドゥの編成したデルザー軍団が台頭する。


8.デルザー軍団
 デルザー軍団は強かった。彼等は生まれからして人間ではないのだ。出身は遠い魔の国とされ、改造人間ではなく改造魔人であり、全員が大幹部クラスの実力を持ち、ストロンガーも超電子ダイナモを内蔵する前は明らかに彼等に劣っていたのである。
 タックルに至ってはドクターケイト(声:曽我町子)との戦いにおいてすべての力を使い果たし、ケイトを道連れに若い命を散らした。
 そして根が人間ではないので戦闘員も強かった。それぞれの改造魔人に直属の戦闘員がいて、その改造魔人に準ずる特殊能力を有していた。

 鋼鉄参謀戦闘員は鎖を武器にした連携攻撃を得意とし、タックルの電波投げに対し、電波返しなる技を披露し、荒ワシ師団長戦闘員は滑空能力を持って空を飛び、ドクロ少佐戦闘員は忍術使いで、撒き菱や手裏剣を使いこなし、岩石男爵戦闘員は岩に化け、オオカミ長官(声:峰恵研)率いる精鋭・狼部隊は集団槍術を駆使し、狼の集団攻撃を連想させた。
 隊長ブランク戦闘員は短剣を弾丸にしたライフル銃を武器とし、ヘビ女戦闘員は蛇に変身し、その後の戦闘員も独自の武器なり戦術なりを見せ付けてくれた。
 勿論一対一ではストロンガーにはとても敵わないし、集団になったところで改造電気人間に勝てるわけではなかったのだが、少なくとも雑魚ではなかった。

 しかし、例外もあり、また回が進むに従って彼等の運命もまた暗転していくのであった。ではそのプロセスを見てみよう。

 第一の悲劇はドクターケイト戦闘員にあった。ドクターケイトは強かった。鋼鉄参謀(声:市川治)は彼女の毒ガスに弱く、彼女に機嫌を損ねた為にストロンガーに弱点がばれ、二勝二引き分けの対ストロンガー対戦成績を持ちながら五戦目に命を落とし、ドクロ少佐(声:山下啓介)もまた「ケイトの毒ときたら俺でも寒気がする。」といっていた。
 四十年近いライダー史にあっても「タックルと相討ち」という大きな足跡を残しているため知名度も高い。
 そんな彼女を上司に持ったため、戦闘員達は見せ場のすべてをケイトに奪われ、完全な雑魚として、立花藤兵衛、ケイトの毒に殺られ半死半生のユリ子はおろか小学生にも負けていた
 そんな彼等には独自の特殊能力もなかった。タックルの死という大事件の影に消えた憐れな雑魚達であった。

 そしてタックルの死とともに戦闘員達の雑魚化が進み出した。ドクターケイト戦闘員がタックルの死という大事件にその影を薄れさせたように、タックルの死後、大事件の連続で、戦闘員達はその影を薄れさせざるを得なくなってしまったのだ。

 タックルの死後、ドクロ少佐に不意打ちまでしながら敗れたストロンガーは改造電気人間の能力に限界を感じ、彼の力に目を付けた元ブラックサタンの科学者・正木洋一郎(小笠原弘)による超電子ダイナモ内蔵手術を受け、一分間だけ改造超電子人間となり、百倍の力を発揮できるようになった。
 初めはその新たな力をデルザーに覚られまいとして隠していたので、まだ戦闘員達もそこそこの強さを発揮できた。しかし、例外がいて、アホな上司を持った岩石男爵戦闘員達だけは不毛な特訓を課せられ、雑魚振りを発揮していた。

 ストロンガーが超電子の力を手に入れたため、もはや戦闘員には苦戦しなくなった。のみならず、タックルが死んだため、藤兵衛までもが戦い出したのだ。
 第一作の『仮面ライダー』に登場していた時は三六歳だった小林昭二氏も『仮面ライダーストロンガー』の頃には四〇にも関わらず、かなり白髪も増え、「老い」を滲ませていた。下手すりゃ六〇代に見えるのだ(実際の小林昭二氏は五七歳で子供を作るほど肉体的な若さを保っていた)。
 そんな初老の男に二、三人はぶちのめされていたのだ。勿論あっさり殺られていたわけではない。しかし、戦闘員の立場はこれにより完全に雑魚に復したといえよう。

 追い討ちをかけたのが歴代ライダーの帰国である。もはやどう転んでも戦闘員にスポットが当たる事はなかった。V3とライダーマンが捕えられた時の磁石団長(声:沢りつお)とヨロイ騎士(声:池水通洋)の戦闘員達の僅かな奮闘が最後の活躍であった。

