10.UGM VSマーゴドン……自存自衛への決意

番組名『ウルトラマン80』最終話「あっ!キリンも象も氷になった!!」
放映年月日1981年3月25日
勝利者UGM隊員一同(除く矢的猛・星涼子)
勝利手段凍結鉄球作戦
勝利形態外敵抹殺
ストーリー概略 ある日、上空から謎の冷気が広がり、九州にある南原市は一瞬では凍りつき、サブタイトルにある様に、動物園のキリンも象も氷となった。異常事態の発生を受けてUGMでは対策会議を開く、起床藩の分析でも原因不明で、怪獣や宇宙人の仕業かどうかも断じ難い状態の中、一先ず待機命令が下された。

 程なく、南原市に冷凍怪獣マーゴドンが出現。怪獣の仕業とあってUGMは直ちに出動し、マーゴドンに空中攻撃を加えたが、ミサイルが命中して発した火花を吸い込むようなけったいな現象が見られた。これはマーゴドンが熱エネルギーを吸収する体質を持つためで、UGMの攻撃はエネルギーを与えるだけとなった。
 オオヤマ一樹キャップ (中山仁)は垂直降下攻撃を指示したが、矢的猛 (長谷川初範)がこれを止めたが、それに対してオオヤマキャップに、「人間には出来ないというのか?」と謎めいた反論を返した。

 結局地上からの攻撃も効果は変わらず、一先ず基地へ戻り、作戦を立て直すことになった。分析の結果、マーゴドンが熱エネルギーを吸収する宇宙怪獣と判明。同時にこれ以前にも数々の星を襲い、その星の熱エネルギーを奪って氷漬けにして来たこと、このままでは地球も同じ運命に陥るであろうことが推測された。
 これに対し、オオヤマキャップはこのマーゴドンが「最大で最後の怪獣」で、「この怪獣に勝てばUGMは無敵だ。」と断じた。何を根拠にそう断じたのか全く不明ではあったが

 その決意の強さを示すかのように、オオヤマキャップは「最悪の場合はウルトラマン80にお縋りして……」とおどけながら合掌するイケダ登隊員 (岡本達哉)と広報班のセラ照夫 (杉崎昭彦)に「バカモン!もうウルトラマン80は現れない!」と一喝した。
 続けて「80の助けは要らない。断固として80の力を借りないで怪獣をやっつける!」とも言い放った。

 やがて「硬くて脆い」という氷の性質を利用した「ジャイアントボール作戦」が立案された。つまりビル解体用の巨大鉄球で冷凍怪獣を粉砕しようと云うものである。
 2機のシルバーガルに乗って、イトウ順吉チーフ (大門正明)・イケダフジモリ隊員 (古田正志)の3名が出撃。しかしマーゴドンの冷気でシルバーガルのワイヤーが外れて失敗。それを見た星涼子 (萩原佐代子)とともに駆け出し、変身しようとしたが、2人はオオヤマキャップに呼び止められた。
 オオヤマキャップは、これまでUGMがウルトラマン80に助けられてきた謝意をに述べた。驚きつつも微笑みながら自分の正体が知られていたことを確認するオオヤマキャップはつい最近ではあるが、イトウチーフとともに80の正体を知ったことを告げた。
 オオヤマキャップは重ねて80への感謝を述べるとともに、宇宙人の力を借りて地球を守っていることへの悔しさ、地球は地球人の手で守るべきであることを述べ、80に変身しないよう要請すると対マーゴドン戦に身を投じた。

 スカイハイヤーに乗ったオオヤマキャップを加え、再度「ジャイアントボール作戦」が敢行され、涼子はそれを見守った。


勝利 オオヤマキャップのスカイハイヤーが先の攻撃で無傷にいた方のシルバーガルに合流した。ところがマーゴドンを前にして、シルバーガルが燃料切れを起こした!
 何とか後1分間でも持てば、と焦るオオヤマキャップだったが、突如シルバーガルが大勢を取り戻した。シルバーガルを救ったのは1機の空中給油機で、乗組員は第27話でオーストラリアゾーンに転任していたハラダ時彦隊員 (無双大介)とタジマ浩隊員 (新田修平)だった!

