8.ジャーク将軍…………日本人イメージ的「将軍」

キャラクター名ジャーク将軍
登場作品『仮面ライダーBLACK RX』
演者高橋利道、加藤精三(声)
所属組織クライシス帝国
怪人体最強怪人ジャークミドラ
地位地球攻略兵団最高司令官
指揮能力☆☆☆☆☆☆☆★★★
武勇☆☆☆☆☆☆☆★★★
部下の敬意☆☆☆☆☆☆☆☆☆★
備考 ラスト2話のみ柴田秀勝氏が声を担当。
 演じた高橋利道氏は機甲隊長ガテゾーンの声を担当し、前作の『仮面ライダーBLACK』では大神官バラオムを担当し、クライシス怪人の人間体も数体(怪魔ロボットキューブリカン、怪魔ロボットシュライジンの人間体、怪魔異生獣バルンボルンが化けていたグレートマスク)演じていた。
 加藤精三氏は2014年1月17日に没するまで平成ライダー作品にてジャーク将軍の声を担当。
概要 地球の双子星として怪魔界に存在するクライシス帝国の地球攻略兵団最高指揮官。
 怪魔界は地球環境の汚染による悪影響を受けて滅びの日を間近に控え、50億の民を救う為、地球に移住せんとしていた。ただ、その移住は先住民にして(直接ではないものの)故郷破滅の原因となった地球人を殲滅・屈服させた上でのもので、その為に編成された地球攻略兵団を率いたのがジャーク将軍である。

 怪魔獣人大隊・怪魔妖族大隊・怪魔ロボット大隊・怪魔異生獣大体から編成された混成軍を一手に率いるその指揮権は極めて強く、信賞必罰を旨とし、作戦に失敗した者を24時間麻痺させて苦しませる肉刑から、指揮下からの追放と云った重罰を下す権限も皇帝から与えられていた。
 殊にシャドームーンを一時的に利用する為に煽てていたのを察しない四大隊長が勝手にシャドームーン抹殺を図って作戦自体を失敗させた折は、四大隊長全員に麻痺刑を下した。
 一方で、ガロニア姫(井村翔子)が怪死を遂げた際には、自分の首を刺し出そうとしたマリバロン(高畑淳子)を徹底して庇い、それが可能だったことからも権限の強さが伺える。

 かかる強権をもって四大隊長達に替わる替わる地球攻略の為の数々の作戦を指揮させたが、例によって仮面ライダーBLACKRX・南光太郎(倉田てつを)とその仲間達のために数々の作戦はすべて阻止され続けた。

 その間、クライシス皇帝(声・納谷悟朗)から処刑を仄めかされたり、部下のボスガン(演・藤木義勝、声・飯塚昭三)が自分に取って代わろうと目論んだり、「皇帝陛下の代理人」の肩書を持って査察に来た出すマダー大佐(松井哲也)から数々の恫喝を受けたりしながらも、概ねその地位と権力は不動のまま終盤を迎えた。
 だが、RXと仲間達によって数々の移住政策が阻止される内に怪魔界の滅亡は喫緊となり、業を煮やしたクライシス皇帝は最終時計や最強怪人を送る等し、結果的にゲドリアン(演・渡辺実、声・新井一典)とガテゾーン(演・北村隆幸、声・高橋利道)が彼から離反した果てに討死し、野心を捨てた後は懐刀に徹していたボスガンも戦死した。

 終に地球にやって来たクライシス皇帝は、三大隊長を失った失ったジャーク将軍に対して処刑を宣告。だが実際に行ったのは処刑ではなく最強怪人ジャークミドラへの変身だった。
 最後の出撃を命じられたジャークミドラは対RX戦の人質とすべく、疎開途上にあった彼の従兄妹である佐原茂(井上豪)・ひとみ(井村翔子)を捕らえんとした。
 兄妹への襲撃は佐原俊吉(赤塚真人)・唄子(鶴間エリ)夫婦の決死の抵抗、駆け付けた仮面ライダーV3・ライダーマン・仮面ライダーX、仮面ライダーアマゾンの妨害で阻止されたが、夫婦は惨殺され、Xとアマゾンが兄妹を保護する間の迎撃を買って出たV3・ライダーマンもその進撃を止められなかった。

 かくしてジャーク将軍=ジャークミドラは仮面ライダーBLACKRXとの最初で最後の一騎打ちに臨んだ。大刀を振るい、ロボライダーのボルティックシューターにも耐えた(ちなみに射手は茂)が、バイオライダーのスパークカッターを目に受けて敗色濃厚となった。
 この危機にマリバロンは救援を要請したが、ダスマダーは非情にも全能力を駆使してRXに勝てなかったジャークミドラを用無しと断じた。
 そんなジャークミドラに対してRXは、邪悪な皇帝に仕える彼を不幸であると呼び掛けて暗に降伏を促したが、ジャークミドラは戦いを捨てず、RXもリボルケインを抜き、リボルクラッシュで刺突した。

