3.『仮面ライダーSPIRITS』での地獄大使
所属組織 ショッカー・バダン 演者 無し 改造体 ガラガランダ 共闘者 死神博士 登場 第2部仮面ライダーZX Forget Memories第22話にて、極めて中途半端な姿で再生 降板 にて『新仮面ライダーSPIRITS』第41話において戦死。 対戦ライダー 仮面ライダー1号・2号・ZX 配下 ジャガーマン、海蛇男、ゴキブリ男、ギリーラ、ドクモンド、毒トカゲ男、ミミズ男、フクロウ男、ハリネズラス、セミミンガ、カブトロング、カミキリキッド、ギリザメス、ギラーコオロギ、エレキボタル、アブゴメス、モスキラス、シオマネキング、シラキュラス、バラランガ、シードラゴン、イモリゲス、ウニドグマ、ショッカーライダーNo.1〜No.6(以上、全員が再生怪人)
初めに 『仮面ライダーSPIRITS』並びに『新仮面ライダーSPIITS』は雑誌掲載と特番でしか世に出ていなかった『仮面ライダーZX』が村枝賢一氏の手によってリメイクされていると云える漫画作品である。
自身仮面ライダーファンとしてマスカーワールドを深く愛する村枝氏による構成は原作の設定を忠実に踏襲しつつ、ライダーファンを喜ばせるオリジナル設定も展開している。ゆえにショッカーと地獄大使に関する設定・背景・描写も同様である。
つまりは紙面媒体ゆえに俳優が演じたものではないとはいえ、仮面ライダーシリーズに溶け込む物として全く差し支えないばかりか、TVシリーズでは触れられなかった側面に触れていることも考慮し、シルバータイタンは同作品も本作に組み入れたことを述べておきたい。
再生 同作品の悪の組織はBADANである。暗闇大使の記憶からも、ショッカーからデルザーまでを裏で糸引いていた大首領がその後もネオショッカー、ドグマ、ジンドグマを率い、BADANを組織していたことが触れられていた。
実際、BADANは歴代悪の組織の大幹部・怪人達を甦らせ、日本各地に放って、襲撃させていた。簡単に表記すると下表の様になる。
旧組織の派遣先と状況
組織 担当地域 拠点 備考 ショッカー 関東 東京湾海底地下の旧ショッカーアジト ゲルショッカー 近畿 京都 当初は大阪が本拠だった。 デストロン 四国 高知 最大勢力を率いるドクトルGが高知を、キバ男爵が香川を、ツバサ大僧正が徳島を、ヨロイ元帥が愛媛を攻略。 GOD 中国 出雲大社 アポロガイストは出雲大社、キングダークは秋芳洞にて暗躍。 ゲドン 九州 熊本・阿蘇山 共闘関係のガランダーからは完全に見下されていた。 ガランダー帝国 沖縄 首里城 ブラックサタン 東海 富士山麓 デッドライオンのみ撤退 デルザー軍団 東京 不詳 本来ショッカーが担当する東京を襲撃。その強力さゆえに地獄大使には疎まれていた。 ネオショッカー 北海道 摩周湖 旧組織の中で最初に壊滅 ドグマ 東北 青森 メガール将軍のみ撤退 ジンドグマ 北陸 石川・医王山 悪魔元帥は途中で青森へ
前々ページの設定で触れた過去が地獄大使=ダモン、暗闇大使=ガモンの従兄弟にはあり、ガモンは作戦立案を自分に命じておきながら、その成功による功績・名声をすべて自分の物としていた従兄ダモンを激しく憎んでいた。
同時に、カリスマとして振る舞いながら、従弟の謀反に脅えていたダモンを見下してもいた。そんな経歴があった故、暗闇大使が地獄大使をまともに遇する筈はなかった。その詳細は下記の「虐待」に譲るが、同じショッカー幹部でも、地獄大使はゾル大佐・死神博士とは異なった再生を施された。
