21.ガテゾーン&ゲドリアン…純粋ならざる者同士が共闘したが…

登場番組『仮面ライダーBLAC RX』第1話〜第42話
協力体制似た者同士共闘型
両者の友好度☆☆☆☆☆☆☆☆☆★
同時行動度☆☆☆☆☆☆★★★★
共闘度☆☆☆★★★★★★★
改造人間紹介 「人間どもに任せれば地球は遠からず滅亡する。だが、我々ならば地球に理想の王国を築くことが出来る。」というジャーク将軍(演:高橋利通・声:加藤精三)を地球攻略兵団の団長として、クライシス帝国は侵攻してきた。

 彼等がこの主張通り考えていたのは事実だが、別の本音もあった。
 というのも彼等の祖国・クライシス帝国とは怪魔界にあり、その怪魔界は地球と影響しあう双子星だった。そしてその怪魔界は地球の環境汚染に影響されて滅びの運命を一年後に控えていたので、クライシス帝国サイドには「自分達の切羽詰まった境遇は地球人のせい。」という想いもあり、忠誠を誓う者を迎え入れたりする考えも持っていたが、基本憎悪の対象としていた。
 実際、怪魔界は大気の大半が亜硫酸ガスで蘇生されるようなちょっと不気味な環境と化しており、怪魔界の住人が地球で生きる為には地球を亜硫酸ガスで覆うか、強化細胞を移植する必要があった(そのいずれもが出来ず、移民第一陣500名が一斉に悶え死ぬ様は敵ながら悲惨なものがあった)。

 そんな怪魔界の住人には怪魔獣人・怪魔妖族・怪魔ロボット・怪魔異生獣という4つのタイプと、そのいずれに属するとも断じ難いクライシス皇帝(声:納谷悟朗)・ジャーク将軍・最強怪人グランザイラスという存在があった。
 だが大まかに分けると「純粋なクライシス人」と「そうでない物」の相違があり、前者は後者を見下している風があった。そんな民族事情(?)の中、地球攻略兵団の四大隊長を務める物が二人いた。怪魔ロボット大隊隊長にして機甲隊長のガテゾーン(演:北村隆幸・声:高橋利通)と、怪魔異生獣大隊隊長にして牙隊長のゲドリアン(演:渡辺実・声:新井一典)である。

 純粋なクライシス人でないガテゾーンは「正体不明の怪魔ロボット」とされている。彼の率いる怪魔ロボットはガテゾーンによって制作されたものだが、ロボットである以上、ガテゾーンも誰か作ったものがいると思われるのだが、それに対する言及は一切無かった。
 「純粋なクライシス人」である怪魔獣人ボスガン(演:藤木義勝・声:飯塚昭三)と怪魔妖族マリバロン(高畑淳子)がプライドや地位にこだわるのとは対照的にガテゾーンはその手の事柄には殆ど執着せず、作戦が功を奏したり、敵の首が取れたりするのであれば誰とでも手を組み、非難に対しても何処吹く風という傾向もあった(好き嫌いは有ったが)。
 といっても査察官ダスマダー大佐(松井哲也)のようにクライシス皇帝の名をすぐに持ち出す、「虎の威を借る狐」に対しては、「査察官の分際で!」と悪態を突く事もあったが、利害が一致すれば手を組んだこともあった。
 そんなこだわりの強さゆえか、ガテゾーンが作る怪魔ロボットは四大隊の中では比較的仮面ライダーBlackRXを苦しめた。

 首と体を分離することが出来、それを利した追跡や偵察も得意。銃とストームダガーというバイクを愛用。宇宙に放擲された南光太郎(倉田てつを)が仮面ライダーBlackRXとして転生すると怪魔妖族スカル魔と戦うRXを見て、怪魔ロボット・キューブリカンを製造して敗れ、ジャーク将軍より24時間痺れに苦しむ懲罰を受けた。その際、マリバロンは純粋なクライシス人である自分が同じ罰を受けることに信じられない、という風を示していた。

 第22話でジャーク将軍シャドームーンを招聘し、RX打倒を命じた折は、隊長の座を奪われることを懸念する他の三大隊長とともに妨害(正確にはどさくさに紛れてRXシャドームーンもやってしまうと云うもの)に加担したが、怪魔異生獣アントロントは倒され、シャドームーンにあわやまで追い込まれていたRXを取り逃がす事となった。
 この独断専行はシャドームーンを飽くまでRX打倒の刺客としてしか考えていなかったジャーク将軍の怒りを買って、四人まとめて懲罰を喰らった。

