4.『劇場版 仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー』での地獄大使

所属組織広義的には 大ショッカー、狭義的にはショッカー
演者大杉漣
改造体ガラガランダ
共闘者死神博士、キングダーク、大神官ビシュム、シャドームーン、ジャーク将軍
登場小野寺ユウスケ、光夏海が飛ばされた大ショッカーアジト内
降板最終決戦において戦死。
対戦ライダー仮面ライダー1号・2号・BLACK RX・カブト
配下 ショッカーからファンガイアまでの様々な怪人達。但し、ブラックサタン、デルザー軍団、ネオショッカー、ドグマ、ジンドグマ、バダンの軍属は存在せず。
初めに 『劇場版 仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー』に登場した地獄大使を語るにあたって、まずは彼の所属する大ショッカーと、『仮面ライダーディケイド』の世界背景を知る必要がある。

 まず、『仮面ライダーディケイド』の舞台は「パラレルワールド」の集合体であることを抑えないと本作自体が理解出来ない。これ以前の平成ライダー作品は『仮面ライダークウガ』から『仮面ライダーキバ』まで、パラレルワールドで起きた話で、主人公・門矢士(井上正大)は過去の記憶を失いながらも、「クウガの世界」から「キバの世界」までの9つの世界を「世界の破壊者・仮面ライダーディケイド」として渡り歩いていた。
 だが、世界は他にも無数にあることが判明し、滅亡はそれぞれの世界が一体化しようとして起こったことで、「世界の破壊者」である筈のディケイドは結果的に各々の世界での戦闘を経て滅亡から救う方向に向かわせていた。

 9つの世界に仮面ライダーがいるということは、同様に各々の世界にグロンギ、アンノウン、ミラーワールド、オルフェノク、アンデッド、魔化魍、ワーム、イマジン、ファンガイアが存在した。これはその他の世界も同様で、本編でも劇場版でもGOD、ゲドン、ゴルゴム、クライシス帝国等の影が見え隠れしていた訳だが、それ等を統合・組織し、「すべての世界を征服」せんとしていたのが大ショッカーで、その大首領こそが門矢士だった。
 勿論、これらの設定・背景は地獄大使の立場並びに行動に微妙に影響することとなった。



微妙な立場 本作にて『仮面ライダーV3』第28話以来、35年11月2週間ぶりに地獄大使が世に出た。勿論、元祖たる地獄大使を演じた潮健児氏は15年ほど前になる1993年9月19日にこの世を去られているので、新たに大杉漣氏が演じ、そのコスチュームは過去と対を為す黒色を基調としていた(後は兜とベルトのエンブレムが大ショッカーの物となっていた)。

 前述した様に、大ショッカーは数々の世界における悪の組織を傘下に収めていた。その直属たる地獄大使は一見、大首領・門矢士の片腕の様に見えたが、それほど強力な権限を有する者でもなかった。
 レギュラーメンバーの一人で、夏海の祖父である光栄次郎(石橋蓮司)が突如死神博士に変身すると地獄大使は明らかにしたの立場の者として遇していた。長年死神博士と地獄大使を同格に見てきた身としては些か寂しいシーンだった(苦笑)。

 そして肝要なポイントとして、士が決して絶対者だった訳ではないことも挙げられ、その点が幹部としての地獄大使の立場や権限を弱めているのも否めなかった。
 この劇場版にて、遂に自分の存在するべき世界を見つけた士は、自分が世界の滅亡を防ぐ為に各世界の仮面ライダーを倒さんとしていたのも思い出した。世界の滅亡は各世界が融合しようとしているために起ころうとしており、すべてのライダーの頂点に立てば世界の滅亡は防げる、「破壊の果てに創造がある。」との理論に従ったものだった。
 だが、全ライダーの頂点に立って尚、世界同士が融合しようという動きは止まらなかった。結局、士は利用されていた。「ライダーの存在が世界を滅亡に向かわせしめる。」というのは偽りで、士の世界を渡り歩く能力を利用して各世界のライダーを倒すのが目的だった。
 そしてそれらの動きを裏で糸引いていたのは門矢家の執事・月影ノブヒコ(大浦龍宇一)=シャドームーンだった。
 故に大ショッカーは自分を見捨てたと思い込んで士を憎むようになっていた妹・門矢小夜(荒井萌)変じて大神官ビシュムを擁するシャドームーン(←士から大首領位を奪い、創世王にならんとしていた)に取って代わられた。

 首領とその側近からしてこのような複雑な展開を辿る始末だったから、地獄大使の影が極端に薄くなるのもやむを得ないことで、結局地獄大使の立場は「大幹部」というよりは「戦闘隊長」としての色合いの方が強かった。
 当然の様に地獄大使は死神博士・ジャーク将軍共々、創世王シャドームーンと大神官ビシュムに跪くこととなり、大ショッカーによる全世界征服開始の号令を発動するのだった。



その戦闘能力と最終決戦 妹とシャドームーンに寄って大首領の地位を追われた門矢士。その妹によって小野寺ユウスケが究極の悪のライダー・アルティメットクウガと化して彼等の手先となり、、全ライダー討伐の為に自分達を利用していたと見做す光夏海からも裏切り者呼ばわりに等しい扱いを受け、完全孤独に陥った。