そもそも暗闇大使は世界征服に失敗したショッカーからジンドグマまでの歴代組織を見下し、彼等が敗れた際に残した遺骸・残骸を「妄執」と称し、改造素体として利用していた。言葉悪い云い方をすれば、旧組織の幹部・改造人間を「廃物利用」していたのである。
それゆえ見下していたことに関しては地獄大使も他の大幹部も変わりはなかったが、「憎悪対象」と云う意味で地獄大使だけ待遇が異なった。
つまり「廃物利用」だけが目的の他の幹部達は戦闘・破壊工作の役に立てばいいだけなので意志までは再生されなかった(作戦遂行上、多少の記憶は頭脳と共に甦ったと思われる)。実際、ゾル大佐・死神博士はその様に再生された。そして二人とは逆に、地獄大使は完全な意志・記憶を持って再生されたが、身体は半ば腐乱した状態で再生された。想像するに、それには地獄大使の反逆を防ぎ、BADANにおける立場の違いを明確化し、筆舌に尽くし難い屈辱を与えんとの目的もあったのだろう。
虐待 TV特番にて暗闇大使(潮健児)は地獄大使と誤認された際に、「あんな奴と一緒にするな!」と激昂していた。この台詞を代表に、地獄大使と暗闇大使が不仲だったのは有名だったが、『仮面ライダーSPIRITS』での両者の不仲は更に酷かった。
暗闇大使の解説によると、万事に自分を利用しながらも自分を恐れていた従兄・ダモンはある日、政府軍に自分の所在を密告して、犠牲になっている間に逃走したということがあった。
その時に政府軍の一斉射撃を受けて人間としてのガモンは戦死したが、既に彼は首領に見込まれて暗闇大使として蘇生する段取りが出来ていた。勿論従兄ダモンが戦死して、ショッカーによって地獄大使にされる以前の話である。かかる過去もまた暗闇大使が地獄大使を見下し、憎む要因になっていた。
地獄大使を見るも無残な姿で再生した暗闇大使は彼を時に「地獄大使」と呼び、時に「ダモン」と呼び、時に「兄者」と呼び、時に「腐った毒蛇」と呼んだ。
再生した地獄大使を迎えた暗闇大使は「黄泉国より帰りし気分はいかがかな。」と語り掛け、歴代組織の「妄執」による改造素体の再生に意志など不要と説きつつ、それを地獄大使には甦らせた意図を、裏切りの過去にあったことを告げた(勿論醜く、不完全な肉体にした意図もそこにある)。
それを知らされ、首領が自分よりも先にガモンを選んでいたことを告げられ、自らが置かれた状況と悔しさに身悶えする地獄大使は怒り心頭で暗闇大使に掴みかからんとしたが、勿論そんな反抗が出来る能力は残されていなかった。
暗闇大使は苦痛に呻く地獄大使の頭を踏みつけ、組織における立場の違いを宣告した。そんな耐え難い屈辱の中、地獄大使の耳に聞こえた来たのは首領の声で、「その黄泉帰りし魂で次は何を望むか」ととの問いに回答するよう命じた。
この命令は暗闇大使が告げた立場の違い・首領による待遇の格差を追認し、それでも尚、自分への服従を問うという、とても人(?)の血が通っているとは思えない外道なものだった。
だが暗闇大使に足蹴にされたまま地獄大使は、「無論、それは…世界征服に…ございます。」と即答した。
果たしてこれは、地獄大使の首領に対する忠誠がここまで忠烈無比のものだったと感心するべきだろうか?それとも、そんな強い想いでも抱かないと生きていられなかった悲惨さと見るべきだろうか?
