ダスマダーDataBase | |
肩書き | 大佐にして皇帝陛下代理人にして地球攻略兵団査察官 |
配役 | 松井哲也 |
キャラクターボイス | 新井一典 |
主君 | クライシス皇帝 |
配下 | 最強怪人 |
武器 | 長剣 |
クライシス皇帝DataBase | |
肩書き | クライシス帝国皇帝、全知全能の神 |
キャラクターボイス | 納谷悟朗 |
配下 | ジャーク将軍・ボスガン・マリバロン ガテゾーン・ゲドリアン 怪魔獣人・怪魔妖族・怪魔ロボット 怪魔異生獣・50億の臣民 |
武器 | 長剣、怪光線(頭部の三つの顔より照射)、光槍(口腔内より発射) |
ジャーク将軍という中間管理職を考察するにおいて、部下との対人関係は勿論だが、上司であるクライシス皇帝との関係を見落としては片手落ちである。
まずいの一番に述べておかなければならないのはクライシス皇帝が絶対的支配者であり、暴君である、という事である。
作品を見る限り、クライシス皇帝とジャーク将軍の間に位置する階層は見当たらない。つまりクライシス帝国のヒエラルキーはクライシス皇帝を頂点にして、その直属の配下がジャーク将軍である、と推測されるのだが、ボスガンがその後釜を狙っていたり、最強怪人グランザイラスがクライシス皇帝か、皇帝の代理人たるダスマダーの命令にしか従わなかった面を見ると事はそう簡単ではないようである。故にクライシス皇帝とジャーク将軍の君臣関係を考察するのに以下の3つの視点で見てみることにする。即ち、
■クライシス皇帝とジャーク将軍の関係
■ジャーク将軍とダスマダーの関係
■ダスマダーと最強怪人ジャークミドラの関係
である。
最初のクライシス皇帝とジャーク将軍の関係だが、基本的には侵略を命じる主君と忠実な配下の関係である。
君臣関係を見る時、千年前から怪魔界に君臨し出したクライシス皇帝の地球侵略にジャーク将軍はこれといった疑問も挟まず兵団を率いて地球にやって来たが、これは怪魔界が滅びの運命に晒されている事を思えば取り立てて疑問に思う事ではない。
一方でクライシス皇帝も地球にやってきて以後のジャーク将軍に対して時折恫喝や督戦を伝えるだけで、具体的な戦術・戦略を伝えることも無く、一切合切を一任している様にも見える。
だが、この二人、そう単純な君臣関係でもない。まず「将、外に在りては君命に従わざることあり。」という孫子の言葉を宇宙人であるジャーク将軍が知っているとは思えないにしても、自らの軍属内での賞罰を見てみるとこの言葉通りの側面が見えてくる。
その最たるものがガロニア姫消滅時にマリバロンを罪に問わなかったことだろう。勿論強化細胞の機密を漏らしたマリバロンを庇ってダスマダーを闇討ちにしたことも同様である。
つまりジャーク将軍にとって直属の部下を守る為には君命や、君命を奉じてやってきた勅使、更には皇女さえ二の次なのである。勿論ジャーク将軍が表立ってクライシス皇帝に歯向かうシーンは皆無なのだが、ジャーク将軍が単純な忠義者ではなく、与えられた権力も大きいことは大変興味深い。
一方でグランザイラスのようにクライシス皇帝の命で地球攻略に加わりながらジャーク将軍の命には従わない等という存在があったのだから、クライシス皇帝がどこまでジャーク将軍を重宝していたかもまた怪しくあったりする。
所詮、帝国といえども悪の組織はボスもボスなら配下も配下と見るのは穿った物の見方だろうか?
続いてジャーク将軍とダスマダーの関係である。
このサイトを見るような方には常識だが、第28から登場し、地球攻略兵団の査察にやって来て、皇帝の威光を傘に着てごり押しを始めた査察官ダスマダー大佐の正体はクライシス皇帝その人である。だがマリバロン一人が薄々感付いていたような素振りを見せただけで他に気付いた者はいなかったようである。
しかしながら部下の数々の独断専行や秘密裏の行動に優れた洞察力を見せていたジャーク将軍のこと、ダスマダーの正体に感付いていた可能性は充分にある。
その為かどうかは不明だが、ジャーク将軍は彼を蔑ろにしているとしか思えないダスマダーの僭越的な言動に殆ど異を唱えず、黙殺に近い態度を通した。
勿論要所要所では質問・反論もあったが、これがジャーク将軍がクライシス皇帝への忠誠心から皇帝陛下の代理人としてのの立場を慮ったのか?それとも彼の部下である四大隊長が「査察官の分際で!」という言葉をしばしば挙げていたように査察官に過ぎないダスマダーを軽く見ていたのか?
