7.美山あゆみとその友達VSブラック指令……レオ感動の勇気と奮起

番組名『ウルトラマンレオ』最終話「恐怖の円盤生物シリーズ!さようならレオ!
太陽への出発」
放映年月日1975年3月28日
勝利者美山あゆみとその友達
勝利手段袋叩き&噛みつき
勝利形態外敵抹殺
ストーリー概略 悪魔の惑星ブラックスターから召喚した円盤生物を次々とウルトラマンレオに撃破されたブラック指令(大林丈史)は最後にして最強の円盤生物ブラックエンドを召喚した。

 その頃、おヽとりゲン(真夏竜)は梅田トオル(新井つねひろ)に請われて、黒潮島の思い出が残る海に向かった。だがそこにブラックエンドが現れ、レオの名を連呼しては暴れ回った。
 我が物顔に暴れるブラックエンドに対し、トオルレオに依存する心を露わにし、それを見たゲンレオに変身するのを躊躇った。

 結局、いつまで経ってもレオが現れないことに業を煮やしたブラック指令ブラックエンドを引き上げさせた。
 帰宅後、ゲントオルが居候する美山家の長女・いずみ(奈良富士子)は「レオがいるからこそ、地球は襲われるのでは?レオがいないの方がいいのでは?」との疑問を呈していた。
いずみを初め、誰もレオの正体を知らないからこそ、ゲンは余計に傷ついた。MACを滅ぼされ、スポーツセンターの仲間達が殺された後も地球を唯一の故郷として、ウルトラマンレオに変身して戦ってきた身としてはあんまりな言われ様でもあった。

 その夜、ゲンの夢の中にウルトラセブンが現れ、「本当に試される時が来たのだ。」と告げられた。それに意を決したのか、翌朝、トレーニング中に現れたブラックエンドに逃げ惑い、へこたれたトオルゲンは自分の正体を明かした。

トオルの眼前でウルトラマンレオに変身したゲンは最後の戦いに挑んだ。
 最後にして最強の円盤生物を相手に優勢に戦いを進めていたレオだったが、そんなレオを応援するトオルの姿がブラック指令の眼に映ってしまったことから戦況が変わった。
 大刀を持ってトオルを人質に取ったブラック指令レオに抵抗中止を要求。ブラックエンドの攻撃を受け続け、意識が薄れる中、地球に来てからの戦いの日々が走馬灯の様に浮かんでは消え、ウルトラセブンの「今こそお前の力を発揮する時だ!」との檄に、最後の戦いは最後の局面を迎えようとしていた…………。


勝利 ウルトラマンレオ梅田トオルの危機を救ったのは、美山家の次女・あゆみ(杉田かおる)と、彼女が率いる10人程の子供達だった。
 停車中の列車車両の物陰からブラック指令トオルの様子をうかがっていたあゆみブラック指令が水晶球でもって円盤生物を操っているのを目敏く見抜いた。その直後、トオルブラック指令の右腕に噛み付いて抵抗したのを見るや、あゆみは意を決してブラック指令に突撃敢行、他の子供達も無言のままそれに追随した。

 ブラック指令の背後から一斉に飛びかかった子供達は、あゆみが水晶球を持つ右手に飛び掛かり、一人の男の子が棒でもってブラック指令の左手に持たれていた大刀を叩き落とし、その他の子供達は一斉に取り押さえに掛った。
 大刀を叩き落とした男の子とは別の(最年少と見られる)男の子は、ご丁寧にも叩き落とした大刀を拾って、離れた距離に放り投げ、更には袋叩きに加勢する、と云うナイスな行動を敢行した!

 本来、いくら多勢による攻撃とは言え、悪の親玉が10人前後の丸腰の子供達に殺されることなどあり得なかっただろう。だが、水晶球を奪われたことがブラック指令の、文字通りの「命取り」となった。

 水晶球を怪しいと見ていたあゆみブラック指令の右腕に噛みつき、その攻撃によって彼は水晶球を放してしまった…………ん?誰ですか?杉田かおるさんに噛み付かれた大林丈志氏を羨ましく思っている方は?

 ブラック指令が放した水晶球はトオルが拾い上げ、トオルはそれをレオに投げて託した。
 トオルを人質に取られ、無抵抗でブラックエンドの猛攻を受けて倒れ伏していたレオだったが、水晶球を手にするとそれをブラックエンドに投げ付けて破壊した。次の瞬間、ブラックエンドは絶命し、命の核を失ったブラック指令も全身を泡で覆わせ、悪臭を発しながら悶絶して絶命・消滅した。
 返す刀でレオは地球に迫るブラックスターにレオシューティングビームを放って、これを破壊。これを持って円盤生物の襲来は完全に終結。レオは子供達の勇気に感激しつつ、ストーリーは最後の大団円を迎えたのだった。


勝利の肝 第二期ウルトラシリーズ最終作となった『ウルトラマンレオ』は今でこそ高い評価を受けているが、放映当時は低視聴率に苦しみ、テコ入れを繰り返し、それでも全体的に暗い作風だったこともあって、初期の評価は決した高くなく、シルバータイタンも初めて通して観た時は引き気味ですらあった。

