15.杉田守道・桜井VSラ・ドルド・グ……研究と追跡を重ねた果てに
番組名 『仮面ライダークウガ』EPISODE46「不屈」 放映年月日 2000年12月31日 勝利者 杉田守道・桜井剛 勝利手段 新型神経断裂弾 勝利形態 外敵抹殺
ストーリー概略 関東医大病院にて五代雄介 (オダギリジョー)への蘇生措置は完了していた。眠りから覚めたかのように起き上がった雄介は、自分の中に確かに何か力の気配を感じた。椿秀一医師 (大塚よしたか)・沢渡桜子 (村田和美)と軽く言葉を交わした雄介はバイクを駆り、ゴ・ガドル・バ (軍司眞司)の元へ急いだ。
その頃、セントラルアリーナでは飛び去るラ・ドルド・グ (婆娑羅天明)を杉田守道警部補 (松山鷹志)と桜井剛警部補 (米山信之)が、中に残ったゴ・ガドル・バを一条薫警部補 (葛山信吾)が追う形となった……。
勝利 セントラルアリーナ内部に潜入したする一条は、ゴ・ガドル・バに一撃を食らうも、神経断裂弾を放って見事に命中させ、ゴ・ガドル・バを昏倒させた。
一条の前に現れたバラのタトゥの女=ラ・バルバ・デ (七森美江)は「リントもやがて我々と等しくなる・・・」という謎の言葉を残し去ろうとした。一条は銃を向けるたが、突如起き上ったゴ・ガドル・バに襲われ、そのゴ・ガドル・バは駆けつけた雄介の攻撃を受け、再度の一騎打ちとなった。
雑木林において対峙する仮面ライダークウガとゴ・ガドル・バ。ともに金の力を帯びていたがクウガは更に体色を黒色に変化させ、アメイジングマイティフォームとなった。結局、この力でもってクウガはアメイジングマイティキックを放ち、後集団の中でもトップクラスの戦闘能力を持っていたゴ・ガドル・バを撃破。
そしてそれに先行して河原にてラ・ドルド・グを追跡していた杉田と桜井は各々の拳銃から神経断裂弾を発射し、戦闘能力においてはゴ・ガドル・バに決してひけを取らなかったラ・ドルド・グを仕留めるのに成功していたのだった。
勝利の肝 単純に杉田と桜井がラ・ドルド・グを討ち取ったシーンだけを見るなら、飛び道具、正確にはそれに装填された神経断裂弾の勝利である。
見方を変えれば、神経断裂弾を開発した科学警察研究所の榎田ひかり (水島かおり)の勝利とも言えるが、やはりこのラ・ドルド・グ討滅は「警察の勝利」であり、「人間の勝利」であることを強調したい。
この勝利を語るにおいては、何と言っても、『仮面ライダークウガ』における警察の在り様を語らずにはいられない。昭和以前の仮面ライダーシリーズでは警察は有り得ない程影の薄い存在だった(苦笑)。だが、平成シリーズでは現実の世界宜しく、警察組織が怪事件の解決に積極的に動いており、中でもこの『仮面ライダークウガ』は『仮面ライダーアギト』・『仮面ライダーW』・『仮面ライダーウィザード』・『仮面ライダードライブ』と並んで警察の活動が目立った作品だった(逆に警察の活動が殆ど見られない作品の場合は、舞台となる世界がかなり限られていた、という意味でもリアリティーが重んじられている)。
そんな背景と舞台を持っていたから警察は第1話から積極的に動き、「未確認生命体」と呼んだグロンギ怪人相手に戦い、調査・追跡し、被害阻止にも勤しんでいた。
勿論、グロンギ怪人を討ち取るのはクウガの役割だから、警察がグロンギ怪人を倒すのはかなり困難だった。警察官が普通に所持する拳銃は全く効かず、大勢の殉職者を出し(特にゴ・ガドル・バには一警察署の署員が皆殺しにされたこともあった)、グロンギに戦闘員がいないこともあって、雑魚役、咬ませ犬役を振られることも少なくなかった。
