9.百鬼村小学校児童一同VSキギンガー……脅迫を弾き返した親子の絆

番組名『仮面ライダー(スカイライダー)』第37話「百鬼村の怪!洋も樹にされるのか?」
放映年月日1980年6月13日
勝利者百鬼村小学校児童並びにその父兄一同と上条先生
勝利手段親に悪事に加担して欲しくない子供の想い
勝利形態脅迫不服従による作戦瓦解
ストーリー概略 第36話の続編である。ネオショッカーの魔神提督は人間を生きたまま樹に変える力を持つキギンガーを南米アマゾンから、拳法の達人であるドラゴンキングと彼が率いる闇の戦士団をガラパゴス島から召喚し、百鬼村と云う小村に派遣し、一村を秘かに支配下においていた。

 キギンガー村の大人達を樹に変え、その恐怖心を利して村人達の抵抗力を奪い、更なる研究を続け、ドラゴンキングとその配下は村から逃げて外部に助けを求めようとする村人の監視・惨殺を任務としていた。
 だが、村人の一人・上条タケシ(七五三木猛明)が殆ど樹に変えられた体に鞭打って村の危機をブランカに居た筑波洋に伝えた為、彼及びその姉で百鬼村小学校の教師である上条清子先生(麻生淳子)と旧知だったは百鬼村に駆け付けることになった。

 一方で、アマゾンからキギンガーを追って帰国した一文字隼人(佐々木剛)も百鬼村に駆け付けており、同村手前で合流した二人は別途に百鬼村に潜入した。
 は堂々と、一文字はこっそりと潜入。当初は樹に変えられる恐怖からネオショッカーの関わりを否定する清子先生児童達だったが、探索の結果、一文字はそれぞれにネオショッカーの企みを察知した。

 第36話終盤、ドラゴンキングが村を脱出しようとした児童三人を嬲り殺そうとしたのを阻止せんとしてスカイライダーに変身。仮面ライダー2号がんがんじい(桂都丸)も駆け付け、2つ巴の戦いになった所で第37話に続いた。

 第37話に入り、スカイライダーは人質を連れて逃げるキギンガーを追って罠にはまったが、辛くもこれを逃れ、2号ライダー足手まといのがんがんじいを連れての戦闘継続は困難と見て戦線離脱した。
 程なく再合流した二人はネオショッカーアジトに潜入しようとするがんがんじいを発見。どうしても正義の為に戦うとがんがんじいを囮に(笑)利用してアジト内に潜入して捕われていた三人の児童を救出……えっ?囮のがんがんじいは?無理矢理ついて行こうとしたので、一文字にあて身を食らわされて眠っていました(苦笑)。

 だがその救出を阻もうとしてドラゴンキングが二人の前に立ちはだかった。「拳法の達人」の異名は伊達ではなく、2号ライダースカイライダーの二人を同時に相手にして一歩もひけを取らない戦闘能力を見せつけるドラゴンキングだったが、必殺技を喰らわそうとした一瞬の隙を突かれ、ダブルライダーキックの前に惜敗。キギンガーに「村人達を全員樹にしてしまえ!」と叫んで爆死した。

 その遺言(?)を受けたか、キギンガーは百鬼村小学校に向かう道々で村人達にアフロマジンカの種を投げ付けて樹にし、百鬼村に来ていたライダーガールズ達(小沢アキ (江口燁子)・伊東ナオコ (鈴木美江)・野崎ユミ (巽かおり))をだまくらかして、彼女達を樹にすると、樹にされた児童の親達に間もなく学校にやって来るであろうスカイライダーの打倒に協力するよう命じた。
 程なく、来航したスカイライダーはブランカに居た筈のライダーガールズが樹にされているのを見て愕然とした。その隙を突こうと樹にされた人々の陰から覗き見するキギンガーだったが…………。


勝利 どうもネオショッカーは、人間を樹に変える研究に並々ならぬ熱意を持っていたようである。悪の組織は一度失敗した作戦を一顧だにしない習性(笑)があるのだが、この第36話・第37話で遂行された作戦・研究は直接の繋がりを持たない第34話から続くもので、キギンガー自身、村人を樹に変えただけでは飽き足りず、不快音波でもって樹にされた人々を自らの意思に従う様にする為に更なる研究を重ねていた。

