2.『仮面ライダーV3』での地獄大使
所属組織 ショッカー 演者 潮健児 改造体 デストロン 共闘者 ゾル大佐、死神博士、ブラック将軍、ドクトルG 登場 第27話にて復活 降板 第28話にてアジト崩壊に巻き込まれて死亡。 対戦ライダー 仮面ライダーV3 配下 ドクダリアン、シオマネキング、イモリゲス、ウニドグマ
蘇生 推測だが、地獄大使がゾル大佐、死神博士、ブラック将軍と共に復活(保存していた細胞を利用したらしい)したのはデストロン首領(←云うまでもないと思うが、ショッカー首領、ゲルショッカー首領と同一人(?)物)の意向によるところが大きいと思われる。
同時に幹部だけではなく、ショッカー怪人のドクダリアン、シオマネキング、イモリゲス、ウニドグマも蘇生させられた。
これは仮面ライダーシリーズ史上、初めて組織を跨いで幹部・怪人が甦った例である。再生怪人自体は珍しい話ではなく、平成の世にあっては劇場版にて過去の組織が数多く出て来るので、今でこそ組織を跨いで幹部・怪人が甦る例は珍しくない。
だが、昭和時代においては過去の組織の改造人間が登場するケースは数えるほどで、中には「制作陣の間違いで出ちゃったのでは?」レベルのチョイ役程度もあった(『仮面ライダーストロンガー』でタイタンの葬式に何故かアリカポネが参列したり、『仮面ライダースーパー1』の劇場版でドグマ復讐兵団にネオショッカーのクラゲロン・黄金ジャガーが加わったりしていた例)。
何事も初の例というのはインパクトが強い。
『仮面ライダー』第13話でそれまで登場したショッカー怪人全員がトカゲロンに率いられて登場したインパクトが今も色褪せないことを考えれば分かり易いだろう。ましてや幹部が甦ったのであるから、この時の地獄大使並びにショッカー、ゲルショッカー大幹部の復活は尚更だったろう。
惜しむらくは、かようにして鳴り物入りで登場した面々もまた「再生」=「戦闘員並み」の宿命を背負ってしまったことだろうか(苦笑)。
ともあれ、復活させられたきっかけは、デストロン首領の満を持しての立案だった「日本全滅計画」であった。
「どんなガスマスクも効かない」という新型の毒ガス・キラードガンマー(しかし、実践に際して戦闘員はガスマスクをしていた(笑))を散布して日本中の人間を皆殺しにする、名前通りに日本を全滅させるもので、五大幹部による指揮が組まれた。
つまりは、日本を五地区に分けてそれぞれに地区に五大幹部を配して作戦を実行する為、地獄大使を初めとする四人は蘇生させられたという訳である。
もっとも、数を動員するのに必須のチームワークはかけらも考慮されなかった様だが(笑)。
立場 基本、日本全滅作戦の役割上、首領の下、現役であるデストロン幹部・ドクトルG(仙波丈太郎)並びに、共に復活したゾル大佐、死神博士、ブラック将軍と同格である(故にワナゲクワガタや戦闘員には上から目線で接した)。
ドクトルG自身は他の四幹部に対して上にも下にも出なかったが、地獄大使は早々と共闘の意義を否定し、死神博士もこれに同調した。つまりは、「テロ行為は共にするが、戦いは共にしない。」と云ったところであった。
甦った四幹部が画面上に出たのは仮面ライダーV3と再生ショッカー怪人との前哨戦をモニタリングしていたのが最初であった。
一見後、新たな仮面ライダー3号ことV3を見た感想として地獄大使は「我ら悪魔の五大幹部が総がかりで戦うほどの相手ではないぞ。」と云い放った。続く死神博士の同調台詞が、「地獄大使の云う通りだ、儂の誇りが許さん。」というものだったので、これ等の感想はV3を過小評価したものというより、ドクトルGが現役幹部として先達の自分達を主導することに対して牽制したものと思われる。
この想いは言葉にこそ出さなかったがゾル大佐やブラック将軍も同様だったのだろう。後述する地獄大使の失策寸前にゾル大佐は地獄大使のそそっかしさに言及し、死神博士はそれに注意するよう促した。
言葉だけを受け止めるなら「親切な忠告」なのだが、それに対するドクトルGの回答は「指図は受けん。」という些かおかしなものだった。
推測するに、Gは死神博士の忠告を同格幹部としての対抗心から来るものであったと捉えたのだろう(実際、そういう側面もあったことだろう)。
本来、同じ立場の者達が共同で作戦を実行するにあたってこのチームワークは最低最悪である。にも関わらず首領はこの作戦にかなりの思い入れがあった様であった(これも後述するが、地獄大使の失態を許し、作戦崩壊後にはドクトルGに対してかなり厳しい態度に出ていた)。
結果として日本全滅作戦は実践前に崩壊したので首領の真意は読めず、推測でしかないが、日本を五地区に分けて五大幹部に指揮させようとしたのは、彼等のライバル意識・対抗心を利用しようとの腹積もりだったのではなかろうか?
