第3頁 GOD総司令……マッド・サイエンティストへの道
勧誘者File.3
勧誘者 GOD総司令(声:阪侑) 交渉 『仮面ライダーX』第1話 勧誘対象 神啓太郎 勧誘材料 脅迫・研究援助
背景 『仮面ライダーX』の敵役である悪の組織・GOD(=Government of Darkness)は当初、日本壊滅を目論む東西両大国の首脳が密かに手を結んだ組織とされていた。
まあ、この設定を真面目に踏襲し、その正体を暴けばアメリカ合衆国大統領とソビエト社会主義共和国連邦の書記長を悪者にしなければならないので(苦笑)、この設定は有耶無耶にされ、後々にはショッカーに始まる悪の組織を代々裏で糸引いて来た宇宙怪人が組織したものの一つにされたが、それこそショッカーに始まる悪の組織同様、優秀な人材を強引に我が組織に引き込んだ。
ただ、過去作『X-Worldは博士がいっぱい』で詳細に触れたが、GODの人材勧誘には様々なケースがあり、個々人に対して接し方も、待遇も異なる(家族の元に帰ることを許されなかった者もいれば、何食わぬ顔で市井に生活することを許された者もいる)。
ともあれ、GODが目を付けた科学者の一人に城北大学教授・神啓太郎(田崎潤)がいた。主人公・神敬介(速水亮)に父親で、海洋科学と人間工学の権威で、独力で深海開発用改造人間=カイゾーグを開発していたのだから、能力的にはGODには喉から手が出るほど欲しい人材だった事だろう。
勧誘交渉 恐らく、GOD総司令は当初、神啓太郎を純粋なGODの一員として仲間に引き入れようと考えていたと推察される。
というのも、啓太郎はその発想や論が先鋭的過ぎて、大学内でも学界内でも浮いた存在で、中には彼をキチ(ピー!)呼ばわりする者も少なくなかった。高い英知・才能を抱えながらそれが世に受け入れられない人間は悪の組織にとって格好の人材である。
現実の世界においても、大いなる才能・知識・学歴を持ちながら世の人々に理解されず、自らの能力や理想を開花出来ずに身悶えする若者の苦悩に付け込み、利用した宗教団体が甚大なテロを起こした実例は30年以上を経て記憶の色褪せない話である。
結果的に仲間入りを拒絶した啓太郎を襲撃したGODは彼から数多くの資料を強奪しており、啓太郎はそのことで「GODは益々強大になる」としていたことから、知識だけでもこれだけ重宝した人材の忠誠は是非とも欲しかっただろう。
だが、心からの忠誠を得るのは簡単ではない。GOD総司令自身、アポロガイスト(打田康比古)以外の組織構成員に対してどれだけ心から信頼していたか疑わしい。実際、完全な信頼を得れると期待出来ないから、水城涼子(美山尚子)を初めとする人員に(決して裏切るこの無いよう、爆薬を埋め込む)改造手術を施していた。
特に脳改造を施せば組織を絶対に裏切ることのない人材にすることはショッカー時代から既に可能だった。だが、脳改造を施すと云う事は自我を奪うと云うことで、恐らくそれを行えば、人間の能力を大きく減退させるのだろう。
完全服従をもたらす代わりに頭の中身もネコ並みにしてしまうキャッティウスの猫人間ヴィールスが好例と云えようか(笑)。
ともあれ、GOD総司令が次善の策に出たと見られるのが、啓太郎の一人息子・神敬介の誘拐である。恐らく敬介の身柄を確保し、その命をたてに啓太郎にGODへの服従を強いようとしたのだろう。
似た例としては南原宗一郎博士(伊藤久哉)に対する待遇が挙げられる。究極の破壊兵器である極分子復元装置、所謂、RS装置を開発させるには南原博士の優れた叡智をもってしても時間の掛かる話だった。それ故GODは博士の娘・リエ(名川忍)の身柄をたてに脅迫して服従を強いた。
表向き、博士は研究の為に海外に長期旅行に出掛けていることとし、リエには何食わぬ顔をして学校に通わせていた。だが、リエには常にGODの監視の目が光り、リエが裏切れば博士が、博士が裏切ればリエが殺されるとの懸念が両者に屈辱の日々を送らせた。
