5.黄金ジャガー…………将軍以上に名高い武人振り

キャラクター名黄金ジャガー
登場作品『仮面ライダー(スカイライダー)』
演者玄田哲章(声)
所属組織ネオショッカー
人間体無し
地位将軍兼サハラ支部幹部
指揮能力☆☆☆☆☆★★★★★
武勇☆☆☆☆☆☆☆☆☆★
部下の敬意☆☆☆☆☆☆☆☆★★
備考  CVの玄田哲章氏の仮面ライダーシリーズにおける唯一の担当。
概要 『仮面ライダー(スカイライダー)』の第31話、第32話に登場したネオショッカー怪人で、魔神提督によってサハラ支部から日本に召喚された。
 黄金の板金鎧で身を固めた黒豹型改造人間で、将軍の地位に在り、作の組織の一員ながら、典型的な武人だった。槍術と馬術に優れ、同時にそこに誇りを持ち、卑怯を嫌い、強者との一騎打ちに嬉々として挑む性格だった。

 日本に召喚されたのは、度重なる作戦失敗に怒り心頭だった大首領の怒りを鎮めるべく大神殿を建立する魔神提督から、妨害に来るであろう仮面ライダーの迎撃を担わされてのものだった。
 同時にモンゴル平原から召喚されていたトリカブトロンに比して武人・個人としての信頼度は段違いで、魔神提督は「ネオショッカー最強の戦士」と呼んでその来日を手放しで喜んだ。

 少し話は逸れるが、魔神提督は日本支部着任直後から「儂は無能が大嫌い。」と度々口にしており、良くも悪くも彼はこのポリシーに忠実だった。
 世に「無能嫌い」を主張する輩に限って他者の有能さを認めない者が多いのだが、魔神提督は有能と見た者は大いに歓待し、無能と見做していた者でも有能と見ればその認識を即座に改める潔さもある。
 その魔神提督が戦闘能力と武人振りを最初から最後まで賞賛していた。

 そんな性格ゆえ、黄金ジャガーは魔神峠にやって来た筑波洋に遭遇するや1対1の勝負を所望。正義の戦士たるスカイライダーがこれを断る筈もなく、両者の堂々たる一騎打ちは少し離れた位置で見ていた神敬介(速水亮)が「手を出す訳にはいかない………。」と断じざるを得ない程だった。

 この一騎打ちはトリカブトロンの横槍(正確には横矢)で水入りとなり、黄金ジャガーは勝負を邪魔し、手柄を横取りしたトリカブトロンへの怒りからトリカブトロンとの決闘を魔神提督に求め、これを止められると激昂してサハラ支部に帰らんとした。
 結局、まだXライダーがいることを基に宥められ、魔神峠に留まったが、大神殿建立後の生贄の儀式にXライダーと(当然の様に)生きていたスカイライダーが妨害に来ると彼が生きていたことを喜び、アリコマンド達を押しのけて再度の一騎打ちに臨んだ。

 単純な一騎打ちでは両者互角だったが、7人ライダーとの特訓で忍術系の技も会得していたスカイライダーは99の技の1つ・影渡り陽炎の術で槍術を封じ、槍を捨てた黄金ジャガーはその隙を突いたスカイキックの前に敗れ、スカイライダーを讃えて爆死した。


組織における将軍位 「将軍」の地位にあるとは云え、黄金ジャガーは完全な武人だった。恐らくは日本の鎌倉時代や中国の三国時代の様に、個人的武勇でもって「将軍」の地位を獲得したのだろう。
 そう考えてしまうのも、彼が一騎打ちにこだわり、殆ど単独行動を取っていたからに他ならない。つまり、組織の高官に属する者としては殆ど部下を指示するシーンが見られない。
 何せ、部下に命じたのは「どけ!どけ!」しかなかった(苦笑)。

 個性・性格から云っても、「何でこんな奴が悪の組織のネオショッカーに?」との疑問を抱かれた視聴者・ライダーファンも少なくないことだろう。推測に過ぎないが、恐らくは武の世界への憧れから、有能な者を活かして理想郷を作らんとするネオショッカーの理想に共鳴したのだろう。
 それゆえ、卑怯な手段を嫌い、魔神提督の指示には従いつつも、無駄な殺人を厭う様子も見られた。

 それは第32話で展開された礎石引きレースだった。
 大首領の怒りを解く大神殿を建立していた魔神提督は捕らえていた5人の少年達に橇による石引レースを命じた。大神殿の礎石を一着で運んだ者だけに生贄から逃れる権利を与えるとした訳だが、勿論これはトリカブトロン並みに悪辣な魔神提督が子供達の必死な行為を楽しまんとしたもので、助命する気など端からなかった。

