7.メガール将軍…………VS親衛隊

キャラクター名メガール将軍
登場作品『仮面ライダースーパー1』
演者三木敏彦
所属組織ドグマ王国
怪人体死神バッファロー
地位将軍
指揮能力☆☆☆☆☆☆☆★★★
武勇☆☆☆☆☆☆☆★★★
部下の敬意☆☆☆☆☆★★★★★
備考 悪の組織の大幹部にしては珍しく、まともな人間だった時代の素性がはっきりしている。
概要 元は国際宇宙開発研究所にて宇宙開発に燃える青年科学者・奥沢正人なる人物だった。池上妙子(松香ふたみ)と云う一途な性格が好感を持てる恋人もいて、将来を嘱望された好青年だった。

 だが、その一生懸命さが裏目に出た。仮面ライダースーパー1に先駆けて惑星開発用改造人間に志願するも、改造手術は失敗に終わった。しかも研究所はこの出来事を隠蔽した(←道場主「『ウルトラマン』でジャミラの存在を隠蔽した某国や科特隊パリ本部みたいだな。」)。
 自らを襲った不運と変貌した醜い体に失望し、その責任逃れに走った周囲への絶望から奥沢はすっかり人間を憎むようになり、翌日には研究所を出奔した。
 その後の詳しい経緯は不明だが、闇の王国ドグマの帝王テラーマクロ(汐路章)に拾われ、それに対する恩義からドグマ王国とテラーマクロに忠誠を誓い、地球を攻略する兵団の将軍に就任し、メガール将軍となった。

 作中ではアリゾナの宇宙開発局を襲撃したのが最初で、自分達に従わないヘンリー博士(大月ウルフ)以下局員達を抹殺するも、仮面ライダースーパー1・沖一也(高杉俊介)には逃げられ、来日後、何かと詰めの甘いドグマ怪人達を叱咤し、時に不仲な親衛隊と対立したり、出来の悪い怪人や不意の裏切者に頭を痛めたりしつつも数々の作戦指揮を行ったが、そこはそこ悪の組織の宿命でことごとくスーパー1に阻止された。

 当然、テラーマクロの怒りを買うこととなり、第21話にてスーパー1の能力を徹底に調べ上げた上で、同等の能力を持つバチンガルにスーパー1のファイブハンドを奪うよう命じたが、慢心したバチンガルがスーパーハンドトレーダーハンドを奪っていなかったために敗れ、終に自らの出陣を決意。
 その決意に対して、「余の為に死ねるか?」と問うテラーマクロにメガール将軍は強くこれを肯定。その根拠として、人間への絶望から死すら願っていた自分に生き甲斐を与えてくれたことへの恩義を示し、同時に人間への憎しみも露わにしていた。
 そしてドグマ怪人死神バッファローとして仮面ライダースーパー1と対峙したが、そこにかつての婚約者・妙子が現れた。

 妙子を前に少なからぬ動揺を見せたメガール将軍=奥沢正人。この手の悪者にしては珍しく自分が奥沢であることをあっさり肯定し、スーパー1からは技術の向上から奥沢の体が治せることを聞き、妙子を連れて来た谷源次郎(塚本信夫)・草波ハルミ(田中由美子)も妙子の想いや、やり直しの可能性から奥沢に人間社会に戻ることを説いた。

 4者の説得が何処までメガール将軍に響いたかは不詳だが、表情・佇まいからも幾許かの影響を与えていたのは間違いないだろう。メガール将軍はかつて妙子と将来を誓った際に共に所有したロケットを取り出した(←つまり悪の組織に身を投じても妙子の事を忘れていなかったのだ)。
 モニタリングを見ていた親衛隊は(元々不仲だったこともあって)即座にメガール将軍を「裏切り者」と見做して討ち取りに行かんとした。
 それに対してテラーマクロは、「メガールに余は裏切れん。」として親衛隊を止めたが、何てことはない、メガールの脳にも他のドグマ怪人同様服従カプセルが埋め込まれていたに過ぎなかった。

 結局、服従カプセルの発動で半ば狂わされたメガール将軍死神バッファローに変身し、止めに入った妙子をハリケーンミキサーで撥ね殺してしまった………。
 これに怒り心頭のスーパー1との最終決戦が展開され、スーパーライダー閃光キックを食らった死神バッファローは「ドグマよ!永遠なれ!」の軍団賛美の台詞を残しつつも、メガール将軍ではなく奥沢真人の姿をだぶらせながら壮絶に爆死した。

 結局闇の王国から真っ当な人間社会に戻れなかったメガール将軍だったが、残されたロケットにドグマアジトの地図が記載されていたのを見た一也は奥沢が愛と正義を心の片隅に残していたことを感じ取るのだった。


組織における将軍位 メガール将軍は「将軍」=現場指揮官として適度に現場に出て、現場に出ないときでもアジト内にてそこそこの指揮官振りを見せている。
 地位ある者として親衛隊と対立したり、ドグマ怪人の詰めの甘さを指摘したり、時に裏切者に命を狙われたり、それに対抗して何人もの影武者を擁していたり、と歴代悪の幹部の中でも卓越した「将軍」らしさを見せていた。

