14.総理大臣VSマリバロン……二度は屈しなかった決意

番組名『仮面ライダーBLACKRX』第44話「戦え!全ライダー」
放映年月日1989年9月3日
勝利者総理大臣
勝利手段明確な拒絶
勝利形態特になし
ストーリー概略 前話までに牙隊長ゲドリアン (渡辺実:新井一典)、機甲隊長ガテゾーン (北村隆幸、声:高橋利道)の二隊長を失っていたジャーク将軍率いる地球攻略兵団にも、怪魔界崩壊も間近に迫っていたクライシス帝国にも、もはや後が無い状態となっていた。
 クライシス帝国は敢えて人々の眼にクライス要塞の姿を晒し、とあるビルの一室に入ったマリバロン総理大臣と極秘会談が行われた。

 会談の結果は決裂で、マスコミはクライシス帝国による日本総攻撃が不可避であることを伝え、人々は疎開を始めるのだった………。


勝利 佐原家でも俊吉の実家への疎開準備が為されていた。南光太郎は最終局面と迎える戦いを前に佐原一家にしばしの余暇を共に過ごし、しばしの別れを告げる為に佐原家を訪れた(俊吉唄子夫妻とはこれが今生の別れになってしまったのだが)。

 その頃、クライシス本国からは「皇帝陛下の破壊兵器」として最強怪人グランザイラスが送り込まれ、到着と共に地球防衛軍のレーダーを破壊した。
 一方では海兵隊長ボスガン (藤木義勝、声:飯塚昭三)が最後の戦いを挑まんとしていた。そこにグランザイラスが乱入し、忽ちピンチに陥った仮面ライダーBLACK RXだったが、帰国した仮面ライダー1号仮面ライダーZXまでの10人ライダーが加勢したことで辛くも虎口を脱した。

 10人ライダーの自己紹介を受け、邂逅を喜び、共闘を誓う光太郎達の元に最後の勝負、一騎打ちを求めてボスガンがやってきた。
 10人ライダー南光太郎の仲間達が見届け人を務める中、最後の勝負が為され、RXボスガンを倒したのだった。


勝利の肝 実はこの第44話、仮面ライダー1号仮面ライダーZXまでの10人ライダーが帰国し、四大隊長の一人ボスガンが戦死するという重大局面を持った話ではあったが、ボスガン討伐にも、グランザイラス迎撃にも普通の人間達の動きにこれと言った活躍があった訳ではなかった。

 勿論皆無だった訳ではない。
 前述した様に、冒頭では総理大臣が、終盤では地球防衛軍の兵士が各々の職分を果たさんとしていた。
 前者はマリバロンの「Yes? or No?」の問い掛け―恐らくはクライシス帝国への服従要求と思われる―に対してきっぱりと「No」の形に口を動かしていた。服従を拒絶したと見て間違いあるまい。
 後者はボスガン戦死後、RXの姿を求めて街々を破壊するグランザイラスを迎え撃たんとして地球防衛軍の兵士達が戦闘機やバズーカ砲でもって攻撃したが、全く敵わなかった。
 まあ、グランザイラス10人ライダーが総掛りでもびくともしない戦闘能力を持つクライシス帝国で最強と言っても過言ではない猛者(戦闘状況から言ってジャーク将軍やクライシス皇帝よりも強い)で、これに地球防衛軍が抗し得ないのは無理もない話と言える。

 結局この後も最終回に至るまでクライシス帝国の侵攻に対して政府要人防衛軍が何か目立った行動をしたり、帝国打倒に何か貢献したりする姿が描かれることはなかった。だが、シルバータイタンはこの『仮面ライダーBLACK RX』の前作である『仮面ライダーBLACK』での地球人、というか日本人の在り様との比較もあって、「屈しなかった」ことをもって、かなりの誇張を承知の上で、この第44話の日本人を「人間の勝利」にカウントした。

 少し話が逸れるが、『仮面ライダーBLACK』での日本政府及び日本人は余りにも不甲斐なかった。シャドームーン (声:寺杣昌紀)の復活と日本政府への宣戦布告に対し、突如大怪人達が現れた時こそパトカーや拳銃で抵抗する警官達もいたが、第47話で仮面ライダーBLACKが敗れて一時的に死ぬと具体的な描写は無かったが、日本政府がゴルゴムに抵抗した軌跡は全く見られず、宗教関係者はひたすら神仏に祈り、一部の青年達に至っては、命惜しさから「ゴルゴム親衛隊」を名乗って、子供達を「怪人の餌」として献上しようとする始末だった(さすがに仮面ライダーBLACK復活とクジラ怪人の優しさに改心したが)。

 そんな前作における反省があったかどうかまでは不明だが、『仮面ライダーBLACK RX』では多くの「普通の人間」がそれぞれの分の範囲内ながらクライシス帝国と戦い、力で抗し得ずとも不当な服従を拒んだ。実際、マリバロンに相対し、要求を拒絶した総理大臣の立ち居振る舞いは実に毅然としたものだった。
 「勝利」というには少々おこがましく、「負けなかった」という方が相応しい気はするが、彼我の戦力差を考えれば服従してもおかしくない状況下の中、「負けなかった」ということを、敢えて「勝利」と見做したいのである。
 シルバータイタンの我儘な私見であることは百も承知の上で(苦笑)。


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平成二七(2015)年五月三日 最終更新