第5頁 左翔太郎………ハーフボイルドで良いのだ!本人不本意だろうけれど……
「太郎」File.5
名前 左翔太郎 演者 桐山漣 立場 主人公 登場作品 『仮面ライダーW』 兄弟構成 一人っ子 「太郎」の付く親族 無し(正確には不明) 名前を呼ばれる頻度 照井竜を除けばほぼ100%
人物像 作品の舞台である架空の都市・風都に生まれ、風都を愛し、「街を泣かせる奴は許さねぇ。」との信念で生きる私立探偵。
ハードボイルドに憧れ、私立探偵・鳴海壮吉(吉川晃司)に憧れ、惚れ込み、押し掛け助手となった。第1話にて相方フィリップ(菅田将暉)を救い出す際に恩師・鳴海壮吉を失った。
鳴海壮吉死後、事務所はその所有権を継承する娘の亜樹子(山本ひかる)が所長に収まり、救い出したフィリップと共に探偵業を継続しつつ、風都暗躍する闇企業リガル・コーポレーションの経営者で、ミュージアムなる組織を統べる園崎一族との戦いに身を投じた。
相方のフィリップが理知的でデータ・知識・記録された情報を重視するのに対し、翔太郎は人脈と直感と地道な捜査能力から収集する生きた情報を武器とした。
老若男女を問わぬ幅広い人脈は風都署の刑事・ 刃野幹夫(なだぎ武)、真倉俊(中川真吾)、情報通の女子高生クイーン(板野友美)とエリザベス(河西智美)、商店街の諸事情に通じるウォッチャマン(なすび)、 サンタちゃん(腹筋善之介)、多種多様だった。
更には風都出身で、一度は風都を嫌い、殺された両親と妹の仇を討つべく風都署超常現象課の課長として赴任してきた照井竜(木ノ本嶺浩)も当初こそは対立していた(というか照井の方で拒否的だった)が、仮面ライダーアクセルとなった彼とも共闘することとなった。
1950〜70年代調のハードボイルドに感化されており、レイモンド・チャンドラーのハードボイルド小説を愛読し、ハンフリー・ボガートばりのソフト帽を愛用し、立ち振る舞いなども常にハードボイルドを心がけているが、中身はよくも悪くもお人好しの二枚目半。
感情が先立つ性格で、そのために些細なことで冷静さを失ってしまい、なかなかハードボイルドになり切れず、フィリップや亜樹子にハーフボイルド「(半熟野郎)」と未熟者呼ばわりされることも少なくなかったが、そこが人間的魅力でもあり、決して諦めない不屈の精神力は事件解決に協力してくれた仲間だけは無く、事件を通じてかかわった人々との絆も深めた。
荘吉の下で学んだ探偵術・護身術はそれなりに優秀であり、不測の展開では機転を利かせることも多く、風都では非常に幅広い交友関係と情報網を持っており、探偵として信頼に足る能力を持っている。風都ともに、その都市伝説から生まれた「仮面ライダー」の呼称にも強いこだわりを持っており、その名を貶める者には強い怒りを見せていた。
その思い入れや情の強さは自然と周囲の人々を仲間として引き込み、当初は翔太郎の在り様に否定的だったフィリップも、照井も、気が付けば同じ視点や価値観を持ち、誰かを叱る際に翔太郎と同じ視点を持っていたこともあり、そんな翔太郎をフィリップと亜樹子は、「ハーフボイルドでちょうどいい」としていた。
当初拒否的だった照井をいち早く「今では俺達の大事な仲間、仮面ライダー」として受け入れ、息子来人=フィリップの相方として翔太郎を頼りないと見ていたシュラウド=園崎文音も最後には翔太郎を認めていた。
そしてそんな性格故に仲間への思いも強く、第48話でフィリップが命を落とした際には彼の懇願に応じて滂沱に暮れながら最後のスイッチを切り、その翌週である最終話(作中では一年後)にフィリップが復活した際は人目も憚らず抱き着き、見事に無視されたエナジー・ドーパントが地団太を踏むほどだった(笑)。