 そして第一期ライダーシリーズ最後の集団戦。ここに雑魚達の最後の悲劇が待ち受けていた。
 日本に勢揃いした七人の仮面ライダー達に残り三人の改造魔人では勝負にならない、と人質にされていた藤兵衛が降伏を勧めるが、デルザー軍団大首領(声:納谷悟郎)の復活宣言でサメ、アリジゴク、メカゴリラ、カニ、ブブンガーの五体の奇っ械人と荒ワシ師団長が復活した。
 ヨロイ騎士、磁石団長とともに六人の仮面ライダーに挑むが、集団になったのが災いして、雑魚になったばかりか、ヨロイ騎士・磁石団長の二人も雑魚に相応しい原因不明瞭の集団爆死を遂げたのであった。

 自暴自棄になったマシーン大元帥(声:市川治)はストロンガーを道連れに自爆しようとするが失敗して爆死し、大首領も七人の仮面ライダーの総攻撃の前に地球征服の野望を諦め、宇宙の果てへと去り、第一期ライダーシリーズは終焉し、以後立花藤兵衛が戦う事はなかった(←『仮面ライダーSPIRITS』に関してはこの際別個に考えて下さい)。


9.ネオショッカー
 三年七ヶ月のブランクを経て仮面ライダーが復活した。空を飛ぶ能力からスカイライダーと呼ばれるが、題名は『仮面ライダー』であり、1号ライダーの再来が意識された構成であり、ライダーの風貌は勿論、組織名もショッカーの名を冠し、初代幹部・ゼネラル=モンスター(堀田真三)はナチスの軍服に隻眼、とショッカーのゾル大佐(宮口二郎)を真似たとしか思えない格好をしている。
 つまり様々な面で仮面ライダー1号の世界が再来したのだ。当然、戦闘員の悲劇も再来した

 ネオショッカーの戦闘員はアリコマンドと呼ばれている。全身黒ずくめで、額の所に蟻の触覚を真似た突起物が二つある。勿論ものの見事に雑魚である。どうしようもないぐらい雑魚である。正しく蟻の如き存在である。
 ライダーに向けて巨大な刃物が振るわれるとその刃物は身を躱したライダーの背後にいたアリコマンドの首を刎ねるし、水辺での戦闘では必ず一人以上のアリコマンドが水中に転落するし、大幹部に特殊能力を誇示しようとする改造人間の実験台もアリコマンドだし、第二の親っさん・谷源次郎(塚本信夫)にも敵わない。
 複数による攻撃で勝てたのは自称・日本一のスーパーヒーローがんがんじいこと矢田勘次(桂都丸)だけだが、がんがんじいの弱さを考えると自慢にはならない。

 アリコマンドの悲劇は弱さだけにあるのではない。努力の報われなさも大きい。各怪人達の傘下にて様々な武術の調練に励んでいる奴も多いが、それが故の悲劇もあるのだ。
 ドブネズゴン配下のアリコマンドは集団での鞭攻撃を得意とし、ライダーマンに掛かっていいったが、ドブネズゴンが人間を白骨化させる毒液を発射した時にはライダーマンに盾にされていた
 またドラゴンキングの下で闇の戦士団の団員として古武術の特訓を行っていたアリコマンドの一人は仲間同士の組み手で相手に叩き伏せられた所を「弱い奴は死ね。」の一言でドラゴンキングに刺殺された。
 特訓に次ぐ特訓を重ねスカイキックをマスターした(!) アリコマンドはアブンガーのスカイキック破りの実験でキック返しをくらい爆死した。アブンガーの作戦・戦力誇示の為に殺されたに等しいが、生かしておけばかなりの戦力になったとは思うのだが…。
 実際に戦ってみなければ分からない、といわれればそれはその通りだが、それなりに有能な連中を無駄死にさせていた例があるのは疑いない。

 科学者グループやドクロ暗殺隊に所属して奮闘していた連中もいたが、彼等の努力も報われてはいない。
 スカイライダーの最終三話においてアリコマンドはその弱さと悲哀をとことんまで具現化する。三年前に両親を殺されたスカイライダー・筑波洋(村上弘明)は、父の親友で、行方不明になっている長沼博士(西本裕行)がネオショッカーに捕えられているのを発見したという通報を仮面ライダーストロンガー・城茂(荒木茂)から受け、二人して長沼博士の救出に向かう。
 アジトに着いたものの博士を人質にされては手も足も出ないので下手に踏み込めない。思案する洋に茂は催涙弾をぶち込むと告げる。洋は人質の長沼の身を案じるが、茂は笑って云った。「こいつはアリコマンド専用で人間には効かないんだよ。」と。

 これは重大な事である。

 弱さの象徴とも云える戦闘員達だが、少なくとも設定の上では通常成人よりも強いことになっているのが常識なのに、明らかに普通の人間より戦力的に劣る一面を持ってしまっているのである。

