1.隊長としてのゾフィー

1−1.昇格
 ウルトラ兄弟の長男・ゾフィーの肩書は宇宙警備隊隊長である。
 その容姿は初代ウルトラマンに酷似しているが、胸部と上腕部の突起物があることで両者の相違は一目瞭然であるが、上腕部に3対あるそれは「ウルトラブレスター」と呼ばれ、これこそが宇宙警備隊長の証である。ちなみに胸にある6対の突起は「スターマーク」と呼ばれ、対怪獣軍団戦の武功を称えた勲章であり、ゾフィー以外ではウルトラマンヒカリだけに見られる。
 だが、ブラウン管の前に初めてその雄姿を見せた時、実はゾフィー宇宙警備隊長に就任していなかった。

 正直、シルバータイタン自身、この作品を作る為に『ウルトラマン』のDVDを見直して気づいたのである。ゾフィーTV初登場(←初来星でないことに注意)となった『ウルトラマン』の最終回である第39話にて、宇宙恐竜ゼットンに敗れたウルトラマンの命を救うべく、2つの命を持って赤い球体に乗ったゾフィーが地球にやって来たのは、今更このサイトを見るような方には語るまでもないことであるのだが、このとき倒れ伏したウルトラマンの前にその雄姿を現したゾフィーウルトラマン、私は宇宙警備隊員ゾフィーと名乗っている。そう、この時はまだ隊長ではないのである。
 そして、それを証明するかのように、ウルトラマンは彼のことを「ゾフィー」と呼び捨てにし、タメ口をきいているのである
 勿論これは『帰ってきたウルトラマン』最終回にて「ウルトラ兄弟」という単語が生まれて以降は考えられないことで、一貫して「ゾフィー兄さん」と呼ばれている(人間体時・変身時問わず)。

 まあ、それでも最初はハヤタ(黒部進)との分離を厭うていたウルトラマンゾフィーの提案に同意し、彼がベータカプセルと似た器具をかざすや、忽ちハヤタウルトラマンの分離は為されたのだから、この時点でゾフィーは宇宙警備隊内においてそれなりの立場は保持していたと思われる。
 そして、この時のウルトラマン救命を手柄として、程無くゾフィー宇宙警備隊隊長に就任している。となると、就任前既に上腕部に装着されていたウルトラブレスターは何だったんだろう?先走り僭称か?(笑)
 ちなみに大隊長はウルトラの父が務めている。


1−2.隊長としての行動
 正直な所、ゾフィーには、呼称的にも、行動的にも隊長としてよりも長兄としての色合いの方が強い。そこで敢えて、隊長であることを主眼に置いた視点で、彼の言動や背景に注目して見たい。

『帰ってきたウルトラマン』最終回にて、名前のみ登場したゾフィーだったが、触角宇宙人バット星人がバット星連合艦隊を動員して攻め滅ぼす対象として、その筆頭にゾフィーの名を挙げている。勿論直後にウルトラマンウルトラセブンの名を挙げて、「裏切り者のウルトラ兄弟」と称しているので、長兄としての位置づけの方が強いのだが、標的の筆頭として挙げていることから、連合艦隊にとっての敵の総大将である宇宙警備隊長としてのゾフィーに触れている、と見られなくもない。

 『ウルトラマンA』の第1話ではウルトラマンA北斗星司(高峰圭二)と南夕子(星光子)にウルトラリングを授けるのを見届けるため、ウルトラマンセブン帰ってきたウルトラマンを率いて地球の近くまでやってきたが、これは長兄として、同時に宇宙警備隊隊長としてAの地球デビュー(?)を見届けに来たと云える。
 第5話、第13話、第14話ではAに呼び出されて(または騙されて)地球またはゴルゴダ星にやって来ているが、これまた長兄として弟を助けに来たとも、隊長として隊員を助けに来た、とも取れる。
 第23話、第26話、第27話もほぼ同じケースで、Aに合力したが、純粋に戦う目的による来星なので、これまた長兄としてとも、隊長としてともとれる。
 第35話では少年の言葉を信じなかった北斗星司Aを叱責し、ドリームギラスに苦戦するA救出のためにやって来るが、Aを叱りつつも、救出する点などはまさに長兄であり、隊長である。