どちらを見るかは人それぞれだが、シルバータイタンは後者と見ている。第38話でマリバロンを庇ってダスマダーを闇討ちにした際の台詞が「ダスマダー如きに殺させはせん。」であったことからも、ジャーク将軍のみならず、彼の部下である四大隊長までがタメ口・呼び捨てのダスマダーを甘く見はしないまでも、恐れていたとは思えない。
それは同時に、クライシス皇帝の威光が人伝ではジャーク将軍を完全服従させしめる程ではなかった事も示していて、これまた興味深かったりする。
最後にダスマダーと最強怪人ジャークミドラの関係を見てみたいが、最後の最後とあって前述の二つのパターンとかなり様相が異なる。
第46話でクライシス皇帝は初めて(本来の姿で)地球に降り立ったのだが、拝謁に来たジャーク将軍に対して地球攻略が進まないどころかボスガン、ガテゾーン、ゲドリアンの三大隊長を失った咎で仮面ライダーBlackRXに勝てそうにないジャーク将軍の処刑を宣告した。
頭髪とも腕ともつかぬ触手で絡め取られ、宙に持ち上げられて苦悶の声を上げるジャーク将軍の姿を見かねて、マリバロンは普段犬猿のダスマダーにジャーク将軍の命乞い要請を半狂乱になって懇願した。
だが実際に行われたのは処刑ではなく、最強怪人ジャークミドラへの変貌で、ダスマダーは皇帝の代弁を務めるかのように(ま、実際には同一人物が喋っているわけだが) クライシス皇帝がジャーク将軍に恐るべき力を与えてジャークミドラとしたことと、仮面ライダーBlackRXの抹殺を命じた。
仮面ライダー3人と互角以上に戦える力(←設定による)、仮面ライダーV3とライダーマンのタッグを問題にしない力(←実際の戦績)を得た代償か、最強怪人ジャークミドラとしてのジャーク将軍は言葉も殆ど発さず、グランザイラス同様のクライシス皇帝かその代理人・ダスマダーの命に従うだけの存在に成り下がったかのようであり、それはさながら地球攻略兵団最高司令官たるジャーク将軍が査察官に過ぎないダスマダー如きに屈した瞬間の様であり、寂しさを禁じ得なかった。
もっとも、佐原夫妻を惨殺し、V3とライダーマンを敗走せしめた直後に本来のジャーク将軍の姿で光太郎と佐原茂・ひとみ兄妹、白鳥玲子、霞のジョー、的場響子、10人ライダーの前に現れて一騎討ちの申し込みと、RXに敗れた2人の隊長、ボスガン・ガテゾーンの仇を討つ意を述べていたので、全くの意志なき存在に成り下がったわけではないのだろうけれど(余談だが、自ら指揮下追放を宣告した後にRXと戦って戦死したガテゾーンの敵討ちを述べていたことはジャーク将軍という人物を見るにおいて注目に値するだろう)。
結論から云えばボルティックシューターの銃撃に耐えるボディと大刀を振りかざしてV3・ライダーマンのタッグを凌駕した膂力、ロボライダーをぶん回す念動力をもってしてもジャークミドラバイオライダーの剣技の前に片目を潰され、勝機を失うまでに追い詰められた。
マリバロンは再度ダスマダーにジャークミドラの助命を懇願したが、ダスマダーは「奴は全戦闘力をもってしてもRXに勝てなかった。あんな奴にもう用は無い!」と非情且つ分超えた断を下した。
このダスマダーの台詞は彼の正体がクライシス皇帝であることを知れば、クライシス皇帝もまた歴代悪の組織の首領の如く、「役に立たなくなった者は死あるのみ。」の思想が覗えて興味深い。
昭和仮面ライダーシリーズに出てきた悪の組織はショッカーからバダンまで全て同一の存在が背景にあった事が各々の作品や『仮面ライダーSPIRITS』からも明白だが、『仮面ライダーBlack』の創世王や『仮面ライダーBlackRX』のクライシス皇帝がバダンまでの大首領と関係があるのかどうか不明だが、「役立たずは死ね。」の思考パターンは一つの共通項と見てもおかしくないだろう。
最終的にジャークミドラとダスマダーの関係は、姿や立場こそ違えど実際には本来のクライシス皇帝とジャーク将軍の関係に復したとも云える。
地球との双子の星で、地球の環境破壊のあおりを食って滅びの運命を向かえた怪魔界=クライシス帝国。その帝国の皇帝は邪悪で横暴な人物だったが、50億の臣民を救わなくては、との自覚はあり、その使命を果たす為に忠実なる家臣の一人がジャーク将軍だった。
その使命とする所、任務とする所が常に同じであったために、二人は姿と立場を越えて常に同じ関係にあった。だが滅びの運命と様々な意志を背負うが故に二人の共闘は背景・プロセス・結末供に余りにも悲しいものだった。
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特撮房へ戻る令和三(2021)年五月一九日 最終更新