 このレースに監視役のアリコマンドに変装して潜り込んだ洋(←珍しく最後までバレなかった(笑))は少年達にこっそり全員一緒にゴールインするよう命じた。
 つまり、全員が一着になれば誰も生贄にされなくなると云う、ルールの逆手取りで、思惑通り全員同時にゴールインした際に黄金ジャガーも、「一位になった者を助けると云われたな?全員を助けては如何か?」と進言した。
 それに対する魔神提督の答えは「一番になった者こそ大首領への生贄だ。」と云う、誠に「ネオショッカーらしい(神敬介談)」ものだった。
 前述したレースの途中でも、一人の少年が足を滑らせて断崖から転落しかけたのだが、その際にも黄金ジャガーは槍を投げて滑落を阻止し、助け上げんとしたアリコマンド(=洋)を押し退けて(苦笑)助け上げ、「怪我はなかったか?」と少年に声を掛けていた。
 そこへ余計なことをするなと抗議したトリカブトロンだったが、黄金ジャガーは「生贄の数を減らす訳にはいかん!」と怒鳴り返した自らの行為を正当化した。しかし洋の思惑通り全員同時ゴールを見て全員の助命を口にしたことからも、黄金ジャガーが生贄なる儀式及び、子供達が犠牲になるような事を厭うていたのは想像に難くない。

 ただ、魔神提督の見事な約束反故振りに反論していなかったことを見ると、やはり彼は組織の序列に忠実な、悲しい程までの軍人だったことが伺える。
 余談だが、少年を助け上げんとして黄金ジャガーに押し退けられた洋が結局黄金ジャガーと一緒になって少年を引き上げていたシーンはかなり好きだったりする(笑)。


注目点 何と云ってもその硬骨漢振りである。
 悪の組織の一員とは思えぬ程、正々堂々とし、卑怯な手段を嫌い、一着になった者を助ける礎石引きレースでも子供達の命を救わんとの意思が垣間見られた。殊に共闘したトリカブトロンがあんな性格だから、彼の好漢振りは際立っている(笑)。
 勿論、ネオショッカーはおろかライダーシリーズに在っても人気は絶大で、『仮面ライダーOfficiaiDataFile』が行った人気怪人ランキングでは(幹部を別にすればだが)ネオショッカー怪人の中で唯一ランクインを果たしている。

 武人としての強さにこだわった例ではグランバザーミーやドラゴンキングも挙げられるが、正々堂々の一騎打ちにこだわり、暗に幼き者の犠牲を厭うたのは本当に稀有で、CVを常連声優陣ではなく、玄田哲章氏が務めたことも注目される点だろう(少年ジャンプ黄金期を知り、『CITY HUNNTER』も好きなシルバータイタンとしては、玄田氏と云えば真っ先に海坊主が思い浮かぶ)。

 かように際立った個性と存在感を残した黄金ジャガー故に惜しむらくは「将軍」としての彼をもう少し描かれて欲しかったものである。同時に召喚した者でも、魔神提督による評価は黄金ジャガートリカブトロンで雲泥の差だった。となると、サハラ支部を初めとするネオショッカー陣営に彼を尊敬する者は数多いと思われ、それこそ黄金ジャガー率いる怪人2世部隊を見てみたかったものである。
 まあ、それでも部下をほっぽって、一騎打ちにこだわっただろうけれど(苦笑)。


今後への期待 原点回帰性の強い『仮面ライダー(スカイライダー)』だが、『仮面ライダー』にて度々登場した再生怪人の出番は少なかった。第27話・第28話でグランバザーミー率いる怪人2世部隊と、劇場版での登場のみだったので、スカイライダー強化後の再生怪人は登場していない‥‥………と思っていたら、黄金ジャガーは意外な形で再生を果たした。

 それは劇場版『仮面ライダースーパー1』でのことだった。終盤で仮面ライダースーパー1を包囲するように立ちはだかったドグマ復讐兵団なる再生怪人軍団に何故かネオショッカー怪人が3体混じっていた。
 3体の怪人は黄金ジャガー、クラゲロン、ゾンビーダで、設定ではネオショッカーもドグマもジンドグマもB26暗黒星団の流れを汲んでいたそうだから、ドグマの再生佳人としてネオショッカー怪人が出てくるのに異論はない。ただ、再生怪人に頻繁に見られる弱さ・いい加減さが黄金ジャガーとて無縁でなかったのは忌々しかった………(嘆息)。

 この時の黄金ジャガーは本編とは異なり、長剣と盾で武装していた。武器が変わるのが悪いとは云わないが、長槍を捌いての武人振りを見て惚れ惚れした身としては好ましくない。
 そして何より人気キャラクター黄金ジャガーといえども、再生怪人の通例通り然したる強さも見せず、ライダー史上稀有な高潔ぶりを示すこともなく、スパイダーババンと共に1号ライダーのライダーキックの前に散った。
 リーダー格の1号に討ち取られたことがせめてもの名誉と云えようか………?

 さて、この例を見るからに、今後黄金ジャガーがライダー作品に再登場するのは苦しいのではないかと考える。正確には「本編を見ていたときの期待通りの再来」が苦しいと思われる。ただでさえ半世紀に渡る仮面ライダーの歴史からも、劇場版で歴代悪の組織やその構成員怪人が出て来るのはいくらでもあり得るだろうけれど、幹部怪人や初期の怪人や特別な目立ち方をした怪人でもなかなか再登場は厳しい(鋼鉄参謀やグランザイラスですら令和3(2021)年4月23日現在未客演である)。

 となると、下手な役やチョイ役を触れないことからも黄金ジャガーの再登場はますます厳しいと思われる。だが、だからこそ再登場を期待したくなるのも黄金ジャガーの魅力と云えよう。


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令和三(2021)年四月二二日 最終更新