人間の勝利

 それは『ウルトラマンギンガS』第5話「仲間と悪魔」のワンシーンだった。

 UPGの松本ゴウキ隊員(加藤貴宏)に憑依した異次元人ヤプールは、ゴウキの体を利用して、一般隊員を薙ぎ払い、ストリウムブレスを装着していた礼堂ヒカル(根岸拓哉)をウルトラマンギンガと見抜いて異次元バリアへ幽閉。更にウルトラマンビクトリー=ショウ(宇治清高)を襲撃せんとしたが、その場に居合わせ妊婦・詩織(米田弥央)を転倒させたことでゴウキの意識を介入させることとなった。
 体を巡って何度もゴウキの意識を封印としたが、ゴウキは苦悶に顔を歪め、大汗を掻きながらも妊婦を病院へ搬送することに成功。人間の心を御し切れなかったことに激昂したヤプールはそのままビクトリーを攻撃せんとしたが、またしてもゴウキの意識がそれを阻んだ。
 諦めを囁いたヤプールだったが、それに対してゴウキは苦悶の表情の中、大音声で叫んだ。

 「人間を、舐めんな〜!!!!」

 と。

 このゴウキの台詞に心からの拍手を送った方々は数多いと思われる。かくいうシルバータイタンもその一人だが、本来であれば、シルバータイタンはこの「舐めんな」という台詞が大嫌いである。

 というのも、(話は逸れるが)、古今東西、現実世界において個人であれ、組織であれ、国家であれ、この「舐めるな!」・「舐められたくない」・「舐めてんのか?」という台詞・感情は様々な要らざる対立・抗争・暴力を生んで来た。
 それが為に殺し合い・暗殺・謀略・戦争・テロリズムといった事件・惨事を生んできたし、「舐められているのでは?」との思い込みのために起きた対人関係の悪化だって枚挙に暇が無い。
 「誇り高い」ということは良いことだが、それと「相手を見下す」と云うこととごっちゃにしている者が(道場主を含めて)世に多過ぎる気がしてならない。

 少し考えて頂きたいのだが、このサイトを閲覧されている方々の周囲に二言目には「舐めるな!」・「舐められたくない」・「舐めてんのか?」という台詞を連呼している者はいないだろうか?
 そしてそんな台詞を連呼している者に限って、他者や世間を舐めて生きてはいないだろうか?シルバータイタンの人生の中にもそのような人物は時折見受けられたが、はっきり言って、好意を抱けるものではなかった。

 ここで話を戻すが、それでもシルバータイタンが前述したゴウキの叫びに心からの喝采を送るのは、ゴウキが人間で、相手がヤプールと云う陰湿極まりない敵だったからである。
 『ウルトラマンA』をそれなりに通して観たことのある方々なら、異次元人ヤプールが如何なる奴かを説明する必要はあるまい。滅ぼすのが極めて難しく、作戦・攻撃・性格のいずれもが陰湿で、人間の弱さを突く奴等だからこそ、「人間」という存在を守護において戦意を叫ぶゴウキに拍手を送りたくなった訳である。


 巨大宇宙人や、改造人間や、メタルヒーローや、スーパー戦隊が活躍する世界において、単純な戦闘能力で見れば普通の「人間」の力は余りに非力である。否、設定上、世界一流の格闘能力者や、軍人であってもその身体能力が怪獣・超獣・円盤生物・改造人間・宇宙人に敵うことは極めて稀なのである。
 だが、特撮界における「人間」非力であっても、無力ではない。精神力・科学力・知恵・団結力等、様々な能力でもって難敵、時にはヒーローを倒したような敵を倒したこともあり、倒せずとも屈しないことでヒーローの勝利に貢献したことも決して少なくない。

 特撮ヒーローの中には、「人間」が特殊な武器を纏った者や、「人間」が改造された者や、「人間」が宇宙人に憑依した者もいる。全く「人間」が介在しない者であっても、身体モデルは二足歩行の「人間」である。
 まして舞台になるのは地球である。そう、「人間」と無縁のヒーローなど無く、「人間」を抜きにした特撮番組など存在しないのである。その想いが強い故か、道場主は昔からウルトラマンシリーズを見る度に、正義のチームが怪人を倒したケースや、仮面ライダーシリーズにおいて非力な一般人が悪の組織に屈せず、信念を貫いたケースに喝采を送ってきた。
 本作ではそんな「人間」達の「偉大な勝利」の集大成を行ってみた。
1.イデ隊員VSジェロニモン……依存心を振り払った勝利
2.岩本博士VSゼットン……試作品で宇宙恐竜を撃破
3.ウルトラ警備隊VSワイルド星人……たった一つしかない自分だけの命
4.TAC VSファイヤーモンス……歴史を超えて受け継がれた武器
5.ZAT VS再生改造ベムスター&再生改造ベロクロン?世……積年の無念を連発解消!
6.立花藤兵衛VSガランダー帝国……忍者もびっくりの潜入と阻止
7.美山あゆみとその友達VSブラック指令……レオ感動の勇気と奮起
8.井上警備員VSサイダンプ……命に代えてもダムを守らん
9.百鬼村小学校児童一同VSキギンガー……脅迫を弾き返した親子の絆
10.UGM VSマーゴドン……自存自衛への決意
11.相原教授VSクロイゼル……情と使命の狭間で
12.著名人達VSマリバロン……帝国が恐れた抵抗分子
13.ボクサー沢田VSバルンボルン……偽りのヒーローを追い出せ
14.総理大臣VSマリバロン……二度は屈しなかった決意
15.杉田守道・桜井VSラ・ドルド・グ……研究と追跡を重ねた果てに
16.氷川誠VS風のエル……「ただの人間」ここに極まれり!!
17.CREW GUYS VSグローザム……発動!「Pride of girls」
18.火野映司&泉比奈&&少年&現代人&江戸時代人&ベル……綺麗事?いいえ、純粋過ぎる欲望です!
Final.「最凶」にして、「最狂」にして、「最強」の存在=人間


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令和五(2023)年八月三日 最終更新