File5.ジンドグマ………味方にどこまで優しい?

侵略者名 ジンドグマ
登場作品 『仮面ライダースーパー1』
登場話 第24話「レッツゴー!!ジュニア・ライダー隊」〜第48話「地球よさらば!一也宇宙への旅立ち!!」
侵略目的 組織による地球統治
侵略手段 改造人間及び各種兵器による地球制服
地球人への処置 真に優れ、且つ王国に忠誠を誓う者は優遇



侵略者概要 前組織であるドグマ王国同様、B26暗黒星雲に属する存在なのは設定に明記されているが、ドグマの方ではその存在に全く触れていなかった。第23話にて首領・悪魔元帥(加地健太郎)の放ったカラスがカイザーグロウの不死性を阻害する要因となり、それによってカイザーグロウ帝王テラーマクロが倒されたことに高笑いしていたことから、ジンドグマドグマ王国は御世辞にも仲の良い組織同士とは云えないだろう。

 悪魔元帥を事実上の首領として、四人の大幹部鬼火指令(河原崎洋夫)、幽霊博士(鈴木和夫)、妖怪王女(吉沢由紀)、魔女参謀(藤堂陽子)が個々に日用品(凶器になりそうなものもあれば、通常なら凶器になり得なさそうなものも対象)の能力を植え付けられた改造人間を率い、ジンドグマに逆らう者は直ちに処刑。必要な物は略奪し、無用な物は破壊せよ」という憲法(と云うか標語………(苦笑))に則って、社会において大きな影響力を持つ人物(学者・資産家・重要施設責任者・政府組織高官等)に服従を強い、様々なテロリズムでもって既存の日本社会体制の崩壊を目論んでいた。

 シリーズ初となる複数幹部による組織運営だったが、四幹部の仲は芳しくなく、誰かが作戦を立てればそれを揶揄し、失敗すれば嘲笑うと云う見苦しいものだった。ただ、作戦に従事する幹部及びその怪人を他の幹部やその軍属が妨害・邪魔することは皆無だったし、鬼火指令妖怪王女が戦死した時に幽霊博士はかなり無念を滲ませていたので、恐らくは路線の違いから価値観を異にしつつ、手柄争いでいがみあう仲なのだろう。

 例によって数々の作戦を仮面ライダースーパー1・沖一也及びその仲間であるジュニア・ライダー隊に阻止され、鬼火指令妖怪王女幽霊博士戦死後の最終局面にて悪魔元帥魔女参謀が国際宇宙科学研究所を襲い、同書を乗っ取ることで何らかの最終作戦に出るかと思われたが、これもスーパー1に敗れ、悪魔元帥魔女参謀共々戦死したことでジンドグマは壊滅した。



人類への接触 歴代悪の組織の多くがその存在を一般社会に隠しており、必要な人材は基本的に拉致し、厳重な監禁下にて服従・協力を強いていたのに対し、ジンドグマは正面から堂々と組織の一員となり、服従することを命令していた。まあ、不必要に世間にその存在を知らせた訳ではないが。

 その流れは、まずは上述の意をしたためた「命令書」を送りつけるものだった。その文面は服従を命じるだけのものなので、それを見るまでジンドグマの存在を知らなかった者には訳が分からない(苦笑)。TV画面上に現れた多くの被害者は子供が悪戯で書いた脅迫状的に捉えて、ごみ箱に捨てようとした者が多かったのだが、その際には既に身近にジンドグマ怪人が肉迫していた。
 恐らく、服従を命じられた者はその時点でジンドグマが実在する悪の組織であることを知るのだろう。ただ、普通に考えていきなりそんな怪人が現れ、「はい従います。」と答えるのは余程の臆病者か変人だろう(苦笑)。
 ストーリー上、多くの場合は突如現れた怪人に狼狽え、助けを求め、訳の分からない組織への服従に拒否的な態度を見せ、逃げ惑う。勿論ジンドグマ側では忠誠を拒否する者には殺害を試みる。
 まあ、悪の組織としては分からないでもない。組織に敵対する有能者は正義の側(別の云い方をすれば既存政権や既存治安維持組織)に協力する可能性が極めて高くなる。現実の歴史でも、古代中国の秦では忠誠を誓わないと見た有能者は冷酷に処刑した。偏に他国の力となって自国を脅かすことを警戒しての措置である。

