16.氷川誠VS風のエル……「ただの人間」ここに極まれり!!
番組名 『仮面ライダーアギト』最終話「AGITOΩ」 放映年月日 2002年1月27日 勝利者 氷川誠 勝利手段 研究・開発・改良が重ねられたG3システム 勝利形態 外敵抹殺
ストーリー概略 G3ユニットを外され、郷里の香川に戻ったと思われた氷川誠 (要潤)だったが、彼は飛行機に乗っていなかった。彼は左遷命令に従わず、G3-Xとして最後まで戦うことを選んだことを小沢澄子管理官 (藤田瞳)に告げた。
氷川の決意を歓迎したは彼女はG3システムを搭載していたGトレーラーを吸収し、システムを保有していた北条透警部補 (山崎潤)から同システムを強奪すると云う暴挙(?)に出た。思う所があったのか、意外にも北条はあっさりGトレーラーを引き渡し、同乗していた尾室隆弘 (柴田明良)も二人との合流を喜び、三人は最終決戦に向かった。
それに前後して、仮面ライダーアギトはバーニングフォームを駆使して尚、地のエルに苦戦を強いられていた。シャイニングフォームに変身し、シャイニングカリバーで攻撃することで劣勢を挽回すると、地のエルが突然、光球と化して飛び去った。
地のエルは林の中にて空中で横たわる闇の青年 (羽緒レイ)のもとに現れた。闇の青年からエネルギーを受けていたところにアギトが追い付き、再度の一騎打ちとなったが、強化された地のエルの前にアギトはまたも苦戦に陥った。
追い打ちを掛ける様に風のエルまで現れた。1対2の劣勢の中、猛攻を受けたアギトは、遂に変身が解け、津上翔一 (賀集俊樹)の姿に戻って倒れた。だがその危機にG3-Xを纏った氷川が地のエル・風のエルを銃撃しながら到着し、翔一を介抱して共闘を呼び掛けた。
そんな氷川に闇の青年が「無駄なこと」と言い放った。闇の青年曰く、人間の手は自分の掌中にあり、ただの人間に抗う術は無い、とのことだった。
その台詞に大勢の自殺者達の犠牲が闇の青年によってもたらされたものであることを悟った氷川は怒りを露わにするとGK-06ユニコーン(電磁ナイフ)を抜いて地のエルに応戦。
これまでの奮闘を更に凌駕する氷川の奮戦に、トレーラー内のモニターで固唾を飲んで見守っていた尾室は驚嘆し、小沢は感心しつつも、半ば当然としていた………。
勝利 G3-Xを纏って奮戦する氷川の戦闘能力に驚いた地のエルは「お前はアギトではない。なぜこれほどの力を……何者なのだ、お前は!?」と問いかけた、そしてそれに答えた氷川の台詞は「ただの…人間だ!」だった。
その横合いから闇の青年が攻撃を放ち、氷川は翔一のもとへ吹き飛ばされたが、そこに地のエルに倒された筈の葦原涼 (友井雄亮)が駆け付けた。涼は二人に檄を飛ばすと訝しがる地のエルに「俺は……不死身だっ!! 変身っ!!」と叫んでエクシードギルスに変身した。
翔一もまた闇の青年に「人の運命がお前の手の中にあるなら……俺が、俺が奪い返す!!」と叫んで仮面ライダーアギト (シャイニングフォーム)に変身。ここにアギトVS地のエル、G3-X&ギルス対風のエルによる二つ巴の最終決戦が展開された。
激闘の末、G3-XのGXランチャーによるロケット弾が風のエルに命中し、そこへギルスのエクシードヒールクロウが炸裂し、風のエルは呻き声を挙げて爆発・四散した!
一方でアギトもまた地のエルに対し、シャイニングライダーキックを放ってこれを討ち取ったのだった。アギトは更に光球と化して空へ昇ってゆく闇の青年に対してもライダーキックを放ち、大爆発の中、その場では津上翔一の身が案じられたが、一年後、ライダーとして戦った三者はそれぞれの道を歩んでいた所が触れられて、この作品は終結したのだった。
勝利の肝 はっきり言って、「この時の氷川誠の台詞を取り上げたくて本作を作った!」と言っても過言ではない。前作『仮面ライダークウガ』から2年後の世界、という設定である『仮面ライダーアギト』の世界において警察は前作同様、人間に危害を加える案の運と積極的に戦った。
その急先鋒がG3ユニットと呼ばれる特別チーム並びに、G3システムを纏う氷川誠だった。それゆえシルバータイタンは前作以上に警察と、タイトルとは別の存在となる仮面ライダーとなった氷川を応援していた。
だが、氷川が辿った道は決して順風満帆なものではなかった。
未確認生命体との戦闘経験やデータから、未確認生命体4号と呼ばれた仮面ライダークウガと同等の戦闘能力を持っていた筈のG3システムは当初、アンノウン相手に全く歯が立たず、結果しか見ない警視庁幹部 (加地健太郎)、G3装着権を奪われたことを妬む北条、G3システムにライバル心を燃やすV1システム考案者の高村光介教授 (清水紘治)等から冷たい視線を浴びせられ(←注:彼等はプライドや思い込みが強過ぎるが決して悪人ではなく、警察としての本分を忘れてはいない)、気真面目な性格が災いして、翔一相手に激昂したり、涼に殴られたり、一時はG3システム装着の権利を他者に奪われたり、と言った日々を送っていた。
だがそれでも小沢・尾室・捜査一課の先輩・河野浩司刑事 (田口主計)といった理解者に恵まれ、数々の武器が開発されたことでG3システムは徐々にその戦闘力を増し、アギトととの共闘でアンノウンを倒したり、単独で止めを刺したりする場面も後々になるほど増えて来た。
そして最後にはアギトがシャイニングフォームを持ってしても苦戦を強いられた地のエル・風のエルを同時に相手して互角以上に戦い、地のエルを驚嘆させる程の力を発揮したのである。
厳密に、最後の対戦相手である風のエルに留めを指したのはギルスである。だがアギトの危機を救い、闇の青年が「無力」と断じた「ただの人間の力」で戦い抜いて認識を改めさせ、風のエルをグロッキーに追い込んだ氷川の勝利貢献度はアギト・ギルスに勝るとも劣らないとシルバータイタンは見ている。
同時に注目したいのは、作品を通じての闇の青年の見解である。人間の可能性を否定したかと思えば、僅かな期待を抱いたりするなど、その真意が見え辛い存在だったが、基本的に人間を見下し、翻弄していた。その過程において、あかつき号事件や番組終盤の大勢の自殺者を見れば本当に腹立たしい存在だが、最終的には人間を認めたような風を見せて去って行った。穿った物の見方かもしれないが、闇の青年の認識変化には「ただの人間の力」として成長を重ね、最後まで戦い抜いた氷川の存在が大きいと云えよう。
アギトやギルスだけでも勝負に勝てたかもしれないが、それだけでは人間は無力な存在のままでおかれ、『仮面ライダークウガ』・『仮面ライダーアギト』と尽力して来た警察=現実世界においても存在する者の存在意義は極めて小さなもので終わっていたことだろう。
以上の様な背景・考察・経緯があって、平成二七(2015)年五月七日現在、シルバータイタンは平成仮面ライダーシリーズにおける名台詞の筆頭に「ただの…人間だ!」を挙げる。リアルタイムでこの台詞を聞いたとき、シルバータイタンは次の瞬間TVの前で万歳をしたものだった(実話)。
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平成二七(2015)年五月七日 最終更新