17.キギンガー&ドラゴンキング…珍しき名コンビの役割分担

登場番組『仮面ライダー(スカイライダー)』第36話・第37話
協力体制役割分担・一部相互補助型
両者の友好度☆☆☆☆☆☆☆☆☆★
同時行動度☆☆☆☆★★★★★★
共闘度☆☆★★★★★★★★
改造人間紹介 歴代仮面ライダーの客演が多いことで名高い『仮面ライダー(スカイライダー)』だが、既に3人の先輩ライダーが素顔で出演し、仮面ライダー2号をゲストに迎える頃にはいよいよ佳境に入って行った。そのためか、魔神提督ムササベ−ダー兄弟以来の良いコンビを招聘した(笑)。

 コンビの片方であるキギンガーネオショッカーでは2人目の女性改造人間(1人目はサソランジン)で、アマゾンからやって来た。植物の改造人間としては4体目となる熱帯樹の改造人間だが、残忍さは群を抜いていた。
 見た目一発のイメージは椰子の樹で、頭部に大葉を生やした顔、両手、腰のネオショッカーベルト除けば樹そのもので、実際に百鬼村小学校の校舎に筑波洋が駆け付けた時には室内に大量に置かれた木々の中で擬態していた(動いたことですぐばれたが)。

 武器は茨の鞭と、アフロマジンガの種。この種は人体に付くと即座に発芽し、人間を樹に変えてしまうもので、第36話・第37話の作戦目的は正にこれだった。作中語られてはいなかったが、恐らく第35話で南博士が無理矢理開発させられた物を利用したのだろう。
 そして種が発芽した際、養分体とされた人間は非常に苦しみ、全身が葉で覆われる頃には喋ることも動く事もままならなくなっていた。だが、完全に気になった訳ではなく、多少は動けていたし、呼びかけに反応を見せ、感情も有していた。そしてその僅かに残された人間性がストーリーの持つ怪奇性と姿を変えられた人間の苦悩を際立たせていた。

 来日直後、羽田空港で一人の老紳士(岩城力也)に種を植え付けることで、尾行して来た一文字隼人が苦しむ老紳士に気を取られた隙をついて、尾行を撒いた。
 人間を樹に変えてしまい、支配する計画を完成させる為の来日で、ネオショッカーキギンガー来日前に百鬼村という集落(といっても東京からサイクリングで来られない距離でもなかったが)の大人達、主として小学生の両親達を樹に変えることで、「逆らえば子供達を樹に変える。」と脅して、ほぼ一村を支配下においていた。
 その状況下でキギンガーが担ったのは支配とその研究である。更にはドラゴンキングと分担で村の監視(主に内部)も行っていた。百鬼村の青年上条タケシ(七五三木猛明)の救助要請を受けて来村した筑波洋は当初、タケシの姉で小学校教師の上条清子(麻生淳子)に村の異変に関して白を切り通されたが、そこにはキギンガーによる監視の目が光っていた。

 その後は監視体制をドラゴンキングに任せ、自身は人間を樹に変えた後の操作についての研究を続けた。そして洋がようやく樹にされた人々の存在を確認した直後、洋に襲い掛かり、上条先生を人質にして洋を縛り上げた。
 直後、村から逃げ出して外部の救助を求めようとした子供達にドラゴンキングが私刑(子供達に棘付きの棍棒を持たせた騎馬戦で殺し合わせようとした残忍なもの)に処するのを見ていたが、上手く縄目から逃れた洋がスカイライダーに変身し、仮面ライダー2号も駆け付けた為、ドラゴンキングが戦っている隙を突いて罰を受けていた子供達をアジトへ連行して逃走した。

