11.コウモリ怪人………腰巾着ゆえの八面六臂
登場 『仮面ライダーBLACK』第1話、第3話、第4話、第12話、第38話、第43話、第46話、第47話 所属組織 ゴルゴム 人間体 無し 死因 回し蹴り 注目点 裏方徹底による長期登場。
概要 ライダー史上、幹部でもないのに準レギュラーの座を勝ち取った(?)初の平怪人、それがコウモリ怪人である。
第1話から、大神官(及び大怪人)の手の者として登場し、主に諜報活動に従事し、自ら戦うことは殆ど無かった。
特段、戦闘能力に優れていた様子はなく、任務上(陽動目的などで)、人間を襲うこともあったが、仮面ライダーBLACKと戦うことはまずなく、実際、陽動作戦の都合上ある母子を襲った際には、BLACKに対してホバリングを繰り返し、牽制するだけでまともに干戈を交えなかった(その攻撃意志の無さから即座にBLACKに陽動であることが見抜かれていた)。
ただ、やはり怪人らしく、目から火炎弾を発し、普通の人間相手には充分な戦闘能力を持ち、第47話ではゴルゴム少年戦士達の銃撃に対しても怯んだ様子は見せず、第49話では、用済みとなったゴルゴム親衛隊を始末に掛かった際、彼等はコウモリ怪人相手に為す術なく逃げ惑うだけだった。
また、ゴルゴム怪人の中には全く喋らない者も少なくなかったが、コウモリ怪人はその役柄、頻繁に喋っていた。まあ、喋れない奴が諜報活動に携わる訳はないが(笑)。
中盤、殆ど出て来ない期間もあり、登場した回でもほんの数分程度の出番であることが多かったが、第45話で大怪人ビシュム(好井ひとみ)、第46話で大怪人バラオム(高橋利道)が戦死すると(中枢部に人が少なくなったこともあってか)大怪人ダロム(声・飯塚昭三)の懐刀としての存在感を増し、第47話で戦死したBLACKの遺体を探したり、クジラ怪人の裏切り(←先にダロム達が裏切ったに等しかったが)を追ったりした。
第49話で、ダロムの命で用済みになったゴルゴム親衛隊(詳細後述)を襲わんとし、クジラ怪人の妨害にあって、クジラ怪人の発した粘液で行動不能に陥った。
そして大怪人ダロムと最後の勝負に臨んで対峙した仮面ライダーBLACKから、「邪魔だ!」と云わんばかりの回し蹴りを食らわされ、ぶっ飛ばされ、これが致命傷になった。
ダロムが戦死したのを見届けると、息も絶え絶えの体で空を飛んでアジトに逃げ戻ったが、シャドームーン(寺杣昌希)にダロムの戦死を報告した直後、断末魔の悲鳴を上げて絶命・炎上した。
コウモリらしさ 多くのドグマ怪人は素体となった動植物がそのまま巨大化し、二足歩行した形態で、コウモリ怪人は正にその典型だった。
そもそもゴルゴム怪人は改造人間ではなく(通常の人間で、ゴルゴムに服従・協力していたゴルゴムメンバーは怪人になりたがったり、実際にシーラカンス怪人様な人間が改造された者もいたが)、何万年単位の寿命を持つ、正に動植物が人間化した「怪人」だった。
いきおい、コウモリ怪人も人間サイズに巨大化したコウモリそのもので、彼が課せられた任務だった、偵察・探索・要人襲撃にコウモリ特有の飛行能力・超音波探知能力を遺憾なく発揮していた。登場した期間が長かったことも大きく影響していた。
飛行能力に関しては特別速かったり、攻撃に優れていたりした訳ではなかったが、少しでも形勢が不利になると即座にトンズラするのに活かされていたし、圧巻は宇宙空間に飛び出して人工衛星を襲ってまでいたことだった。
中学理科程度の知識があれば明らかだが、空気も重力もない宇宙空間では羽根を用いての羽搏きは全く意味を成さない。阿呆みたいなシーンと笑い飛ばすのは簡単だが、逆の見方をすれば、通常の人間もコウモリをも凌駕した能力を持っていることを意味していると云える。
