登場番組 | 『仮面ライダー(スカイライダー)』第31話・第32話 |
協力体制 | 完全分業型(の筈だった) |
両者の友好度 | ★★★★★★★★★★ |
同時行動度 | ☆☆☆★★★★★★★ |
共闘度 | ☆☆★★★★★★★★ |
改造人間紹介 本作において、コンビを組んだ改造人間を紹介する際は先にストーリーに登場した方を前にしている。だから本来ならトリカブトロンの方を前にしなければならないのだが、そのルールを破って後に持ってくるぐらい、トリカブトロンは卑劣で、黄金ジャガーは男気に溢れた武人なのである。
ネオショッカー・サハラ支部から召喚されて日本にやってきた黄金ジャガーを迎えた時の魔神提督は本当に期待に溢れていた。何せ両手を広げて、「待ちかねたぞ!」と云って歓迎しているのである。
余談だが、シルバータイタンは個人的には卑劣で残忍な魔神提督は好きじゃないのだが、こいつの「儂は無能が嫌いだ。」というポリシーにいい意味でも忠実な面だけは好きである。有能と認めた者はしっかり厚遇し、無能と思っていた者でも有能な面を見ればしっかり認識を改めるのだから(「そんなの当たり前じゃないか。」と思われる方も多いと思うが、意外と出来ない事である)。
「ネオショッカー最強の戦士」である黄金ジャガーは将軍の地位を持ち、防具の色こそ名前の通り「黄金」だが、それ以外には華美で余計な装飾のないシンプルスタイルで、長槍を得物に、白馬に跨って純粋に槍術・馬術のみで戦っていた。
一切の特殊能力を持たず、槍一本で「最強の戦士」の呼び声と将軍の地位と魔神提督の評価を掴んでいる訳だからこれは凄まじい話である。
既に前述しているし、有名だが黄金ジャガーはネオショッカーにおいては勿論、悪の組織全般の中でも珍しいぐらい正々堂々とした気骨ある武人である。
日本支部着任後、いきなりトリカブトロンともめるが、瞬時にのど元に槍を突き付けて武芸では格段に優れていることを示した。直後魔神峠に急行し、5人の子供を拉致したトリカブトロンを追撃して来たスカイライダーを白馬に乗って迎撃し、一騎打ちに及んだ。
その殺陣はかなり力の入ったもので、スカイライダーがアリコマンドから奪った槍を手にしていたことから、互いが槍を得物にした絵になるものでもあった。
この時、木陰から見ていた神敬介が「1対1じゃ手を出す訳にいかんな……。」と思いながら見ていたが、一騎打ちを邪魔しないのは当然で、そう考える程黄金ジャガーは敬介の目にも屈指の手練であったことが後々の彼の台詞からも窺える。
割と長かった一騎打ちは、スカイライダーがスカイキックを仕掛けたのを黄金ジャガーが槍で叩き落として、吊り橋に宙吊りした(←スカイライダー、飛べた筈では??)ことで俄然優位に立った。
だが、卑劣漢・トリカブトロンが毒矢を放ったことでスカイライダーは崖下に転落、勝負は水入りとなった。勿論これは黄金ジャガーならずとも頭に来る話だった。
一騎打ちを妨害され、それがために敬介に「卑怯だぞ、黄金ジャガー!一対一の勝負じゃなかったのか?!」と罵られる羽目に遭い、あまつさえアジトに戻った後で、スカイライダーを討ち取ったことを報告して有頂天になるトリカブトロンに怒り心頭の黄金ジャガーは決闘を申し込みたい、と魔神提督に請願する程だった。
請願をやんわりと却下された際には「サハラ支部に帰る!」と憤慨して退出しようとしたが、まだ仮面ライダーXが魔神峠にいることから留任を命ぜられた。
それまでの数々の作戦失敗に憤るネオショッカー大首領(声:納谷悟朗)の怒りを鎮める為、魔神峠に大神殿を建立し、村人を生贄に差しだす儀式を行うのがこの第31話・第32話のネオショッカーの悪巧みだったが、魔神提督はトリカブトロンが捕えた5人の少年に大神殿用の岩を橇で山頂まで引かせるレースを行い、「優勝した者の命を助ける。」とした際にも同行した黄金ジャガーは男気を見せた。
レースを叱咤するアリコマンドとすり代わってレースに潜入した筑波洋は少年達に全員一緒にゴールインすることを耳打ちし、少年達は歯を食いしばってレースを続行した。その途中で少年の一人が断崖から足を滑らせ、滑落しそうになったのだが、黄金ジャガーは槍を投げて橇の転落を阻止し、助けようとした洋を「邪魔だ!」と跳ねのけて自ら少年を引き上げると、「怪我はなかったか?」と声を掛けていた。