 『ウルトラマンタロウ』においては、第1話でアストロモンスとの戦いで瀕死の重傷を負った東光太郎(篠田三郎)をウルトラマンタロウとして復活させる為に兄弟達とともに、第18話では火山怪鳥バードンに敗れたタロウ救命とバードン迎撃の為に地球を訪れているが、これまた長兄色であり、隊長色である。
 第25話では前話で暗黒に閉ざされた地球を救う為、ウルトラベル入手の為にウルトラタワーを前にしてウルトラの国の歴史を語る姿は隊長然としたものであった。

 第33話・第34話では、最初こそタロウの招きに応じて地球にやってきたが、極悪宇宙人テンペラー星人の動向を警戒し、他の兄弟達が地球の食事を懐かしむ間も、隊長として最も多くの時間をパトロールに裂いていた。
 殊に第33話では兄に依存するタロウの甘えを断ち、第34話ではテンペラー星人に単独で勝利したことから思い上がるタロウを戒め、それらを為しつつも地球人を守る為に兄弟達とともに大谷博士(竜崎勝)とZAT隊員に憑依し、数々の陣頭指揮を取っていた姿も隊長として印象的だった。
 第40話にも客演したが、さすがにこれは単独戦士然としたものだった。

 圧巻は『ウルトラマンレオ』での第38話・第39話に登場した時で、暗黒宇宙人ババルウ星人の姦計でウルトラの星と地球の衝突、という前代未聞の危機を解決すべく、ウルトラマン帰ってきたウルトラマンウルトラマンAを率いてアストラ(勿論正体はババルウ星人)を追って地球にやって来たゾフィーは様々な顔を見せるのだが、宇宙警備隊隊長として、ウルトラの星と地球の両方を救う使命を双肩に背負ったゾフィー率いるウルトラ兄弟はショッキングな言動を取った。
 実の兄の目をもってしても看破不能な程完璧にアストラに化けおおせたババルウ星人を庇うウルトラマンレオに、ウルトラマンが浴びせた名台詞(迷台詞?)は、
 レオ!俺達はアストラを殺す!
 というものだった。
 「倒す!」、「捕える!」ならまだ分かるが、「殺す!」に絶句したウルトラファンも多かったことだろう。これに匹敵する特撮界の迷台詞と云えば、『仮面ライダーストロンガー』最終回における仮面ライダー1号の、「マシーン大元帥!動けば仲間の命はない!」だろうか?(苦笑)

 台詞の主こそウルトラマンだったが、この過激とも云える発言をゾフィーは咎めず、余りな台詞に(偽)アストラを背後に庇いつつ、寸時の猶予を求めるレオに対して、ゾフィー以下3兄弟も首を横に振らざるを得なかった。
 しかし、考えてみれば無理もない台詞である。L77星人とはいえ、後から登場したウルトラマンキングの台詞からもレオアストラ兄弟がM78星雲でもある程度認められていたのは明白だが、ウルトラの星・地球に住む双方合わせて230億の人々の生命と故郷を思えば、アストラ一人の命とでは比べるべくもない。しかも事は一刻を争うのである。ゾフィーは地球に降り立つ前にセブンモロボシ・ダン(森次晃嗣)にレオを監視するようにウルトラサインを送っているが、「殺れ」とまでは云っていない。それでもアストラ庇護にこだわり続けたレオに対して、ゾフィーは(警告した上で)弟達に合体光線を発射させている。直後の台詞からもレオの死を願っていないのは明らかだが、一刻を争う状況下、あくまでレオアストラ討伐を邪魔するなら、その排除を躊躇する訳にはいかなかった宇宙警備隊長としての苦悩が窺える一コマであった。

