6.『仮面ライダー1号』

所属組織ショッカー
演者大杉漣
改造体ガラガランダ
共闘者仮面ライダー1号、仮面ライダーゴースト、仮面ライダースペクター
登場亡霊状態に儀式を受けたことで謎の眼魔の力を得て復活。
降板ノバショッカー壊滅後、本郷猛に決着を迫るも、去られる。
対戦相手ノバショッカー
配下 シオマネキング、毒トカゲ男、ガニコウモル
復活に至るまで まず背景に触れておきたいが、1972年のショッカー壊滅から約半世紀。同組織はかつての勢力、陣容、人材と云ったかつての組織力をすっかり失っていた。仮面ライダー1号を初めとする歴代ライダーに敗れ、活動拠点も日本から海外に移していた。
 残存勢力もはっきり云って、世界征服どころか世の中を大きく動かす力も失せていたと云える。だが、何故かそのショッカーが再び日本に戻って来た。

 狙いは一人の少女で、その身柄を確保せんとしてショッカーは真っ昼間の街中へ襲撃に出た。少女の名は立花麻由(岡本夏美)。かの立花藤兵衛の孫にして、アレクサンダー大王の眼魂の持ち主だった。
 シオマネキング・毒トカゲ男・ガニコウモル率いる一団は麻由を追い詰めたが、そこにショッカーを離脱したウルガ(阿部力)・イーグラ(長澤奈央)・バッファル(武田幸三)の三幹部が服装の若干異なる戦闘員を率いて立ちはだかった。

 三人を脱走者呼ばわりして詰るシオマネキング達だったが、彼等は従来の「力」による世界支配を「古臭い」方針として切り捨て、「経済」による世界支配を方針とする新たなショッカーを創設し、ノバショッカーを名乗った。
 いきおい、「ショッカー」の名を持つ2軍団による悪の同士討ち、(?)となったのだが、新しい方針が功を奏したものか、ノバショッカーの方が明らかに優勢だった。

 だが、両者の戦いは、騒ぎを聞いて駆け付けて来た仮面ライダーゴースト・天空寺タケル(西銘駿)の介入による乱戦、その間隙を縫って逃げ出した麻由を守らんとして本郷猛も駆け付けたことで水入りとなった。
 かくして潰し合いは中断されたが、ショッカー構成員の半数以上は、世界そのものではなく、世界経済を支配する大企業としての有り方を唱えるノバショッカーに共鳴し、これに寝返った。
 事態の急変に愕然とする毒トカゲ男達だったが、彼等は間もなく眠りから覚めるであろう地獄大使(大杉漣)に期待しつつ、勢力を大減退させた上に裏切者を始末できない状態では「地獄大使に合わせる顔が無い。」ともしていた。それゆえか、彼等は立花真由の確保にさらに躍起になっていた。
 殊に毒トカゲ男は三年前に地獄大使の魂と遭遇しており、三年後に復活するとの宣言と、その時に麻由を捧げよとの命令を受けていたから必死だった。



奪われた力の奪還 それから程なくして、宣言通りに地獄大使は甦った。だが、その時点で地獄大使の元に残されていたのは、毒トカゲ男とガニコウモルと戦闘員だけだった(少し前にシオマネキグは立花真由を拉致せんとしてそれを迎撃した仮面ライダー1号の前に戦死)。
 復活した地獄大使は即座に麻由を求め、麻由の潜む山荘に赴き、そこで本郷猛と44年ぶりに再会した。

 本郷は本郷で死んだ筈の地獄大使が生きていることに驚き、地獄大使地獄大使で本郷がいまだ戦い続けていることを驚き、一方で格闘の際には「熱き拳」との再会に狂喜した。勿論本郷は必死に防戦せんとしたが、折悪しく連年の戦いで傷つき、疲れ果てていた体では麻由を守り切れず、その拉致を許した。
 勿論すぐに天空寺タケル達と共にこれを追い、怪しげな儀式に捧げられんとしていた麻由と地獄大使一味を発見した。
 それにより、地獄大使復活のからくりと彼の狙いが判明した。

 地獄大使の復活は謎の眼魔(声:石井康嗣)の手によるもので、謎の眼魔は地獄大使に眼魂を託し、その眼魂を育てることを条件としたものだった。そして眼魂が選んだのが立花麻由で、彼女が選ばれたのは、彼女が「不屈の魂を持つ男」の血を引いていたからだった。ちなみに「不屈の魂を持つ男」が誰なのかは説明するだけ野暮なのでしません(笑)。

 だが、史上空前の大帝国を築き上げた「英雄中の英雄」であるアレクサンダー大王の眼魂を狙っていたのは地獄大使だけではなかった………。



共闘と再戦 アレクサンダー大王眼魂はノバショッカーも狙っており、立花麻由の体内で育ったその眼魂を奪取戦としてノバショッカー一同も現れた。
 ノバショッカーが秘密のこの場所を知ることを訝しがる毒トカゲ男だったが、これはノバショッカーに密かに通じていたガニコウモルが密告したものだった。

 少し話が逸れるが、裏切り者がガニコウモルというのはなかなかに憎い人選である。ショッカーからゲルショッカーへの過渡期に地獄大使に散々煮え湯を飲ませた存在がまたしても心憎き存在を演じたのだから、この演出はなかなかに見事で、逆にギリギリまでガニコウモルが地獄大使に忠誠を誓っていた(振りをしていた)ことの方が不自然に映ったものだった。

