12.ズ・ゴオマ・グ………進化を重ねるも運悪過ぎ……

登場『仮面ライダークウガ』第2話〜第21話、第23話、第25話、第27話、第29話、第31話、第32話、第34話、第36話〜第39話
所属組織グロンギ
人間体男(藤王みつる)
死因ン・ダグバ・ゼバによって殺害(詳細不明)。
注目点隠れているようで隠れていないリベンジ根性
概要 警視庁をして、「未確認生命体」と呼ばしめたグロンギに属する超古代の好戦的先住民族の一人。ズ・ゴオマ・グ自身は「未確認生命体第3号」と認識されていた(ちなみに前後となる第2号は仮面ライダークウガのグローイングフォームで、第4号はクウガの基本体であるマイティフォーム)
 グロンギの中では最下層となるズ集団に属し、ズ集団のメンバーの中では最後まで登場したが、ズ集団が暗躍したのは初期のみで、軒並み仮面ライダークウガに敗れたため、ゲゲル(ゲーム)の権利を格上のメ集団に奪われた。
作品終盤になると最上層であるゴ集団がゲゲルに挑むようになり、ズ集団・メ集団の面々はラスボスであるン・ダグバ・ゼバによって皆殺しにされた。

参考:グロンギ怪人の名前構成
虫形(昆虫以外も含む) 集団名・素体生物をもじった名前・バ例:ズ・グムン・バ(蜘蛛)
海棲系集団名・素体生物をもじった名前・ギ例:メ・ビラン・ギ(ピラニア)
翼系集団名・素体生物をもじった名前・グ例:ゴ・ブロウ・グ(梟)
動物系集団名・素体生物をもじった名前・ダ例:ズ・ザイン・ダ(犀)
爬虫類系集団名・素体生物をもじった名前・レ例:メ・ガルメ・レ(カメレオン)
植物系集団名・素体生物をもじった名前・デ例:メ・ギノガ・デ(茸)

 そんな中、ズ・ゴオマ・グは第2話で初登場したが、ゲゲル開始前に殺人をやらかしたことでゲゲルから外された。その後はラ・バルバ・デに付き従ってゲゲルへの復帰を図っていたが、ズ集団の活動は第17話でズ・ザイン・ダ(野上彰)がクウガに敗れたのが最後となり、ズ・ゴオマ・グは完全にゲゲルに参加する権利を失った。
 ゲゲルへの参加権がメ集団・ゴ集団に推移する中、格下集団に属していたズ・ゴオマ・グはリーダー格のラ・バルバ・デ(七森美江)を初め、ゴ集団、メ集団からもあからさまに見下され、些細な愚痴や嫌味を口走っては殴り飛ばされることもしばしばだった。

 ゴ集団がゲゲルに参加し出すともはや雑用係と化していたが、ゲゲル復帰の野心や、自らが置かれた境遇への反発心ははっきり表情に現れており、第36話にてン・ダグバ・ゼバのベルト部品を体内に埋め込むことで強化体に変じ、それまで苦手としていた陽光を克服し、露骨に自分を見下していたゴ・ザザル・バ(朝倉ちあき)への報復を開始し、2ランク格上の彼女と互角に戦った。
 しかし、その戦いに割って入ったゴ集団最強のゴ・ガドル・バ(軍司眞人)には一太刀も浴びせられず、一方的に殴られ、ぶっ飛ばされるだけだった(反撃する気力やタフネスは持っていたが、一度もヒットしなかった)。
 そして強化中の苦痛に耐え切った結果、第38話にて究極体となってクウガをも圧倒する程の戦闘能力を示したが、途中でン・ダグバ・ゼバの気配を感じて戦線を離脱した。
 だが、五代雄介(オダギリ・ジョー)と一条刑事(葛山信吾)が後を追って見つけたとき、ズ・ゴオマ・グはン・ダグバ・ゼバによって殺害された後で、大木の枝中に横たわっていた。詳細は不明だが、発見までの経緯から秒殺または瞬殺された可能性が高い。



コウモリらしさ これを論ずるのは少々難しい。
 というのも、ズ・ゴオマ・グの存在感やアイデンティティは変身体よりも人間体の方が圧倒的に強いからである。
 藤王みつる氏演じるズ・ゴオマ・グは前述した様に早々とゲゲル参加権を喪失し、変身体を見せたのは初期と、ゴ集団やン・ダグバ・ゼバへの反逆を明らかにした終盤のみで、人間体でラ・バルバ・デに近侍し、クウガの妨害に頭を痛めるグロンギ怪人に嫌味を垂れては、ラ・バルバ・デやゴ・ザザル・バに折檻されていた役割の方がイメージとしても強い。

 とはいえ、コウモリらしさ自体は充分に持っていた。正確にはヴァンパイアらしさと云えようか?
 変身体は当然の様に飛翔・吸血を武器として民間人・警官を襲撃していたが、仮面ライダークウガや他のグロンギとの戦闘は純粋な白兵戦に終止し、噛み付きも空中攻撃も超音波の利用もなく、飛行能力が戦線離脱時に発揮される程度だった(←ゴ・ザザル・バやゴ・ガドル・バとの戦闘で一切飛ばなかったのは、ゴ集団への対抗意識の現れ、とシルバータイタンは推測している)。