 その後も持ち回り的にRX打倒や地球占領作戦の為に怪魔ロボットを投入し続けたが、ことごとく敗れた。勿論これは他の大隊も同じで、第27話ではまたも(但し今度は正当なジャーク将軍の命令で)他の三大隊長と共にRXシャドームーンの謀殺を図った。
だがこれも失敗し、翌週の第28話からは「皇帝陛下の代理人」としてやってきた査察官ダスマダー大佐に監視とねちねちした嫌みに曝されることとなり、さすがに彼に対しては不快の色を現していた。
 だが第34話ではそのダスマダーと手を組んだ。前週で瀬戸大橋爆破計画から爪弾きにされていたこともあって、「自らの力を買ってくれるなら」としてダスマダーの四国空母化計画に加わったが、この結託が末路への遠因ともなった。

 そして遂に第42話でクライシス皇帝より「最終時計」が送られてくると、ジャーク将軍並びに四大隊長全員が命の危機に曝された。
 この危機に最後の勝負に出たのはゲドリアンだったが、彼はこの一件で命を落とした(詳細後述)。ガテゾーンは体が粉々になって絶命し、一塊の砂塵となったゲドリアンの遺体を握り締め、静かに復讐を誓い、翌週第43話で早速RXを襲撃したが、ストームダガーを破壊された。

 そんなガテゾーンダスマダークライシス皇帝の護衛用のマシンのみに装着されると云うクライシスチャージャーを与え、ストームダガーは4倍の性能を持つネオ・ストームダガーとなった。その見返りはガテゾーンが作った最強最後の怪魔ロボット・ヘルガデムで、ガテゾーンはこれを提供して打倒RXに挑んだが、それがため、ジャーク将軍より隊長の地位を剥奪され、指揮下からも追放されることとなった。

 打倒RXへの執念以外のすべてを失ったガテゾーンは、ダスマダー立案の作戦に従って、ネオ・ストームダガーに騎乗し、ヘルガデムの発する毒ガス・デススモークでRXのベルトの風車から体内へ送り込み、キングストーンを破壊することでこれを倒さんとした。
RXを罠に嵌めることには成功したが、的場響子(上野恵)の放った矢でヘルガデムの風車が破壊され、リボルケインによって破壊された。事ここに至って、ガテゾーンは自らのボディをRXにしがみつかせ、これを時限爆弾としてRXを吹っ飛ばそうとするが、バイオライダーとなってかわされた。直後、RXキックを残された頭部に喰らい、最後の足掻きに単眼部から光線を放つと、「地獄で待ってるぜ!RX!!」と絶叫して戦死した。


 その相方を勤めることも多かったのがゲドリアンだったが、彼及び彼の率いる怪魔異生獣は他の軍閥より下に見られていた帰来があった(まあ、実際弱い奴等が多かったが)。
 「異生獣」の名が示す如く、彼の配下はヒューマノイドタイプが少なく、ゲドリアン自身も四つん這いになって素早い身のこなしや身軽さで仮面ライダーアマゾンばりのアニマルアクションを見せ、前線に出ることも少なくなかった。
 相方のガテゾーンが地位やプライドにさほど執着しなかったのに対して、ゲドリアンは隊長の地位にかなり執着しており、それが顕著に現れていたのが第22話のシャドームーン招聘時だった。
 ジャーク将軍シャドームーンRX打倒を、四大隊長にシャドームーンへの協力を命令すると、四大隊長は一様に自分達の地位を危ぶんだが、ゲドリアンは命令を無視して怪魔異生獣アントロントを改造し、両者を襲わせた。
 その改造中、ゲドリアンは自らが劣悪環境と化した怪魔界の中でも最も暗く、寒いゲドラー域の出身からのし上がって隊長となった過去を回顧して呟き、その地位を奪われんとの意を露わにしていた。

 だが、死闘で疲弊したRXシャドームーンアントロントに襲わせて漁夫の利を得んとしたのは完全な藪蛇に終わり、アントロントを失い、RXに逃げられ、自身も他の三大隊長と共に懲罰を喰らった。