 繰り返しになるが、豪傑ドラゴンキングが倒され、ライダー打倒を急務と見たキギンガーは百鬼村小学校に危機を知らせに来た振りをして入校すると、音波発信機による苦痛と、あ子供達を樹にするという強迫でもって、樹にされた人々スカイライダー打倒に助力するよう強要し、上条清子先生児童達は別室に押し込めた。
 仲間のライダーガールズが樹にされているのを愕然とするスカイライダー樹にされた人々が襲いかかった。勿論元々が樹なので対した戦闘能力を持つ訳ではなく、ライダーの力をもってすれば蹴散らすのは容易だが、樹の正体が児童達の親であることを知るスカイライダーが手出しできる訳が無かった。
 キギンガーは「ライダーの骨をバラバラにして窒息させてしまえ!」という訳の分からん命令(笑)を下し、スカイライダーが抵抗に困っていた所に児童達清子先生が駆け付けた。

 児童達のリーダー格であるカズヒコ君「止めてくれ!父ちゃん!母ちゃん!俺達は樹にされても構わないから悪いことに手を貸さないでくれ!そんな父ちゃんと母ちゃん達を見たくないんだ!」と叫んだ。
 樹にされても人の心を残していた樹にされた人々は涙を流しながらスカイライダーから離れた。予想外の展開にうろたえたキギンガーは「子供達を樹にされてもいいのか?!」と再度の脅迫に出たが、児童達も、樹にされた人々も、清子先生も無言のまま毅然とキギンガーを見据え、二度と脅迫に屈することも、強要に従うこともなかった。

 スカイライダーは、人間を樹に変えることが出来ても、正義を愛する心まで変えることは決して出来ない、とある意味勝利宣言を告げ、最後の戦いに移った。
 やがてスカイライダーは99の技の1つ・風車三段投げとスカイキックでキギンガーを撃破。樹にされた人々「怪人が死んだら、怪人によって病気・医師・別の生き物にされた人々は元に戻る」という特撮のお約束に従って元に戻ったことは言うまでもない(笑)。


勝利の肝 勿論作戦そのものはスカイライダーキギンガーを倒したことで阻止され、百鬼村に平和が戻った訳である。キギンガーを倒すことで特撮界のお約束通りに(笑)人々は元に戻った訳だから、村人達の行動は完全なサイドストーリーである。
 だが、以前拙作「客演−ライダーのみにあらず」にてこの第37話を紹介した様に、児童達清子先生樹にされた人々の見せた存在感はとてつもなく大きく、客演した一文字隼人=佐々木剛にも負けないものだった。

 「」についても殆ど前述しているに等しい。早い話、「強い意志で脅迫に屈しなかった。」と云うものである。
 以前、拙作「悪のコンビネーション―組み合わせを考えんかい―」でもキギンガードラゴンキングのコンビを語る為にこの第37話を採り上げているが、両者のコンビネーションは互いが互いの役割を果たす、魔神提督にしてはナイスチョイスで(笑)、上条タケシが逃走に失敗していれば一文字に百鬼村の異変を気付かれるのにかなり時間が掛り、一村支配や、樹にされた人々のコントロール研究はかなり進んだ可能性もあった。

 その一方で、樹にされた人々児童達の不服従を見れば、ネオショッカーの作戦が百鬼村の外に波及するのはかなり困難だったのではないか?とも思われる。
 元々『仮面ライダー(スカイライダー)』はフィクションだし、「樹にされる恐怖」というのもイマイチ想像し難い。だが、意識を残しながら異業の形で身動きもままならないことや音波による苦痛の与え方を見れば、かなりのシュールさが伝わって来て、これに抵抗するにはかなりの意志の強さを要したことが窺える。

 最終的にドラゴンキングキギンガーを倒し、百鬼村を解放したのはスカイライダー仮面ライダー2号だったが、ネオショッカーが百鬼村の人達を完全服従させることは最初から不可能で、百鬼村の人達は「敗れざるべくして敗れなかった」と断じたい。

 これ以上の余計な論述は野暮と云うものだろう。


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平成二七(2015)年五月一日 最終更新