そんなどこか古き良き時代の泥臭さと、理知姓・合理性が共存した二人で一人の仮面ライダーは根強い人気を得た様で、後日譚となる連載漫画『風都探偵』が生まれるに至る程だった。
名前と作風の関連 特段の理由がある訳では無いが、姓の「左」よりも、名である「翔太郎」で呼ばれることが圧倒的に多い(姓で呼ぶのは照井竜唯一人)。それは左翔太郎が誰からも愛されるキャラクターだからだろう。
実際、人気のある人物は姓よりも名前で呼ばれることの方が多い。刃野刑事が翔太郎を名前で呼ぶのは弟分に接する態度で、実際両者は長い付き合いだった(学生時代、反不良学生だった翔太郎は何度も当時交番勤務だった刃さんのお世話になっていた)。
また、クイーン、エリザベス、なすび、サンタちゃんは「翔ちゃん」と呼んでいるが、特に女子高生二人の呼び方は兄貴分に甘えるような呼び方で、後者のおっさん二人は年齢差を超えた友人同士の接し方である。
フィリップは「翔太郎」と呼び捨てで、亜樹子は「翔太郎君」と君付けだが、二人とも最初から名前で呼んでいた。この両名に対しては、やはり鳴海壮吉が翔太郎を名前で呼んでいたのを自然と引き継いだと見るべきだろう。
ただ、まあ、この作品、本名不明の人物以外は実に様々な呼ばれ方をしていて、一定の法則を定める方が困難である。
途中で本名が判明しても、それまでの名前が定着していたフィリップは別格となるが、例えば亜樹子は「亜樹子(翔太郎)」、「亜樹ちゃん(フィリップ)」、「所長(照井他)」で、名前を基本としつつも、様々である。
照井竜は、基本は姓で呼ばれるが、警察関係者からは「課長」、「警視」と呼ばれ、後に妻となる亜樹子からは一貫して「竜君」と呼ばれていた。
鳴海壮吉も、基本名前を呼ばれることが多いが、翔太郎からは「おやっさん」と呼ばれ、過去に世話した尾藤イサオ(小沢和義)からは「旦那」と呼ばれ、彼等に限らず、呼ばれる側、呼ぶ側を通じて様々な人間ドラマがあることが分かる。
勿論左翔太郎に限らず、どのキャラクターも立場や状況、対人関係によって姓で呼ばれるか、名前で呼ばれるか、敬称が着くか着かないかは千変万化である。ただ、この『仮面ライダーW』は、「2人で1人の仮面ライダー」で、翔太郎が「左」で、フィリップ=園崎来人が「ライト」=「右」を担っていることから、名前へのこだわりはつよく、大半の人間が「翔太郎」と名前で呼ぶ中、照井一人が「左」と姓で呼ぶことが巧みなアクセントにしてスパイスになっているように思われるのである。
名前への個人的所感 最初、『仮面ライダーW』の主人公の名前が「左翔太郎」と知ったとき、シルバータイタンは、「大きく出たな………。」と思った。云う迄も無く、仮面ライダーの原作者である故石ノ森章太郎先生と、漢字こそ違えど同音の「しょうたろう」だからである。
そして翔太郎が名前で呼ばれることの方が多いのも、原作者への敬意から、同音の名前を少しでも多く作中に出しているように思われてならない。もし、作中において大半の人間が「左」と呼んでいたとすれば、「翔太郎」の名の比重が軽いこととなり、同音である「しょうたろう」への軽視に繋がりかねない。
まあ、公式発表があった訳じゃないので、何とも云えないが、作中に「翔太郎」のが連呼されたことに、原作者への敬意と親しみが併存していて欲しいと思うのはシルバータイタンだけではないとことだろう。
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令和七(2025)年七月二三日 最終更新