「余計なことをするな!」と詰め寄るトリカブトロンの弓を跳ねのけながら、「黙れ!生贄の数を減らす訳にはいかん!」と反論していたが、これは本意ではなかった。
というのも洋の思惑通りに5人同時にゴールインした直後、黄金ジャガーは魔神提督に「優勝した者の命は助けると云われたな?5人を釈放してはいかがか?」と打診していたのだから。もっとも、魔神提督の回答は「優勝した者こそ大首領への生贄だ!」という見事なまでの悪者回答だったのだが(笑)。
そしていよいよ5人の少年と村の少女・ユキ子(野川愛)がネオショッカー大首領への生贄にささげられんとした時、ライドルホイップを投げ付けたXライダーとスカイライダーが乱入した!儀式を邪魔された不祥事をネオショッカー大首領に詰られた魔神提督は黄金ジャガーとトリカブトロンにライダー抹殺を命じて消えた。
逃げる村人を追うアリコマンドを蹴散らしながら彼等を庇うスカイライダーの前に出た黄金ジャガーは「よくぞ生きていた!」と叫んで再度の一騎打ちを喜んだ。
再度の一騎打ちも完全な体術戦で、黄金ジャガーは必殺技・黄金ジャガー大車輪突きをくしするも、スカイライダー99の技の一つ・槍渡り陽炎の術で封じられ、スカイキックを喰らって、負けを認めて戦死した。
その堂々とした戦士振りはネオショッカー怪人の中でも随一の人気を集め、かつて講談社が平成16(2004)年6月刊行の『オフィシャルファイルマガジン仮面ライダー0号』にて行った人気アンケートにて第82位にランクイン。した
この人気アンケートにおけるランクインは元祖と幹部の存在感の大きさが目立ち、大半はショッカー・ゲルショッカー・デストロンといった初期の関係者で、後続の悪の組織程数は少なかった(初期の組織は戦闘員すらランクインしている)。
ネオショッカー関係者では黄金ジャガーの他に第61位のゼネラル・モンスター(堀田真三)、同じく第61位のネオショッカー大首領、第68位の魔神提督、第86位のグランバザーミーがいるが、幹部や首領のランクインは他作品でも珍しくないので、それを見ると黄金ジャガーとグランバザーミーの健闘は見上げたものだが、ネオショッカーを知るほとんどの方が納得することと思う。強さもそうだが、戦士としての誇り高きあり様が評価されるのに正義も悪も無いと云えようか。
そんな黄金ジャガーの相方を勤めたトリカブトロンの存在は見事なまでに正反対視されている。
その姿は名前の通り毒草・トリカブトで前進が覆われ、顔は大きなくちばしを持ち、猛禽類の様だった。これじゃあネオショッカー怪人じゃなくてゲルショッカー怪人みたいだな(笑)。そして長弓と毒矢を得物としていたが、後述の狙撃を除けばその屋が標的に当たることはなかった(笑)。
ネオショッカー大首領を祀る計画において、「モンゴル平原からの使者」として来日し、塾講師・鬼島に化けて生贄集めや、村人の強制労働等に黄金ジャガーより早く着任していたが、魔神提督はライダー抹殺を黄金ジャガーに一任する腹で、その戦闘能力はさほど期待されていなかった。
それゆえ黄金ジャガーに妙な対抗意識を燃やし、様々な言動を取るも、はっきり云ってセコイ。ライダー抹殺は自分一人で充分、と主張するも黄金ジャガーに「お主では無理だ。」と云われ、激昂して勝負を挑む旨を口にするも、槍を突き付けられただけでうろたえ、仲裁した魔神提督にも「黄金ジャガーに任せとけ。」と云われる。
任務上、ライダーとの対戦権利を奪われたに等しいトリカブトロンだったが、勿論納得する筈なく、スカイライダーと黄金ジャガーの一騎打ちを遠巻きに見て、長弓に毒矢をつがえて狙撃を図った(←やはりセコイ)。
そして吊り橋に宙吊りになったスカイライダーを射て、断崖に落下せしめると遺体確認もせずアジトに引き返して、得意げにライダー抹殺を報告した。疑り深い魔神提督が喜んでこれを信じたのも、していなかった期待に応えられた喜びが大きかったからだろうか?