 その後、約30年ゾフィーの活躍はTV画面上に見られなくなるが、『ウルトラマンメビウス』ではメビウスが宇宙警備隊入隊直後のルーキーであったことから、ウルトラの父が大隊長、ウルトラマンタロウが警備隊教官を務めていたこともあって、ゾフィーには長兄としてよりも、宇宙警備隊長としてのカラーの方が色濃くなる。
 第15話では、ウルトラマンヒカリの意識の中に現れ、光の国へ帰るように説得した。その後を語った外伝『ヒカリサーガ』SAGA2では、宇宙大怪獣ベムスターに苦戦するヒカリを援護してベムスターを倒すと、ヒカリを宇宙警備隊に勧誘した。
 自らが勧誘した思い入れと、責任もあってか、SAGA3では、地球行きを希望するヒカリに対してウルトラの父が難色を示したのを説得し、これを認めさせている。
 時系列的には、この後に劇場版に繋がり、タロウとともにエネルギーを持って地球に駆け付け、グロッキー状態のウルトラマンセブンメビウスにエネルギーを分け与えて、回復させ、Uキラーザウルス退治に尽力したが、これらはいずれも宇宙警備隊長としての行動に相応しいものだった。
 劇場版直後の第24話では、メビウスの救援に向かおうとしていたタロウを制止し、メビウスの成長を促そうとした点も見逃せない。
 そして最終回では旧友とも云えるサコミズ隊長(田中実)と再会して一体化し、最後の戦いに参戦し、メビウスと共に宇宙大皇帝エンペラ星人にとどめを刺した。最後の最後に美味しい所を掻っ攫ったもんだな、隊長よ(笑)

 劇場版『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』では隊長として、ウルトラマンベリアルと交戦し、多くのウルトラ戦士達が敗れる中(敗北知らずのウルトラマン80が初敗北を喫したのである!)、単身、ベリアルと戦い、善戦するものの惜敗し、ウルトラの星の凍結に巻き込まれてしまったが、多くのウルトラ戦士の中でゾフィーのカラータイマーのみが点滅を止めなかった。

 時に部下であるウルトラ戦士を鼓舞し、時に部下であるウルトラ戦士の成長を見守り、時にウルトラ戦士達の危機に駆け付け、時にウルトラ戦士達を率いて難敵に立ち向かい、時に部下であるウルトラ戦士達に数々の指令をウルトラサインで持って発し、時に若きウルトラ戦士を宇宙警備隊にスカウトし、時に宇宙の平和の為に非情の決断を迫られる宇宙警備隊長ゾフィー。その多くは長兄としての姿とダブるものがあるが、単に弟を愛する兄貴分に徹してしまったなら発すること出来なかった言動にも注目したいし、それを失念してはゾフィーの偉大さは半減するだろう。


1−3.隊長としての権威
 宇宙警備隊、は3万年前にエンペラ星人率いる怪獣軍団がM78星雲を襲撃した際に、ウルトラの父を始めとする多くのウルトラ族の戦士達が立ち向かい、長い戦いの果てにこれに勝利した際に、宇宙の平和を守るためにウルトラの父を初代隊長として、ウルトラ戦士達が集結して結成されたものである。
 初代隊長だったウルトラの父は大隊長となって、現隊長の地位をゾフィーに譲っている。
 その隊員数は100万人に及び、その内、太陽系や地球の防衛を担当していた歴代隊員を特に「ウルトラ兄弟」と呼ばれている訳だが、その数はウルトラマン80ヒカリメビウスを加えても僅か9名で、隊長としては兄弟に属さない部下の方が遥かに多く、ウルトラマンキングの許可によって隊に参加しているM78星雲以外の星出身の戦士も1万人率いている。

 180億の人口の内の100万の警備隊は、地球の人口60億に置き換えれば、33万人に匹敵し、兵隊数では世界一のアメリカ軍や北朝鮮軍の隊員数が100万であることを考えれば、宇宙警備隊長としてのゾフィーの立場・権威は一国の将軍や大元帥に匹敵する。
 そしてここまでの立場は国家で云えば血縁よりも、軍事上の立場の方が優先される。Aタロウは長兄としてのゾフィーに対する甘えから反論することはあっても、隊長として出された命令には完全服従をせざるを得なかった。
 殊に、結果として地球やウルトラの国を救う為とは云え、ゾフィーが命令を下すや、ウルトラマン・帰って来たウルトラマン・ウルトラマンAは躊躇なくレオに合体光線を放ち、タロウは暗黒に閉ざされた地球を置いて帰還したり、メビウス救援を中止したりしているし、ウルトラマンヒカリに対する待遇でも前隊長にして大隊長たるウルトラの父もその言を重んじた。

 これは決して長兄という立場だけは持ち得ないものである。宇宙警備隊の活躍も地球人である視聴者の目に映るのも、多くは太陽系内で、銀河系内における活動において、隊長たるゾフィーが放つ指令や命令や言動には更に重く、大きなものがあることは想像に難くないだろう。



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令和三(2021)年六月一一日 最終更新