だが、警察の仕事は市民に危害を加える存在を抹殺・捕獲することだけではない。警視庁は未確認生命体関連事件特別合同捜査本部を設置し、特殊ガス弾・特殊ガスプラスチック弾(特殊ガス弾の弾丸仕様版。排煙の成分を200倍に強化)・スタングレネード(メ・ガルメ・レの保護色能力を無効化)・超高圧ライフル・中和弾(ゴ・ザザル・バの強酸性体液を無効化させた)・超音波発生装置(コウモリ型の怪人であるズ・ゴオマ・グを錯乱させた)・筋肉弛緩弾(ゴ・バベル・ダを弱体化させた)・マーキング弾(追跡用にラ・ドルド・グに撃ち込まれた)等を次々に開発させては実戦に用いた。
特にガス弾は初期にグロンギ怪人達が苦しむ様子を見せたこともあって、科警研では特に重視していたが、度々ガス濃度を挙げたにもかかわらず、後になる程効き目を見せなくなっていた。
そんな数々の武器を持って、様々な因縁から一条・杉田・桜井はマグナム弾を放てるコルト・パイソンを装備し、ペガサスフォーム時のクウガに拳銃を渡して、ペガサスボウガンを放つのに協力していた。また一条は状況に応じてライフル銃(レミントンM700)も多用していた。
三人の刑事達は当初、民間人なのに事件に介入する雄介を快く思わず、杉田と桜井は「未確認生命体4号」にカウントされたクウガを敵と見做して銃口さえ向けたが、誤解が解けた後は雄介の良き理解者となって前述の様な銃の貸与(←現実の法律に照らし合わせると物凄い違法行為)し、杉田は何度も雄介に親しく、様々な想いを語り、桜井の小まめなメモがゴ・ザザル・バの狙いを掴むヒントをもたら、と次第に両刑事は一条と共に番組に欠かせないメンバーとなっていった。
そんな作風とストーリー展開だったから、放映当時シルバータイタンは本気でこの刑事達を応援していた。そして番組も最終話間近になって榎田が神経断裂弾の開発に成功した。 これは弾丸が体内で炸裂することで、グロンギの驚異的な回復力の源である神経組織を連鎖的に爆発させ、ダメージを与えるものであった。
そしてこの神経断裂弾は見事に杉田・桜井の両刑事をして見事にラ・ドルド・グを討ち取らしめたのであった。ラ・ドルド・グが地面に倒れ伏した瞬間、シルバータイタンは「杉田!桜井!良くやった!!」と本気で叫んだ。
同時にこの二人の勝利は、二人を初めとする警察の執念の勝利であったことにも触れたい。警察の執念に関しては前述の経緯を見ても明らかだが、ラ・ドルド・グに対しての執念にも注目したい。
警視庁ではグロンギ怪人を「未確認生命体」と呼び、各怪人達には番号を付けていた。その中でも未確認生命体第47号とされていたラ・ドルド・グは、彼等が「ゲリザギバスゲゲル」と称していた殺戮ゲームの見届け役を務めていたことから、戦闘には直接参加せず、人間体が早くから警察によってマークされていた。
だが、戦わなかっただけで、その戦闘力は後集団最強のゴ・ガドル・バと戦っても―戦いを記録するバグンダダという計数器を一条に破壊された責任で戦う羽目になった―遜色なく、まともに戦うのは他のグロンギ怪人と戦う以上に命懸けの行為だったと言える。
神経断裂弾による勝利は、性能だけを見れば科警研に負う所が大きいだろう。だがそれでも至近距離まで追跡して、僅かな勝機の時間を見逃さずこれを命中させ、討滅に成功した杉田・桜井の手柄はそれまでの過程と共にもっと称賛されてもいいとシルバータイタンは思う。ある意味、仮面ライダー全作品中、警察による初めての正面切っての勝利でもあったのだから。
尚、余談だが、神経断裂弾は第48話で一条もこれを用いてラ・バルバ・デに命中・負傷させ、東京湾に叩きこんだが、本来体内に残ってこそ相手を倒す弾丸が貫通していたことと、ラ・バルバ・デの死体が見つからなかったことから、やはり杉田・桜井の対ラ・ドルド・グ戦勝利の方が大きなものと見ている。
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平成二七(2015)年五月六日 最終更新