 悲哀は更に続く。
 無事救出された長沼博士は二人に礼を述べ、更に洋には彼の両親が生きていることを告げた。洋と茂は両親の手掛かりを求めて長沼に教えられた病院に赴いた。
 そこは表向きは小児科の病院だが、実はアリコマンドの診療所で、役に立たなくなったアリコマンドは廃棄処分にされるのだ。
 院長のドクターXがある部品を外した途端に死体同然となったアリコマンドは廃品シールまで貼られていた。
 城茂の「アリコマンドの末路も哀れなもんだなあ。」という台詞はもっともである。

 その後幾多の困難を経て、洋は父がネオショッカーの与することを断固拒否したために氷漬けにされて殺されていたことを知り、大首領(声:納谷悟郎)の召し使いにされていた母(折原啓子)を救出した。
 激怒した大首領は筑波洋を暗殺し、母を連れ戻すことをドクロ暗殺隊に命じた。武器を使いこなしたり、執拗な攻撃を加えたりしていた所から、普通のアリコマンドよりは遥かに強そうだが、やはりライダーの敵ではなく、洋は駆け付けた一文字隼人(佐々木剛)とともに全員を叩きのめした。
 これだけならドクロ暗殺隊にこれといって悲哀感はない。第一期から数えてライダー史も当時で九年、戦闘員の弱さも基準が見えてきた頃、ドクロ暗殺隊はむしろ、「まあ強いかな。」とさえ云え、悲惨さなど微塵もなかった。
 ところが、リーダーがとんでもなく不幸だった。
 リーダーは実は死んでなかった。気絶から覚醒し、一瞬の隙を突いてクロスボウで洋を射殺しようとしたのだが、洋と母が抱擁をしたため、矢は母の脇腹を直撃し、リーダーは洋の激し過ぎる怒りを買って嬲り殺しにされたのだった(この時の村上弘明氏は演技だとわかっているのに怖いぐらいである。さすがにライダー出演歴のある俳優の中でも1、2を争う出世頭だけのことはある)。

 戦闘員・アリコマンドの悲劇は以上の通りだが、初代の1号ライダーを意識して作られたこの作品には再生怪人達も登場する。全員黄色いマフラーをし、ご丁寧にも「怪人二世部隊」というチーム名まであったが、勿論弱い。
 大将にネオショッカー最強といわれたグランバザーミーが就任したが、オオカミジンはそれに反対しグランバザーミーに一撃で首を刎ねられ、ライダー達と戦う前に死亡した。つまり閲兵式からして情けないのだ。
 怪人二世部隊の存在意義ははっきりしている。怪人二世部隊が登場した二週間、日本にはストロンガーの最終回以来初めて全ライダーが終結した(素顔での全員集合は『仮面ライダーストロンガー』の最終回が最後)。
 『仮面ライダーストロンガー』の最終回の例にもあるように八人もいては全員を活躍させるのはかなり骨だ。結果、1号からストロンガーまでの七人ライダーの引き立て役として彼等は準備されたのだ

 キノコジンが真っ先にアマゾンの大切断で首を刎ねられたのを皮切りに、ライダーマンのキックで死ぬ奴すらいた。これは相当情けない。そしてこれも宿命なのだろう。


10.ドグマ
 仮面ライダースーパー1の宿敵ドグマの登場である。一言で形容するならドグマは邪教集団である。帝王テラーマクロ(汐路章)という絶対者を頭にした暗黒組識で、そのヒエラルキーは極めて強い。

 改造人間達はたった一人の例外を除いて全員がいまわの際に「テラーマクロ!」と絶叫した。戦闘員であるドグマファイター達は苦痛というものを表情は勿論態度にも表さない。さながら狂信者であり、ドグマ拳法の使い手でもある。
 又、スーパー1との戦闘で打ち倒されたドグマファイター達の傷口から機械部品のような物を覗かせている所からして、彼等がロボット、或いは改造人間であることが分かる。以上の設定からして歴代戦闘員に比して彼等が強い部類に入ることが推測される。

 勿論彼等もまた戦闘員の宿命から逃れられない存在である。しかし彼等はまだ幸せな方だと云えよう。先ずその証明として主人公・沖一也(高杉俊介)が赤心少林拳の達人だったことが挙げられる。
 彼の師として拳法の腕において彼に勝る玄海老師(幸田宗丸)、一也と同等の腕を持つ盟友・弁慶(西田健)等、武道の達人達が白兵戦をドグマファイター達と展開するのである。
 勿論多勢で掛かって行ってボコボコにされるわけだが、この手の戦闘が大半を占めるため、通りすがりの脇役に負けるシーンが殆どないのである。