 アジトに戻った後は樹にされた人々に不快を感じる電波を送ることで操るという、次段階の研究に従事。その発想及び研究振りは魔神提督をして「天才」と云わしめていた。この研究はある程度上手くいったようだが、ことごとくスカイライダーに土を付けられた。
 より改良した種を子供達に植え付けようとした所を乱入され、人質を逃がされた。その子供達を追ったドラゴンキングスカイライダー仮面ライダー2号の前に戦死すると、村人達に種を投げ付けて樹にしまくり、最後には小学校生の両親達を電波で操ってスカイライダーを襲撃させたが、例え樹にされても悪に加担しないで欲しいという子供達の懇願に樹にされた親達も、子供達もキギンガーへの服従を拒否。これによって強みを失ったキギンガーは校舎外に出て滝を舞台にスカイライダーと戦うも、99の技の1つ・風車三段投げを喰らってグロッキーになったところで追い打ちのスカイキックを喰らって戦死した。
 キギンガーの死によって、樹にされていた人々が元に戻るというお約束展開があったのは云うまでも無い(笑)。

 その相方のドラゴンキングは純粋な戦士としての技量を求められていた。「ガラパゴス島よりの使者」「拳法の達人」と呼ばれ、自らは両手にサイを持ち、ヌンチャク・槍・トンファーを使いこなす「闇の戦士団」と称する特別なアリコマンドを率いて、特訓にも余念がなく、様々な面から対ライダー迎撃を期待されていたことが窺える。

 設定によると「ドラゴン型の改造人間」とのことで、架空の存在である筈の「ドラゴン」がどの動物ベースにしているかが気になるが、『仮面ライダー(スカイライダー)』ではこの後、カッパ型改造人間(オカッパ法師)・幽霊型改造人間(クチユウレイ)・ゾンビ型改造人間(ゾンビーダ)なんて者も出て来るから考えないようにしよう(苦笑)。
 その姿は「直立したドラゴン」だが、翼や尻尾ない。なお、その頭部はネオショッカー大首領に似てなくもない。
 そしてドラゴンをベースとしながら火を吹いたり、爪を振るったりすることも無く、純粋に自らの武術のみで戦った。サイを持つ両手と跳躍力に優れた脚力から繰り出される技・飛燕岩石崩しは岩をも粉々にする威力を持っていた。
 その性格は好戦的かつ残忍。ライダー迎撃・「闇の戦士団」を率いての村民脱走防止・造反者の処刑が任務だが、特訓中に働きの悪いアリコマンドを「弱い奴は死ね!」と云って刺殺し、村から脱走しようとした子供達には前述の「死の騎馬戦」を命じ、我が身を犠牲にしてでも子供達を助けたいという上条先生の哀訴を却下するだけでなく、上条先生に対しても監督不行き届きとして「お前の罰は後で考える。」と云い放っていた。キギンガー曰く、「いくら謝ってもドラゴンキングには通じない。」とのことだった。
 その一方で強いものを尊ぶ傾向があり、死の騎馬戦に挑ませようとした子供達に、「勝った奴の命だけ助ける。」と第32話の巨石運びレースの時と同じようなことを云っていたが、ドラゴンキングの性格なら、本当に一番になった者は助けた気がする。
 スカイライダーとの戦いにおいても「やるなぁ。」と投げ掛け、スカイライダーが「貴様もな。」と返せば、「殺す敵は強い程面白い!」と云って性格の一端を垣間見せていた。  また、そんな台詞を口にするだけの技量の持ち主でもあり、スカイライダー相手にひけを取らず、敗れたとはいえ、スカイライダー2号ライダーを同時に相手にしながら、最後の最後まで振りを感じさせなかった。

 ストーリーにおいては百鬼村にて特訓を重ねながら村人を監視し、脱走しようとした子供達に私刑を加えんとしたが、これはスカイライダー2号ライダーに邪魔された。だが戦闘でひけを取った訳ではなく、引いたのはWライダーの方だった。がんがんじいが足手まといだっただけだが(笑)。

