13.ボクサー沢田VSバルンボルン……偽りのヒーローを追い出せ

番組名『仮面ライダーBLACKRX』第36話「ヒーローは誰だ!?」
放映年月日1989年7月9日
勝利者沢田勝
勝利手段バイオライダーとの融合
勝利形態洗脳解除
ストーリー概略 スポーツ界に異変が起きていた。野球、陸上、サッカー、テニスといった様々なスポーツにおいて、その道のトップクラスのプロ達にグレートマスクと名乗る、全身タイツの怪人物が挑戦し、次々に打ち破っていったのだった。
 そしてその異変は選手達を応援していた子供達にも異常な影響を及ぼしていた。

 子供達は、最初は尊敬し、応援していたヒーローの惨敗に意気消沈するのだが、しばらくするとグレートマスクに鞍替えし、グレートマスク親衛隊に加わり、親衛隊の制服を着て「グレートマスクNo1」を連呼して、頭上を指指すという異常な崇拝を始めるのだった。

 佐原茂の同級生達も異常を見せた。
 最初はサッカーの釜本選手の大ファンであるアキオが、次はプロボクシング世界チャンピオンの沢田勝 (小沢和義)を応援していたダイスケが、グレートマスクを崇拝するようになった。ダイスケに至っては、リングサイドで応援していた沢田が敗れた途端に「グレートマスクNo1」を連呼し出し、連れの2少年と共にその後を追う始末だった。

グレートマスクがテニスで勝利するシーンをTVで見ていた南光太郎は、その動きが人間離れしていることに正体を訝しがったが、それだけでクライシス帝国の企みとは断じられなかった。
 アキオダイスケの変貌を怪しいと思ったはその友達である三朗 (中島義実)・健吾 (片岡信吾)と共にダイスケを尾行したが、グレートマスクの正体=怪魔異生獣バルンボルンを目撃したのを気付かれ、囚われ、洗脳されたのだった。

 その頃、グレートマスクに敗れた夜のリング上で敗残に打ちひしがれていた沢田は栄光のチャンピオンベルトを叩きつけようとしたが、それを仮面ライダーBLACK RXが止めた。
 悔し涙に暮れる沢田RXは、グレートマスクの正体が人間ではないことと、子供達にとってヒーローが如何に大切な存在であるかを説いた。
 その言葉にリターンマッチを決意した沢田RXと固い握手を交わすのだった………。


勝利 リターンマッチが開催された。マッチを撮影に来ていた白鳥玲子グレートマスク親衛隊の中に達がいるのを確認し、同時に洗脳状態にあることも確信して、敢えて静観に入った。

 ゴングが鳴ると前回と打って変わって沢田の優勢で試合が進んだ。沢田の放つパンチは次々とクリーンヒットし、逆にグレートマスクの攻撃は全く当たらなかった。
 その優勢に徐々に子供達の洗脳が溶け出し、沢田のパンチに彼にとってのヒーローであるRXのRXパンチの動きを見出し、ダイスケ沢田が再び自分にとってのヒーローとして返り咲こうとする姿に歓喜の声を挙げた。
 業を煮やしたグレートマスクはボクシングの試合にもかかわらず蹴り技まで繰り出し(←それでも一方的にやられていた)、観客は勿論、親衛隊の少年達からも非難の声が上がり出し、もはやグレートマスクはヒーローではなくなっていた。

 散々に打ちのめされ、ダウンを繰り返したグレートマスクは遂にバルンボルンの正体を現した。同時に沢田の急激な戦闘能力アップの実態も露わにされた。
 沢田の体からはバイオライダーが飛び出した。バイオライダー曰く、沢田は子供達の為、自らの細胞に液状化したバイオライダーを受け入れてグレートマスクと戦ったこと、本来なら許されない手段でありながら子供達の夢を守る為に敢えて受け入れたことを告げた。

 RX沢田に子供達の避難誘導を託し、沢田も快諾した。バルンボルンは一人逃げ遅れたダイスケ (←はっきり言って太り過ぎ)を人質に逃走を図ったが、それでもアクロバッターの突進で人質と奪い返された後は一方的で、RXキック、リボルケインの前に昇天し、子供達は真のヒーローを前に微笑みを取り戻したのだった。


勝利の肝 この話におけるクライシス帝国の洗脳方法が如何なるものかはイマイチ分かり辛い。推測だが、恐らくは科学的な手段と精神的な手段の併用で、割合として後者によるところが大きいと思われる。その証左になるかどうか些か自信が無いが、子供達は目前のヒーローの勝敗に対して実にあっさりと心変わりを起こしていた。

 それゆえ、洗脳を解く為に仮面ライダーBLACK RXが取った手段は実に興味深い。
 つまり前述した様にバイオライダーとしての能力を駆使して、沢田の細胞に潜り込んで一体化し、グレートマスクを破った訳だが、特にダイスケの変貌を見ると沢田の勝敗に影響されている様が非常に顕著である。

 現実世界のマインドコントロールや、洗脳教育にも言えることだが、イデオロギーに思考や価値観を固定化された人間は如何なる物的証拠や穴の無い理論も信用しない。RXにしてみれば、グレートマスクを尾行して行方不明になった達の行方を追う意味もあったのだろうけれど、ヒーローと云うものが如何に子供達にとって大切かを重んじたからこそ、洗脳を解く為にも、沢田との細胞合体という「暴挙」を敢えて行ったのだろう。

 それを考えるとバイオライダーを受け入れた沢田も立派である。
 細胞合体は本来ならドーピング以上の反則である(RXも明言していた)。もし人間相手に行ったことならボクサー、ファン、業界人、マスコミのすべてから唾棄されていたことだろう。
 戦う相手がクライシス帝国の怪魔異生獣であることを理解しても、自分の能力以外のものを使って戦うことはチャンピオンとしてのプライドを思えば相当な抵抗があった筈である。そして、万が一にもグレートマスクに返り討ちに遭っていたら、二重三重に恥の上塗りを行いかねないリスクさえあったことを思えば、作中にてはっきり語られてはいなかったが沢田の決意は相当なものだっただろう。実際にバイオライダーもその決心に敬意を払っていたし。

 グレートマスク怪魔異生獣バルンボルンを戦闘にて倒した要因としてはRXの能力によるところが大きいだろう。だがヒーローの意義を持って子供達の夢と経緯を守る為に戦った沢田の勇気と奮闘はRXに勝るとも劣らないとシルバータイタンは確信するのである。


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平成二九(2017)年一二月一五日 最終更新