 殺陣にも力が入っていた為、雑魚の役回りでありながら、赤心少林拳の達人達との白兵戦は視覚的にもハイレベルなものがあった。
 勝つ事無き宿命は相変わらずだが、惨めな負けがないだけでもかなり幸運と云えよう。赤心少林一派との最後の戦いでは多勢に物を云わせたとはいえ、玄海・弁慶以外の修行僧達を討ち果たしてもいるのだから。

 又ドグマには再生怪人と云う物はなかった。厳密には、メガール将軍(三木敏彦)最後の戦いの際に、数人の怪人達が首だけの状態で、墓標からスーパー1に噛み付いてかかったり、体当たりしたりしていたが、戦闘というよりは恨みをあらわにしたという意味合いの方が強く、シルバータイタンは戦闘と見なさない事にした。ドグマ怪人達も幸運だったと云える。


11.ジンドグマ
 ドグマは滅び、その残存兵を傘下に入れたジンドグマがスーパー1の新たな敵となった。ジンドグマの四大幹部の一人、魔女参謀(藤堂陽子)はドグマファイターを鍛え、強化したジンファイターという新たな戦闘員を首領の悪魔元帥(加地健太郎)に紹介した。

 このプロセスからしてジンファイターは少なくともドグマファイターより強いことが分かる。しかし戦闘員の宿命による悲哀というのは個々の強弱で決まるのではない。前身であるドグマファイターよりかなり悲惨な目にあっているのだ。

 原因は赤心少林拳の達人達がドグマとの最終決戦で全員命を落としたことと、第一期の少年ライダー隊の再来、ジュニアライダー隊の登場にあるのだ。敵は圧倒的に弱くなったのに勝てないと云う悲劇が再来したのである。
 つまりドグマファイター達は負けても相手が拳法の達人達だったので、「仕方ない。」で済まされたが、ジンファイター達は子供相手なので出し抜かれる度に「何て情けない奴等だ。」になるのである。これは不幸だ。

 しかも作風までが彼等に背を向けた。ドグマ編では拳法対拳法をテーマにした重厚感があり、怪人達も動物を素材にしていたが、ジンドグマ編では重厚感が吹っ飛んだ。
 四大幹部達は揚げ足の取り合いを繰り返し、ジュニアライダー隊の出現で谷モーターショップの雰囲気はガラッと軽くなり、マスターの谷源次郎は髭をそってしまい、親しみが持ちやすい風貌になった。又、ジンドグマ怪人の素材は日用雑貨で、怪奇色は欠片も見られなくなった。

 軽いノリはジンファイターにも波及し、彼等もかなり人間臭くなった(正体は宇宙人)。ドジな奴が続出し、好奇心から任務を離れて屋台のラーメンを食べにいこうとした奴等までいた。木久蔵ラーメンでも食ってろ、アホ(笑)(注:木久蔵ラーメンが不味いだの、食べたら死ぬだの云われているのはあくまで『笑点』におけるネタで、その美味さはダンエモンが確認済みである)

 勿論間抜け集団の素養充分で、最終回では久々に格闘戦を演じた中年・谷源次郎にまでボコボコにされていた。また殆ど戦わなかったが、三枚目キャラクターのチョロこと小塚雅昭(佐藤輝)も一対一ではジンファイターを恐れていなかったようであった。
 こうして折角ドグマファイターによって薄れた戦闘員の悲哀感はジンファイターによって滑稽さを伴ってフラッシュ・バックしたのであった。
 彼等ジンファイターが唯一手強さを感じささたのは鬼火司令(河原崎洋夫)がジンドグマ超A級怪人・オニビビンバとして長期間地底で鍛えた「夜光虫」達で、大鎌を武器に集団攻撃で珍しくスーパー1を苦戦させていた(勿論勝つのは不可能)。こんな物である。

 尚、ドグマ怪人同様、ジンドグマ怪人にも再生怪人の登場はなかった。もっともパトライトや消火器、釣り具、梯子、バスケの籠、南京錠などの怪人が雁首揃えても全く恐怖感はなく、仮装行列にしかならないので、再生怪人の宿命を抜きに考えても出さなくて正解といえる。


12.バダン帝国
 仮面ライダーZXは本来雑誌掲載用に誕生したヒーローでTVでの放映はなく、特番があるのみだった。
 このコーナーでは劇場版・特番は除外して考えているのだが、それでは余りにもZX関係者が可哀相で、評価のしようもないので、またライダーマン・結城丈二を演じた山口豪久氏の遺作となったことも考慮して、特別にここでは取り上げることにした。

