File5.紅音也……気障・自信家・奔放

Farthers Profiel
登場作品『仮面ライダーキバ』
名前紅音也
紅渡
武田航平
登場全話
父親としての影響度★★★★★★★★☆☆
概略 主人子・紅渡(瀬戸康史)の父親にして、『仮面ライダーキバ』におけるもう一人の主役でもある。というのも放映時の2008年と、その22年前である1986年との2つの時代を舞台として、2つの世界の物語が同時進行で放映された異色作で、紅音也は 1986年を舞台に活動していた同時代の主役とも云える存在だった。

 設定によると昭和37(1962)年10月8日生まれで、過去変における年齢は24歳のバイオリニストにして、「すべての女性の味方」を自称するフェミニスト(その割には、デート中にもっといい女に遭遇すると迷わずそっちに行くいい加減野郎でもあった)。
 バイオリンの技量は「100年に1度の天才」と評されるもので、音楽及び惚れた女性への想い入れは凄まじい一方で、それ以外のことには極めていい加減な男で、誠意も人生設計もあったものじゃなかった。
 当初、自分のバイオリンの腕を頼みに、毎晩豪遊してはバイオリンを聞かせることでその代金を踏み倒すという出鱈目な生活を送り、周囲に悪影響を及ぼしながらも、そこに丸で罪悪感も抱かず、いい加減な日々を送っていたが、麻生ゆり(高橋優)と偶然出会い、一目惚れしたことで運命が一変した。

 麻生ゆりは『仮面ライダーキバ』の世界におけるモンスター一族であるファンガイアと戦う民間組織・「素晴らしき青空の会」の一員で、現代で云うところのストーカーもかくやと云う程にしつこく付きまとい、口説き続けるも丸で相手にされなかった音也は、ユリの側に居たいが為に同会への入会を希望した。
 しかし、会員の一人にして恋のライバルでもである次狼(松田賢二)がファンガイアに一族を滅ぼされたウルフェン族の者で、復讐の為に会を利用し、一族再興の為にゆりに自分の子を産まそうとしていたことを知り、次狼への怒りから会にて(舞台の二年前に殺されたゆりの母・茜が主任研究者として)開発したイクサシステムを奪取して装着し、仮面ライダーイクサの一人となった(システムを装着して変身する存在なので、仮面ライダーイクサに変身したものは、一時的な者まで含めると、音也・次狼・ゆり・名護啓介(加藤啓祐)・ルーク(高原知秀)・糸矢僚(創斗)・襟立健吾(熊井幸平)と七名もいる)。

 そんな無茶苦茶で行き当たりばったりでも想いの強さがやがてゆりの心を開かせることに成功し、同棲まで始め、青空の会の正式メンバーとなったが、あろうことかファンガイア族の最高位であるチェックメイトフォーの一人・真夜(加賀美早紀)と出会ったことで運命は二転三転した。
 真夜は既に同じチェックメイトフォーの一人であるキング(新納慎也)の妻となっていて、次代キングである登大牙(山本匠馬)を産んでいたが、それは使命感による夫婦に過ぎず、愛情は存在しなかった。だが、幹部の一人として裏切者のファンガイアを処刑する日々を送る中、偶然に音也と出会い、音也が「才能に相応しいバイオリンを持っていない。」と指摘し、300年前にストラディバリの弟子だった経験を活かして音也と共にバイオリン製作に取り組んだことで、音也を愛するというファンガイアとしての禁忌を破ることとなった。

 音也もあれほど追い求めていたゆりと相思相愛になりながら、自分の楽才を認めてくれた真夜に心移りし、名器ブラッディ―ローズ完成直前に次狼からゆりのことを問われた際には、「今の俺は、ゆりには理解出来ない場所にいる。」と素っ気なく返し、ここにゆりとの関係は破局した。
 だが、真夜と愛し合うようになったことは上述した様に真夜がファンガイアを裏切るという結果に陥り、音也自身も怒りを駆ったキングの襲撃を受け、ファンガイアの魔窟であるキャッスルドランに幽閉された。
 幸い、ゆりと真夜によって救出され、20年後の未来である2008年からやって来た息子・と遭遇し、キバット?世の協力を得て仮面ライダーダークキバとなることでと共闘することでキング打倒に成功したが、ダークキバに変身したことで身体に大きな負担を掛け、その命を極度に縮めた。

 余命幾ばくもないことを悟った音也はゆりに別れを告げ、キングから救い出した次狼に真夜との間に生まれてくる子供(要するに)を託すと魔よと共に安らぎのひと時を過ごしてブラッディ―ローズを奏でた後、真夜の膝の上で眠るようにその生涯を閉じたのだった。


存在感 紅音也の持つ存在感は極めて大きい。それには彼個人の強過ぎる個性や破天荒な生き方もあるが、番組の構成によるところも大きい。
 何せ『仮面ライダーキバ』は上述した様に2008年と1986年の2つの舞台があり、それぞれの時代が並行して演出された。当然1986年の出来事が先にあって2008年に繋がる訳だから、1986年に起きた大きな出来事は2008年に影響する。

 そのことを鑑みれば、2008年編に登場しないキャラクターは2008年以前にこの世を去っているとの推測が成り立ち、それは音也も例外ではなかった。同時に2008年編における主要メンバーの大半が22歳に達していないことから、その親となるキャラクターは1986年時点で命を落とさないことが推測可能となる。
 また2008年に出て来る紅渡と麻生恵に血縁関係が無いことから、音也と麻生ゆりが結ばれないことも推測出来てしまう(苦笑)。