 最期を悟ったジャークミドラジャーク将軍の姿に戻り、自身を倒したRXの勝利を讃えつつも、彼でもクライシス皇帝には敵うまいとの捨て台詞と末期の大笑いを残して爆発四散して最期を遂げた。


組織における将軍位 恐らく日本人が「将軍」、殊に「征夷大将軍」に対して抱くイメージに最も近い存在と云えるのではあるまいか。
 日本史における征夷大将軍が、異民族と対峙する前衛基地である「幕府」において絶大な権力を持ち、兵士達の絶対者として振る舞った姿と、ジャーク将軍は見事にダブる。

 地球攻略兵団の最高指揮官として地球人と云う先住民して「夷狄」を攻める為に、クライス要塞と云う名の「幕府」に君臨するジャーク将軍はすべての軍属に対する絶対者で、「余」と云う一人称は日本以外の「将軍」が使うことは稀だが、日本の「将軍」=征夷大将軍は用いた。

 とかくその権力は絶大で、個々の作戦に関しては概ね寛容に担当の隊長に一任したが、その成否や命令系統の逸脱には厳しく、信賞必罰に公正だった。
 だが、皇帝に忠誠を誓いつつも、彼は唯々諾々と命令に従うだけの存在ではなかった。そのいい例がガロニア姫替玉作戦であろう。
 クライシス皇帝の皇女・ガロニア(井村翔子)はチャップの過失から謎の消滅を遂げた。この一大事に養育係も務めていたマリバロンは、自分のみならずジャーク将軍を初めとする四大隊長全員の処刑に繋がりかねないと思い、ジャーク将軍にも隠してガロニアの替玉を探した(ちなみに過失の有ったチャップは即座にマリバロンに殺された)。
 だが、同じく養育係を務めていたムーロン博士(井上三千夫)によって事実を知らされたジャーク将軍はマリバロンによる替玉作戦を認め、ガロニアと偶然瓜二つなために拉致されてきた佐原ひとみを怪魔界に送り、その記憶を消してガロニアの記憶と能力を植え付けることを許可した。

 云わば、主君であるクライシス皇帝を謀るもので、それこそ全貌が皇帝の耳に入れば最低でもジャーク将軍とマリバロンの処刑は免れないところである。
 そして更に驚いたのは、この作戦が失敗し、ひとみが元の記憶と共に奪い返された後にジャーク将軍は「RXに暗殺された。」と報告したことで事件が終わったことである。
 皇女の養育を命じられたと云う事は、必然的にその身辺警護も命じられているのは当然で、絶対帝政と見られる状況下では、マリバロンやムーロン博士に落ち度が無くても「守れなかった」という結果だけで処刑されてもおかしくない。
 クライシス皇帝の考えがどうあれ、報告後にこの一件で誰かが処刑された形跡はない。単純に考えるのもなんだが、このこともジャーク将軍が帝国内にて相当な地位を持つ証左と云えるのであるまいか。

 現場では最高権力者よりも現場指揮官による指揮の方が優先されることを意味する「将、外に在りては君命に従わざることあり。」と云う言葉があるが、ジャーク将軍はそれを地でいっている。


注目点 前項で殆ど書いてしまったな(苦笑)。
 それだけジャーク将軍が、地位・権力・権威において一般に(日本人にて)イメージされる「将軍」に近かった訳だが、改めて注目したいのは「多様な軍属を率いている」と云う点である。

 ジャーク将軍以前にも「将軍」の肩書を持つ悪の大幹部は何人もいたが、他の肩書を持つ大幹部と同格で、配下に居るのは一般の改造人間と戦闘員と時に科学者と云うのが通例だった。
 その点、ジャーク将軍はすぐ下の配下に四大隊長がいて、各隊長は怪魔獣人大隊、怪魔妖族大隊、怪魔ロボット大隊、怪魔異生獣大隊を率い、各軍属の怪人達は毎度の様に「怪魔○○大隊最強」を名乗っていたが(苦笑)、この台詞を信用するなら軍属の中にもある程度格の違いは有る様で、かように様々な軍属を率いた「将軍」はジャーク将軍が最初である。
 つまり、ヒエラルキーの上層部に立っていることを、具体性をもって示している点では歴代「将軍」より際立っていた。

 また、四大隊長の立場がかなり異なっており、各大隊にもそれが少なからず反映されているのをジャーク将軍が率いている事実も見逃せない。
 一応、ジャーク将軍指揮の下、各隊長と各大隊は軍律上、同格と見える。だが、純粋なクライシス人であるボスガン・マリバロンは少なからず正体不明のロボットであるガテゾーン、怪魔界で最も暗く寒いゲドラー域出身であるゲドリアンを見下していた。
 君命や祖国存続の為に互いに協力する意志はあったが、それが無ければ仲が良かったとは言い難く、それを時に叱りつけ、時に懲罰を与え、時に宥め、時に不仲を利用して発奮させていたのがジャーク将軍だった。