 セスナパイロットだった村雨良(菅田俊)はカメラマンの姉とともにアマゾン上空を飛んでいたところをバダンに捕えられ、姉を目の前で殺され、自らも改造人間にされた。
 歴代ライダーの例に漏れ、脳改造も施されたためにバダンの忠実な兵として、同僚のタイガーロイド・三影英介(中屋敷鉄也)と強さの上で一二を争い、首領・暗闇大使(潮健児)の覚えも目出度かったが、ある日事故で失った自我が目覚め、正義の味方となる。
 そんな経緯があるため、バダンは戦闘員であるコンバットロイドが弱いのは勿論、改造人間達もタイガーロイド以外は雑魚ばかりであった。

 これは相当悲惨である。かつて、再生怪人達が脆くもライダー達に敗れていったのは何度も書いたが、それでも初登場の連中は善戦していたのだ。ところがバダン怪人達は全員初登場にも関わらず、十人の仮面ライダーとの戦闘に叩き込まれたため、この時点で既に戦死していたタイガーロイドを除く全員が雑魚で終わったのである。
 もっともその御陰で、負けるのが当たり前のコンバットロイド達の情けなさはかなり軽減されたようである。

 ライダー達とバダンの戦いは輜重戦に始まる。時空破断システムなる恐ろしい破壊兵器を開発したバダンはその燃料となるバダンニウム84の輸送を開始する。分量としては4tトラック一台分あればいいのだが、仮面ライダーの襲撃を予測して、七台のトラックと七つのルートを用意する。
 それぞれのトラックには改造人間とコンバットロイドを一人づつ乗せ、それに護衛として十人ほどのコンバットロイド達が追随したのだが、彼等は囮となったのだけが戦果であり、コンバットロイドは勿論けちょんけちょん、改造人間達も一太刀浴びるや逃げ出した。
 タカロイドは1号2号に、ドクガロイドはV3に、ヤマアラシロイドはX、アメンボロイドはストロンガー、バラロイドはアマゾンとスカイライダーに、護衛不明だが、ライダーマンとスーパー1の襲撃を受けて一台、それぞれ、トラックもろとも燃料を破壊されていた。はっきり云って勝負にもなっていない。
 だが、タイガーロイドの運転してきたトラックだけライダー達の追跡を逃れ、燃料の運搬に成功したのだから丸っきり間抜けとも云えない。少なくとも暗闇大使の複数ルートの利用は的を得ていたのである。

 そうこうする内にライダー1号がバダンのアジトが阿修羅谷にあるのを発見し、総力戦となった。設定によるとバダンは時空をある程度操れたようで、過去の悪の組識の改造人間をも配下に引き込んでいた。
 古い順にデストロンのカミソリヒトデ、ゲドンの獣人オオムカデ、ネオショッカーのカメレオジン、ドグマのカメレキングにカマキリガン、そこへ、バダンのバラロイド、アメンボロイド、ドクガロイド、トカゲロイド、タカロイド、ジゴクロイド、カマキロイド、ヤマアラシロイドが加わり、更に十人ほどのコンバットロイドが参戦した。
 が、前述したように歴代ライダーの集団戦に巻き込まれたのが彼等の不幸、初登場にもかかわらず全員が雑魚同然で、BGMが「ライダーアクション」から「輝け!8人ライダー」に変わった途端に各ライダーキックが次々に炸裂し、怪人達は次々に爆破炎上していった。

 情けないのはトカゲロイドとジゴクロイドである。トカゲロイドはライダーマンのロープアームにからめとられ、ぶん投げられ、地面に叩き付けられて爆死し、ジゴクロイドはブラックサタンの戦闘員でさえ死なずに気絶する程度のストロンガーのエレクトロファイアー(電火走り)で爆死した。
 どちらも「そんなんで死ぬなー!!」の一言である。改造人間達の余りの情けなさにコンバットロイドの弱さは胡散霧消した、良かったなぁコンバットロイド(笑)。

 つまるところ、バダンの不幸は特番にあった。限られた枠内での多勢の出演に、ライダー達との集団戦ではアイデンティティを発揮されない奴が殆どなのである。必然呆気なく殺られなくてはならない。責めては可哀相だ(←だったら一々取り上げんな)。
 平成二九(2017)年一一月現在、月刊マガジン誌上にてZXのリメイク版とも云える『仮面ライダーSPIRITS』が連載中だが、バダン怪人やコンバットロイド達が如何な雑魚振りを露呈するのか?露呈しない事も含めて大変興味深い。


13.ゴルゴム
 『仮面ライダースーパー1』より六年の時を経て、仮面ライダーがまたまた始まった。その名は『仮面ライダーBLACK』。長いブランクを経て始まったスカイライダー同様、BLACKもまたその容貌は1号ライダーを踏襲する所が多い。
 だが、このシリーズは全般としてかなり重かった。最終回も完全なハッピーエンドではなかった。
 単純な戦闘より人間の情愛や環境問題に重点が置かれ、科学者といった特殊技能を有する人々よりサラリーマン、八百屋、寿司屋の板前、マイホームを夢見る家庭、浄水場の役人、教師、画家といった普通の人々もよく取り上げられ、庶民的でもあった。かなり異色である。そして何とこの組織には戦闘員が存在しなかったのである!!!!

