3. サボテンバット………最終回手前の変わり種

登場『仮面ライダー』第96話
所属組織ゲルショッカー
人間体松田善一郎博士
死因ライダーキック
注目点素体となった学者の特性が色濃い。
概要 名前の通り、サボテンとコウモリの合成改造人間である。
 その使命はゲルショッカーにとって邪魔・不要な存在を皆サボテンにしてしまう「人間総サボテン作戦」の遂行である。
その為に、素体として、長年のサボテン研究でサボテンのエキスが最も身に染みている人間が良いだろう、という基準で「サボテン博士」の異名の高い松田善一郎博士(小山源喜)が起用され、(勿論本人の合意なしに)改造された存在でもある。

 しかし、凄い人選基準だ(笑)。もし、熊の能力を発揮する為に熊にどっぷりつかった学者を拉致して改造するなら、米田一彦氏か、木村盛武氏がゲルショッカーに狙われたのだろうか?(←熊マニアにしか分からないネタでスミマセン)

 ともあれ、サボテンバットは時に松田博士の姿で、時に鉢植えのサボテンの姿で博士の友人達(平和委員会の委員でもあった)をサボテンに変え、立花藤兵衛と本郷猛もまた一時的に手をサボテンに変えられ、仮面ライダーへの変身不能という危機に陥らされた。
 ただ、戦闘能力自体は大したものではなかった。素体になった博士がかなりの高齢だったのが関係あるのかどうかは不詳だが、邂逅戦においてサボテンの棘でライダー1号を刺すことに成功し、前述の成果を挙げたものの、自らも爪をへし折られてアジトに逃げ帰る体たらくで、呆れた首領は処刑を命じた程だった。

 処刑自体はブラック将軍の取り成しで免れ、爪を強化改造されたサボテンバットだったが、戦闘力がこれと云って強化されるには至らなかった。即座に再襲撃の為に自分の研究室に乱入したが、変身していない本郷を倒せないどころか、試薬を倒したことがサボテン化を治すワクチンの生成に繋がってしまった。

 結局、ライダーキックを食らうことで勝負は決着。弱いサボテンバットだったが、それは改造人間としての素体との融合を弱いことを意味したのだろうか?倒れたサボテンバットからは元に戻った松田博士が立ち上がったのだから、本郷にしてみれば羨ましいほどラッキーな話だったことだろう。



コウモリらしさ はっきり云って、コウモリらしさは顔の見た目だけと云っても過言ではない。顔面こそキクガシラコウモリに忠実な造形で、ライダー史上数多く存在するコウモリ型改造人間の中にあって、最もコウモリらしいコウモリ型改造人間の1人なのだが、能力的にはサボテン及びサボテン学者としてのそれが殆どすべてだった。

 まず、飛行するための羽根(皮膜)が無かった。吸血行為も超音波発信もなく、ひたすら人間をサボテン化させる棘での攻撃に終止し、爪を折られた途端に逃げ出したのだから、口に生えた牙にすら出番はなかった。
 サボテンバットは、コウモリ面サボテン男と改名すべきと云えようか?(笑)



注目点 多くの改造人間は人間に移植した存在(動植物・道具・伝説上の存在)の力を発揮することに主眼が置かれているが、サボテンバットはその事を重視して尚、素体の方に重点が置かれていたという意味で稀有な存在である。

 少し真面目に話をすると、現実の世界に改造人間が生まれないのは、生体間融合が人間同士であっても困難だからである。同じ人間、特に身内であっても、他者の体を移植するには拒絶反応が難題となる。
 心臓や腎臓の移植が難しいのも、移植そのものよりその後の拒絶反応の方にある。多くは拒絶反応を抑える薬を終生飲み続けざるを得ず、拒絶反応を抑えきれなかったり、或いは抑圧剤の副作用に体が耐え切れなかったり、で術後の余命が短いケースが少なくない。
 拒絶反応の最も分かり易い例は妊婦の悪阻(つわり)で、血を分けた我が子でも、胎内にあることを良しとしない反応が出て激しい嘔吐に繋がるのである(拒絶反応にも個人差がある様に、ときには悪阻が全く起こらない妊婦もいるにはいる)。
 同種の生体間は疎か、親子間ですらそうなのだから、機械との融合はまだまだ現実の生体化学では難し過ぎるのだろう。はっきり云って、アンドロイドを作った方が早いだろう。

 話が逸れたが、融合した上で、サボテンの特性を遺憾なく発揮する為にサボテンに最も身近な人物を改造対象とした考えは(上記では茶化したが(苦笑))結構理に適っているとシルバータイタンは思う。
 逆のケースを挙げれば、生物よりもキック力を重視してプロサッカー選手を改造したトカゲロンや、対毒耐性を重視して身体頑健なレスラーを素体に選んだピラザウルスとサボテンバットは好対称と云えるのかもしれない。

 さて、注目したい点はもう一点ある。それは人間に戻った後についてである。
 前述した様に、サボテンバットはライダーキックに敗れた後、人間・松田博士に戻った。マスカーワールドにおける改造人間は原則、元の人間に戻ることは出来ず、それが為にライダー達は激しく苦悩する。
 ただ、例がない訳ではなく、イソギンジャガーも人間に戻っている。その他の例も参考に考えると、サボテンバットはネコヤモリのケースに近いと思われる。
 つまり、サボテンバットは本当に松田博士その人を改造したのではなく、正確には松田博士に憑依していたのではないだろうか?と。それゆえネコヤモリの時同様、改造人間自体は倒されたが、それによって憑依されていた人=松田博士は正気を取り戻した………そう考えると、松田博士にサボテンバットだった時の記憶がなく、「サボテンバット」の名を聞いた博士が、「そんなサボテンはありませんよ。」と大真面目に答えたことも、2週間後に再生怪人によるゲルショッカー最終大攻勢の面子にサボテンバットが含まれていたのも納得が出来るものである(←関係ないが、最終決戦でサボテンバットは最初に戦死した)。


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令和三(2021)年六月一〇日 最終更新