3.ウルトラ警備隊VSワイルド星人……たった一つしかない自分だけの命

番組名『ウルトラセブン』第11話「魔の山へ飛べ」
放映年月日1967年12月10日
勝利者ソガ隊員・アマギ隊員
勝利手段解析力
勝利形態外敵抹殺、犠牲者蘇生
ストーリー概略 イワミ山にて若者が次々と外傷もなく息を引き取る、という怪事件が続発した。犠牲者は26名に及び、その不可解さからウルトラ警備隊が調査に乗り出すこととなった。

 出動したのはモロボシ・ダン (森次浩司)とソガ隊員 (阿知波信介)だったが、日付に対するソガの悪しき予感が的中した様に、探索中のダンの体色がいきなり変わるや瞬時に死体となってしまった。
 メディカルセンターにてダンの遺体を前に滂沱に暮れるウルトラ警備隊の面々(←アンヌ隊員 (菱見百合子)を除く)。キリヤマ隊長 (中山昭二)は「事件の解決までダンの死を伏せること」、「ダンの戦歴への称賛」、「ダンがやられるほどの手強い敵の存在」、「弔い合戦の開始」を隊員達に告げた。

 現場調査を続けるキリヤマ隊長フルハシ隊員 (石井伊吉)、ソガのもとにアマギ隊員 (古谷敏)からの連絡が入り、群馬県警の警官二名とともにイワミ山三合目の洞窟に向かった。
 そこに居たのは呻き声のような音を発する怪しい存在で、一斉射撃に観念した様に出て来たのは毛むくじゃらの猿人然とした姿の宇宙野人ワイルド星人だった。
 星人は持っていた銃を置いて逃走。キリヤマ隊長ソガに洞窟の見張りを命じると、自身はフルハシとともにワイルド星人が残していった銃を基地に持ち帰った。

 アマギの分析により、銃は命を吸い取るカメラであること、マウス実験にて生命はカメラ内部のフィルムに定着されて生きていることが判明。更にアマギがフィルムの映像を投影すると、そこにはダンを初め、カメラの犠牲者たちが蠢く姿が映っていた。
 それゆえアマギはフィルムの生命体を元に戻す方法の究明に専念することとなった。

 その頃、一人洞窟に残るソガの前に再度ワイルド星人が出現。星人の口から地球侵略意図はなく、種族として老衰して滅び去ろうとするのを防ぐ為に、人類の若い生命が幾ばくか欲しいだけである旨が告げられた。
 それゆえワイルド星人は先に奪われたフィルムの返還を懇願するが、勿論受け入れられる訳はなく、拒絶するソガワイルド星人は光線を浴びせ、気絶させた。
 ワイルド星人は気絶したソガを操ってウルトラ警備隊にフィルムの持参を要請。やって来たキリヤマ隊長フルハシワイルド星人ソガの身柄をたてにフィルム返還を要求。キリヤマ隊長は応じたと見せ掛けて空のフィルム缶を渡し、怒ったワイルド星人宇宙竜ナースを召喚した。

 その頃、基地の研究所ではアマギがフィルムに封印された命を遺体に戻す方法を発見。程なくダンは蘇生した。蘇生したダンは仲間を救うべく、ウルトラセブンに変身してイワミ山へ飛ぶのだった…………。


勝利 地球人に対する罪悪感を抱きつつも、自らの滅亡を何としても避けたいワイルド星人は形振り構っていられなかった。ナースキリヤマ隊長フルハシソガにけしかけ、自身は何とかフィルムを奪い返さんとしたが、ナースウルトラセブンの襲撃を受けていた。

 ナースの元に駆け寄るワイルド星人を見たソガ。この時点で彼はダンが蘇生する可能性があることを知らず、走り去る星人に銃の照準を合わせ、「ダンの仇だ…。」と呟いてワイルド星人を射殺した。
 そしてセブンの五体を締め上げて奮闘していたナースセブンに振り解かれるとともに体をバラバラに引き千切られて絶命した。

 戦いを終え、夕暮れの中で「敵を倒してもダンの奴は戻ってこない」と呟いて佇むソガは、直後に蘇生したダンと再会する歓喜の到来をまだ知らずにいた。


勝利の肝 何と言っても、奪われた生命を奪還することで一人の犠牲者を出すこともなく、襲撃者を殲滅したことにある。人類の代表であるウルトラ警備隊としては自衛の為に宇宙人を一人射殺したという戦い、というよりは事件に近いものだったが、それでもこの対ワイルド星人戦は極めて重要な人類の勝利だった、とシルバータイタンは捉えている。

 滅びの運命を免れたいが為に命の強奪に走るワイルド星人に多少の同情を感じないでもないが、かといって自分の命をくれてやる訳にはいかないのもまた事実である。
 哀しい話だが、地球人にしても、ワイルド星人にしても自らが生き残る為に他者に犠牲を強いなければならない事件だったのである。
 それもこれも奪おうとしたり、守ろうとしたりしたものが「」という掛け替えのないものだったからに尽きる。

 謎の大量殺人を解決せんとして魔の山に潜入するフルハシの姿も、奪われた命を前に泣きながら仇討ちを誓うソガの姿も、僅かな希望を現実のものにせんとカメラと奮闘するアマギの姿も、総ての指揮を執るキリヤマ隊長の姿も、いずれもが迫真で美しいものがあった。

 ウルトラシリーズの、歴代正義のチームの面々は概して感情豊かな人間が多いが、この第11話の様に隊員ほぼ全員で男泣きするシーンは極めて珍しく、それ故に後々の行動や、台詞の一つ一つを重くしている。
 故にここでは余計な批評は控え、勝利後のウルトラ警備隊員達の台詞を列記して、そこに込められた想いを「勝利の肝」と捉えて頂きたい。

 ソガ:「ダンじゃないか。助かったのか。この野郎!よくも俺に心配かけやがって、ダァァ〜ン!!」
 アマギ:「隊長、被害者は全員、無事フィルムの中から救出しました。」
 キリヤマ隊長:「そうか、よくがんばってくれた。ご苦労。」
 ダン:「こちら、ダン。おかげで命を取り留めることができました。アマギ隊員、まさに命の恩人です。ありがとう!」
 ダン:「隊長、一度死んで生き返ったら、ますます命が惜しくなりましたよ。」
 キリヤマ隊長:「それでいいんだ。命は自分だけの一度きりのもんだ。そうたやすく宇宙人なんかにやってたまるか。」


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平成二七(2015)年四月六日 最終更新