 『仮面ライダークウガ』以降の平成ライダーに慣れた人々にさほどでもないかもしれないが、第一期〜第二期に親しんできた視聴者にとって当時これは凄いことだった。
 多勢に負けず、押し寄せる敵を次々と蹴散らす!というありふれていても常識となっていた殺陣を完全に放棄し、特撮技術を駆使した怪人との戦闘とその他の命題にすべてを賭けたのである。制作スタッフは大博打だっただろう。

 勿論派手さは特撮技術に依存して影を潜めた。が、逆に見応えがあり、視覚より心に訴えてくる物が多く、大人向きの作品といえる。
 逆に集団攻撃を仕掛けたのは正義側である。ゴルゴム少年隊という数人の戦士が三度に渡ってゴルゴムと干戈を交えた。
 彼等は幼少のみぎりにゴルゴムに捕えられ、成長を止められ、ゴルゴムの幹部として教育された悲しき戦士達だったが、ゴルゴムの心に染まらず、逆にそこで得た技術を駆使し、二度と自分達と同じ目に会う子供を出すまいとして戦う立派な人達であった。
 怪人は一人で、戦闘員もいないから雑魚になると思ったシルバータイタンの予想は嬉しくも裏切られた。
 子供の肉体である彼等は空手使いが一人肉弾戦を挑むのみで、後は各々、モトクロス、射撃、プログラマーとしての特技に徹し、個々の役割をはっきりさせ、全員が重要な戦力になっていたのである。正直云って感心した。
 難を云えば、ゴルゴム滅亡後の彼らが語られなかったのが残念と云えるが、それも彼らの設定がいいものだったとの念があればこそである。

 一方で正義の雑魚が存在した。警察である(笑)。
 シャドームーン(堀内孝人)の覚醒を皮切りにゴルゴムは正面切って日本政府に戦いを挑んだ。その宣戦布告として、大神官から大怪人と化したダロム(声:飯塚昭三)、バラオム(高橋利道)、ビシュム(好井ひとみ)が街中で暴虐の限りを尽くし、そこに警官隊が駆け付けた。

 これはとても珍しいことである。そもそも今でこそ本格的に動いてくれているとはいえ、かつて変身ヒーロー番組における警察の存在感は滅茶苦茶薄く、悪の組織の存在そのものすら知らず、稀に子供が救助を求めても信用しないのが通例だったからだ。その警察が遂に動いた(笑)。
 拳銃を一斉に発砲し、中にはパトカーで突撃する者もいた。しかし相手が悪く丸で歯が立たなかった。しかしこれは仕方ないと云えるだろう。

 さて、それではゴルゴム側の集団攻撃はなかったのかというと一度だけあった。再生怪人による一斉攻撃である。しかも彼等は、滅茶苦茶強かった!!
 というのも再生プロセスが従来と全然違い、彼等は残骸に命を与えた修理品(←あんまりな云い様)ではなく(第一、彼等は改造人間ではない)、厳密には幽霊だった。
 ゴルゴム怪人の中でも死霊術に長けたハエ怪人が強力な超能力を持つ少年に憑依し、死霊術を強化させ、戦死した怪人達の霊を召喚したのだ。
 つまり、再生怪人、否、亡霊怪人達はこちらは相手を掴めるが、相手はこちらを掴めないという幽霊ならではの卑怯な能力を持っていたのである。これには南光太郎(倉田てつを)も苦戦を通り越して手も足も出なかった。
 結局超能力少年(片岡伸吾)の弟が超能力で兄の潜在意識に呼び掛け、憑依していたハエ怪人が追い出されたことにより、霊媒が解け、亡霊怪人達は苦しみながらあの世に戻った。勝利したとはいえ、ライダー自身は亡霊怪人達に一太刀も与えることは出来なかったのである。
 「再生怪人の集団は弱過ぎる。」との千古の鉄則もここに破れた。

 元々多勢による攻撃の少なかったこの番組はチョイ役の登場人物も粗末にしなったこともあって、エキストラを除くと烏合の衆が少なかった。「多勢は無勢」のセオリーを追うより、構成の良さを褒めるべきだろう(←だからだったら取り上げるなっちゅうの)。


14.クライシス帝国
 ゴルゴムは戦闘員を保持していなかった。それはそれで番組なりの良さがあったのだが、大勢の悪人を薙ぎ倒す殺陣がないのは一部の不評を買ったとみえ、続編番組である『仮面ライダーBLACK RX』では雑魚の戦闘員が復活した。