 その後も警備・監視を続け、キギンガーのアジトから子供達を連れて逃げて来たスカイライダーを迎撃。前述のようにスカイライダーだけではなく、加勢して来た2号ライダーも同時に互角以上に応戦したが、必殺の飛燕岩石崩しを放とうとジャンプしたところでスカイキックと2号ライダーキックというライダーダブルキックを受け、さすがにこれには一溜まりも無かった。
 「キギンガー!街の人間どもを樹にしてしまえ!」と絶叫して戦死した。


両者の邂逅 百鬼村の河原にて、ドラゴンキングが配下である『闇の戦士団』との特訓を行っている所に魔神提督キギンガーがやって来たのが画面上で両者が共に確認出来る最初である。

 第36話がキギンガーの来日から始まるが、上記の場面にて、スカイライダー仮面ライダー2号も来村したことを魔神提督に告げられた際にドラゴンキングが口にした、「いよいよ俺の出番という訳ですな。」という台詞からも、ドラゴンキングはもっと前から百鬼村にいたことが推察される。

 となるとキギンガードラゴンキングの初邂逅は画面通りの様な気もするが、この両者、全く仲違いすることなく、相手を悪く云うことすらなかった。となると前々からの知り合いだったことも考えられるし、「ドラゴンキングが如何に恐ろしい奴か教えてやる。」というキギンガーの台詞や魔神提督の期待から、面識はなくてもドラゴンキングネオショッカー内にて高名だったのでは?との推察も生まれる。

 はっきり云えるのは、魔神提督の人選にしては珍しいナイスチョイスだったということである(笑)。


コンビネーション考察 何度か触れたように、この両者は魔神提督の人選いあっては稀有な程いがみ合いが全くなく、互いが互いの役割に徹し、一部では助けあうことすらしていた。こんな仲の良いコンビはムササベ−ダー兄弟以来だが、彼等が兄弟であったことを想えば、キギンガードラゴンキングは本当に稀有なコンビである。

 とはいえ、この両名、共闘することは全くなかった。逆にドラゴンキングの方が2対1ハンディキャップマッチにも堂々と応戦していた程である。
 それというのも、互いが互いの力量を認め、得意分野への尽力を託し合っていたからだろう。ドラゴンキングの技量と徹底した処刑人振りはキギンガーだけでなく、魔神提督も認めるところだった。またキギンガーが新実験にて電波で気にされた人間を操ると主張したことに、ドラゴンキングは「しかし、そんなことが出来ますかねぇ?」と魔神提督に告げて疑念を挟んでいたが、ここに悪意があったとは思えない。
 純粋に可能性を疑問に思っただけと見え、キギンガーの説明は黙って聞いていたし、今際の際にはキギンガーにすべてを託していた。戦闘能力では明らかにドラゴンキングの方が強かったが、実力者を認める者らしく、キギンガーの作戦遂行能力は認めていたのだろう。
 そして自らが認められたことに応えるかのように、キギンガードラゴンキングに託したことに関しては一切の異議を挟まなかった。子供達が村から逃げようとした際もこれを追わず、子供達はドラゴンキングが捕えた。そして上条先生を人質にして縛り上げた筑波洋が「俺をどうするつもりだ?」と問えば、「お前の処分はドラゴンキングが決めてくれる。」と云って、互いの役割が完全に決まっていることを仄めかしていた。

 考察すればするほどこのキギンガードラゴンキングのコンビはネオショッカー史におけるベストチョイスであることが分かる。
 両名の戦死も、樹にした人間の完全服従に失敗したのも、少なくともコンビネーションには問題なかった。にもかかわらず結果が実を結ばなかったのも、Wライダーのツープラトンがドラゴンキングを上回ったからで、魔神提督にとっては普段と違った意味で無念だっただろう。
 となると、せっかく捕えた2号ライダーがあっさり脱出するのを許した「ライダー用特殊合金」の牢獄を設計した奴の罪は重い(笑)。壁が特殊合金でも鉄格子が普通では意味なかったな(笑)


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令和三(2021)年六月一〇日 最終更新