第7頁 メガール将軍……丁重に接するのはどこまで?

勧誘者メガール将軍(演:三木敏彦)
交渉『仮面ライダースーパー1』第1話、第7話、第15話
勧誘対象ヘンリー博士
勧誘材料理想論


背景 悪に限らず、組織である以上有能な人材の育成・確保は重要である。殊に歴代悪の組織にあって、ドグマ王国は「闇の王国」を名乗り、絶対君主を戴き、小規模ながら警察・裁判所と云った独自の行政機関も所有していた。
 そして「王国」であるが故に、事の善悪は別にしてドグマは理想の国家を建設せんとしていた。それは弱い者を抹殺し、美しい者・有能な者達によるユートピア建設にあった。勿論、それ以前に帝王テラーマクロ(汐路章)への絶対忠誠が必須ではあったが。

 ショッカー以来の悪の組織が優秀な者を組織の人材として召集する事は珍しい話ではなかったが、それ等の組織とドクマが一線を画しているのは、必要とした人材への「敬意」である。
 組織に協力させるのが第一目的なので、どの組織も必要とあればへりくだることはある。だが、悪の組織の多くは有能な博士達を使い捨てにしか考えていない(事が多い)。だが、ドグマは国家理念からも、有能と見た者には本気で敬意を表し、それを最も具現化していたのがメガール将軍(三木敏彦)だった。

 数いる悪の幹部の中でも好きな人物で、その経歴への同情から採り上げたことも多いメガール将軍だが、実に複雑な立場にあり、多くの役割を振られた大幹部である。
 元々は主人公・沖一也(高杉俊价)に先駆けて惑星開発用改造人間第1号になる筈だった青年科学者・奥沢正人がその正体で、詰まる所彼はB26暗黒星雲人ではなかった。
 その出自故か、テラーマクロの身辺を護衛する親衛隊とは犬猿の仲だった。恐らく余所者として信用されていなかったのだろう。「メガールに余は裏切れん。」と宣っていたテラーマクロも、結局は脳に服従カプセルを埋め込まれていたことに担保された台詞に過ぎなかった。

 役割として親衛隊がテラーマクロの側を殆ど離れず、テラーマクロもまた(第23話を例外として)アジトから外に出ないため、メガール将軍は基地内でも、基地外でも指揮を執り続けた。そして自らが組織外の出身者故か、組織外からドグマに人材を勧誘するのにも甲斐甲斐しく動いていた。

 そして自らが複雑な過去を持つ故か、人によってメガール将軍が採る勧誘方法や、勧誘姿勢は微妙に異なった。


勧誘交渉 組織外からの人材勧誘にメガール将軍がかかわったのは作中確認出来るものが三度あった。
 一回目は第1話で、国際宇宙開発局のヘンリー博士(大月ウルフ)を勧誘せんとした時のことだった。ドグマの目的はヘンリー博士自身と、国際宇宙開発局が開発した惑星開発用改造人間、コードネーム・スーパー1の獲得だった。
 勿論スーパー1は仮面ライダースーパー1のことだが、第1話の時点ではまだ彼は「仮面ライダー」ではなかった。そしてメガール将軍は明らかに研究成果としてのスーパー1以上にヘンリー博士を求めていた。

 ヘンリー博士はジンドグマ怪人ファイヤーコングによって拉致されてメガール将軍の前に連行されて来た。その際に博士の助手一人が殺害されていた。これに対してメガール将軍はファイヤーコングを殴りつけ、「丁重にお連れしろと云った筈だぞ!」と叱責し、ヘンリー博士には非礼を詫びた。
 そして敬意が上辺だけではないのを証明する様に、メガール将軍はドグマがヘンリー博士を求めている理由を説明し、ドグマへの仲間入りとスーパー1の引き渡しを要請した。
 勿論、一也の育ての親とも云える(それも目の前で助手を惨殺されている)ヘンリー博士がドグマの要請に応じることはなかったが、何とメガール将軍ヘンリー博士が基地を後にすることを黙認した。
 従来の悪の組織であれば、「拒めば生きてここから返さん!」となるところである。

 二回目は第7話で、ウェルター級で元チャンピオンだったボクサー(木村栄)がメガール将軍の勧誘を受けた。このボクサー、云うなれば「強さ至上主義者」で、暴力事件を起こしてライセンスを剥奪されてもトレーニングを欠かさない一方で、「俺は強くなりたいんだ。そのためなら何でもする!やらせてくれ!」という考えの人物で、怪紳士に化けたメガール将軍から「見事なパンチだな。」と褒められ、と云うか唆され、怪人アリギサンダーとなる改造手術を受けた。
 三回目は第15話でのことで、勧誘されたのは一也の旧友で科学者の小針正(宮川不二夫)だった。彼については過去作「悲しきヒーローの旧友」で詳しく検証したので、そちらを参照して頂けると有難い(笑)が、勧誘は小針の負けず嫌いが昂じて自分に勝る者に対して憎悪を抱く正確に付け込んだものだった。
 躊躇いを見せ、一度は拒絶した小針だったが、結局負の感情が勝り、彼はドグマ怪人ライオンサンダーとなった。


拒絶とその後 メガール将軍による、有能と見た人材のドグマ王国への勧誘は一名が拒否し、二名が応じた。
 上述した様に唯一人拒否したのはヘンリー博士である。ヘンリー博士はドグマの唱える能力至上主義に根差した選民思想に真っ向から反対し、どんな人間にも長所があり、生きる権利があるとした。
 当然の様に勧誘は拒絶された。興味深いのは、拒絶するヘンリー博士に対して、害意を見せなかったことである。従来の悪の組織であれば要請に応じない者に対して自身や家族への危害を仄めかして従属を強要することも珍しくない。
 実際、テラーマクロは自分達に従わないと見たヘンリー博士の殺害を命じたし、国際宇宙局の研究員・坂田(川島一平)を脅迫し、ファイヤーコングの人間体・猿渡剛介(石橋雅史)を基地内へ手引きをさせたりもしていた。つまり、暴力を辞すような集団ではない。今更な言及だが(苦笑)。
 まあ、「丁重にお連れしろと云った筈だぞ。」と云って、ファイヤーコングを殴りつけた手前、メガール将軍は拒絶されたぐらいで暴力を仄めかす訳にはいかなかったと云うのも有るとは思うが(笑)、ヘンリー博士と坂田とで協力要請の手段に違いがあることから、人材に対する考えは単純ではなかったかも知れない。

 またドグマにおけるテラーマクロの王権・権威は極めて強く、従わざる者を如何とするかの最終判断はテラーマクロにあっただろうし、スーパー1の身柄を抑えることを考えれば、可能な限りヘンリー博士を生かして使うことを考えたと思われる。
 最終的にヘンリー博士殺害を命じたのも、彼が決して自分達に従わないことを確信したからだろう。ただ、テラーマクロにとってスーパー1への執着が極めて強かったことから(詳細次頁)、ヘンリー博士への「求愛」もかなりのものがあったことを念頭に置いて考察する必要はあるだろう。


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令和八(2026)年七月八日 最終更新