 この番組は前身の『仮面ライダーBLACK』と好対照である。まず人も背景も番組そのものもかなり明るくなった。
 南光太郎がライダーにあって珍しく就職し、パイロットとなったため、勤務先の佐原航空の社長・佐原俊吉(赤塚真人)一家との親睦があり、職務上、カメラマンの白鳥玲子(高野槇じゅん)、社員食堂のコック・五郎(小野寺丈)、ウェイトレスの七七子(優希亜裕子)との交流もあり、戦いの過程において、霞のジョー(小山力也)、的場響子(上野恵)といった仲間達とも巡り会う。
 前作では家庭的に不遇で、宿命的に兄弟同然の親友と戦わなければならず苦悩する重さがあった。仲間である二人の女性も敵となった親友の恋人と妹なのだから嫌でも暗くなる。すべてを失った所から始まった光太郎に救いの手が差し伸べられたようにすら映るのだ。

 またクライシス帝国との戦いは地球レベルだったため、規模も徐々に大きくなり、様々な人間模様が描かれ、前作同様人間味が踏襲された。ではストーリーの流れを追いながら本題に入ろう、集団戦闘爆発である。

 地球と怪魔界のクライシス帝国は双子の兄弟星にして運命を共にする存在でもあった。地球の環境破壊のあおりを食った怪魔界は一年たらずの余命を残す星となった。
 そこでクライシス皇帝(声:納谷悟郎)は五十億の民を地球に移住させることを計画。勿論先住民の地球人を屈服させた上でのことである。
 皇帝はジャーク将軍(高橋利道、声:加藤精三)を最高司令官とし、怪魔獣人ボスガン(藤木義勝、声:飯塚昭三)を海兵隊長、怪魔ロボットガテゾーン(北村隆幸、声:高橋利道)を機甲隊長、怪魔異生獣ゲドリアン(渡辺実、声:新井一典)を牙隊長、怪魔妖族マリバロン(高畑淳子)を諜報参謀として部下に付け、地球攻略を命じた。

 四人の隊長はそれぞれ自分の仲間である獣人、妖族、ロボット、異生獣をかわるがわる放ち、地球攻略を進め、その下には「チャップ」と呼ばれる戦闘員が付いた。初期のショッカー戦闘員の様に色分けがあり、二十人に一人ぐらいは纏め役がいたが、どうも能力差はない様である。
 時にバズーカ砲を撃ったり、フェンシングの技を使ったり、中には大胆にもボスガンの前でジャーク将軍に変身した奴もいたが、基本的に声やぎこちない動きから人間とロボットの中間生命体の様に思われる。

 注目の弱さ(笑)だが、光太郎やジョーは云うに及ばず、二、三人では空手の使い手(技量的にはそこそこ)の白鳥玲子や、アーチェリーの達人(射ち方を見ると、とんでもない下手糞ではあるが一応はアーチェリーの心得があるシルバータイタンの方が上のようだ)的場響子に素手で負けていた。しかも彼女は特に徒手空拳の武術に優れているわけでもない女子中学生である
 また、小一の佐原ひとみ(井村翔子)に追いかけっこで負けていた。よって肉弾戦闘能力はかなり低いと見える。武器を持って集団の連携攻撃を行えばエキストラには勝てる様であるのだが。

 とはいえ、チャップの全部が全部弱いとは限らない。チャップ達の中にも特殊部隊に属する者もいて、ボスガン直属の配下・チャップ悪魔分隊は不気味な仮面をかぶり、フェンシングに長けていたし、怪魔獣人ガイナニンポー率いる獣人忍者隊は棒術とアクロバティックな攻撃で、光太郎やジョーをも苦戦させていたし、一村の大人全員の拉致に成功したとの実績がある。
 怪魔妖族天空の率いる「奇跡の舞踏団」は集団舞踊で人々の簡単な怪我を治癒していた。もっともこれは天空の力かもしれないが…。さすがにRXには歯が立たず、ジョーにも苦戦させたものの勝つには及ばなかったが、その奮闘振りから、時間と人数を掛ければジョーには勝てたのではと思われた。

 チャップとは別に集団行動する部隊がクライシスにはもう一つあった。怪魔妖族の「スカル魔」で、黒いフードをかぶり、大鎌を振るう姿は死神を連想させ、バイクも乗りこなし、また「スカル魔スター」呼ばれるリーダー格の存在もいて、出番はちょくちょくで、戦闘も少なかったのだが、変身前の光太郎を数人で攻撃した時はかなり苦戦させていた。
 チャップやスカル魔に限らず、クライシス帝国に属する者はその強弱の幅は極めて広かった。一口に雑魚と云っても千差万別で、勝てずとも手強さを感じさせた連中がいることを忘れてはいけない。