 だが、世界を滅亡から救わんとの意志は消えていなかった。夏海が、鳴滝(奥田達士)が、仮面ライダーディエンド・海東大樹(戸谷公人)が、大ショッカーの魔手が次々と蹂躙する各世界を渡り歩き、大ショッカーの野望を止める手段を探し、彷徨った。
 一方、仲間も地位も目的もすべてを失ってすっかり絶望していた士の前には結城丈二(GACKT)が現れた。結城は自分を「組織の裏切り者」として右腕と地位を奪った士に復讐する為に現れたのだが、ライダー達を次々に倒したことで大ショッカーの大悪に加担する結果になったことから死すら願う士を「殺す価値もない」とし、士に消せない罪を背負って孤独でも戦い続けるのが仮面ライダーであることを説き、士を追撃して来た怪人軍団にアタッチメント振るって立ち向かった。
 勿論、このことが再び士に戦意を呼び戻すこととなり、仮面ライダーディケイドは全ライダーと共に地獄大使率いる大ショッカー軍団と対峙することとなった。

 渡り歩いたすべての世界が自分の世界ではなかったことを実感した士は、逆にすべての世界は自分の世界に作り替えられるとした。だがそれは大ショッカー大首領に返り咲くことを意味した物ではなく、手始めに今いる世界の障害となる大ショッカーを自分の手で潰すことを宣言したものだった。
 そして宣言を証明するかのように士は仮面ライダーディケイドとなってディエンドと共にジャーク将軍を討ち果たした。

 これを受けて、大ショッカーアジト内にいた地獄大使は自らが出撃することの必要性を感じ、「ガラガラとうがいをする。」というひどい駄洒落を伴いながらガラガランダに変身した(苦笑)

 ちなみにガラガランダの容姿はオリジナルと完全に一致したもので、触腕だけが長大に伸びて、大きな攻撃を可能としていた(CGの進化やね)。同時に死神博士が(これまたひどい駄洒落を伴って)変身したイカデビルもまたオリジナルに準拠した容姿だった。

 イカデビルと共に大ショッカー怪人軍団を率いて仮面ライダーディケイド仮面ライダーディエンドと対峙したガラガランダは配下の怪人達に二人のライダーへの攻撃を命じ、ある程度乱戦が進んだところで、離れた距離からイカデビル共々触腕で持って攻撃を加えると云う、狡猾だが効果的な攻撃を繰り出し、これにはディケイドとデディエンドも一溜りも無かった。
 だが、その背景にオーロラカーテンが出現すると、サイクロン号に乗った仮面ライダー1号2号、ハリケーンに乗った仮面ライダーV3が現れ、それに続いて徒歩にてライダーマン仮面ライダーX仮面ライダーアマゾン仮面ライダーストロンガースカイライダー仮面ライダースーパー1仮面ライダーZX仮面ライダーBLACK仮面ライダーBLACK RX仮面ライダー真仮面ライダーZO仮面ライダークウガ仮面ライダーアギト仮面ライダー龍騎仮面ライダーファイズ仮面ライダー剣仮面ライダー響鬼仮面ライダーカブト仮面ライダー電王仮面ライダーキバの全ライダーが出現した(……… 名前打ち込むだけで疲れたぜ………)。

 敵も味方も多人数の中、遂に最後の戦いが始まった。先制攻撃こそは戦闘員の自爆的体当たりで始まったが、即座に乱戦に入り、ガラガランダがライダー達と干戈を交えるのは時間の問題だった。



最期と後々への伏線 当然と云おうか、必然と云おうか、戦闘員は勿論、怪人達も仮面ライダーの敵ではなかった。何せ、25人も仮面ライダーがいて、それぞれが登場する度にカッコいいアクションを見せなくてはならないのだ(笑)。怪人達に見せ場を設けろというのは「無理」というものだろう(苦笑)。

 そんな中、ガラガランダは善戦した。因縁ある仮面ライダー1号2号仮面ライダーBLACK RX仮面ライダーカブトの四人を同時に相手にしながら、長く伸びる触腕を利して格闘戦においては互角以上の戦いを展開していたのである。
 だが、相当実力差があっても4対1は不利な戦いである。四人まとめて打ち払ったと思った瞬間、RXのリボルケインがガラガランダの胴を薙ぎ、カブトのパンチが追撃した。これらのダメージを受けて隙が出来たところに Wライダーがライダーダブルキックを炸裂させた(実戦では『仮面ライダー』第94話以来で36年7カ月ぶり)。

 さすがにこれにはガラガランダも一溜りもなく、もんどりうって後方に転がって行き、地獄大使の姿を浮かべ、「偉大なる大ショッカー大万歳!」の叫びを残して爆発・炎上した。

 この後の映画作品の展開は地獄大使とは直接関係しないので割愛する。ただ、その後も全ライダーと大ショッカーの戦いは続いたが、組織的な抵抗はガラガランダ=地獄大使の戦死を持ってほぼ終わっていたと云えよう。
 ちなみに同作品における地獄大使の存在は、元の地獄大使の好戦的な性格を踏襲しつつ、コスチュームの基本カラーを黒に決定付けた。それは地獄大使のみならず、後年『平成ライダー対昭和ライダー 仮面ライダー大戦feat.スーパー戦隊』に登場した暗闇大使(菅田俊)のカラーリングも黒にするという影響を与えた。


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令和三(2021)年六月一〇日 最終更新