7.獣人吸血コウモリ………特撮界屈指の酷い処刑

登場『仮面ライダーアマゾン』第2話
所属組織ゲドン
人間体無し
死因処刑
注目点保身
概要 ゲドンが仮面ライダーアマゾンのギギの腕輪を奪うことを命じて放った第二の刺客である。様々な能力を持つが、任務は「アマゾン抹殺」、「ギギの腕輪強奪」しかなく、変身前のアマゾン(岡崎徹)を襲い、そこそこ善戦したが、岡村リツ子(松岡まり子)の友人・正子(荒巻啓子)の飼い犬に邪魔をされて撤収。
その際に、腹いせに正子の血を吸うことで、彼女を現代医学では治療不能の重病に陥れた。

 だが、目的を果たせなかったことで十面鬼ゴルゴス(声・沢りつ夫)の怒りを買い、散々痛罵された挙句に処刑されかけたが、顔の1つ(中村文弥)の取り成しで一度は助命された。
 次はない状況で再度アマゾンライダーに挑むも、基本、獣人達はアマゾンライダーの敵ではなく、アームカッターで斬られたことで戦意を喪失し、アジトに逃げ帰った。
 だが、今度こそ助命の道はなく、十面鬼より死刑を宣告・執行された。その方法は己の配下であるコウモリに食われるという、惨め且つ無惨なもので、散々苦しんだ挙句、後には血液と思しき体液しか残らない程に食い尽くされた。



コウモリらしさ 二点挙げられる。一点は夜行性で、もう一点は吸血行為である。
 ゲドン自体、首領の十面鬼ゴルゴスも、獣人も、戦闘員である赤ジューシャも、人肉を常食、人血を常飲していた組織なので、余り吸血行為が目立つ訳ではないのだが、獣人吸血コウモリの場合、吸血行為によって正子を見るもおぞましい病に罹患させたことが吸血行為を際立たせた。

 コウモリ男や死人コウモリの頁でも触れたが、コウモリに噛まれることによって狂犬病を初めとする病に罹患することは実際にある事なので、コウモリ型改造人間に血を吸われた者が病に苦しむのはリアリティーのある話である。
 まして、正子の病態は医師が匙を投げ、苦悶の内に静脈らしきものが顔面に浮き出るという変貌を見せた視覚的にも恐ろしげな姿で描かれた。結局病はアマゾンが薬草から調合した薬で治癒したので、恐らくはゲドンが意図的に生成したものではなく、獣人吸血コウモリが様々な生物を殺める中、口腔内に生成された、自然発生的なものと見られる(ゲドンにとって、ギギの腕輪さえ手に入れば正子1人の生死は問題では無かっただろう)。



注目点 ゲドンの獣人は従来の悪の組織の改造人間とは真逆の改造が施されている。
 ショッカー以来の組織は身体的に優れた人間に動植物(或いは機械)の能力を移植したのに対し、ゲドンでは動物にゲドンが見込んだ極悪人の脳を移植して造られた。
 つまり、脳改造どころか、元々の脳は活かされており、それゆえに個性も色濃く見られた。  ヘビ獣人は「ゲドン一悪知恵が働く」とされ、トゲアリ獣人は凶悪犯罪者の脳が見込まれ、クロネコ獣人は信じられないぐらい不真面目で、何と云ってもモグラ獣人・獣人ヘビトンボという裏切者まで生んだ。
 そんな性格千差万別な獣人達の中にあって、獣人吸血コウモリの性格を一言で云い表せば、「保身に走る」である。
 アマゾンとの二度の戦闘においても、程度の差こそ有れど手傷を追った途端に撤収し、十面鬼の怒りを買った。十面鬼が逃げ帰った獣人を処刑していたのは有名な話だが、獣人吸血コウモリの一度目の撤収に際しては、「貴様、そんなに命が惜しいか!?」と罵っていたので、獣人吸血コウモリには元々保身に走る傾向が組織においても周知だったのだろう。

 十面鬼の罵りに対し、獣人吸血コウモリは「私めの命はゲドンに捧げております!」と反論していたが、これが十面鬼の怒りを解きたいが為の調子いい高言であることはすぐに発覚した。
 最期の処刑時に、「どうか命だけは!」を連呼し、必死に助命していたのは市川治氏が声を当てた改造人間にあっては珍しい傾向だった(市川氏は、藤岡弘氏失踪時に仮面ライダーの声を当てたのを初め、ショッカーライダーNo.2、鋼鉄参謀、マシーン大元帥といった強敵の役が多く、ウルトラマンシリーズではゾフィーの声を当てたこともある)。

 余談だが、二度目にアジトに逃げ帰った獣人吸血コウモリにゴルゴスは「よくもこの十面鬼の顔に泥を塗ってくれたな!」と怒り心頭だったが、その台詞を吐きたかったのはすぐ真下に在った顔(中村文弥)だったと思う(苦笑)。


次頁へ
前頁へ戻る
冒頭へ戻る
特撮房へ戻る

令和三(2021)年六月一〇日 最終更新