 とはいえ、現代編の対人関係から推測出来る事柄を吹き飛ばしかねない程1986年における音也の破天荒振りはもう一人の主役に相応しいほど大きな存在感を持っていた。
 平成作品における仮面ライダーは改造人間ではない為、特殊アイテムを持つことで主人公以外にも仮面ライダーとなる者が何人も登場するのだが、音也は仮面ライダーになることを別にしても様々な意味で常人離れしていた。
 簡単に箇条書きするだけでも、

・「100年に一度の天才」と謳われたバイオリニストとしての才能
・奔放過ぎる性格
・冴羽●もかくやと云える程の女好き
・ファンガイアのクイーンと相思相愛になる
・無茶苦茶な行動や料金踏み倒しで何人もの人間が破産している。

 一芸に秀でた人間がその際に溺れ、暴走して、素行が無茶苦茶なのはよく聞く話だが、少なくともシルバータイタン自身は音也のような人間は絶対に友達には選ばないだろう。

 結局女好きが昂じてではあるが、本気に惚れた者には一途で真摯(それ以上に惚れた者が現れなければではあるが)で、その生涯として立ちはだかった者は何者であろうと恐れず果敢に立ち向かう勇敢さも持ち合わせていた。
 そんな欲望の赴くまま奔放に走ったことで音也はファンガイアと戦う素晴らしき青空の会の会員となり、ウルフェン族の次狼とゆりを巡って奇妙な喧嘩友達となり、ファンガイアのクイーンである真夜と結ばれるという下手な主人公も顔負けなほど波乱万丈の人生を踏破し、真夜が身籠ったの誕生を見ることなくこの世を去った。

 存在感の大きさで云えば、「主人公に匹敵する」というだけで充分だろう。同時に『仮面ライダーキバ』という作品が持つ二系列の時間軸の片方にて主役を担ったのだから、本作における「ヒーローの父」においてその独特性も群を抜いていることだろう。



息子・番組への影響 まず、紅音也がファンガイアのクイーンである真夜と結ばれるという破天荒な出来事があって紅渡が誕生した。
 つまりは人間とファンガイアのハーフで、次代キングとなっていた登大牙とは異父兄弟としてこの世に生を受けた。

 2008年を舞台に活躍したの年齢は20歳で、そこから音也は真夜がを身籠って程なくしてから死んだことが分かる。勿論音也の誕生を見ていないし、にも父の記憶がない。
 当然、音也の教育を受けていないが、常人離れした両親を持ったことは彼の人生に大きく影響していた。

 が物心つく頃には既に音也は亡く、母である真夜はファンガイアの裏切り者として追われる身であったため、の身の安全の為にも彼が幼い頃に山奥にて隠遁していた。そんな家庭環境(?)がどう影響したかは詳らかではないが、20歳という学生でなければ働いていて当然の年齢に達していたは、パンデミックの世でもないのにゴーグルとマスクを着用しにと人前に出られない程の「この世恐怖症」として物語に登場した。
 それでも天才バイオリニストの血を引き、名器ブラッディ―ローズを形見に残された環境故か、ブラッディ―ローズを超える名器を作れるバイオリン職人になるという夢をは持っていたから、引き籠りに等しいが唯一持っていた真っ直ぐさはまさに音也から引き継いだものだろう。

 一方で、父親としての紅音也だが、これを推測するのはなかなかに難しい。
 2008年編からタイムスリップしてきた音也は普通に息子として受け入れ、共に入浴した際に父親らしいところを見せないと、と云った風を見せていたが、これはかなり稀有な性格によるものとしか云えない。
 現実の世界にはタイムスリップの存在は立証されていないから、ある日突然「未来から来た息子です。」と云われても、普通は「こいつ頭おかしいのか?」としかならない(苦笑)。
 百歩譲って、既に子供を設けていて、「未来から来た」と自称するものが子供の面影を残していれば「もしかして…。」ぐらいには思えるかもしれないが、上述した様に音也の誕生前に死んでいる。作中の音也が「父」としての自分を自覚するのはかなり困難な筈である。強引に推測するなら、天才バイオリニストにして、名器を生み出す才能を持っていた音也が持つ創造性に裏打ちされた逞しい想像力故、と云ったところだろうか?

 いずれにせよ、まだ最終回に突如22年後の未来からやって来たという息子・正夫に遭遇したの方がまだ「未来の息子」を受け入れ易かったことだろう。自身、タイムスリップを経験しているから、「未来からやって来る。」という事実は受け入れられるだろうし、正夫は音也そっくりで、丸で武田航平氏が二役をやっているみたいな程だった(笑)から、その存在は受け入れやすかったことだろう。

 作中、音也が生前起こした騒動を彼に替わって謝罪する羽目に陥り、記憶にない父に幻滅したこともあったが、ストーリーの流れで両親やファンガイアや素晴らしき青空の会の面々のことを知り、自身もファンガイアのクイーン候補だった鈴木深央(芳賀優里亜)を愛した経験からも、人間的にも、ストーリー的にも「音也の子」で、彼から受けた影響は甚大だったと云えよう。


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令和五(2023)年九月日 最終更新