 思わぬ救援を得て、体制を取り戻したUGM。ハラダタジマは更に冷凍液をマーゴドンに浴びせた。
 凍りつき、動きを止め、ひび割れたマーゴドンに今度こそ鉄球が炸裂し、マーゴドンは粉々に砕け散った!冷凍怪獣の死と共に南原市を覆っていた寒波は去り、市は平和な街に戻ったのだった。


勝利の肝 何と言ってもオオヤマキャップの地球自衛への執念である。次々と現れる怪獣・宇宙人を倒すのに大半はウルトラ兄弟の助けを借りてしまっていることに忸怩たる思いを吐露した正義のチームのメンバーを例に挙げると、ウルトラ警備隊のキリヤマ隊長や、クルーGUYSジャパンのアイハラ・リュウ隊員 (仁科克基)が挙げられるが、この二人より遥かに冷静なオオヤマキャップが静かながらも、並々ならぬ熱意を見せていたことも特筆に値する。

 ストーリーの序盤からオオヤマキャップを見る目は何処か普段と異なり、次々と漏らす台詞も、何処か80に対して挑戦的ですらあった。
 オオヤマキャップは分析・作戦・戦意を総動員し、それでも涼子は出撃すらさせず、極めて妥当な戦術でもってマーゴドンを粉砕した。途中トラブルがあり、タイミング良く駆け付けたタジマハラダに助けられたが、それでもオオヤマキャップの戦術が狂っていたことにはならない。

 ついでを言えば、タジマハラダの様な中途降板したものが再登場する、と云う稀有なことがあったのも、同番組の最終回であったことに加え、「地球人の手で地球を守る。」ということを強く反映させる、との意図があったればこそであろう。UGMは涼子以外の全員の力でマーゴドンを破り、終盤では全隊員が一同に会したのである(アンドロイド・エミ (石田えり)まで出したのは少しやり過ぎな気もしたが……)。

 個人的に嬉しかったのは、UGMが活躍しただけでなく、オオヤマキャップ80への感謝・好意を持ちつつも、80に依存せずに地球を自分達の手で守らなくてはならないという気持ちを心に併存させていたことである。
 前述のキリヤマ隊長リュウにも言えることだが、彼等は「ウルトラマンに頼ってはいけない。」と思いつつも、ウルトラマンを嫌ってはいなかった(リュウはすぐには仲間と認めようとしなかったが)。
 地球防衛を大切に思うからこそ、地球防衛に尽力してくれるウルトラ兄弟に感謝しつつも、ウルトラ兄弟に依存することに忸怩たる思いを抱えていたのである。

 オオヤマキャップ涼子の正体、そして彼等がウルトラの星に帰らなくてはならない事情を抱えていることを知り、その時になって、自分もまたウルトラマン80にいつしか依存していたことを知った。同時にその依存心がUGMの手で怪獣を倒すことを阻んでいたことも。
 それゆえオオヤマキャップは「80に、にいつまでも地球に居て欲しい。」という気持ちを否定しない一方で、その気持ちを振り切るかのようにマーゴドン討伐に執念を燃やした。
 オオヤマキャップと共に80の正体を知ったイトウチーフも、「どうしても帰らなくてはならないのか?」と尋ねていたが、彼等だけでなく、他のUGM隊員達も80に依存してはいけない気持ちと、80にいつまでもいて欲しい気持を混在させていたことだろう。

 だが、想いは色々有れど、地球を襲う怪獣を自分達の手で屠り、80に依存せずとも戦えるところをみせて、涼子を気持ち良く送り出す大人の対応をしたことはウルトラシリーズの最終回の中でもかなりの名作に仕上げ、ウルトラマンと正義のチームの仲間との別れをかなり幸福な物にしたと云えよう。

 ウルトラシリーズがウルトラマンを主役とする以上、正義のチームが怪獣を倒すケースは少なくならざるを得ない。『ウルトラマン80』以前に、『ウルトラセブン』最終回でキリヤマ隊長「地球は我々人類自らの手で守り抜かなければならないんだ!」という特撮界屈指の名台詞を発し、同様の想いを同作品でオオヤマキャップが宣し、四半世紀後に『ウルトラマンメビウス』にてキリヤマ隊長の台詞が「ウルトラマン不要論」を意味するかどうかの物議を醸した。
 だが、フツーに考えて、万が一、億が一にも現実に地球を怪獣や宇宙人が襲来したのなら地球人の武力でこれを撃退しなくてはならないのである。上記の様な台詞や議論が出て来るのは、ウルトラシリーズの住人達はそれだけとんでもない敵と戦い、それでも平和とウルトラマンを愛していることを再認識しなくてはならないと思うし、それだけにウルトラマンに依存することなく巨大な怪獣に打ち勝った勝利は尊い、とシルバータイタンは改めて思うのである。


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平成二七(2015)年五月一日最終更新