第2頁 デストロン首領……和睦への仲介

勧誘者File.2
勧誘者デストロン首領(声:納谷悟朗)
交渉『仮面ライダーV3』第47話
勧誘対象結城丈二
勧誘材料かつての恩義・組織への未練


背景 後に仮面ライダー4号・ライダーマンとなる結城丈二(山口暁)はデストロン科学者グループのリーダーで、グループ内の人望も厚く、その才能と人望を自分への生涯となると見做したヨロイ元帥(中村文弥)によって裏切者の濡れ衣を着せられ、第43話にて処刑されそうになった。
 だが、すんでのところで彼を敬愛する助手達の助けを受けて九死に一生を得たが、その直前に硫酸のプールに落とされたことで右腕を失っていた………。

 瀕死の結城は助手達にかねてより開発していたアタッチメントを失われた右腕代わりに移植する改造手術を施すよう懇願。かくしてライダーマンが誕生したが、その過程で助手達はヨロイ元帥の放った刺客・カマクビガメによって殺されてしまった。

 濡れ衣で自分を殺そうとし、それが為に右腕と助手達を失った結城はヨロイ元帥への復讐に燃え、自らを「復讐の鬼・ライダーマン」と称し、即座に報復行動に出んとした。
 だが、哀しいかな、右腕だけ改造されたものの、他の体は強化服をまとっただけの生身では堅牢な体躯を誇るヨロイ一族に抗し得ず、カマクビガメにも、サイタンクにも叶わなかった(まあ、サイタンクはデストロン最強と云っていい剛の者ではあったが)。
 その過程でなし崩し的に仮面ライダーV3と共闘し、結局はカマクビガメも、サイタンクのV3が倒した訳だが、結城はヨロイ元帥への復讐の念を滾らせつつも、デストロンとは決別しかねていた。

 というのも、結城は当初デストロンを悪の組織と思っていなかった。前頁の高木裕介同様、或いはそれ以上に科学の力で地上の楽園・理想社会を築こうとしている立派な組織と本気で思っていた。
 作中で直接語られた話ではないが、数々の関連書籍で有名な様に、母子家庭に育ち、苦学した結城は京都大学に進学したが、それを援助していたのがデストロン首領とされている。それ故か、『新仮面ライダーSPIRITS』結城デストロン首領と同一人物(?)と目したバダン総統を「父」とも呼んだ。

 単に経済的援助を受けただけではなく、デストロン首領結城にとって心の支えでもあった。詳細は不詳だが、結城は大学時代の展開した学説が周囲から一笑に付され、精神的に相当な衝撃を受けた(第48話のラストでは「死にたいとさえ思っていた。」と述べていた)。
 そんな結城にとって「理想の社会を目指す」と述べて彼を誘ったデストロンは、(結果的に偽りであったとは云え)正に理想郷だった。それ故、ヨロイ元帥に対して恨み骨髄に達しても、風見志郎からの共闘要請も当初は拒絶し、デストロンを悪く云う風見に対して「デストロンの悪口を云うな!」と叫びながら突っかかりもした。

 ただ、結城自身は心優しい性格で、自らも育ちもあってか弱い者の危機を見過ごせない人物でもあり、第45話・第46話ではそこをヨロイ元帥に付け込まれ、仮面ライダーV3とも一戦を交えたが、第46話でV3がデストロンに捕らえられていた子供達を助けたことを知り、彼と共闘して強敵サイタンクを倒したことで一応の和解が為され、第47話序盤でその姿は少年仮面ライダー隊本部にあった。

 その少年ライダー隊本部に届けられた大量の年賀状の中に、ヨロイ元帥から結城に当てられたものがあり、今年こそ裏切り者を抹殺するとする文面を載せたその年賀状には差出人の住所が記載されていた。
 勿論住所記載は罠で、現地ではヨロイ元帥と、結城丈二そっくりの姿に擬態する能力を持ったシーラカンスキッドが待ち受けていた。偽結城の存在意義はその姿を利してV3を倒し、東京都民1000万人皆殺しを達成し、すべての罪を本物の結城に擦り付けることに在った。
 それ故、風見と結城を分断する必要があり、ヨロイ元帥は二人が別行動を取ったタイミングを見計らって待機して潜入しない結城に対して「裏切者で腰抜け」と挑発。これに載ってしまった結城はライダーマンに変身してヨロイ元帥の元に向かったが、罠に掛かって頭上から降ってきた変なロープの塊によって雁字搦めに拘束されてしまった。

