14.バットオルフェノク………コウモリ型怪人屈指の強豪
登場 『仮面ライダー555』第43話〜第45話 所属組織 スマートブレイン 人間体 サングラスの男(大野太心) 死因 クリムゾンスマッシュ 注目点 スマートブレイン社長の切り札に相応しい豪傑振り
概要 『仮面ライダー555』における悪の組織・スマートブレインの社長・村上峡児(村井克行)の命で(表面上)警察に協力したオルフェノク。
とはいえ、スマートブレイン自体が表向きは一流企業でも裏ではオルフェノクによる世界支配を目論んでいた秘密結社で、村上は警察庁高官である南雅彦(小川敦史)への紹介に際して、バットオルフェノクを「たまたま捕獲したオルフェノク」としていたが、実際には村上直属の殺し屋だった。
村上から派遣され、南の「長田結花(加藤美佳)と木場勇治(泉政行)の捕獲を手伝わせろ。それと……沢村刑事(岩川幸司)の抹殺もな。」と云う命令を受けたバットオルフェノクは装甲車に乗って乾巧(半田健人)と木場を襲撃した。
居合わせた沢村刑事を銃撃して負傷させたバットオルフェノクは、結花を探していた巧&木場に矛先を向け、二人は仮面ライダー555とホースオルフェノク変身。
バットオルフェノクは555相手に互角以上に戦う強さを見せた。それに対してホースオルフェノクは警察に対する不信から沢村刑事を助けることを躊躇し、初めは傍観していたが、555の督戦を受けるとさすがに助勢に転じた。
第44話にて、二度目の登場時にバットオルフェノクは機動隊の襲撃を受けて狼狽える巧達を襲撃。このとき、クレインオルフェノク=結花に与えた一撃はユカの変身能力をダウンさせ、それが為に結花は戦線離脱するもそこを襲撃して来た影山冴子(和香)=ロブスターオルフェノクの前に若い命を散らした……………。
その間、555と戦い続けていたバットオルフェノクは、最強フォームであるブラスターフォームにはさすがに抗し得ず、第45話冒頭で撤収せざるを得なかった。
そして同話中盤、オルフェノクの王=アークオルフェノクと遭遇したバットオルフェノクは、少年・鈴木照夫(渡辺彼野人)の姿をしたそれの為に変身できない海藤直也(唐橋充)をボコり、ついでこれを助けんと駆け付けた三原修(原田篤)=仮面ライダーデルタをもボコった。
直後、加勢に入った555はいきなりアクセルフォームに多段変身してデルタに加勢した。最終的にクリムゾンスマッシュの前に落命したが、このときのクリムゾンスマッシュは6つもの光弾を駆使した、破壊力の強大なものだった。
コウモリらしさ 二丁の拳銃を構えるガンマン然とした攻撃スタイルが目立つため、コウモリらしさは希薄である。
少々ひねくれたものの見方をすれば、飛び道具を用いた強さがコウモリの特性を裏打ちしていると云えるかもしれない。
勿論、現実のコウモリそのものは飛び道具を用いることはない。だが、超音波を駆使して飛び回る蝙蝠は飛び道具による攻撃を躱すのが巧みである。
そんなコウモリを飛び道具で仕留めようとなると、拳銃か、(背面に回り込んで攻撃出来る)ブーメランによる攻撃が有効となり、バットオルフェノクはこの両者を自らの得物としていた。
コウモリが苦手とした人間の武器を自らの武器としているところに、バットオルフェノクにはコウモリを越えたコウモリ型怪人としての存在感をシルバータイタンは感じるのであった。
注目点 強い。とにかく強かった、バットオルフェノクは。
終盤に出て来たことを考慮に入れても複数のライダーやオルフェノクを相手にして互角以上に戦った強さは、オルフェノクの中にあっても、ライダー史におけるコウモリ型怪人全体の中にあっても屈指である。
そして前述した様にバットオルフェノクは拳銃とブーメランという飛び道具を駆使していたのだが、概して飛び道具を得意とする怪人は肉弾戦に弱いことが多いというセオリーもバットオルフェノクには当て嵌まらず、複数の敵と戦うことも少なくなかった(ホースオルフェノクの戦意が低かったのを考慮に入れる必要はあるが)。
村上の懐刀だったことを考えればある程度の強さも頷けるのだが、それまでに登場していた村上や琢磨逸郎(山崎潤)=センチビードオルフェノクや冴子(和香)=ロブスターオルフェノクの直属の部下とも思えるオルフェノク達は戦闘能力的にそれほどの脅威を感じさせるものではなかった。
だが、バットオルフェノクの戦闘能力は群を抜いており、幹部、ラスボスでと比べても遜色なく、平のオルフェノクでありながら3週も登場したのも例外的と云えよう。
そもそもオルフェノクとは、人間の進化系ともいえる知的生命体で、元々は人間だったものが様々な形(多くは他のオルフェノクに襲われたり、不慮の事故による死を遂げたり)で覚醒した者で、個々人の生前(?)の性格や、覚醒経緯から性格も能力も千差万別だった。
村上は数多くのオルフェノクを評価する際に、「上の上」、「下の下」といった云い方を頻発しており、「上の上」とされていたのが、オルフェノクのエリート・ラッキークローバーのメンバーである前述のロブスターオルフェノクやセンチピートオルフェノクだった。
数々の戦いを経た仮面ライダー555、仮面ライダーカイザ、仮面ライダーデルタ達は中盤の頃にはラッキークローバーの面々とも互角に戦うようになっていたのだが、バットオルフェノクはそんな成長を遂げたライダー達複数を相手に互角以上に渡り合っていた。
純粋戦闘能力では明らかにラッキークローバー以上だった。
別の物の見方をすれば、「下の下」という台詞で相手を見下すことを連発していた村上が価値観的にも「中の中」にも値しない者を懐刀にするとは思えないから、バットオルフェノクは最低でも「上の中」ぐらいには見られていたと推測される。
最終的にバットオルフェノクは555のアクセルフォームの前に敗れた。決着前には555が滅多に発動させなかったブラスターフォームをも駆使させていた。
平成ライダーシリーズに登場する仮面ライダーの多段変身は常識化しており、4作目である『仮面ライダー555』も同様だったが、それでもブラスターフォームの登場した回数は決して多くなく、最強フォームがここぞという場で登場して倒した相手であったことも、バットオルフェノクの圧倒的な強さへの証左とは云えないだろうか?
そんなバットオルフェノクが登場した第43話〜第45話は最終回間際で、殊に人間との敵対を好まなかったホースオルフェノク=木場勇治の心が大きく揺れ動いたり、クレインオルフェノク=長田結花(加藤美佳)の悲劇的な最期を遂げたり、と主要メンバーの重要な動きに目の離せない回が続いたので、個人としての強豪振りはストーリーの陰に隠れてしまった感がある。
逆の見方をすれば、それゆえの「隠れた強豪」と取れる。
それまでもコウモリ型改造人間の多くは(レギュラー・準レギュラー化した者も含めて)序盤に登場する者が多かった。
当然、序盤期の仮面ライダー達は戦闘に慣れておらず、未熟なケースも多かった。いわば戦慣れしていないライダー相手に然程苦戦させることなく散って行った歴代コウモリ型改造人間達は「強豪」とは縁が薄かった。そんなライダー史にあって、終盤に登場して圧倒的な強さを誇ったバットオルフェノクは様々な意味で例外的なコウモリ型改造人間だったと云えよう。
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特撮房へ戻る令和三(2021)年六月一〇日 最終更新