 だが、ゲドリアンの基本的な考えや価値観は変わらず、第27話で報復に出たシャドームーンが配下の怪魔異生獣マッドボットを脅して、自分達に刃向わせているのを知った時には怒り心頭になって、マッドボットを棒で滅多打ちにしていた。
 一応は「改心」したマッドボットを再登用して他の三大隊長と共に(今度はジャーク将軍の正式な命令を受けて)RXシャドームーンを火山の麓の盆地に誘き出して、溶岩に呑ませんともした。
 そして第28話に査察官ダスマダーがやって来るとジャーク将軍以下隊長全員がその「虎の威を借る狐」振りに不快の念を示したが、ゲドリアンは最も強く反発していた。ガテゾーンが軍功重視で、ボスガンが腹探り目的でダスマダーに接触する事もあったのに対し、ゲドリアンは一切馴れ合わなかった。
 そしてその性格の為か、彼はシャドームーンにも、ダスマダーにも攻撃を受けたことがある。

 そして運命の第42話がやって来た。クライシス皇帝より「最終時計」が地球攻撃兵団の元に送らるとゲドリアンRXを倒して、その功で「最終時計」をクライシス皇帝に消してもらうことを提言。ジャーク将軍の許可を得ると幾度となく共闘して来たガテゾーンの助力すら断り、自らの細胞で作り出した最強の怪魔異生獣ゲドルリドルとともにRXに挑んだ。
 その出自と必死さもあってゲドルリドルは強かった。あらゆるエネルギー(RXのキックや、キングストーンのエネルギーさえも)奪ってしまい、RXを絶体絶命に追い込んだ。
 だがそこへ、「RXは俺が倒す!」と云いながらダスマダーが乱入。あろうことかゲドルリドルを斬り付け、これが災いし、RXを取り逃がすことになってしまった。

 怒り心頭のゲドリアンだったが、一瞬気まずそうにしていたダスマダーだったが逆切れして皇帝陛下の名において査察官ダスマダー、打倒RX失敗の責任者ゲドリアンを処刑する!」といって斬り掛った。
 完全に自分の過失をゲドリアンに擦り付けて、その首でもって自分は助かろうと云う魂胆に怒りを更に増幅させたゲドリアンダスマダーと一騎打ちを展開した。徒手空拳ながら剣を持つダスマダー相手にやや有利に戦いを進めたゲドリアンだったが、命惜しさに戦友よりも帝威を重んじたジャーク将軍以下三大隊長もゲドリアンをスケープゴートにすることに同意。ボスガンガテゾーンダスマダーに加勢した。

 いくら悪の組織とはいえ、これまでの仲間に濡れ衣を着せるやり口にゲドリアンは口を極めて三者を罵り、さすがにボスガンガテゾーンはバツが悪そうにしていた。そしてダスマダーはチャップ達にバズーカでゲドリアンを砲撃させた。

 だがゲドリアンは死なず、クライス要塞のエンジンルームに侵入。自らの肉体を媒介として、地上のゲドルリドルにクライス要塞のエネルギーを送って、その力でRXを打倒させ、その手柄を持ってクライシス皇帝に直訴し、ジャーク将軍達を処刑させんとした。
 だがこの行為は文字通り身を削る行為で、ガテゾーンは「体がバラバラになるぞ!」といって、止めようとしたが、ゲドリアン「俺の身体がバラバラになるのが早いか、ゲドルリドル<RXを倒すのが早いか、どうせ一度は消された命だ!!」と云って、決死の覚悟を固めた者の気迫で気倒した。
ダスマダーが腕尽くで止めんとしたが、「近づくな!近寄ったらエネルギーを逆流させて要塞を破壊してやる。」と云われ、一同は成り行きを見守るしか出来なかった。
 だが、ゲドルリドルはエネルギー吸収後0.1秒の隙を突かれてリボルケインに貫かれて戦死。行き場を失って逆流したエネルギーはゲドリアンの体を木っ端微塵に粉砕した。
 皮肉にもこの命懸けで忠誠を尽くした行為により「最終時計」は消され、ゲドリアンの名誉もクライシス皇帝の名のもとに回復したが、彼がそれを知ることは無かった。ダスマダーの正体がクライシス皇帝その人であった事も……。


両者の邂逅 クライシス帝国の地球攻略兵団が侵攻を開始したとき、怪魔界には滅びの運命が迫っていた。当然地球攻略兵団に失敗は許されず、ジャーク将軍が事前に攻略兵団の編成に細心していたであろうことは想像に難くない。当然ガテゾーンゲドリアンも遥か前から知り合いだったのだろう。

