12.著名人達VSマリバロン……帝国が恐れた抵抗分子

番組名『仮面ライダーBLACKRX』第35話「光太郎指名手配!!」
放映年月日1989年7月2日
勝利者各界著名人達
勝利手段無罪への信念と辛抱
勝利形態陰謀阻止
ストーリー概略 ある日突然、南光太郎は殺人で指名手配されている凶悪犯として警察に追われる身となった。警官だけではなく、一般市民も彼の姿と名前に怯えていた。
 彼が務める佐原航空にも、頻繁に出入りする佐原家にも、刑事が張り込んでおり、身を寄せられなかった。
 勿論、光太郎には身に覚えの無いことで、訳の分からないまま逃げ続けていたが、たまたま彼と彼の指名手配写真を目撃した幼女に泣かれたことから、駆け付けた刑事に両手を差し出して手錠を掛けられることとなった。
 野次馬達から「誘拐犯!」、「人殺し!」、「死刑になれ!」との罵声を浴びせられながら留置所に連行された光太郎だったが、突然の逮捕歴は勿論クライシス帝国の仕業だった。

 つまりは、警視庁のコンピューターを怪魔コンピューターでハッキングしたもので、クライシス帝国は人間社会がコンピューター情報を利用しつつ、同時にそれ以上にそれらの情報に操られている実態に目を着けたのだった。
 クライシス帝国の諜報参謀でもあるマリバロンは警視庁のコンピューターをハッキングし、未解決である2年前の「爆弾犯人の指紋データ」に「南光太郎の指紋」とのデータを上書きし、それが証拠とされたのである。突然、2年前のデータに犯人情報が加わったことを不審に思わなかったのか?警視庁よぉ!?
 それに、報道では「南光太郎20歳」とされていたから、2年前の犯行なら18歳時の犯行で、光太郎の名を報道するのは少年法第61条に抵触することになるのだが、良いのか?? (余談:うちの道場主は少年法の為にどんな凶悪犯罪であっても未成年の名前が伏せられることを苦々しく思っているが、それでも規定されている以上は守られなければならないと思っている。つまり、少年法を改正した上で、余りにも非道過ぎる犯罪に対しては中学生であっても名前を出すべき、と思っている)

 投獄された上、マリバロンによって体内に怪魔妖族ウィル鬼を潜り込まされ、体内からの攻撃に苦しむ光太郎は居ても立ってもいられず、仮面ライダーBLACK RXに変身して留置場を抜け出した(←勿論器物損壊脱獄)。
 下水道に逃れたRXバイオライダーに変身、警視庁のコンピュータールームに侵入(←勿論不法侵入)し、事の真相を目撃した。
 同時にマリバロンは、近い将来において帝国の地球攻略の抵抗勢力となり得る人物にも同様の手口で濡れ衣を被せていた。その顔触れは大学教授、評論家、政治家、弁護士などだった。

 山本明教授は現金強奪の、小林三郎弁護士は大量毒殺の、坂本直政医学博士は嬰児誘拐・殺人の、評論家の本郷竜一は重要文化財放火の濡れ衣を被せられ、逮捕された。
 その有様に、自分達の邪魔者と目した人々に濡れ衣を被せる汚い手口にRXは怒りを振るわせるのだった………。


勝利 体内からウィル鬼に心臓を突かれ続けたRXはやがて地面に倒れ伏した。
 勝利を確信したウィル鬼マリバロンは慢心し、ジャーク将軍 (高橋利道、声:加藤精三)の、「いがみ合わずに一致協力せよ」、「ダスマダー (松井哲也)の口車に乗るな」の指示も忘れ、要塞と地上コンピューターの通信を遮断し、コンピューター基地にRXを運びこんだ。
 早い話、手柄の一人占めである。

 だが、この抜け駆けは大失敗で、RXウィル鬼に心臓を突かれた瞬間だけバイオライダーに変身して、攻撃を耐え抜き、技師でもってウィル鬼を欺いていたのだった。
 処刑しようとした瞬間、バイオライダーとなってウィル鬼マリバロンと対峙した。

