何故「悪の組織」のコンビネーションは失敗するのか?
本作を作ろうと思った動機は『仮面ライダー(スカイライダー)』によるところが大きい。「サイダンプ&クラゲロン」や「黄金ジャガー&トリカブトロン」や「マントコング&タコギャング」や「ウニデーモン&オカッパ法師」といった仲の悪いコンビを見るにつけ、「魔神提督、チョットは考えろよな〜。」と思いつつ、「ムササベーダー兄弟」や「ドラゴンキング&キギンガー」の様な好例もあり、
「これは一度考察してみたいな……。」
と思うようになった。
そしていざ調べるとネオショッカー以外では『仮面ライダーV3』の初期が2体の改造人間で1つの作戦に2週で従事するケースが多かった為に興味深い研究材料が見つかり、『仮面ライダー』ではショッカーライダーと他のゲルショッカー怪人の絡みが面白かった。
結果、独断と偏見で様々ピックアップし、絞りに絞っても21例に及び、平成二六(2014)年五月一七日現在特撮房内で最も頁数を持つ作品となった。まあ無職のおかげで他房と並行で作りながら、過去作よりも遥かに早く完成したが(泣笑)。
そして思うのは、21例、採用しなかった例を含めても、どれ一つとして成功を収めなかったことである。
何故か?
身も蓋もない云い方をすれば、「悪の組織」が滅びる運命にあるからである(笑)。
でもまあ、それじゃあ「考察」にならないので(笑)真面目に考えたいが、やはり「人選」によるところが大きい。
プロレスのタッグマッチでもデカい荷物の運搬でも云えることだが、息の合った者同士が力を合わせれば「1+1」は5にも10にもなる。しかしここが我儘に動けば「1+1」が2にもならず、下手したら「1人でやった方がマシ!」なる。これは「コンビネーション」の鉄則中の鉄則と云っていい。
だが注意すべきは「人選」は「仲の良い者同士」を選べばいいか?と云えばそうとも云い切れない。「仲の良い者同士」でも狎れ合うようでは逆効果だ。逆に「仲の悪い者同士」でも互いが役割に専心し、意図的な妨害などせず、むしろ相手に負けまいと刺激し合って作戦が進むなら決して悪い「人選」ではない。
当初は嘲笑っていた魔神提督が犬猿の仲の者同士を同じ作戦に従事させる「人選」も役割分担や適材適所を考えれば、悪くない「人選」であったものも散見された。
だがそれでも失敗に終わるのは、2つの要因がある、とシルバータイタンは見ている。
それは、
・ツープラトンが無さ過ぎた。
・ライダーサイドのコンビネーションが勝った。
ということである。
仮面ライダー1号&仮面ライダー2号にはライダーダブルキック・ライダー車輪という技があり、ことライダーダブルキックに関しては「仮面ライダー2号&仮面ライダーV3」・「仮面ライダーV3&スカイライダー」・「仮面ライダー2号&スカイライダー」いう例もある。勿論3人以上のライダーで放つライダーキックや、10人で放ったライダーシンドロームなんて技もある。圧巻は仮面ライダー1号から仮面ライダーOOO までの40年間のライダーが全員集合して放ったオールライダーブレイクだろうか?
そこをいくと悪の改造人間にはショッカーライダーやムササベーダー兄弟やガテゾーン&ゲドリアン等のごく僅かな例を除けば複数の改造人間によって繰り出される技というものが見られない。それは同じ組織の面子によるコンビといえども行動を共にするケースが少なく、共同で訓練を積むなどということはまずないからだろう。
となると、長年の友情と師弟愛に結ばれ、度々共同で訓練(誰ですか?リンチみたいだったと仰っている方は?)も積むライダー達が悪の組織を上回るコンビネーションと、そこから繰り出されるツープラトン以上の技を繰り出す訳だから、やはり悪に勝ち目は無かっただろう。
結局悪の組織のコンビネーションは「1+1」がよくて「2」にしかなっていないところに最大の敗因があると云えようか。
「考察」中に思ったこと
冒頭でも触れたように、当初は悪の組織の大幹部(特に魔神提督)の「人選」を面白がりながら考察を重ねていたが、一見「仲の悪い者同士」の「人選」にも「考え」というものが見られたり、「線」では失敗に終わりながらも「点」では長所が見られたりしことで、やはり物事を上っ面で考えてはならないことを思い知らされた。
そして制作中驚かされたのは、気付けば私自身、「このコンビ、どうやったら成功していただろうか?」と考えていたことである。
勿論、シルバータイタンは悪の組織に勝って欲しかった訳ではない。架空の世界においても悪には滅びて貰わなくてはならない。それでも真剣に観察し、考察していたのは「悪の組織の大幹部に学ぶリーダーシップ」を考察していた時と同じものだった。
リーダーシップも、パートナーシップも、人の集団の中に生きる以上、真剣に考える必要のある重大なものであることを今更ながらに気付かされた訳である。
「コンビネーション」を活かすには?
悪の組織でなくても、架空の世界でなくても、人間は一人では生きられず、学業・スポーツ・生業・冠婚葬祭・趣味娯楽等で誰かと手を組むことを求められる。つまりは「コンビネーション」や「パートナーシップ」と全くの無縁いられる人間は皆無に等しく、本当に無縁だったら寂しいことこの上ない人生である。
だから「コンビネーション」や「パートナーシップ」をよく知り、よく考えることは万人にとって肝要である。ではその為にはどうすればいいのだろうか?
少なくとも、本作を構築・制作・考察してきた身としては、
・自分と相手をよく知る。
・性急に考えず、時間を共有する限り成長を期し続ける。
・任せるところ、補えるところを完全把握できるための信頼関係を持っておく。
月並みだが、この三点を心に念じている。言葉にするのは簡単だが、これが充分に出来ている人が世の中にどれぐらい存在するだろうか?もしシルバータイタンにこれらが出来ているとすれば、今頃無職ではないだろうし、それ以前に転職を繰り返してはいなかっただろう。
平成二六(2014)年五月一七日 菜根道場特撮房シルバータイタン
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令和三(2021)年六月一〇日 最終更新