 加えて、注目したいのはジャーク将軍が「地球攻略兵団」においては絶対者でも、「クライシス帝国」においては絶対者でなかったことも日本史上の征夷大将軍とかぶるところである。
 前述した様に、地球攻略兵団に在っては皇女を死に至らしめた部下を庇い切る権力を保持し、一時自分に取って代わろうと画策したボスガンの抜け駆けを軽くいなす余裕すら持っていた(一方でボスガンが調子に乗ったときはその画策をもって沈黙せしめていたのも見逃せない)。
 だが、「帝国」と云う枠組みがクローズアップされるとジャーク将軍の絶対性は薄れ、その点も「将軍」という存在のリアリティーを醸し出していた。

 端緒となったのは査察官ダスマダー大佐の地球来星である。
 「皇帝陛下の代理人」と称したダスマダーは査察官の職務を傘に着て四大隊長の過失を露骨に責め、時にジャーク将軍の権限を無視するような言葉すら発した。
 ガテゾーンが度々「査察官の分際で!」と云っていたのを見ると査察官の身分そのものは大したことなく、ダスマダーは「虎の威を借る狐」と見られていた訳で、そんなダスマダーに対してジャーク将軍は基本、意に介さない態度で特に反論しない一方で部下達には「あんな奴に惑わされるな」的に諭していた。
 この辺り、勅使には表向き逆らえずとも現実に即した政務に淡々とした征夷大将軍とかぶると云えるかも知れない。

 そして番組終盤、帝国より移民第一陣が地球にやってきたが、地球攻略兵団は彼等を迎え入れるだけの環境を整えた占領地も、彼等に移植するだけの強化細胞も準備出来ておらず、第一陣500名は地球の環境に適応出来ず悶死して全滅するという悲劇が起きた。
 ダスマダーは「大失態だ!」として地球攻略兵団を難詰(←さすがにジャーク将軍達に反論の余地は無かった)し、このことを皇帝に報告するとした。これに対してジャーク将軍はマリバロンの意見を容れ、環境を整え易い地下に移民受け入れ基地を作らんとしたが、これも仮面ライダーBLACKRXに阻止された。
 しかも対峙する途中にマリバロンは過失から強化細胞の存在をRXに漏らしてしまい、ダスマダーは彼女を処刑せんとしたが、ジャーク将軍はダスマダーを闇討ちにした(←ちなみにダスマダーは死んで無かったが)。
 驚くマリバロンにジャーク将軍は彼女を「余の同志」として、「ダスマダーごときに殺させはせん。」と云い放った。同士の為とは云え、「皇帝陛下の代理人」を殺害することはともすれば「皇帝への反逆」と見られる可能性が極めて高い。
 恐らくジャーク将軍は絶対者である皇帝に反逆する気は全くないにせよ、地球攻略兵団の最高指揮官としての自らが統べる小世界を守りたいのだろう。そんなジャーク将軍の人間臭さは好きだ(笑)

 とは云え、地球攻略が遅々として進まず、怪魔界滅亡が秒読み段階となるとクライシス皇帝の直接介入も必然となった。
 「最終兵器」として最強怪人グランザイラスが送られてきたが、皇帝直属であるグランザイラスはジャーク将軍の命に従わず、ダスマダーの指示を受けた。
 この少し前にダスマダーはガテゾーンを抱き込んだ独断専行に出ており、地球攻略がジャーク将軍に一任されている筈なのを無視する動きも出て来た(この咎でガテゾーンは隊長職を解任され、指揮下から追放された)。

 結局、直後にボスガンもグランザイラスも戦死し、三大隊長を失ったジャーク将軍は死刑を宣告され、その執行替わりにジャークミドラとして出撃を命じられ、戦死した。
 ダスマダーの正体がクライシス皇帝だったことから、彼の言動に矛盾や憤りを覚える人も多いが、彼や四大隊長との人間関係がジャーク将軍をもっとも「将軍」らしい「将軍」にしたのは間違いないだろう。


今後への期待 ジャーク将軍の声を当てた加藤精三氏は惜しくも平成26(2014)年1月17日に享年86歳で天寿を全うされたので、今後のライダー作品に加藤氏がジャーク将軍の声を当てることは望めない(ついでを云うと、ウルトラシリーズのメフィラス星人に声を当てることも)。
 一応、石川英郎氏が公認してして声を当てられているので、新しいジャーク将軍に期待したいところである。

 新作のライダー作品に登場する過去の悪の組織の大幹部の存在感は第一期の幹部達のそれが大きい故、第2期、第3期の幹部達が活躍する機会はシャドームーンを除けば奪われがちだが、それでも独特の威厳を持つジャーク将軍の再登場に期待したいのはシルバータイタンだけではあるまい。


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令和三(2021)年五月五日 最終更新