 忽ちバイオライダーウィル鬼の戦闘となり、その巻き添えで怪魔コンピューターは破壊された。その途端、繋がっていた警視庁のコンピューターデータからも偽データが消失した。それは光太郎達の濡れ衣消失も意味していた。
 程なく、ウィル鬼RXに倒され、要塞に戻ったマリバロンジャーク将軍の折檻を受けたのだった。
 う〜ん、苦痛に悶える高畑淳子さんを見ているとサディスティックな快感が………(←道場主「いい加減にしないと変態と思われるぞ……。」)


勝利の肝 戦闘や事件の解決だけを見ると完全に仮面ライダーBLACK RXの一人舞台だった。光太郎以外の、クライシス帝国によって濡れ衣を被せられた人々は留置場で無実を訴えていであろうことが予想されるだけで、ストーリー上何か行動を起こしたり、戦ったりする姿が映された訳ではなかった。
 つまり本作の命題としている、「ただの人間が勝利に貢献した」、と云う意味においては本来この『仮面ライダーBLACK RX』第35話は該当しないと言える。

 だが、敢えて取り上げたのは、「クライシス帝国がただの人間の能力を侮っていない」という点に注目したからこそである。
 つまりクライシス帝国が前述の山本教授達を排除しようとし、その為の作戦を立案した段階で、この第35話は、れっきとした「一般人とクライシス帝国の戦い」を描いたものなのである。

 注目したいのは、光太郎並びに濡れ衣を被せられた人々及び、その家族を初めとする周囲の人々の反応である。
 彼等は断固として身内を信じた。
 当たり前だが、逮捕容疑は事件こそ実在のものでも、本人にとっては全くの濡れ衣で、彼等は降って湧いた災難に動揺しつつも、「無実だ!」と堂々と述べ、家族達にも「何かの間違い」と言い放った。
 光太郎の周囲の人々−佐原家の人々も戸惑いながらも光太郎を信じた。
 光太郎RXであることを知る佐原茂 (井上豪)は、それがクライシスの仕業であることを瞬時に察知したが、RXの正体が光太郎であることを夢にも思わない佐原俊吉 (赤塚真人)・唄子 (鶴間エリ)夫妻は「何故に光太郎に濡れ衣が被せられたのか?」と云う疑問、「光太郎がそんなことする訳ない」と云う想い、「でも警察が間違うだろうか?」という疑念に苦しんだ。だが、様々な想いはあれどやはり佐原一家光太郎を信じた。

 濡れ衣を被せられた人々及び、その周囲の人々は光太郎を除いて特にこれと言ったことをしていない。だが、これは「無実を確信していたからこそ、ジタバタしなかった。」とシルバータイタンは見ているのだが、穿った物の見方だろうか?

 最後に補足的に触れておきたいのが、濡れ衣が晴れた瞬間の喜びの姿である。
 理屈だけを述べれば濡れ衣を被せられた人々にとって、逮捕容疑はでっち上げだったのだから容疑が晴れたからと言って取り立てて喜ぶ事でもない。平常に戻っただけなのだから。それでも大切な身内が拘束を解かれ、名誉を回復したことの大きな安堵はアクションに現れるものなのだなあ、ということをこの第35話は考えさせられる。
 佐原家では光太郎の容疑解消を祝ってプチ宴会が行われたが、考えてみれば裁判が始まるまでもない短期間の拘留で、クライシス帝国による陰謀であったことが明らかだったからマスコミも自信を持って名誉回復報道を行っていたが、現実の冤罪事件問題はここまで軽くはない。

 経験があるから分かるのだが、短時間の職務質問や、無実による一晩の取り調べでもかなり気分の悪いものがある。
 しかも、実際に逮捕・起訴されるとなると、長期に渡る裁判のため、これらの時間が冤罪者に耐え難い時間と名誉の喪失を与え、長年憎んできた相手が突如犯人でなくなることを検察も、凶悪犯罪被害者も、マスコミもなかなか無実を受け入れようとしない傾向が強い。
 一話限りの話だが、『仮面ライダーBLACK RX』第35話が内包する命題は重く、もっと注目されてもいい話、とシルバータイタンは考える。


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平成二七(2015)年五月三日 最終更新