復讐戦 ともあれ、地獄大使は仮面ライダー1号・2号を倒すことに傾注した。暗闇大使への想いがどうあれ、彼には首領に対する忠誠や、ライバル(特に1号に対して)との決着が当面の生き甲斐だったと思われる。
同時に、完全な意志を持って甦った彼は暗闇大使に対する憎しみもまた完全に抱いていた。新宿にて6体のショッカーライダーを率いて仮面ライダー1号に挑ませたのだが、このとき地獄大使はショッカーライダーを「ショッカーの遺産」と称し、仮面ライダー1号を倒す為にあらゆる手段を用い、暗闇大使=ガモンの命令を軽視することも口にしていた。ということは、この時の行動は暗闇大使から命じられたものではなく、むしろ当面は大人しくしているよう命ぜられていたとも取れる。
結局、ショッカーライダーは1号ライダーと仮面ライダーZXによる即興のライダー車輪で一網打尽にされ、直後に首領が銀のドクロの姿を見せると、それだけで地獄大使は失敗を咎める罰を受けているかのように苦しみ出した。
その後、地獄大使が再登場したのは全国各地でデストロン、GOD、ゲドン、ブラックサタン、ネオショッカーが壊滅した段階で、ショッカーと戦う本郷猛・一文字隼人の前に現れたときだった(主役のZXは沖縄でガランダー帝国と交戦中だった)。
この間、地獄大使はかつて同輩だったゾル大佐・死神博士とは一切行動を共にしていなかった。両名が魂を持っていなかったことでかつての仲間とは異なる存在と見ていたかも知れないし、配下の怪人達がかつてと同じだったことからも、そもそも共闘は企画されてなかったのかも知れない(ゾル大佐は自分達が戦っている場に地獄大使は以下のエレキボタルが飛んでいたことを面白くなさそうにしていた)。
そしてガランダー帝国、ドグマ、ジンドグマも仮面ライダーZX、仮面ライダーX、仮面ライダーアマゾン、仮面ライダーストロンガー、スカイライダー、仮面ライダースーパー1達の手によって壊滅に追いやられると、残す地域は関東、残る組織はショッカー、デルザー軍団、BADANだけとなっていた。
拉致された克己・和弘を追って1号ライダー、ZX、石倉五郎が潜入してくると、これにはゾル大佐と死神博士並びに両名が過去に率いていたショッカー怪人達が迎撃した。その渦中にて死神博士に命じられたユニコルノスが二人の少年を守らんとした1号の両腕を化石化することに成功したが、そこへ地獄大使が石化を解くので自分の元に来いとの伝達を送った。
勿論これは死神博士の戦果を無にする申し出で、1号にとっても怪しい申し出だった。だが他に術もない1号は地獄大使の元に出頭した。果たせるかな、地獄大使はエレキボタルに光線銃を照射させ、高熱による石化の解除を行わせたが、同時にこれは1号の腕を焼き、その中にいう二人の少年の命を危険に曝すものだった。
一抹、正々堂々の勝負の為に解除を施してくれているのでは?との淡い期待を打ち砕く陰謀振りに抗議の声を挙げる1号だったが、地獄大使はショッカーが約束を守るような組織ではない、と非常に云い放った。
この策謀家ぶりは悪の組織としては自然なものだが、地獄大使の中にある対好敵手として1号ライダーと対峙していた意識が策謀への意識に負けたかと思うと、シルバータイタン的には些か寂しかった。
この危機は、ZXが呼び込んだ海水で冷やされたことで、1号の腕も2人の少年も辛うじて助かった。更に浸水によってZXの電撃攻撃の前にゾル大佐・死神博士が率いる怪人達はほぼ壊滅し、二人の幹部は狼男・イカデビルに変身して最後の攻撃に出た。
そしてこのきっかけを狙っていたかのように地獄大使は直属の怪人達に仮面ライダー1号の抹殺を命じた。
標的たる仮面ライダー1号は克己・和弘を救う為、海上に待機していた緑川ルリ子の元へ浮上した。だが地獄大使は1号が五郎を捨て置く筈はないと確信しており、一方で再度1号を自分の元に呼び寄せる為、潜水艦上の1号を配下の怪人達に襲撃させたり、ルリ子を拉致せんとしたりした。
そんな紆余曲折を経る中、BADANの手によって旧ショッカーアジトが東京湾海上に浮上。そこで仮面ライダー1号と地獄大使は対峙し、遂に最終決戦の時を迎えたのだった。
最期 最終決戦を前にして地獄大使は自らの心境を語った。荒廃したかつてのアジトを「丸で私だ」とし、自らが殉じたショッカーは「幻影」と化し、信じた理想は「BADANの礎」に過ぎなかったことを述懐した。
そんな地獄大使に残された唯一つの物は「貴様との決着」と仮面ライダー1号に云い放った。