 これによってライダーマンの運命は風前の灯火となったが、偽結城を利用した作戦を控えていたヨロイ元帥は彼を殺さず、シーラカンスキッド共に風見志郎抹殺に挑んでアジトを後にした。
 そして一人監禁状態にあったライダーマン・結城丈二に声を掛ける者があった。誰あろう、デストロン首領だった。


勧誘交渉 「勧誘」と云うよりは、「出戻り説得」に近い。
 デストロン首領はライダーマン・結城丈二に対して、ヨロイ元帥と和解し、デストロンに戻る様に促した。そしてその仲介を自分が務めると申し出た。

 囚われの身であった結城はこの時ライダーマンの姿でマスクを被っていたのでその表情はうかがい知れなかったが、単純に「結城丈二を説得する」という一点だけを考察するなら、デストロン首領がその任を担うのは正解だろう。
 ただ、タイミングは戴けない。本気で結城をデストロンに戻したいと思って説得するのなら、せめて第45話〜第46話の、人質を取られた為とは云えデストロンに協力しているさなかの、まだヨロイ元帥は憎んでもデストロンへの理想を失くしていないタイミングで説得するべきだっただろう。
 しかしながら、仲直りを提案したのは上手い迫り方だったとは思う。結城は風見に対して、「ヨロイ元帥は悪い奴だが、仲間だと思っていた。」と述べており、個人的な好き嫌いよりは、同じ組織の一員としての仲間意識を重んじる性格でもあった。
 もう少し時間があれば、「ヨロイ元帥とは別部署にする」という提案も出来たかもしれない。


拒絶とその後 デストロン首領による、結城丈二への出戻りを促す勧誘は結果から云えば失敗に終わった。だが、厳密には結城はこの勧誘を拒絶していない。
 勿論応諾もしておらず、正確には回答しない内に、ヨロイ元帥とシーラカンスキッドの目論見が風見によって暴かれ、結城が囚われの身を脱したことで話が流れたのだった。

 デストロン首領結城に説得を試みたのは僅かな時間でしかなかったので、コメントし辛い所はあるのだが、作品として結城がその後もデストロン首領に対して想う所が強かったことからも、ストーリー中にデストロン首領結城にデストロンへの帰還を促した一コマがあったのは作品へのいいスパイスになっていたとシルバータイタンは見ている。

 偽結城の正体が暴かれ、V3とライダーマンの手によってシーラカンスキッドが倒されると二人はデストロン首領の姿を求めて第48話に突入した。そしてその終盤、仮面を被ったデストロン首領と邂逅した二人だったが、ライダーマンはあろうことか、デストロン首領をV3のV3必殺キックから庇ったのだった。
 その話の終盤で結城は風見に対して邪魔したことを詫び、それでもデストロン首領を「恩人」、「あの人に育てられた。」として、恩義が捨て切れなかったことを正直に吐露した。これに対して風見は結城を「良い奴。今時珍しい。」としつつも、二度と同じようなことをしないことを要請し、改めて共闘を誓い合った。
結局、結城丈二デストロン首領を完全な悪として認識したのは第51話だった。アジトに潜入し、プルトンロケット発射まで秒読み段階にてヨロイ元帥との会話でデストロン首領結城のことを、「利用するだけ利用されて消される運命にあったとも知らず、V3から私を庇ったりした。」と言及し、結城の必死の想いに対して、「あいつの馬鹿さ加減には笑いが止まらん。」としていた。それも、結城が立ち聞きしているのを知った上での発言である。
 当然その台詞に愕然とする結城だったが、それでもデストロン首領への想いは完全なゼロではなかった。室内に入ると「人類を滅ぼすつもりか?」、「それでも人間か?」と詰問した。恐らくは僅かな可能性でも翻意を期待したのだろう。
 だが、デストロン首領結城への言葉以上に悪辣な人物だった。「人類を滅ぼすつもりか?」と問えば、「人類など虫けらほどの価値もない。」と一蹴し、「それでも人間か?」と問われれば、「誰が私を人間だと云った?」と返す始末だった。

 結果的に結城丈二デストロン首領の勧誘に応じることはなかったし、その本音を早くに気付いていればその時点で結城デストロン首領に対する想いは雲散霧消していたことだろう。それが最後の最後まで引き摺られたのだから、恩義とは人間の想いにおいていかに重要なものであるか、そしてその悪用が如何に悪辣なものであるかが両者の関係に伺える次第である。




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令和八(2026)年四月三〇日 最終更新