第8頁 テラーマクロ……世にも珍しい養子縁組

勧誘者File.8
勧誘者テラーマクロ(演:汐路章)
交渉『仮面ライダースーパー1』第23話
勧誘対象 沖一也
勧誘材料養子縁組


背景 前話となる第22話にて、ドグマ王国は大幹部・メガール将軍を失った。しかもメガールがドグマ入りしても尚肌身離さず所持していたロケットにはかつての恋人の写真と共にドグマの本拠地を示した地図が収められていた。
 例え仮面ライダースーパー1・沖一也を返り討ちに出来たとしても、本拠地を捕捉されては官憲の追及を受ける恐れがある。歴代悪の組織が秘密結社として世に暗躍出来た要因は「アジトの場所が不明」に拠るところが大きかった。

 犬猿の仲だったメガール将軍の戦死を受け、自分達にスーパー1打倒命令を出すことを願い出た親衛隊だったが、帝王テラーマクロは「スーパー1に勝てる者はもはや余以外にない!」と云って、これを却下した。
 そしてここでテラーマクロは二面作戦に出た。ドグマの神・カイザーグロウの血を浴びて不死身の体となる儀式を受ける一方で、親衛隊には一也を自分のところに招待するよう命じた。
 悪の組織のアジトに招かれるなんて、罠としか思えんのだが、元々メガール将軍の形見を手掛かりに乗り込むつもりでいた一也が周囲の制止を振り切って乗り込んだのは云う迄も無かった。


勧誘交渉 場所はドグマ王国アジト内、玉座の間。玉座に座したままテラーマクロ沖一也との対談に臨んだ。
 初顔合わせとなった両者だったが、まずテラーマクロは「沖一也よ!勇敢なる獅子の子よ!よくぞここまで来た!お前の勇敢さを褒めて取らそう!」と高飛車な口調ながらも賛辞と歓迎の意を示した。恐らくはメガール将軍をも倒したことを純粋に称賛したのだろう。この辺り、有能な者を優遇する傾向の強いドグマのカラーが反映されていた。

 そして続け様に投げ掛けたのは、「余の息子になれ。」というものだった。テラーマクロの家族については不明だが、後年『新仮面ライダーSPIRITS』にて元々は赤心少林拳の一派である黒沼流の総帥・黒沼外鬼という人物だったとされており、修行僧・拳法僧としての人生を送っていたことを考えると、実子はいなかったようである。
 外鬼が如何なる経緯を経てB26暗黒星雲から来た勢力の総帥となったかは不明だが、元が人間であることを考えれば、一代で収まった帝王の座で、いつかは誰かに「譲位」する時が来たことだろう。
 となると、「美しい者・優れた者によるユートピア建設」を標榜するドグマ王国はその概念を受け継いでくれる有能者を「王子」として後継者に据える必要があり、テラーマクロはメガール将軍をも倒した沖一也に白羽の矢を立てた訳であった。
 「テラーマクロの息子」になるということが、いずれドグマの帝王となることを意味することぐらい子供でも分かる話である。テラーマクロも「余の息子になればドグマの組織がお前の物になる!」と投げ掛けていた。つまり、絶大な王権を好餌として一也を釣らんとした訳である。


拒絶とその後 いちいち言及するのも馬鹿馬鹿しいが、沖一也に対する、養子入り要請という名のドグマへの勧誘は即決で拒絶された。
 拒否の意を示す一也テラーマクロは、「お前は権力が欲しくないのか!人間の世に君臨する絶対的な権力がな!」と返した。この台詞から思うに、テラーマクロ自身は絶対的王者にある自分の立場にそれなりに満足していたのだろう。
 高貴な身分に立つと云う事は一見誇らしく、絶大な権威と権力が振るえるのは気分良く感じる面が大きいことだろう。勿論権威や権力が軽少だったり、皆無だったりすると却って辛いこともあるが、テラーマクロのそれは歴代悪の組織にあってかなり絶大だった。
 犬猿の仲である親衛隊とメガール将軍も自分の命令には忠実で、それに逆らってまでいがみ合うことはなかったし、末端の怪人達も裏切者となった一体を除いて全員が今際の際に「テラーマクロ!」と叫んで絶命した。そして、構成員達は王命に応じる度に「テラーマクロ!」と叫んだ。史実で例えれば、丸で「ハイル・ヒトラー!」である。

 恐らく、テラーマクロは「ドグマの王者」という権威と権力の有る立場を多くの者が喜ぶものと見ていたのだろう。だが、一つの価値をすべての人間が称賛する事はまずない。勿論一也も拒んだ訳だが、その際の台詞は「断る!人間を支配しようとする者は俺がこの手で打ち倒す!」というもので、不当な支配を否定し、すべての人々が自由に生きる権利を尊ぶ姿は恩師にして、育ての父であるヘンリー博士を彷彿とさせるものだった。

 当然の様に勧誘は断られたが、テラーマクロ自身はどうもこの「養子縁組」に格別執着していなかった様で、あっさりと「交渉決裂だな!可哀相だがお前はここで死なねばならない!」として「勧誘」を打ち切った。
 本気で一也を自分の息子、後継者に据えようとしていたなら、テラーマクロはカイザーグロウになる儀式を行っていなかっただろうし、もう少し交渉を粘るか、事前に谷源次郎達を人質に取るなどして、一也が少しでも断り難いシチュエーションを整えていたことだろう。
 過去作でも触れたが、テラーマクロという人物(?)、どうも過程を楽しむ傾向が強かった様である。自分に逆らう者には容赦がなかったが、失敗には概ね寛容で、国際宇宙局が開発した惑星開発用改造人間・スーパー1を確保出来ず、それどころか最大の敵・仮面ライダースーパー1になってしまったことを知った際にも、障害が大きい程、事を為すのが面白いとの旨を口にしていた。
 恐らく一也に対して、「10中8、9拒絶するだろうけれど、余の後継者という好餌に目が眩んだら面白い。」ぐらいに捉え、遊び感覚が多分にあったのではなかっただろうか?


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令和八(2026)年七月八日 最終更新