この(実体無き)功績により、魔神提督はトリカブトロンに5階級昇進・将軍職就任を云い渡した。だが、階級が挙がってもトリカブトロンの人間性まで上がった訳ではなかった(笑)。
ますます得意になりながら黄金ジャガーに同じ将軍になった、と馴れ馴れしくしていたが、5階級も上の相手にそれまでタメ口で接していたのだから不遜な奴である(笑)。
この人事と態度に納得いかない黄金ジャガーは魔神提督にトリカブトロンとの決闘の許可を求めたが、魔神提督は「お前が相手にする程の奴ではない。」と笑いながらたしなめていたのだから、5階級昇進も魔神提督の内心ではたかの知れたものだったのだろう。
その後もトリカブトロンの狭量は続いた。
前述の石運びレースではがけから転落しそうになった少年を助ける黄金ジャガーを詰り、競争にて遅れを取っていた少年2人を崖下に落としてしまうようアリコマンドに命じ(勿論、少年ではなくアリコマンドの方が洋に叩き落とされていた)、追いつかない少年2人の死を笑い(勿論死んでなかったが)、2人が追い付いてくると、後押ししていたと睨んだアリコマンド(中身は洋)に2人を根性棒で殴ることを命じ、躊躇っていた洋に「アリコマンドが俺の命令に従えない筈はない!」と尊大に振る舞っていた。
もっとも、これにはプライドより、洋が化けたアリコマンドをトリカブトロンが訝しがった面の方が強い。脳改造されたアリコマンドが怪人の命令に従わないのは確かにおかしいのだから。
少年2人はアイコンタクトで状況の受け入れを洋に伝え、洋も『勧進帳』における弁慶宜しく2人の尻を一発ずつ殴りつけた。殴った勢いといい、殴った場所といい、かなり甘いものだったが、これにあっさり納得したトリカブトロンはかなり間抜けだったと云える(笑)。
そしてレースも終わり、生贄が捧げられる段になって前述のようにXライダーとスカイライダーが乱入。スカイライダーが生きていた上に、儀式妨害をネオショッカー大首領に咎められて面目丸潰れの魔神提督はトリカブトロンを裏拳で殴りつけ、「己は5階級格下げじゃ!」と怒鳴りつけた。尊大なトリカブトロンもこれにはぐうの音も出なかった。このやり取りからも、こいつの昇進が単純にライダー抹殺の功績しか評価されていなかったことが分かる。そしてそれが事実ではなかった以上、昇進は取り消されるべくして取り消された。
直後、トリカブトロンはXライダーとの一騎打ちとなったが、得意の弓矢はライドルホイップに弾き飛ばされ、Xキックの前に戦死した。
まあ、どうしても黄金ジャガーとの比較もあって、酷評調の紹介になってしまったが、悪の組織や番組の為にはこういう卑劣漢が必要であることも付け加えておこう。ヨロイ元帥のいないデストロンなんて物足りなかったりするでしょ?(笑)。
両者の邂逅 両名がTV画面上に一緒に現れた最初は黄金ジャガーがサハラ支部より来日し、魔神提督の前に現れた時だった。
黄金ジャガーはサハラ支部から、トリカブトロンはモンゴル平原からやってきた訳だが、両者がそれ以前に知り合いだったかどうかははっきりしない。トリカブトロンが黄金ジャガーに異常な対抗意識を燃やしていたことや、黄金ジャガーがトリカブトロンに仮面ライダーを倒すことは出来ないのを断言していたことから、前々からの知り合いだった可能性もあるが、魔神提督の言動を見ると、黄金ジャガーの実力がネオショッカー内でも有名で、その黄金ジャガー自身が自らの武術を持ってしても仮面ライダー抹殺が容易ではないと考えていたとすれば、両者が初顔合わせでも上記の会話は成立することになる。
まあ事前に顔を合わせていようといまいと、全く正反対の性格を持つこの両名が親しく振る舞うなどあり得なかった訳だが(笑)。