 一方で、第42話にて開かれた仮装パーティーに多くのジンドグマ協力者が列席していて、彼等が純粋にパーティーを楽しんでいたところを見ると、ジンドグマに喜んで協力した者も決して少なくなかったと思われる。また四幹部達は実に丁重に出席者達を歓待していた。
 この第42話にて、一也はNo.0044に宛てられた仮装パーティー招待状を偶然入手したことで、これに参加して悪魔元帥を討ち果たさんとしたのだが、パーティーの場に本物のNo.0044(北九州男)が現れたことで、潜入が露見した。
 この時、本物のNo.0044は自分がジンドグマに常日頃かなりの援助をしており、そんな自分が招待されていないことに憤慨していた。
 まあ、実際には送られた招待状が一也達の手に入ったことで本物の元に届かなかったのだから、ジンドグマがNo.0044を軽視していた訳ではなかったのだが、注目されるのは、改造人間にされたとも思えないNo.0044が、並み居る大幹部達を前に自分への冷遇(←くどいが誤解)を大声で詰っていたのだから、ここからジンドグマは組織に忠誠を誓った協力者にはかなりの優遇を行っているのではないか?と云うことが類推される。

 この後、仮面ライダースーパー1がその場にいることに気付いたパーティー参加者達は(No.0044も含め)全員が一斉に逃げ出した。体を張ってまでジンドグマのために戦おうとしていなかったとも取れるし、(現実社会での)正体がバレることを懸念してとんずらしたとも取れる。
 いずれにせよ、ジンドグマは改造手術を施すことなく、本来の姿・社会的地位のまま一般ピープルを優遇することもある組織だったと云える。

 勿論、組織に反抗的と見れば殺害を辞さないから悪の組織に変わりは無いし、同時に現実の組織がどんな大義名分を掲げていても、「組織に反抗的」というだけの理由で殺害に掛かる様ならそれは「悪の組織」と言わざるを得ない。



垣間見せた善意? 実は本作を作ろうと思ったのは、『仮面ライダースーパー1』の最終回における仮面ライダースーパー1と悪魔元帥との会話にあった。
 世の平和を乱すジンドグマを詰って、スーパー1は、

 「地上の人々は日々を心安く生きたいだけなんだぞ!」

 と云って、一般ピープルの最も基本的な願いを代弁したのだが、それに対する悪魔元帥の回答は、

「心安く生きたければ、我がジンドグマの傘下に入ることだ。」

 と云うものだった。

 この悪魔元帥の言を、好意的に見れば「統治下にある者は責任をもって安寧の日々を保証する。」と取れるが、悪意的に見るなら「侵略者の戯言」である。ただ、悪魔元帥を歴史上既存の王朝を打ち倒して来た新王朝創始者や、(一応は)事後の真面目な善政を目指す革命者と同一視すれば、決して稀有な主張ではない。
 ジンドグマは現実社会ではいまだに現れていない地球外からやって来た侵略者だが、地球内に限定するなら、現実の歴史においても言葉や文化が異なる国外・地域外からやってきた者がその地に住む者に服従を強要した例は枚挙に暇がない。
 勿論、征服者の多くは被征服民をむやみやたらに殺したりはしない。だがそれは慈悲ではない。(自国に都合の良い)現地開発に従事させたり、自国の労働力(最悪のケースは奴隷)としたり、更に広げる征服地への尖兵としたり、で利用するだけ利用する為なのだが、多くの征服者は自国民から税金を徴収するぐらいの意識しかなく、恐らくは罪悪感を抱いてはいなかったことだろう。

 もしジンドグマが仮面ライダースーパー1を打倒し、既存政権による抵抗を無力化し、協力する有力者共々世界を統べる様になれば、恐らくは地球人を上述した史上の被征服民のように遇したのではあるまいか?
 勿論当事者は恨み骨髄となる訳だが、そのまま平和の内にジンドグマの統治が続き、社会が(ジンドグマ都合であっても)反映すれば、ジンドグマによる侵略は時と共にその悪名性を薄れさせていったと思われる。

 『三国志演義』にて赤壁の戦い前に、曹操が「呉の権力は討っても、呉の民には危害は加えない。呉の民はその日からこの曹操の愛すべき民となるのだから。」という台詞を口にしていた。
 思うに、悪魔元帥もその気持ちだったのではあるまいか?勿論シルバータイタンが呉の民なら曹操を、『仮面ライダースーパー1』の登場人物なら悪魔元帥を容認したりはしないが。


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令和五(2023)年二月一三日 最終更新