 それは取りも直さず、この作品が様々な意味でそれまでのウルトラシリーズらしくなかった点にある、と見ている。それを細かく論述すると一つのサイトになるので(苦笑)割愛するが、一つの側面に「ウルトラマンレオの成長譚」としてのストーリー性があることに注目して欲しい。同時にそれが「梅田トオルの成長譚」という一面を持っていたことともに……。

 この最終話におけるレオの戦闘自体は然程目新しいものではない。番組序盤では数々の通り魔的宇宙人や怪獣に敗北を重ね、モロボシ・ダン虐待シゴキを受けて身体能力・戦闘能力を大幅に向上させていたレオは、最強最後の円盤生物を相手にも優勢に戦いを進めていた。ブラック指令トオルを人質に抵抗中止を要求していなければ全く苦戦することもなかっただろう。チョット変わった所を指せば、最後の最後にレオシューティングビームでブラックスターを破壊したことぐらいだろうか?(←道場主「それってかなり凄くないか?」)

 それゆえ、「勝利の肝」となるのはトオルを初めとする子供達の勇気に在る。そこで少し話が逸れるが、同作品における梅田トオルと云う存在と経歴を追ってみたい。
 トオルは妹の梅田カオル(富永美子)第3話から登場。ゲンが務める城南スポーツセンターに通う少年で、父子家庭に育っていた。だが初登場の第3話でいきなり父(二見忠男)をツルク星人に惨殺され、そのショックの引き摺り様は妹よりもひどかった。
 それでもスポーツセンターのトレーナーであるゲンを兄(時として父)の様に、同じくトレーナーである山口百子(丘野かおり)を姉(時として母)の様に慕い、徐々に明るさ・強さを取り戻しながら生きていたが、第40話で円盤生物シルバーブルーメの襲撃にてカオル百子にまで死なれてしまった。
 以上がトオルの経歴だが、トオルの兄代わりでもあるゲンは、自らがダンに鍛えられる日々の中で故郷や肉親を失った自らの境遇をトオルに重ね合わせたものか、自らの境遇を呪い、時に自暴自棄になるトオルに対してビンタを喰らわすこともあり、ストーリー全般と通して彼を厳しく鍛えた。勿論ダンの様にした訳ではないが(苦笑)。

 ここでようやく本編に対する考察に入る。
 ブラック指令の人質にされたトオルだったが、彼とて無抵抗だった訳ではない。前述した様に噛み付いて抵抗したし、取り押さえられて尚、必死にレオを応援していた。まあ、特撮定番の「俺に構うな。」の台詞はなかったが(苦笑)。
 だが如何せん普通に体格差で考えても大人と子供である。まして相手は地球侵略にやってきた、それなりに屈強な(と思われる)宇宙人である。さすがにスポーツセンターで日々鍛えていたとはいえ、小学生のトオルの独力では振り解けなかった。
 結局はあゆみ達を初めとする友達の助力を得て脱出に成功した訳だが、特筆すべきは、子供達の行動がかなり理に適っていることである。

 箇条書きすると、
○水晶球が重要アイテムであることを見抜いていた。
○襲撃直前まで誰も鬨の声はおろか、一言も発さず、無言でブラック指令に襲い掛かった。
○無理な攻撃に出ず、取り押さえることを主体にしていた。
○最も脅威となるであろう大刀を逸早くディザ―ム(叩き落とし)し、それを遠方に放擲することも怠らなかった。

 いずれも重要な要素で、能力的には文字通り「子供でも出来ること」だが、実際に遂行可能かどうかとなるとなかなか難しい。ブラック指令トオル拘束中もさんざっぱら振り翳していた水晶球が重要アイテムであることを見抜くのは然程観察力を必要としないかも知れないが、その処理をレオに託したことや、大刀に対する処理、子供にありがちな鬨の声を上げなかったこと等は、実に冷静且つ理に適っている。丸で作られたストーリーの様である(笑)。

 ただ自暴自棄気味に蛮勇を発しただけならブラック指令に返り討ちに遭っていたかもしれなかった。
 水晶球が手元に投げられなければ、「ブラックエンドを倒し、ブラック指令を倒し、ブラックスターを破壊する」という手間の中でアクシデントが起きたかもしれなかった。
 子供達の勝利への貢献は、勇気・冷静さもさることながら、トオルレオを供に戦う仲間と見てくれたからこそであった。
 そこにこそ、故郷を失い、友・恋人・師を失い、第2の故郷と見込んだ星の人々から「もしかして疫病神では?」と見られていた辛さに耐えて来たウルトラマンレオが、地球を唯一無二の故郷として真の意味でおヽとりゲンになれた瞬間でもあった。レオの、ニェート(否)、ゲンの喜びは一入だったことだろう

 最初から最後まで暗く、重い雰囲気が漂った『ウルトラマンレオ』だったからこそ、この作品だけが持ち得た、地球人と共に成した最終回の素晴らしさは今後も末永く語り継ぎたいものである。


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平成二九(2017)年一二月一五日 最終更新