3.暗黒大将軍…………物凄い発想の持ち主

キャラクター名暗黒大将軍
登場作品特番『全員集合!7人の仮面ライダー!!』
演者堀田真三
所属組織デルザー軍団?
怪人体ジェットコンドル?
地位総大将(?)
指揮能力☆☆☆☆☆☆☆★★★
武勇☆☆☆★★★★★★★
部下の敬意☆☆☆☆★★★★★★
備考 演者の堀田信三氏はトカゲロンとゼネラル・モンスターも演じた。
概要 特番『全員集合!7人の仮面ライダー!!』に登場した謎の人物(?)
 後楽園ゆうえんちに潜み、仮面ライダーショーを見に来た子供達を誘拐し、それによって獲得した身代金を軍資金にして世界征服を画策していた。
 だが、そこには子供達に仮面ライダーとの思い出話を語る立花藤兵衛(小林昭二)と、彼と会うべく偶然帰国した歴代仮面ライダーが来園していたので、配下の奇っ械人がアトラクションに紛れ込んでいたのが即行でバレ、忽ち7人ライダーの反撃を受けた。
 地下アジトにて左右にオオカミ長官とヘビ女を侍立させて7人ライダーと対峙したが、さすがにこれは相手が悪く、7人ライダーのパワーを受けて無念の叫びを残してくたばった。

 それから30年の時を経て、『新仮面ライダーSPIRITS』に登場した際には、改造魔人ジェットコンドルの人間体とされていた(詳細後述)。


組織における将軍位 まず、そもそもこの暗黒大将軍、何処の組織に属し、如何なる立場にあったのかはっきりしない。
 まあ、所属組織はデルザー軍団と見てまず間違いないだろう。デルザー軍団の紋章付きベルトを纏っていたし、奇っ械人を率い、オオカミ長官・ヘビ女とともに潜んでいたことから、仮に所属していなかったとしても、全くの無関係ではないだろう。

 ただ、暗黒大将軍ジェットコンドルのみならず、デルザー軍団自体の設定・背景が少々曖昧になっているのは止むを得ない側面もある。と云うのも、『仮面ライダーストロンガー』自体が、本来の話数から(詳細は不明だが)第3クール・39話で放映終了となり、最後の方程強引な展開になったと云われている(もし、第4クール52話まで放映されていれば、1号・2号の変身シーンも描かれただろうし、ライダーマンの単独初勝利も描かれたかもしれない)。
 デルザー軍団の数構成は一般に不吉とされている「13」が基本になっているとの設定があり、当然リーダーを目指した大幹部の数も13と云いたいところだが、ジェネラル・シャドゥを含めてもその数は12で、それ故13番目は、岩石大首領と云う声もあれば、ジェットコンドルとの声もある。

 そのジェットコンドルは設定や、『新仮面ライダーSPIRITS』、その他ネット情報によると象をも摘み上げる巨鳥・ロック鳥の子孫で、階級名ではなく「ジェット」と云う特徴が名前に含まれる様に、機械化に特化した改造魔人らしい。
 本来なら来日第二陣として、マシーン大元帥らと共に日本に襲来する筈だったが、世界最強・米海軍第7艦隊と相打つ形で落命し、日本上陸は叶わなかったとされている。云わば、普通の人間の集団と戦って相打ちになったのだから、強者としてのイメージは弱い。ただ、別作品の世界になるが、ウルトラマンAの戦闘能力が米海軍第7艦隊に相当すると設定されていることを思えば、第7艦隊の戦闘力は凄まじく、それと相打ちになったジェットコンドルは決して弱くない。

 ともあれ、ジェットコンドルの日本上陸は叶わず、そこから何らかの展開を経て暗黒大将軍として来日した頃にはデルザー軍団は壊滅し、大首領も宇宙へ帰還した後だった。
 となると作中暗黒大将軍が率いた軍団は大首領が地球に残した残骸を修復したものである可能性が高い。本作の撮影は本編ラストとほぼ同時期だったが、作中時系列で云えば立花藤兵衛はデルザー壊滅後の平和を満喫していたことから、デルザー壊滅よりそれなりの時間が経過しており、その間、暗黒大将軍は修復を進めていたのだろう。

 アトラクションに現れていた奇っ械人達が本物と判明した後、7人ライダーが即座に迎撃に出るや、奇っ械人達の脆弱振りは正に昭和の再生怪人のそれだった(苦笑)。
 暗黒大将軍の両脇に侍立していたオオカミ長官・ヘビ女がこれと云った強さを見せなかったのも再生品故だろう。

 結局推測の域を出ないのだが、暗黒大将軍もまた野心に燃えるデルザー改造魔人の一人だったのだろう。組織内にてどれ程のポジションを持っていたかは詳らかではないが、これは圧倒的膂力を保持していたマシーン大元帥、ジェネラル・シャドゥの懐刀に徹したヘビ女を除くデルザー改造魔人全員が同様である。
 「将軍」と自称していたことから、「成り上り者のシャドゥと一緒にするな!」との想いを持っていたかも知れないが、それならそれで同じ考えを持っていたオオカミ長官と、正反対にシャドゥに極めて忠実だったヘビ女を侍立させていたのが何処か意味深である。

