第10頁 ジャーク将軍……好餌と孤独

勧誘者File.10
勧誘者ジャーク将軍(演:高橋利道、声:加藤精三)
交渉『仮面ライダーBLACK RX』第1話
勧誘対象南光太郎
勧誘材料能力アップ


背景 滅びの時を迎えつつある怪魔界の専制君主国家・クライシス帝国は双子の星にして、(間接的に)滅びの元凶となった地球を入植の地と定めた。勿論原住民である地球人の意など介さない侵略の果てに、である。
 クライシス皇帝(声:納谷悟朗)から地球攻略兵団の総指揮を命じられたジャーク将軍(演:高橋利道、声:加藤精三)が最大の敵と見たのが勿論仮面ライダーBLACK・南光太郎だった。

 最大の敵は、味方となれば極めて頼もしい戦力となる。それゆえジャーク将軍は仲間に引き入れられるなら引き入れる、駄目なら排除すると云う目的で光太郎を捕えたのだった。


勧誘交渉 シーンだけで見れば南光太郎は情けないほどあっさり捕まった。まあ、第1話の段階で、クライシス帝国の力はおろか、その存在さえ知らなかった光太郎がなんでも引き寄せる3本の角状の柱が持つ罠に引っ掛かったのも無理なかったと云える。

 マリバロン(高畑淳子)の説明によると彼女達は仮面ライダーBLACKの能力を調査済みで、罠には仕込まれた怪光線(後には耐性を身に付けたのだが)の前に光太郎が抵抗出来ないのは無理ないとのことだった。更に光太郎は仮面ライダーBLACKへの変身機能を破壊されており、無力化された状態で四大幹部に包囲された状態でジャーク将軍との会談に臨まされた。

 まあ、本作の主旨上、「会談」と記したが、要は「降伏勧告」であり、「服従強要」で、簡単に云えば、「従わねば殺す!」だった。
 ジャーク将軍登場を前に、マリバロンは「跪かぬか!」と極めて高圧的に出ており、端から「拒否はない。」と云いた気であった。そんな中、ジャーク将軍本人は居丈高に振舞わず、まずはクライシス帝国の在り様を説いた。曰く、このままでは地球は遠からず滅亡するが、自分達ならそこに理想の王国を築く事が出来るとして、まずは自分達が新たな支配者となることを光太郎に宣告した。
 そこに付け加えて、マリバロンは帝国への臣従を受け入れるなら仮面ライダーBLACKに対して今までの2倍のパワーを授けるという好餌をチラつかせた。更にガテゾーン(演:北村隆幸、声:高橋利道)は「どうせアンタは改造人間」として、人間に義理立てする必要はない、と投げ掛けた。

 ジャーク将軍達にとって身も蓋もない云い方になるが、彼等の光太郎への服従強要は端から実現不可能な話だった。ただ、話の持って行き方は悪くなかった。総司令官であるジャーク将軍はどっしりと構え、抵抗不能状態で、要所要所は側近に放させるのは硬軟両面としては理想的である。
 状況を考えれば、光太郎が余程の馬鹿じゃない限り絶体絶命の危機にあったのは自明だった。光太郎が少しでも保身に走る男であれば、強要が通った可能性は充分にあった。勿論個人として臆病者でも、被征服民として生きていくぐらいなら死を選ぶ者もいよう。それを考えると、ガテゾーンの、光太郎が改造人間であることをキーワードに人間に味方する事が不要ではないか?と仄めかしていたのも上手い話の持って行き方だった。まあ、「体が改造人間でも心は人間」であることを失念していたのでは無意味だったが(苦笑)。

 ともあれ、「応諾すれば助命とパワーアップ、拒否すれば死」となると、エゴイストや臆病者が相手なら定石と云える勧誘だった。


拒絶とその後 既に答えは書いているに等しいし、本作が制作されている時点で、「悪への勧誘」はすべて拒絶されるべくして拒絶された者ばかりである(苦笑)。
 勿論南光太郎は、好餌も脅しも関係なくジャーク将軍の勧誘を拒絶。光太郎はクライシス帝国に与しないものとして処刑の名の下に大気圏外に放擲された訳だが、そのことがキングストーンに太陽エネルギーを与える事となり、仮面ライダーBLACKは仮面ライダーBLACKRXに生まれ変わった。
 直後となる第2話でのRXとスカル魔達の対戦をモニタリングしたマリバロンは、RXが単純計算で以前の3倍ものパワーアップを遂げていることに驚愕。彼女にしてみれば、結果的に自分がちらつかせた好餌以上の恩恵を与えてしまったことに臍を噛んだことだろう。

 最後に光太郎ジャーク将軍の勧誘を拒絶した要因として「孤独」というキーワードに触れておきたい。前作『仮面ライダーBLACK』に比して、光太郎がかなり明るいキャラクターになったことに「別人みたい。」という特撮ファンまでいるが、光太郎の本質は何も変わっていない。明るくなったのはヘリコプターパイロットとしての新たな生き甲斐ある人生と、それに関連した新たな仲間を得たことに他ならない。
 そんな光太郎が徹底して嫌ったのは、「一人ぼっちに戻る」ということだった。第2話で自らの体に起きた変化に戸惑う光太郎にキングストーンが答えたのだが、その際にキングストーンは光太郎に、RXとしての能力を誇示すれば最初は賞賛されてもやがて孤独に陥ると警告し、それに対して光太郎はかなり狼狽して、「嫌だあ!」と叫んでいた。
 また、中盤で弟分となった霞のジョー(小山力也)に対して、「いつまでも友達でいてくれ。」と云い、その話の中でジョーと仲違いしかけたときには、過去に秋月信彦・紀田克美・秋月杏子と云った仲間達を失ったことをかなりのトラウマとしてフラッシュバックさせていた。
 そんな光太郎にとって、例え自身が人間でなくても、人間としての生活と交流を持ち、人間でなくなったからこそそれを人何倍も重んじる光太郎に対して、「人間を裏切って、クライシス帝国に付け!」というのは、光太郎の正義感を抜きにしても初めから通らない話だった。
 逆を云えば、光太郎が完全な孤独に苦しんでいる時点(例:ゴルゴムを滅ぼした直後)に自分達が新たな仲間として、改造人間としての日々に新たな生き甲斐を感じさせる提案をすれば…………光太郎が仲間入りした可能性は一厘ぐらいはあたかも知れない………うん、番組が成り立たなくなるから、やっぱりないな(苦笑)。


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令和八(2026)年七月八日 最終更新