コンビネーション考察 いちいち言及するのも馬鹿らしいが、この両名にコンビネーションなど存在しない。性格的に共闘など叶う筈ないし、トリカブトロンが正々堂々とした奴だったとしても一騎打ちにこだわる黄金ジャガーは加勢を断っただろう。
人選眼の怪しいた魔神提督もさすがにこの時ばかりは両者のコンビネーションなど端から考えていなかったようである。指揮上、ライダー抹殺は黄金ジャガーに一任し、トリカブトロンは大神殿建立・生贄収集に努めさせていた。
最終局面において黄金ジャガーとトリカブトロンは供にライダー抹殺を命じられたが、これは状況からなし崩し的に生まれたものだった上に、仮面ライダーXの指示により早々とトリカブトロンスカイライダーVS黄金ジャガーと仮面ライダーXVSトリカブトロンが成立したから、タッグマッチにさえなっていなかった。
はっきり云ってコンビプレイなど皆無である。
そこで少し考えてみたのだが、何故魔神提督がこの丸で正反対な両者を召喚し、同じ作戦に当たらせたか?である。考えられるのは2つある。
1つは、完全分業である。この作戦の要諦は大神殿建立と生贄奉納でネオショッカー大首領の怒りを解くというものである。つまりは組織内の自己満足の為に一村に犠牲を強いるという、悪の組織の作戦の中でも特に反吐の出るものだった(石運びレースも含めて)。
そんな弱者をいたぶる様な作戦をトリカブトロンなら喜んで従事しただろうけれど、黄金ジャガーなら逆らわずとも、かなり渋々従事しただろう。実際、一時的にスカイライダーが死んだと思われた際には、作戦が終わってもいないのに黄金ジャガーは「サハラ支部に帰る!」と云い出していたのだから。
その黄金ジャガーに魔神提督は「まだXライダーがいる。」と云って止めていたところからも、魔神提督の頭の中では「黄金ジャガー=仮面ライダー迎撃担当、トリカブトロン=一村支配・強制労働監督」の完全分業を考えていたことが推測される。
尚、ネオショッカーが把握していたかどうかは不明だが、神敬介がこの村に駆け付けたのはかつて学生時代の敬介が3ヶ月程村長一家に厄介になった縁によるもので、もし魔神提督がこのことを把握したなら、複数のライダーが妨害することは予測できた訳で、黄金ジャガーを手放しで歓迎し、トリカブトロンを歯牙にも掛けていなかったことから、もしかしたら魔神提督はXライダー襲来を予測していたかも知れない。
2つ目の推測は、魔神提督がトリカブトロンの抜け駆けをある程度予測していたのではないか?というものである。
言うまでも無いことだが、ネオショッカーは悪の組織である。悪の組織は目的の為に手段を選ばず、悪の組織に「卑怯」の二文字はない。黄金ジャガーの様に正々堂々とし、か弱き者を労わる硬骨漢の方が稀なのである。それゆえ、魔神提督は一騎打ちの物陰からスカイライダーを射たトリカブトロンの卑劣な行為を全く咎めていない。
シルバータイタンがこれを「計算の内」と考えるのは、魔神提督の性格なら卑劣さを咎めなかったとしても、ライダー抹殺を黄金ジャガーに一任したのにそこに横槍を入れた独断専行性を咎めることがあり得る、と見るからである。
卑劣と横槍を憤る黄金ジャガーを宥める魔神提督の表情からも、トリカブトロンの抜け駆けを計算の内に入れていたのでは?と考える次第である。
いずれにしても、もし黄金ジャガーとトリカブトロンに本気で協力体制を取らせようとする悪の組織の大幹部がいたとしたらそれだけで降格に値するが、魔神提督もそこまで考え無しではなかったようである(笑)。
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令和三(2021)年六月一〇日 最終更新