仮に敬介の身柄がGODに押さえられたとして啓太郎が服従したかは不明である。硬骨漢である啓太郎が心底服従する事だけは無いと断言出来るが、息子に対する半端ない愛情を持つ啓太郎故にGODに対する抵抗は弱まるだろう。「脅迫」には屈せずとも、「取引」に応じるかどうかは何とも云えない。
拒絶とその後 神啓太郎とGODとの直接的な接触は作中にて描かれなかった。ただ、『仮面ライダーX』第1話冒頭にて戦闘工作員達が東京に帰郷したばかりの神敬介を誘拐しようとしたことから、まずは言葉や文面による要請・脅迫・勧誘を啓太郎は断固として拒否絶済みだったと思われる。
東京に着いた直後の敬介は「半年ぶりの東京かぁ。」と云っていたが、放映日に忠実に時系列を追うなら、敬介が沖縄の水産大学に戻る為に前に東京を離れた頃と云えば、『仮面ライダーV3』でデスロトンの第一次攻勢が終わり、結託部族による日本侵略に移行した頃で、シルバータイタンの私見による推測になるが、この頃、デストロン首領は小規模な結託部族による世界征服の成功を過度に期待せず、GODの編成を始めていたのではないか?と思っている。
第1話で敬介は父が秘密基地に等しい洞窟状の隠れ家を持ち、拳銃まで所持していたのを驚いていたので、前回沖縄に戻った頃にはこれらの装備は無かったと思われる(あったとすれば水城涼子(美山尚子)辺りが報せいていたと思われる)。
恐らくGODはデストロンがまだ健在な内に新組織として編成され、神啓太郎に対しても白羽の矢を立てたが、早々に断られ、一方の啓太郎もGODの報復や悪手の強行を警戒し、拳銃、秘密研究所、防弾チョッキ、カイゾーグ、JINステーションと云った装備・設備を整えたのだろう。
いくら啓太郎が鬼才でも、これらの設備を僅かな期間で整えられるとは思えない。もっとも、啓太郎には本郷猛の恩師・緑川弘(野々村潔)と面識があったとの設定がある(それ故に「仮面ライダー」の名を知っていた)ので、『仮面ライダー』以前から悪の組織による高名な科学者の拉致、協力強要をある程度知り、もっともっと前から警戒していてもおかしくないとも考えられる。
ともあれ、啓太郎は第1話開始以前にGODの勧誘を拒絶し、敬介を誘拐する事で啓太郎を脅そうとしたのは想像に難くないが、シルバータイタンが想像するに、この時点で神父子を味方とすることに余り過度な期待はしていなかったと思う。
敬介を拐かしに来た戦闘工作員は抵抗する敬介に対してあっさり発砲している。人質にすることが目的なら、抵抗を封じる為に拳銃を取り出したとしても滅多に発砲はしないし、しても上空に向けての威嚇射撃に留めるだろう。また、海中に逃げた敬介に対して、「ネプチューンの生贄になるのだ。」としており、敬介を本気で生け捕りにしようとしていたとは思い難い。
結局、GOD総司令は作中にて一度は啓太郎に仲間入りを強要したが、次の指令ではもう殺害を命じていた。結局ネプチューンに啓太郎を、戦闘工作員に敬介を殺害させたが、計算外だったのは啓太郎の凄まじいまでの精神力で、啓太郎は瀕死の身で敬介にカイゾーグへの改造手術を施し、GOD最大の敵が生み出されることとなったのである。
ネプチューンの吐く泡は人の遺体を白骨化せしめる溶解能力があり、それを啓太郎に施していれば、仮面ライダーXが生まれることはなかった訳で、とどめを刺さない詰めの甘さが組織の命取りとなった。
啓太郎の組織服従をあっさり諦めたことや、後々の第一室長による怪人への見限りを見るに、存外GODとは執着心の弱い組織なのかもしれない。
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令和八(2026)年五月一三日 最終更新