自らの心境を語った地獄大使は、不完全な肉体でよみがえらせた自分が真の姿=ガラガランダの姿になることも叶わず、それでも自分が生きていれば配下の魂亡き怪人達がライダーを襲い続けることになるので、自分に引導を渡して欲しいと告げた。
だが、足元の蟹を踏み潰す仕草に、地獄大使が自分への殺意を満々に保持していることを察知した1号ライダーは「云いたい事はそれだけか?」と冷たく返した。その時、1号ライダーは地獄大使配下のショッカー怪人達に包囲されており、地獄大使は「恨み骨髄の本郷猛」への襲撃を配下に下知した。
再生怪人達が戦闘員並みの戦力しかないのはマスカーワールドにおける鉄則みたいなものだったが(苦笑)、この作品ではそうでもなかった。1対1体は1号ライダーの敵ではなかったが、集団にて連携を取られると1号ライダーの戦闘能力をもってしても苦戦は免れ得なかった。
そこで1号は司令塔=地獄大使を潰すべきと考え、パンチの連打を浴びせたが、程なく地獄大使はとんでもない激痛に襲われた。
前述した様に、地獄大使の肉体は敢えて不完全状態にて再生された。それは暗闇大使が地獄大使に屈辱を与え、謀反を抑える為のものだったが、皮肉にもそんな再生の依り代としていた銀のドクロが破壊されることを防がんとして、地獄大使の体に再生を促した。
恐らくは、この急激な体の変化がとんでもない苦痛を地獄大使にもたらしたのだろう。だが苦痛よりも肉体再生によって仮面ライダー1号と再戦出来ることの方を望んだ地獄大使は配下に攻撃中止を命じ、1号にはもっと自分を攻撃するよう促し、遂にはガラガランダの姿になることに成功した。
だが、その代償は大きかったようで、元々冷静沈着とは云えない地獄大使 (苦笑)が更に冷静さを失ったようで、1号ライダーを攻撃せんとした触腕でミミズ男を両断する始末だった。
そこまでして臨まんとした最終決戦だったが、ここで敵味方から邪魔が入った。ライダーきりもみシュートに捕らえられながらも、触腕を伸ばして1号の首を絞め上げていたガラガランダだったが、そこにサイクロン号に乗った仮面ライダー2号が飛び込んで、触腕はぶった切られた。
そして暗闇大使からはゾル大佐日本赴任以前のショッカー怪人達が急派され、蜘蛛男からキノコモルグまでの大幹部に属さないショッカー怪人達が仮面ライダー1号・2号とガラガランダの両方に襲い掛かった。
正確に云えばガラガランダに対してはその行動を妨害する程度だったが、こうなるとガラガランダの方が容赦しなかった。
ガラガランダは自らを羽交い絞めにしたドクガンダーの頭を引き千切り、死神カメレオンのドテッパラを貫き、蜂女を噛み殺して1号ライダーの元に向かった。
更には妨害に出たゲバコンドルとヤモゲラスの体を触腕で両断し、もはや怪人達はショッカーではなく、「俺だけが最後のショッカーなのだ!」と云い放って1号に襲い掛かった。
だがそんな執念も空しく、トカゲロンによってバリア破壊爆弾が蹴り込まれ、爆発の巻き込まれたガラガランダの体は上半身を残すのみという無惨な状態に陥った。
酷いまでの妨害と襲撃は勿論暗闇大使の差配によるものだった。
苦痛の声を挙げるガラガランダに、「いい…叫びだダモン。」と呟いて悦に入っていた暗闇大使だったが、彼が本当に聞きたかったのは、「その目的が奪われた時の貴様の慟哭」で、本当に地獄大使に対して奪えるすべてを奪い、極限までの屈辱を与えんとしていたのだから恐れ入る。
そして数々の妨害・襲撃を受け、頭と胴と左腕しかない状態でも1号ライダーとの決着にこだわるガラガランダ。そこに意気を感じたものかどうかは定かではないが、乱入してきたZXがバリア破壊爆弾をトカゲロンに蹴り返し、トカゲロンを倒した。
ZXは1号に、「ロスタイムだ。引導を渡してやれ!」と促し、ここにまともな戦闘ならずとも、ガラガランダと1号の最終決着がつくかと思われた。
だが、無情にもそうはならなかった。
狼男の放った指ミサイルがガラガランダを掃射し、最期を遂げた。その際、ガラガランダは地獄大使の姿に戻りつつ、「お‥俺はま‥‥た必ず‥‥蘇る。ショッカー軍団万歳」と云う最初の戦死時とほぼ同じ台詞を残してその体は爆発・炎上した。
かくしてガラガランダ=地獄大使は死んだ。だが、その無念は幾許かの執念を残したようで、彼を死に追いやった狼男とイカデビルは、足に巻き付いたガラガランダの触腕に動きを封じられ、2号のライダーパンチと1号のライダーきりもみシュートにぶっとばされ、鉢合わせとなってともに落命したのだった。
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令和三(2021)年六月一〇日 最終更新