面白いのは、コウモリ特有の超音波能力が仇となるシーンがあったことだ。
第47話で仮面ライダーBLACKがシャドームーンに敗れて命を落とすと、第48話にて日本はゴルゴムの支配下に落ち、数人の若者が命惜しさに「ゴルゴム親衛隊」を自称して、怪人達の餌となる子供達を献上せんとした(怒)。
勿論、許されざる悪行だが、「命惜しさ」は何とか理解出来ないでもない。実際、彼等は大怪人ダロムやクジラ怪人を前に虚勢を張りつつも完全な及び腰で、ダロムに命じられてクジラ怪人を捕らえることに同意した。
そのクジラ怪人は、心底優しい怪人で、親衛隊達に抵抗せずに捕まった。だが、ダロムは生き返ったBLACKを討つ為、クジラ怪人を人質とした以上はもう親衛隊に用はないとして、彼等の殺害をコウモリ怪人に命じた。
狼狽え、逃げ惑う彼等を救ったのは逆さ吊りにされていた囚われの身のクジラ怪人で、クジラ怪人は超音波(←思いっ切り聴こえていたが(笑))を発することで、コウモリ怪人の飛行能力を狂わせた。
周知の通り、コウモリは口から超音波を発し、その反響を耳で受け取ることで、獲物を捕らえたり、障害物を避けたりする訳だが、クジラ怪人の超音波を受けたコウモリ怪人は親衛隊を襲う直前で飛行が逸れたり、柱や天井にぶち当たったりしていた。
コウモリ怪人にしてみれば、自分の能力がマイナスに作用した不本意なシーンだっただろうけれど、コウモリとクジラという両者の素体となった動物が持つ能力を上手く掛け合わせて活かしたなかなか、上手いシーンだった。時間帯が昼日中だったことを除けば(苦笑)。
さすがに自分達が捕らえた筈のクジラ怪人が、身を呈したコウモリ怪人から自分達を守ってくれたことはゴルゴム親衛隊の心を動かし、大怪人ダロムが戦死するや彼等はクジラ怪人に謝罪しながらその介抱に務めた。ま、これで改心しなければ本当の屑だがな(苦笑)。
注目点 登場回数8回で、決して多い出番ではなかったが、第1話から第47話までの殆んど全編に渡って登場した最初の平怪人であったことが一番の特徴と云えよう。
また、三神官(及び三大怪人)の懐刀に徹していたところもなかなか独自性を持っていた。
コウモリ怪人は格別戦闘に強い訳ではなく、クジラ怪人の粘液にあっさり絡めとられたり、如何に怒りの一撃とはいえ、只の回し蹴りで致命傷を負ったりしたところを見ると「弱い方」とさえ云える。
殊にゴルゴムは戦闘員が存在しなかった最初の組織で、そうなるとコウモリ怪人は組織の中で下っ端だった可能性は高い。三体のコウモリ怪人が同時に登場したことも有り、もしコウモリ怪人が作中序盤で戦死したとしても、他の個体が同じ役目を継承して出続けた可能性は高い。
となると、立場や能力で組織の下部に甘んじざるを得ないと見られるコウモリ怪人は展開によっては他の強力な怪人や、もう一人の世紀王候補であった剣聖ビルゲニア(吉田淳)の命令に服するシーンがあってもおかしくなかったが、終始一貫して三神官(及び三大怪人)の手先であり続けたのは、能力を超えた存在感を作中に残したと云えよう。
これは現実の世界の仕事にも云えることで、目を見張る功績や誰もが羨む地位に立たずとも、組織内で押しも押されもせぬ立場を掴み、役割に徹し、長く務めることは充分立派であることを、悪の組織の一員でありながらコウモリ怪人は教えてくれている、というのは過言だろうか?
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特撮房へ戻る令和三(2021)年六月一〇日 最終更新