 彼の「将軍」としての存在感を際立たせていたのは、組織内における対人関係にあると云えるだろう。単純に指揮官や切り込み隊長として優れた大幹部は何人も存在する。ただ、多くの大幹部は他の幹部と接触が無かったり、有っても単発的なものだったり、同等ゆえにどっちがどっちとも云えない物ばかりだった。
 だが、メガール将軍の場合、彼と同等かあるいは若干格上である親衛隊の存在が「将軍」として組織における縦横の繋がりに苦悩する彼をクローズアップさせていた。

 メガール将軍と親衛隊が不仲だったのは誰の目にも明らかで、帝王テラーマクロもそれを知りつつ両者が対立することで発奮することを狙っていた帰来が伺える。恐らく四六時中テラーマクロに侍っている親衛隊はB26暗黒星雲の出身で、地球出身のメガール将軍を成り上り者か余所者と見て嫌っていたのだろう。
 それに対してメガール将軍は親衛隊をうざったく思っても、相互不干渉であればいいと思っていた様である。過失から、服従カプセル挿入前にニガンニーに逃げられた親衛隊は、やっとの思いでカプセルを入れるや、自分達の責任は果たしたと云ってメガール将軍に対して「後は知らん!」的な態度を取って撤収し、それを軽蔑の眼差しで見送ったメガール将軍の態度が両者の関係を端的に表していたと云える。

 これ以外にも親衛隊はことある毎にメガール将軍をテラーマクロに讒訴したり、その言動に難癖をつけたりし続けたが、メガール将軍自身はテレ―マクロ一筋で、親衛隊には「用はない。」と云いたい気な態度を貫いた。
 組織に手ある程度の地位に就けば、縦横の関係に苦しむのは古今東西世の常である。まして目的の為には非道な手段も辞さない悪の組織に身を置いていれば、影武者を置いたり、相手の生死を常に気にしたり、組織の内外で相手に応じて硬軟両面の対応を取ったりしたメガール将軍は軍人以上に、政治的にも「将軍」としての存在感を一際強くはなった存在と云えよう。


注目点 何と云っても様々な意味で「人間を捨て切れなかった。」に尽きる。
 メガール将軍自身は人間であった過去を捨て、人間を敵と見做し、自身はドグマ王国の一員と自認していたと思われるが、ドグマ王国側は王国側で彼に人間性が残っていたことを疑い続け、心のどこかで池上妙子を忘れられず、愛し続けていた。

 改造手術の失敗、それを隠蔽した宇宙開発研究所への絶望、よりによって拾ってくれたのが悪の組織の首魁、と云った数々の不幸が彼をして屈指の不幸な存在になら締めたことに関しては拙作「徹底検証、どっちが悲惨?」でも取り上げている。

 歴代悪の幹部の中には、元が人間だったことが明らかな者も多いが、その多くは設定上のもので、作中でそのことが触れられたものは極少である。まして悪に走る前に愛し合った人物が眼前に現れた例はこのメガール将軍以外は皆無に近い。
 そして掛かる苦難の人生を歩んで来たことは悪に走った後もメガール将軍を苦しめ続けて来たであろうことは想像に難くない。彼の性格の一つに「用心深さ」があるが、これも善に絶望し、悪においても白眼視されてきた悲惨極まりない人生故に用心深くならざるを得なかったという悲しき側面が伺える。

 勿論、だからといって、世の正義や法に照らし合わせてメガール将軍の為した・為そうとした悪行が許される訳ではない。現実の世にも家庭環境の不遇や人生における失敗への絶望から反社会団体やテロ組織に身を投じる者がいるが、彼等の反社会的行為やテロ行為が許される筈はない(裁きにおける情状酌量の余地にはなるかも知れないが)。
 そう云う意味ではメガール将軍は悪の組織の大幹部達の中に在って、最もリアリティーの強い人物として今後も注目されることだろう。


今後への期待 メガール将軍を演じた三木敏彦氏も、いまだマスカーワールドに再登場していない。
 三木氏には甚だ失礼だが、歴代悪の組織の大幹部を演じた俳優諸氏に在って、三木氏の知名度は御世辞も大きいとは言い難い。『特捜最前線』、『はぐれ刑事純情派』、『葵−徳川三代』にて客演したのを観たことはあるが、重要な役所とは言い難かった(ちなみに三作ともメガール将軍と同様の髭を生やしていた(笑))。

 だが、映画、ドラマ、声優、部隊、と活躍の幅は広く、厳つい風貌ながらどこか寂しさを漂わせる独特の表情は三木氏特有のものと思っているので、令和3(2021)年4月23日現在御年81歳の三木氏が、その年齢に相応しい人生を重ねた重みと悲哀を漂わせた演技をマスカーワールドにて展開されることを切に望んでいる。

 全くの余談だが、昭和15(1940)年1月17日生まれの三木氏は、平成13(2001)年の誕生日に還暦を迎えられたが、奇しくもこの年この日、ヨロイ元帥を演じた中村文弥氏が悪性リンパ腫のために55歳の若さでこの世を去られた。
 「だからどうした?」、「ただの偶然だろ?」と云われれば返す言葉は無いが、ライダーファンとしては何かを感じずにはいられない。


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令和三(2021)年四月二二日 最終更新