 クライシス帝国及び、その重鎮・幹部達に関してシルバータイタンは拙サイトにて『悪の組織の大幹部に学ぶリーダーシップ』『徹底検証、どっちが悲惨?』『ジャーク将軍喜怒哀楽』の制作を通じて散々検証して来た。
 それらの検証を通じてジャーク将軍が信賞必罰に公正公平で、仲間思いな面があることは何度も触れて来た。純粋なクライシス人でないガテゾーンゲドリアンを隊長に取り立てたのも純粋にその能力を評価してのことだろう。
 一方で、自分の指揮下に相応しくないと見れば、皇帝陛下の代理人であるダスマダーを闇討ちにしたり、長く指揮下に在ったガテゾーンを追放したりもした。
 これらの背景からジャーク将軍は必要とあればいつでも誰でも登用しただろう。ただ、シャドームーンを一時的な利用対象としか見ておらず、「余にはあんな奴を隊長にする気などなかったわ!」との台詞からも隊長登用にはある程度信用おける観察期間を持ったとも思われる。
 ただ、四大隊長の中ではマリバロンボスガンが先に指揮下に入り、次いでガテゾーン、最後にゲドリアンの順番に指揮下に入ったのが両者の邂逅ではないかと見ている。

 というのも、ボスガンクライシス皇帝からジャーク将軍への通信を盗み聞き出来ていたし、マリバロンは皇女・ガロニア姫(井村翔子)消滅の失態をジャーク将軍クライシス皇帝をたばかってまで助けていた。これは相当長い付き合いがないと成立し得ない関係だろう。

 一方、ガテゾーンは配下である怪魔ロボット・スクライドが自分の命令も聞かずにクライシス皇帝の怒りを買った為にこれをスクラップにしたことがあった。もしこの時点でガテゾーンが中途半端な地位や信頼関係にあったら連座して処刑・降格されていてもおかしくなかった。それが助かったと云うことはやはりそれなりに長い君臣関係が存在していたのだろう。

 となると、出身以外にかつてのエピソードが聞かれず、シャドームーン招聘時に隊長位に最も強い執着と危機感を見せていたゲドリアンは四人の中で隊長に就任してからの日が最も浅いのでは?と推測するのである。

 まあガテゾーンの正体が「不明」なので、それによっては両者の邂逅にはまた別の形も考え得るのだろうけれど。


コンビネーション考察 基本として、ガテゾーンゲドリアンも軽々しく前線に出る立場ではない。
 隊長という立場があり、軍閥を率いる者として、仮面ライダーBlackRXを倒せたとしても、相討ちになるようでは軍務を果たしたとは云えない身分だった。
 もっとも、クライシス帝国自体、置かれた状況は切羽詰まっており、四大隊長達は前線に出ることも珍しくなかった。

 だが、各大隊は獣人・妖族・ロボット・異生獣という見た目も生態も能力も丸で異なる存在に別れて構成されており、「純粋なクライシス人」という共通点を持っていても、怪魔獣人と怪魔妖族が似た存在にはとても見えなかった。それゆえ四大隊長はジャーク将軍の指揮には従い、必要に応じて団結する時や共闘する時を持ちつつも、手柄や功名を争う傾向があり、積極的な共闘は少なかった。
 何せボスガンに至っては一時、ジャーク将軍を出し抜いて自分が将軍にとって代わることすら企んでいた。

 要は生態の相違と、出自に対するこだわりと、功名心が団結や共闘への足かせになっていたのだが、例外がガテゾーンだった。地位やプライドよりも優秀なロボット制作や敵の首を取ることを重んじるガテゾーンは必要とあらば誰とでも組んだ。他の三大隊長とも、ダスマダーとも。
 となると、他の二大隊長から見下されがちなゲドリアンガテゾーンと組むことが多くなるのは必然だった。

 両者の長所は身体能力である。ゲドリアンは体術に優れ、ガテゾーンは愛車ストームダガーを初め次々と自らの最新技術をロボットや製造物に投入してRXを襲った。
 ガテゾーンがライディングするストームダガーの後部座席に乗るゲドリアンが、そこからジャンプして攻撃を仕掛けたかと思うと、ジャンプでその場に逃れて去ると云うヒット・アンド・アウェイは何度となく見られた。
 ガテゾーンの技術力は怪魔ロボットが四大隊の中で最もRXを苦しめていたことに現れていたし、怪魔異生獣大隊は弱くても、ゲドリアンのアクションは他の幹部と比べても優れていた。

 惜しむらくは両者の共闘が立場や作戦ゆえに牽制的なもの・散発的なもので終わっていたことだった。もし最終決戦でゲドリアンガテゾーンの共闘申し出を断っていなかったらどうなっていただろうか?という興味は尽きない。勿論その場合にはダスマダー=クライシス皇帝に「要らん事すんなよ。」との釘は刺したくなるのだが(苦笑)。


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令和三(2021)年六月一〇日 最終更新