失策 一度死を経験したとはいえ、地獄大使は嬉しい程、笑える程地獄大使のまんまだった。まあ、変わっていたら嫌だが(苦笑)。
キラードガンマーの解毒剤を求めてデストロン基地に潜入した風見志郎(宮内洋)を逃がすまいとして再生ショッカー怪人達が襲った際も先頭に立って鞭を振るい、志郎を捕らえるのに成功した(地獄大使個人の能力ではなく、アジトに設えた罠部屋を利してのものだったが)。
だが、後に戦闘員が止めるのも効かずに捕らえたV3を見物したがり、天井にへばりついて隠れていただけ(笑)のV3が見当たらないのに狼狽し、扉を開けるよう戦闘員に強要した。
結果、地獄大使はV3の不意打ちを食らい、自分が人質にされるという大失態を演じてしまった。
V3と地獄大使は牢獄を出たところで駆け付けてきたドクトルGと遭遇した。勿論他の四幹部は地獄大使の大失態に呆れ果て、ゾル大佐とブラック将軍を痛罵した。
さすがに地獄大使には一片の反論の余地もなく、彼は首領並びに組織への忠誠から自分諸共V3を殺すよう懇願した。望み通りにしてやろうと拳銃を構えたゾル大佐だったが、そこに他ならぬ首領が「待った」をかけた。
首領曰く、「地獄大使一人欠けても日本全滅作戦は遂行不可能」とのことで、V3の要求を呑み、地獄大使を助命することとなった(←過去作でも触れたが、ショッカー時代に地獄大使を裏切った首領の贖罪という可能性も僅かにあるとシルバータイタンは考えている)。
ちなみにこの地獄大使の失策には最後の最後で一考の余地がある。
地獄大使を人質にデストロンアジトを抜け出したV3だったが、地上に出たところでドクダリアンとウニドグマの奇襲を受けた。地獄大使曰は丸で人質にされたこと自体がV3に仕掛けた罠だったと云わんばかりに高笑いしていた。この言葉が真実なら「地獄大使おっちょこちょい説」は瓦解する。だが、自分で云い出しておいてなんだが、これは負け惜しみだろう。V3を殺すだけなら牢獄から出す意味はなく、誰かに見せるのならともかく、人質にされた状態で処刑を懇願する意味もない。
単純に地獄大使が解放された瞬間を狙ってショッカー怪人がV3を奇襲したが、返り討ちに遭っただけの話だろう。
最期 せっかく(?)甦り、首領の鶴の一声で処刑も免れた地獄大使だったが、その最期は呆気なかった。
再度アジトに潜入した仮面ライダーV3とワナゲクワガタの戦闘において敗れたワナゲクワガタの体が爆発したことでアジトの自爆装置が起動し、地獄大使はゾル大佐、死神博士、ブラック将軍共々二度目の死を迎えたのだった。
しかし、まあ、この時の四大幹部の再度の死は滑稽を通り越して哀れと云えた。
各々のプライドから暗にいがみ合う五大幹部だったが、作戦遂行を第一と考える分別はあった様であった。首領の命令で地獄大使を助命した後はワイングラスを掲げて作戦成功を誓い合っていた。四人の死はその矢先のことであった。
つまり四人は実行動に出れない内に最期を遂げた訳である。番組的に云えば見せ場(?)の有った地獄大使はまだ良い方で(苦笑)、ゾル大佐、死神博士、ブラック将軍は地獄大使の性格説明と、ドクトルGとのいがみ合いの為に再登場したに過ぎなかった(苦笑)。勿論、この三名はV3と対峙はしても絡み合いは無かった。
そしてその過程も大幹部の死にしては呆気なく、間の抜けたものだった。ワナゲクワガタの戦死でアジトの自爆装置が起動したことは即座にアジト内にアナウンスされたので、ゾル大佐を先頭に即座に脱出に掛かったのだが、ワナゲクワガタの死に伴う爆発でドアが歪んでしまい、外に出られないという阿呆みたいな展開で脱出は阻まれた。
死に際して、死神博士は土砂が降り注ぎ始める中、ドクトルGに狼狽しながら「日本全滅作戦はどうなる?!」と、自らの身よりも作戦の行く末を懸念していた点に彼等が和解を果たしてことが見て取れ、呆気ない最期の哀れさをより深めていた。
この問いに対してドクトルGは作戦崩壊の責任は自分にあり、その責任は必ず取ることを宣言した。好意的に見ればGが既にわだかまりを捨てていた様に見えるが、悪意的に見れば、「お前等は死ぬが、俺は生き残る。」と宣言していたようにも取れる(苦笑)。
ともあれ、状況だけ見れば五人まとめて生き埋めになり、死亡したと取るのが妥当なシーンで、V3にアジトから救出された立花藤兵衛も五人とも死んだと断じて、喜びを露わにしていた。
だが、V3はドクトルGが死んだとは思えない、とし、このことが現役幹部らしくドクトルGのみがしぶとく生き残った事が暗示され、実際、彼だけは生き延び、以後2週に渡って対V3への最終局面に臨んでいた。
ドクトルGが唯一人生き残ったことに異は唱えない。現役幹部までもがああも呆気なく命を落としては盛り上がりに欠け過ぎる。しかし G一人生き延びた要因が盾一つというのは些か酷過ぎませんか?制作陣の皆様方??
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令和三(2021)年六月一〇日 最終更新