不屈の地獄大使
「おのれ、ライダー……きっと甦って必ず貴様を倒してやる………へへっ……ショッカー軍団…万歳!!」
今更解説するまでもない、特撮ファンには有名過ぎる地獄大使(潮健児)の今際の台詞である。
同じショッカー軍団に所属する大幹部でありながら、同じ立場のゾル大佐(宮口二朗)や死神博士(天本英世)からは「そそっかしい」とされ、ブラック将軍にも面と向かって「このおっちょこちょいが!」と痛罵され、おおよそ冷静・冷徹という言葉が似合わない人物(?)である。
一方でどこか人間臭く、密かに首領に見捨てられていたことが同情され、どこか憎めない(勿論、やって来たことを現実の世界に照らし合わせれば立派に「人類の敵」なのだが)独特の存在感を持つ者でもある。
それゆえか、地獄大使の人気は高く、彼自身が初登場時に口にしていた様に、死神博士と並んで称される者であることに間違いはない。
「きっと甦って」というのは現実には不可能なのだが、シリーズ作品が次々と作られるのに伴って演じる俳優、コスチューム、立場を変えながらも「地獄大使」は様々な作品に登場し続け、平成5(1993)年9月19日に潮健児氏が享年68歳でこの世を去ってからも続いた…………否、潮氏が亡くなってからの方が地獄大使の再来は増えている(苦笑)。
様々な映画作品でショッカーが甦り、ショッカー後の悪の組織の大幹部達も蘇り続けるので、ショッカーや地獄大使が何度出て来てもそれ自体は不思議な事ではないのだが、何故か地獄大使には他のキャラクターを遥かに凌ぐ存在感があり、ファンの抱く親しみもまた大きい。
何故か?
シルバータイタンがピックアップした理由としては………
・人間体(潮氏の演じる幹部)と改造体(ガラガランダ)がある。
・最初の組織の最後の大幹部であった。
・人間臭さ。
・首領に裏切られて尚、組織への忠誠を全うした。
・直情的である故の、ある種の純朴さ。
・明言した様に蘇り続けている。
といったところだろうか?
シルバータイタンは過去作において、結託部族(デストロン)、マッド・サイエンティスト(GOD)、犠牲者数(ゲドン)、汚名返上(ジンドグマ)、大幹部(ジンドグマ・クライシス帝国)等々、様々な視点で悪の組織を考察して来た。だが、ショッカーに照準を絞っての作品はまだ作っていない。
これはショッカーという組織がゲルショッカー、ネオショッカー、大ショッカー、スーパーショッカー、スペースショッカー、ノバショッカーと云った派生組織を生み出し続けているからである(『仮面ライダーSD』まで含めるとグランショッカーも含まれる)。
勿論いつの日かショッカーを総合的に取り上げた作品は作りたいのだが、ショッカーが派生した存在を造り続ける限り完成出来ないので一種のジレンマである(苦笑)。
だが、「地獄大使」一人に絞り込み、映画『仮面ライダー1号』で本郷猛(藤岡弘、)と地獄大使(大杉漣)の間に暫定的とはいえ、同盟関係と一種の休戦が成立したことをもって一段落とするなら、それも可能と考えて本作を造り始めた。
勿論、シルバータイタンにとって地獄大使は大好きな幹部の一人だから(少なくとも、ショッカー幹部の中では断トツで、昭和ライダーワールド全体でも五本の指に入る)、彼を採り上げたものでもある。
そんな想いで綴るシルバータイタンなりの地獄大使考察を堪能いただければ誠に喜ばしいことである。
1.『仮面ライダー』での地獄大使
2.『仮面ライダーV3』での地獄大使
3.『仮面ライダーSPIRITS』での地獄大使
4.『劇場版 仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー』での地獄大使
5.『オーズ・電王・オールライダー レッツゴー仮面ライダー』でのガラガランダ
6.『仮面ライダー1号』での地獄大使
7.忠義とプライドの狭間で……
8.地獄大使を演じた人々
9.地獄大使、今後への期待
参考:今際の際に「万歳」を唱えた悪の組織関係者
名前 所属組織 立場 正確な台詞 地獄大使 ショッカー 大幹部 上記参照 ハチ獣人 ガランダー帝国 平の獣人 「ガランダー帝国に栄光あれ……ゼロ大帝万歳……。」 百目タイタン ブラックサタン 大幹部 「ブラックサタン……万歳……。」 ジェネラル・シャドゥ デルザー軍団 平の改造魔神(少し前に暫定指揮権を剥奪された) 「勝った!……デルザー軍団、万歳!!」 幽霊博士 ジンドグマ 幹部 「幽霊博士は死なず……ただ消え去るのみ……悪魔元帥万歳。」 暗闇大使 バダン 大幹部 「暗闇死すともバダンは死せず……万歳!!」 シルバータイタン所感 ラストの2人がどこかで聞いたような台詞を吐いてやがるな(苦笑)。「万歳」の台詞を含まずとも、組織や首領を礼賛して断末魔を挙げた者は多い(ブラック将軍、ドクトルG、ツバサ大僧正、マシーン大元帥、メガール将軍、テラーマクロ、魔女参謀、大怪人ダロム、ジャーク将軍)。
逆を云えば、「万歳」の台詞が用いられたことが少ないのは、昭和中期においてこの単語が引きずっていたイメージに良くないものがまだ強かったからと思われる。
早い話、意に沿わぬ出征に面で目出度い振りをしたり、国家や軍隊への盲目的な忠誠の象徴にされたり、降伏を許されずに自決を強いられた際に用いられたり(「バンザイクイフ」、「バンザイアタック」等の単語も生まれた)、で、特に第一期シリーズ(『仮面ライダー』から『仮面ライダーストロンガー』まで)ではまだまだ「戦後」としてのカラーも影響も強かった。
勿論、「万歳」自体は、元々は皇帝・国王・天皇の長寿を寿ぐもの(それゆえ、古代中国では侯の立場に対しては「千歳」と叫んだ)で、決して悪い意味を持つ物ではなかった。
他にも過去には別段おかしくなかった、問題の無かった単語や風習が忌むべきものとされている例は多い。
その様な事象に対し、シルバータイタンはムキになって言葉狩りすることも好ましいと思わないし、ムキになって連発して使用したり、使用を強要したりするのも好ましいと思わないし、そんな言葉のイメージを変えてしまう悪しき歴史の例をこれ以上重ねて欲しくないと思うばかりである。
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令和三(2021)年六月一〇日 最終更新