 そして最後も推測になるが、恐らく暗黒大将軍はデルザー壊滅後に何らかの形で命を永らえたことで個人組織として世界征服に取り組んだのだろう。
 勿論、大首領も無ければ、仲間の改造魔人もいない。こうなると首領も幹部もない訳だが、それでも捨てきれない何かがあり、お山の大将的に世界征服に取り組みつつ、敢えて肩書は「大将軍」としていたのだろう。

 まあ、子供向け漫画に出てくるアメリカ人キャラクターの様に、自分の事を「ミー(me)は…。」と云っていた時点で、威厳は全くなかったが(苦笑)


注目点 何と云っても、その発想である。
 世界征服に限らず、大計画を実現するのに先立つものが大量に必要なのは世の常で、それを重視するのは良いのだが、その獲得手段が遊園地に来た子供の誘拐とその身代金と云うのがぶっ飛んでいる(笑)。

 少し現実に即した話をするが、営利誘拐ほど割に合わない犯罪は無いと云われている。
 相手の大切な存在を取り戻す為に金銭を要求する訳だが、その為にはまず相手に然るべき資産か、緊急集金能力が不可欠である。どんなに脅しても短時間では全く大金をかき集められない人間はごまんと存在する。
 後楽園ゆうえんちが財閥系の大金持ち親子しか来ない様な、セレブ御用達行楽地であると云う話を聞いたことはない(笑)。当然然るべき額の身代金を要求できない、要求しても話の進まない家庭もあるだろう。
 また、身代金である以上、「払えば返す。」という姿勢を示す必要がある。どんなに脅しても誘拐した子供を返す可能性が見込めない状況では相手も用意した金を渡さないだろう。そして誘拐した身柄を返した場合であれ、返さなかった場合であれ、金を受け取った途端に官憲の容赦ない追跡が始まる。
 逆探知が発達していなかった昭和時代において、営利目的誘拐犯人の多くは身代金受け渡し時に逮捕されていた。

 ともかく、営利誘拐を目論み、身代金を獲得した上にその後も逃げおおせた例は皆無と云って良い。しかも人質を殺めた場合、課せられる刑は「死刑か無期懲役しかない。」と云われており、リスクに対して実入りが釣り合わないことから、営利誘拐は平成・令和の世では絶滅したと云って良い程稀有な犯罪となっている(勿論、これには逆探知技術の発達もある)。

 勿論この特番が放映された昭和中期を同じには出来ないが、人質を抱える以上、身代金を得て逃げおおせるまでその存在を完全に隠匿し、様々な相手の応じた難しい交渉を行わねばならず、官憲が張り込んでる可能性が濃厚な場に乗り込まねばならないリスクに変わりはない。
 悲しい話だが、現実世界の誘拐犯の中には、人質を抱えることを困難として、成否に関係なく誘拐した子供を殺害した者も少なくはない(そんなケースが多い故、営利誘拐はその卑劣さとも相まって厳罰傾向が強い)。

 まあ、暗黒大将軍の金策はそれ程ぶっ飛んでいた訳だが(苦笑)、ジェットコンドルとしての戦死と、蘇生するまでの間にデルザー軍団が壊滅したいたことを思えば、組織力の脆弱さからも、組織再生の手始めとしては、せこい犯罪から始めるしかなかったのかも知れない。
 同時に、第一期シリーズが終わり、ファンサービスとして制作された特番で、7人ライダーの歴史を振り返る作品主旨を思えば、敵役を印象深い存在にする為にはぶっ飛んだキャラクターに走るしかなかったのかも知れない(苦笑)。


今後への期待 コメントし辛いなぁ………(苦笑)。
 何せ、個性派・野心家ぞろいで、仮面ライダーストロンガーを初めとするライダー達を苦戦させ、その多くが何週にも渡って出演したデルザー改造魔達と比較すると暗黒大将軍の歴史的存在感の薄さはどうしようもない。

 何せ30分しかない特番のラスト数分に出て来ただけで、(例え設定されていたとしても)強さも威厳も魅力も発揮しようがなかったことだろう。正直、『新仮面ライダーSPIRITS』に再登場しただけでも大したもんだと思っているが、それでも長年消息不明だったデッドライオンの再登場の方がインパクトは強かったと思う(笑)

 それゆえ、話題性からも暗黒大将軍を今後の作品で登場することはまずないと思われる。暗黒大将軍よりも再登場が望まれる悪の幹部は数多く存在するだろう。ただ、『新仮面ライダーSPIRITS』にてデルザー軍団が過去を含めて詳細に描かれていることを思えば、きっかけは有る様に思われる。
 それこそ、デルザー軍団の詳細に謎の多いことや、大首領が最後には宇宙に帰還したことを思えば、そこから派生するアナザーストーリーが誕生する余地は充分に残されている。演じた堀田真三氏も、暗黒大将軍よりは次頁のゼネラル・モンスターとしての再登場の方が望まれると思うが、両者が一緒に登場し、それを堀田氏が一度に演ずれば、これほどファン泣かせな演出は無いのではないかと思われる。


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令和三(2021)年四月二日 最終更新