2.岩本博士VSゼットン……試作品で宇宙恐竜を撃破

番組名『ウルトラマン』第39話「さらばウルトラマン」
放映年月日1966年4月8日
勝利者岩本博士
勝利手段試作兵器・無重力弾
勝利形態外敵抹殺
ストーリー概略 かつてない円盤群の襲来に世界各国の科学特捜隊は戦慄するとともに可能な限りの防戦体制を敷いた。日本でも科特隊と航空自衛隊が迎撃態勢固めた。

 程なく、日本上空にて航空自衛隊と円盤群の空中戦が始まり、自衛隊は多少の円盤を撃墜したが敵わず、パリの科特隊本部も迎撃を命じた。ところが円盤群に先んじて変身怪人ゼットン星人が科特隊基地に潜入していた。

 ゼットン星人岩本博士 (平田昭彦)を気絶させ、彼になり済ますや通信係として残っていたフジを気絶させ、科特隊基地の破壊を始めた。
 大型母船を除いて円盤群をほぼ壊滅させた科特隊は基地の異常を察知し、帰還するや岩本に化けていたゼットン星人を追跡し、ハヤタがマルス133でもってこれを射殺。正体を現したゼットン星人は「ゼットン」の名を連呼して消滅した。

 その断末魔に呼応して、大型母船から宇宙恐竜ゼットンが出現。ハヤタウルトラマンに変身し、ゼットンに立ち向かったが、キャッチリング、八つ裂き光輪、そしてスペシウム光線までもが通じず、逆に波状光線にカラータイマーを破壊され、大地に倒れ伏したのだった…………。


勝利 数々の怪獣・宇宙人を退けて来たウルトラマンが倒れ、1兆度のメテオ火球を吐きながら迫るゼットンを前に、科特隊基地は燃え、打つ手はないかに思われた。だが、気絶から目覚め、アラシに救出された岩本が駆け付け、彼の手からアラシに新兵器・無重力弾(試作品)が託された。

 イデと共にゼットンに向かったアラシは、「一発しかないので決して外せない」というプレッシャーの中、アラシが放った無重力弾はゼットンの顎に命中。次の瞬間、ゼットンの体は宙に浮き上がり、木端微塵に粉砕された。
 足元に転がってきたゼットンの残骸を前ににこやかに「我々の勝利だ」と呟いて余韻に浸ろうとしたが、アラシは即座に基地の消火に向かうよう促した。


勝利の肝 この勝利を単純に語るなら、「岩本博士の兵器開発能力はウルトラマンをも倒したゼットンすら粉砕した。」で片付く。
 だがこの勝利の意義を考察するに当たって、この話が最終回であることを失念してはならない。背景的にも。

 まず背景として注目するのは、襲撃者であるゼットン星人が、40年という長期を持して、隊列でもって地球を襲撃して来た、「襲撃者らしい襲撃者」ということである。
 特撮ファンの中には、地球侵略にやって来る宇宙人に対して、「何でたった一人で来るんだよ(笑)」というツッコミを繰り返した記憶をお持ちの方も多いだろう(笑)。

 勿論、バルタン星人の様な例もあるが、この第39話冒頭は円盤群の目的が分からず、迎撃態勢を固めつつも、当初は軽はずみな攻撃を戒めていたことも興味深い。そう、この第39話は「地球人が如何にして地球を守るか?」の念に満ちているのである。

 それ故、航空自衛隊も出撃し、科特隊パリ本部も日本支部の奮戦を激励する指令を送って来た。ウルトラマン初敗北の衝撃に襲われつつも、科特隊員達の戦意は微塵も薄れることはなかった。

 周知の通り、この直後、M78星雲からゾフィーがやって来て、ハヤタウルトラマンは分離され、ウルトラマンは地球の平和が続くことを祈りつつ、地球を去り、この人気番組は完結した。
 まあ、身も蓋もない云い方をすれば、その後も怪獣・宇宙人・超獣・円盤生物は次々と地球を襲い、ウルトラマンの戦いは延々と続くのだが、それでもウルトラマン初敗北を元に地球人が地球人の手で地球を守ることが語られた意義は、ゼットンへの勝利と並んで大きなものがある。

 本来、ウルトラマンは余所の星の住人である。
 地球とM78星雲に国交(?)は無く、ウルトラマンとて、宇宙怪獣ベムラー護送中の事故でハヤタを死なせたと云う偶発的な出来事で彼と肉体を共有し、地球に留まることが地球を守ることになった訳で、ウルトラマンに地球を守る義務もなければ、地球人が請願した訳でもない。
 そして本来、地球の平和は地球人が自らの手で守るべきである。

 この命題に関しては、ゾフィー「地球の平和は人間の手で掴み取ることに価値がある。」という台詞が雄弁に物語っている。
 傷付き、疲れ果てたウルトラマンに光の国への帰還を促しに来たゾフィーは、ハヤタを死なせない為に分離を拒否するウルトラマンに先の正論と、ハヤタに与えるべき命があることを告げて彼を説得した。
 謂わば、地球もウルトラマンも「帰るべき所に帰った。」と言えようか。

 後日譚になるが、『新ウルトラマン列伝』にて、ウルトラマンゼロゾフィーからゼットンの強さを教えられた際にウルトラマンが敗れる映像を見て驚愕するとともに、「あの後どうなったんだ?!」とゾフィーに訪ね、ゼットンが地球人の手で倒されたことを聞いて二重に驚いていた。
 数多く存在するウルトラ怪獣とシリーズの歴史において、今尚、「最強」の呼び声の高いゼットンの存在感は今更語るまでもないが、それに人類が打ち勝った史実と、それに前後した意義はもっともっと重視されていい歴史、とシルバータイタンは考える。


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令和五(2023)年八月三日 最終更新