 さて、クライシス帝国にも再生怪人軍団がいたのだが、これは極めて恐ろしい集団だった。マリバロンが妖術の奥義を尽くした降霊術により、怪魔獣人ガイナカマキル、ガイナニンポー、怪魔ロボットエレギトロン、メタヘビー、怪魔異生獣キュルキュルテン、アントロント、怪魔妖族ズノー陣、スカル魔スターの八体を霊界怪人として甦らせた。
 霊界怪人の恐ろしさは不死身であることである。体が真っ白になった以外には生前と変わりがない様に見え、肉弾戦闘能力では十人ライダーに遥かに劣っていたのだが、いくら攻撃しても死なないのである。
 唯一の弱点はマリバロンの妖術に操られていることで、妖術を停止させる金の羽根を貼られると機能停止し、破壊できることで、この弱点をバイオライダーに突かれて一網打尽にされたが、RXがバイオライダーに変身して、マリバロンの隙を伺っていないと十人ライダーはそこで死んでいただろう。
 ショッカーからネオショッカーまでの再生怪人とRPG風に比べると、ゾンビとヴァンパイアぐらいの差があるのだ。仮面ライダーBLACKの二部作は再生怪人のイメージを百八十度変えたといえよう。

 一方で、打倒クライシス・RX救援を旗印に日本に帰国した十人ライダー達は雑魚ではなかったが、アイデンティティが薄れるという集団の悲しさを露呈していた。
 ボスガン、ジャーク将軍、クライシス皇帝といった大物との直接対決は殆どなく、RXとの一騎打ちの見届け人に終始していた感があり、霊界怪人ガイナニンポーが1号に変身して紛れ込んでいるのにライダー達が誰も気付かなかったり、最強怪人グランザイラスに十人掛かりで歯が立たなかったり、V3とライダーマンの十年振りのコンビネーションもジャーク将軍に通用しなかったりと、カッコ悪いシーンも目立った。
 一言で形容するなら「もはや主役ではない」といった所だろう。



 さて、1号からRXまでの十八年に及び「多勢は無勢」物語る集団の悲哀の歴史は以上の通りである。つまるところこの世に一番多い名も無き一般ピープルが一番弱く悲惨との図式も成り立つ。
 その最も顕著な例を紹介して締めくくりとしよう。それは罪無きクライシス帝国五十億の民である。
 クライシス皇帝は千年前に帝位に即位し、滅びの運命からの回避を地球に求めたが、帝国民の全員がそれに賛成したわけではない。むしろ、千年に渡る圧政に反感を持つ国民も多く、ある物は反政府ゲリラとして、ある者は逃亡者として、ある者は世捨て人として地球攻略に反対したり、参加しなかったり、時には南光太郎達の力になった者達もいた。

 また、横暴な人物ではあったが、クライシス皇帝は地球攻略は飽くまで自国民を救うための行為と信じ、自らの使命としていた。そもそも、怪魔界が滅びる原因は地球の環境破壊にあり、クライシスの平民達には何の非も無いばかりか、そんな目に遭っても侵略を良しとしなかった善良な人々が大勢いたのである。
 ところが、クライシス皇帝が死んだ途端、怪魔界は爆破炎上し、宇宙の無屑と消えた。五十億の命は一瞬にして失われたのである。
 怪魔界に迷い込んだ光太郎達を助けてくれたミンバー村長(西本裕行)、グルミン族の面々、ジョーの恋人である反政府ゲリラのセイラ、等々。皆死んだのである(実際にこれらの人々が死ぬシーンが描かれていた訳ではないが、状況からして死んだとしか思えない)。
 圧政を嫌い、地球に逃げてきていたキララ父子ぐらいだろう、助かったのは。悲惨極まりない話である。



 戦闘員や再生怪人達は一般に弱く、哀れな存在である。しかし名もアイデンティティも無い存在の死が最も軽んじられるのは現実でも空想でも変わりが無い。
 ブラウン管の中で死んでいる奴は本当に死んでいるわけではない。しかし、現実に死ぬ奴は二度と帰ってこないのである。
 人間は勿論全員死の定めを持っている。生きるにしろ、死ぬにしろたった一度のことなのである。作り話の世界と割り切って笑い飛ばすのも結構だが、せめて現実の生死はもっと真摯に重厚に考えてみるべきだろう、番組並みにあっさり軽く奪われ、顧みられない命も多いのだ。
 どんな生き方をしようと、どんな死を遂げようと悠久の時の流れにたった一つしかない物が、生まれ、育ち、散って行っていることを忘れてはならないと私は思う。

平成一三(2001)年九月一〇日 道場主



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令和三(2021)年六月一一日 最終更新