File4.ドグマ王国………絶望者が信じた理想郷

侵略者名 ドグマ王国
登場作品 『仮面ライダースーパー1』
登場話 第1話「惑星改造人間の大変身」〜第23話「不死身の帝王テラーマクロの正体は?」
侵略目的 帝王テラーマクロを頂点とした絶対君主制確立
侵略手段 改造人間及び各種兵器による地球制服
地球人への処置 真に優れ、且つ王国に忠誠を誓う者は優遇



侵略者概要 B26暗黒星雲に出自を持つ暗黒組織で、同じ出自を持つネオショッカージンドグマと直接の繋がりはない。ただ、同じ「ドグマ」の名を含み、組織の雑兵であるドグマファイターと、ジンドグマの雑兵であるジンファイターの容姿が酷似していることから、バックボーンに同じ存在がいても不思議ではないと思われる。

 歴代悪の組織にあって、首領である帝王テラーマクロ(汐路章)の王権はかなり強固で、末端の怪人までもが(一部例外を除いて)今際の際に、「テラーマクロ!!」と叫んでいた。一方で、軍団を指揮するメガール将軍(三木敏彦)と親衛隊が不仲なことや、組織の一部に裏切者が出ていたことを鑑みると一枚岩とは云い難かった。
 一応、組織の構成員は(全員がそうとは断言出来ないが)頭に服従カプセルを埋め込まれている様で、テラーマクロへの忠誠はかなり強固だった。

 歴代悪の組織同様、組織力・科学力・武力(暴力)を駆使しての世界征服を目論み、その手段として要人暗殺や宝物強奪を辞さず、実際に多くの人々が犠牲になっていた。
 また組織の一員であっても、反逆者と見做された場合は勿論、側近であってもテラーマクロがカイザーグロウとなる過程を見た者はその場で殺された。

 やや特徴的だったのは、テラーマクロの在り様で、彼自身は世界征服の成立よりもその過程を楽しんでいた節が強く、仮面ライダースーパー1誕生と云う最大の障害発生に対しても、多少の障害がある方が面白いとの旨を口にしていた。
 かなり気紛れも強く、世界征服にどこまで真摯だったか疑わしくもあった。



人類への接触 ドグマ王国は一言で云うなら、選民思想的組織であった。ただ、その「選民」は人種によるものでは無く、純粋に能力によるものだった。
 同じ出自を持つゆえか、ネオショッカー同様、組織にとって、「役立つ」と見た者は例え「昨日の敵」であっても「今日の友」と云わんばかりに躊躇なく組織に組み入れようとしていた。
 第1話にて沖一也(高杉俊价)の恩師であるヘンリー博士(大月ウルフ)を組織の一員に迎えんと画策し、手荒に拉致してきたファイヤーコングメガール将軍が殴りつけてもいた。

 この時、ヘンリー博士を説得せんとしたメガール将軍の組織解説がドグマの方針・理想を端的に表わしていた訳だが、ドグマは真に優れた者・美しい者だけを活かし、弱き者・劣った者は抹殺し、真に理想的な社会を築かんとしていた。

 有能且つ、ドグマの思想に共鳴出来る者にとっては良い組織だったかも知れない。
 ただ、そこに至る過程は歴代悪の組織同様、凶悪である。理想の社会を築く為とは云え、その障害となる者の排除は破壊・殺人・誘拐と云ったありとあらゆる悪事によるテロ行為の連発である。
 当然、ドグマが最終的に目指す理想郷に共鳴する者も少なくないとは思われるが、その過程への随身にまともな神経では耐えられないだろう。
 過去に相当なトラウマを持ち、テラーマクロに恩義を感じていたメガール将軍=奥沢正人でさえ、(服従カプセルを埋められて尚)完全には恋人への愛情を捨ててはいなかった。やはりテラーマクロ並びにドグマ王国もまた多くの人々の生命・権利・想いを踏み躙る邪悪な組織と断じざるを得ないだろう。



垣間見せた善意? 同じ選民思想に染まっていても、「自分達だけが生き残るべき存在」と見ていたネオショッカーに対し、「例え今は敵でも、有能で忠実なものは優遇して生かすべき」と考えていた点においてはドグマ王国の方が公平だったと云える。

 ただ、その選民眼はテラーマクロの独断によるところが大きかったと思われる。というのも、第22話でメガール将軍が戦死すると、第23話にてテラーマクロは沖一也に対して、「余の息子になれ。」と求めた。
 推測だが、親衛隊がこれを聞けば激怒したことだろう。ドグマ王国と云う組織の観点に立てば、一也は数々の作戦を壊滅させ、組織の構成員を何十人も殺害した不倶戴天の敵である。いくらメガール将軍と仲の悪かった親衛隊でも、最大の敵である一也を主君の世子に据える等、絶対的君主による鶴の一声でも物凄く受け入れ難かっただろうと思われる。

 逆の云い方を云えば、ドグマ王国は「テラーマクロのお眼鏡に適う」と云う一点が満たされれば、その能力に応じて公平・平等に受け入れる姿勢を持っていた組織と云える。
 例えそれまで組織の部下を散々殺してきた敵対者でも受け入れる意思は持っていた訳で、また赤にも青にも染まっていない子供達を組織の色に染めようとしていたことを思えば、テラーマクロ個人の意思に準拠するところが大きいとはいえ、「優秀な者を優遇する」と云う姿勢はかなり公平で厳格であったと云える。

 まあ、ドグマが一方的に基地建設予定地と見ていた土地を、それとは知らずに不動産屋から購入してマイホームを建てた一家を訳の分からん裁判にかけて死刑にしようとして、仮面ライダースーパー1の介入を招くと云う間抜けな一面を持っていたから、厳格ルールもテラーマクロの独善や気まぐれでどこまで筋が通ったかは怪しかったが(苦笑)。


 ともあれ、上述した様に、ドグマは高名な科学者や有能者は敵でも招き入れんとの姿勢を持っていた訳だが、一般ピープルに対してもそれなりの受け皿を考えていたことに注目したい。
 政治家とも有力者とも思えない若者達に対して組織が選ぶ婚姻を強要することで自分達の目指すコミュニティーを構成しようとしたり、一地方の空手道場を乗っ取り、青少年の健全育成を掲げつつ、正義の組織を騙ってその地方の青少年を支配下に置こうとしたり、といった動きも見せてもいた。
 また学習塾を装って成績優秀な子供を集め、ドグマに役立つ者を育てようとしていたこともあったので、「自分達のお眼鏡に適った者だけが生き残るべき」と考えていたネオショッカーの在り様と似てはいたが、「自分達の理想的な存在に育てよう」との意欲を見せていた分、無差別テロの多かったネオショッカーよりはドグマ王国の方が真剣に理想的な社会を考えていたと思われるし、たとえその過程は許されなくても、ドグマの野望が達成した暁には、生き残れた者にとっては素晴らしい社会が到来していたかも知れなかった。

 まあ、テラーマクロの気紛れと、王国を束ねる将軍と親衛隊の不仲を見れば、理想社会は築けても、その持続にはかなりの疑問符が付きまとうのだが(苦笑)。


次頁へ
前頁へ戻る
冒頭へ戻る
特撮房へ戻る

令和五(2023)年二月一〇日 最終更新