第1頁 高木裕介……旧友に説く理想社会

勧誘者File.1
勧誘者高木裕介(演:三井恒)
交渉『仮面ライダーV3』第41話
勧誘対象風見志郎
勧誘材料友情・理想論


背景 デストロンの一員で、ヨロイ一族の一番手・ガルマジロンは、デストロン最大の敵・風見志郎(宮内洋)の親友・高木裕介(三井恒)が改造された者だった。
『仮面ライダーV3』第41話は、前話でツバサ大僧正(富士乃幸夫)と彼の率いるツバサ一族が斃れ、ヨロイ元帥(中村文弥)率いるヨロイ一族による攻勢の始まった重要転換点となった話だった。
一族を率いるヨロイ元帥は「最も比況で、最も残忍な幹部」(結城丈二・談)で、「結果がすべて」が信条だった(←自分はそれに忠実じゃなかったが(笑))。そんなヨロイ元帥にとって仮面ライダーV3・風見志郎は単純に抹殺対象でしかなかった。また、同作全52話を通じてデストロン風見を仲間にしようとしたことはなく、殊にデストロン首領に至っては「用済み」と見做した者は幹部候補生(例:結城丈二)でも消す予定でいたので、風見へに対するデストロンへの勧誘は完全に高木の一存だった。


勧誘交渉 高木裕介及び、彼と風見志郎との絡みに関しては過去作『悲しきヒーローの旧友』で詳細に記しているので、本作では簡単に触れたいが、高木は最初、正体を隠して風見に接触した。

 デストロンから逃げてきた奴隷の老人とその家族を守らんとして病院に張り込む風見の元に、「立花さんに聞いた。」と偽ってやってきた高木は共闘を申し出、狂言襲撃で巧みに風見をアジトに誘い込み、旧友の正体がデストロン怪人と知って愕然とする彼を落とし穴に落とすことで囚われの身とすると、自分と共にデストロンに身を投じることを説いた。

 旧友の裏切りに憮然とする風見だったが、高木風見の命を助ける為に取った行為と釈明。旧友に対し、デストロンが科学の力で理想社会を築こうとしている組織であり、その理想に向かって行動を共にして欲しい、と説いた。
 思うに、高木はオ●ム真■教に洗脳されて毒ガス事件に手を染めた信者の如く、デストロンに洗脳されていたものの、脳改造は受けていなかったと思われる。脳改造を施すという事は組織への絶対服従を強いることで、改造された脳には命令に従う以外の思考は全く不要なものである。
 だが、高木風見への勧誘・説得は、完全な彼の独断専行で、これは意思なき者の行為では決してなかった。実際、勧誘がヨロイ元帥に筒抜けだったことを知った高木は周章狼狽し、必死に自分はデストロンを裏切っていないと連呼していた(←嘘ではない)。
 すべては高木風見に抱く、変わらない友情への想いからだった。

 事の是非はどうあれ、交渉時の高木は一切嘘・偽りを口にしていなかった。
 風見デストロンと戦い続ければ、いつかはデストロンが滅びるか(←実際そうなった)、風見が命を落としていたであろうことは想像に難くない。「お前の命を助けるため。」との言は全くの本心だった。
 同時に、悲しい話だが、高木デストロンを本気で信じていた。彼が風見デストロンの間にあったことをどれぐらい知っていたかは不明だが、組織が「最大の敵」と見做す風見のことをある程度は知っていた筈だし、変わらぬ友情を抱いていた以上、関心ない筈がなかった。
 となると、普通に考えるなら風見が勧誘に応じる筈がない。何せ、「両親と妹の仇への仲間入りをしろ。」と訴えているのだから。だがそれでも必死に風見を説得しようとしていたのだから、高木の心にはデストロンへの理想と風見への友情の双方が矛盾なく併存していたのだろう。


拒絶とその後 当然の様に風見志郎高木裕介の勧誘を拒絶した。勧誘に対する風見の回答は、「お前の変らぬ友情は嬉しいよ。だが、お前のデストロンに対する考えは間違っている!」というものだった。

 この時の風見の物云いは時々声を荒げたことを除けば、終始冷淡だったが、それでも高木に対して頭ごなしの否定をしてなかった(デストロンのことは頭ごなしに否定していたが)。
 友情に対して「嬉しい」としつつも、デストロンの世界征服によって裕福になれるのは一部の幹部だけで、後は奴隷とされる、として高木を逆説得した風見は、高木からの勧誘を一蹴した訳だが、それでも風見の辿ってきた経歴を鑑みれば、まだ高木に対して丁寧に答えている方だと見えた。
 恐らく、風見デストロンに身を投じた旧友を悲しみつつも、友情自体は感じ続けていたのだろう。でなければ、旧友と云えども「仇である組織の一員」として即座に討伐対象としてもおかしくなかった。

 結局、デストロン入りを拒絶する風見に尚も説得を試みんとした高木だったが、そこにヨロイ元帥の横槍が入った。ひたすら「裏切者は?」と迫り、自分はデストロンを裏切っていないとする高木の言に一切耳を貸さず、同じセリフの連呼出掛けられる圧力に屈した高木はガルマジロンとなり、V3と戦って敗れたのだった。
 敗れて尚、今際の際に「俺は……俺は……。」と呟く高木に、あたかも「分かっている、何も云うな。」という風に頷くV3の姿と、亡骸を抱いて立ち去る姿には、善悪に別れたことで行動を共に出来なくなっても消え失せない友情があることが物語られていたのだが、それだけに余りにも悲しい結末であった。


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令和八(2026)年四月三〇日 最終更新