 そんなズ・ゴオマ・グの特徴の一つに夜行性であり、陽光を極端に嫌うと云うものがあった。教会内でクウガと戦った際も、屋外から差し込んだ陽光を浴びて戦意喪失したり、人間体のときも黒いコートに黒いこうもり傘で陽光を避けていたが、これを「コウモリらしさ」とするのはチョット違う気がする。
 他のコウモリ型改造人間に関しても触れているが、確かにコウモリには夜行性の種が多く、陽光を避ける生態ではあるが、別に陽光にダメージを受ける訳でもなく、純粋に昼行性のコウモリだって存在する。
 それゆえ、陽光に怯んだり、普段から徹底して陽光を避ける装いをしたりしているのも、「コウモリ」よりは「ヴァンパイア」のイメージに近い、とシルバータイタンは考えるのである。
 強化体となり、陽光を克服したズ・ゴオマ・グが帽子・コート・傘を取っ払うと、その頭髪が白髪となっていのも、白髪や銀髪の多いヴァンパイアのイメージを重ねたものではなかろうか?



注目度 何と云っても、ラ・バルバ・デに次ぐ長期出演で、戦闘能力や地位の割にはストーリーへの貢献度は大きい。
 ゲゲルを外され、ラ・バルバ・デの小姓状態となり、頻繁に上位集団の者に小突かれていた様は、決して格好の良いものではなかったが、グロンギ内での立場や強さを視聴者に分かり易く見せてくれていた。

 また、長期間登場したことで、必然警察はグロンギの生態を追う為に長くズ・ゴオマ・グの動きを追うこととなり(←実際、千葉県警や茨城県警では多くの警察官がズ・ゴオマ・グに殺害された)、殺害された後に爆発せずに完全な遺体を残したことから、その遺体は司法学士・椿秀一(大塚よしたか)の手で解剖され、警察は貴重なデータを得た。

 少し話は逸れるが、人間より遥かに屈強で、拳銃も通じない未確認生命体に苦戦する警察は科警研にて研究に次ぐ研究を重ねた。
 特にメ・ギイガ・デが強烈な拒否反応を示したガスが注目され、ガス弾に派生した武装が数多く開発されたが、後々になるほど濃度を上げたにもかかわらずグロンギ怪人には通じなくなり、人間の武器によるグロンギ打倒に諦観ムードも漂っていた。
 しかし、作中明記されてはいなかったが、椿がズ・ゴオマ・グ解剖から得たデータが神経断裂弾の開発につながった(らしい)。この弾丸は、グロンギ怪人の体内に撃ち込まれるとグロンギの驚異的な回復力の源である神経組織を連鎖的に爆発させ、ダメージを与えるという性能を持ち、実際、この武器はラ・ドルド・グ、ラ・バルバ・デを死に至らしめた(バルバに関しては、神経断裂弾がその体を貫通し、本来の性能を発揮し得ない状況だったことや、海中に没したバルバの遺体が見つからなかったことから、本当にラ・バルバ・デを倒したか疑問視する声が根強い)。

 そう、ズ・ゴオマ・グの存在は警察の研究・新兵器開発・ゴ集団に匹敵する「ラ」の打倒という流れで、物凄くストーリーに貢献しているのである。これははっきり云って、「長期出演」の賜物だろう。

 最後にシルバータイタンが注目したいのは、ズ・ゴオマ・グが口には出さずとも、表情には思い切り出していた(笑)周囲への敵意である。
 心ならずもゲゲルから外され、メ集団・ゴ集団からも見下されていたズ・ゴオマ・グはコウモリ型(と云うかヴァンパイア型?)の怪人らしく歯を剥き出しにすることでその感情を露わにしていた。

 グロンギ怪人は変身体に負けず劣らず人間体の描写も盛んだったので、各々の個性への描写も盛んだった。ゴ・ガドル・バやゴ・ベミウ・ギ(伊藤聖子)の様に無表情な者、メ・ガリマ・バ(山口涼子)やゴ・ジャーザ・ギ(あらいすみれ)の様に意味ありげな微笑を浮かべる者、メ・ガルメ・レ(森雅晴)やゴ・ジャラジ・ダ(大川征義)の様に反吐が出るほど残忍な笑みを浮かべる者、とその様は人間同様様々だったが、そんな中でズ・ゴオマ・グはズ・ザイン・ダと並んで苛つきや敵意に起因した怒りの表情を露わにしていた。

 ズ・ザイン・ダの怒りの表情は純粋に「戦闘相手」と見做した仮面ライダークウガや敵対民族・リント=人類への戦意によるものだったが、ズ・ゴオマ・グのそれは虐げられた日常から来る鬱屈した想いから来るものだった。
 それゆえズ・ゴオマ・グの怒りの表情は目や歯を剥き出しにした露骨なもので、それでも余計な一言がない限りゴ集団が黙殺していたのも、ズ・ゴオマ・グの報復を歯牙にもかけていなかったからだろう(それゆえ、ズ・ゴオマ・グ強化体となって直接報復に来た際にゴ・ザザル・バは「舐めんじゃねぇ!!」と激昂していた)。

 ただ、シルバータイタン的には、この妙に正直な敵意は結構好きだったりした(笑)。


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令和三(2021)年六月一〇日 最終更新