 (話を戻して)ここにライダー一同・ショッカー残党・ノバショッカーによる三つ巴の戦いが展開された。復活した地獄大使は往年愛用して来たであろう鞭を振るってウルガに劣らぬ戦闘能力を(人間体の状態で)見せつけた。
 だが勝負は麻由の体から飛び出したアレクサンダー大王眼魂を手にしたウルガ率いるノバショッカーが制した。眼魂を手にしてウルガ・アレクサンダーとなったウルガの一撃は強烈で、地獄大使一行は撤退を余儀なくされ、仮面ライダー1号も意識を失い、やがて息を引き取った(いや、勿論すぐに生き返るんですけどね……)。

 一方、勝利を手にしたはずのノバショッカーもただでは済んでいなかった。
 アレクサンダー眼魂の能力はウルガ達の予測を遥かに凌駕し、ウルガは眼魂の力を制御出来ず、暴走の果てにイーガを死に至らしめる始末だった。そして経済云々を忘れたかの様に暴力マシーンとなったウルガ・アレクサンダーの大暴れの前には仮面ライダーゴースト仮面ライダースペクターのコンビも為す術が無かったが、二人の危機にガラガランダに変身した地獄大使が割って入った。
(注:『仮面ライダー1号』の作中、「ガラガランダ」の名は出て来ません。その姿は地獄大使のコスチュームのまま、顔面だけがオリジナルより造形の細かいガラガランダの物となっていたもので、地獄大使が刻んできた歴史への経緯から敢えて「ガラガランダ」と決めつけて表記しています)。

 かくしてなし崩し的なライダーとショッカーの共闘となったが、ウルガ・アレクサンダーの力は強大で、ゴーストスペクターガラガランダも強烈な一撃を受けて変身解除に追いやられた。
 だが、万事休す状態の三人の前に復活した本郷猛がネオサイクロン号で駆け付けた。死んだ筈の本郷の姿に驚愕するタケルとマコトに本郷はこれまで共闘した人々が支えてくれる故に自分が不死身であることを告げ、それに対して地獄大使「さすが古き敵……それでこそ仮面ライダー1号、いや……本郷猛だ。」との「賛辞」を送った。

 ここまで歴史を刻んで戦い続けてきた二人には、二人にだけ通じるものがあるのだろう(『魁!!男塾』マニアの道場主に云わせれば大豪院邪鬼と聖紆塵の様なものだろう)。この地獄大使の台詞から彼の意を汲み取った本郷は「共に戦うつもりか、地獄大使。」と返した。
 それに対して「今だけはな。」と本音全開な即答を為した地獄大使ステキ過ぎ(笑)

 続けて放たれた「地球は俺の獲物。それを汚そうとするノバショッカーを決して許すことはできん。」という台詞もまた、悪役とはいえ、ショッカーの大幹部であることに誇りを持ち、世界征服に邁進した仮面ライダー1号の好敵手である地獄大使そのままの物と云えた。

 かくして、刹那的ながら正真正銘の仮面ライダーズと地獄大使の共闘が始まった。本郷猛の呼び掛けに応じたタケルとマコトがゴーストスペクターに変身すると、地獄大使ガラガランダに変身した(そのポーズはかつてとは異なっていた)。
 激闘の果て、長大な剣を振るって三人ライダーをも寄せ付けない程の力を振るったウルガ・アレクサンダーだったが、ガラガランダが得意の鞭で絡め取ったことで勝負は終息に向かった。
 絡め取られて尚四人を振り払い、ガラガランダに強烈な刺突を入れて変身解除に追いやったウルガ・アレクサンダーだったが、その奮闘を受けた仮面ライダー1号ゴーストスペクターを伴って放ったトリプルライダーキックによって討ち取られたのだった。

 かくしてノバショッカーは壊滅した。地獄大使にとって目的の一つは果たされ、仮面ライダーとの刹那的な共闘も終わりを告げた。
 苦しみながら立ち上がった地獄大使はあれほど欲していたアレクサンダー大王眼魂を握り潰した。その行為が意味するところは直後の「こんなものに頼っても自分を失うのでは意味が無い」との台詞に表されていた。
 意に沿わず改造人間にされて人間の体を失いながらも、人間の心を失わなかった仮面ライダーの好敵手に相応しい台詞というのは過言だろうか?

 そんな地獄大使の台詞に満足そうに頷いた本郷猛はネオサイクロン号に向かってその場を去らんとした。それに対して、決着付けることを求める地獄大使だったが、砕けたカブトの姿から現れた素顔は凄まじく老化しており、とてもまともに戦える状態になかった。
 勿論、本郷がこれに応じたとしたらとても勝負にならなかっただろう。地獄大使は息絶え絶え状態で半ば懇願するように再戦を求めたが、それに対して本郷は「体を労われ、地獄大使。」との台詞を残して走り去った。
 ある意味好敵手への最大の労りで、ある意味最大の侮辱でもあったことだろう。これはシルバータイタンの推測に過ぎないが、本郷はその存在に対する善悪は別にして、地獄大使を好敵手と見ていたから、瀕死状態の彼と戦うを良しとしなかったのではないだろうか?

 その後、地獄大使がどうなったかは作中にて明らかにされなかった。ただ、「仮面ライダー1号・本郷猛VSガラガランダ地獄大使」という不屈の魂を持つ者同士の好敵手関係が未来に残されたであろうことが暗示されたのであった。


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令和三(2021)年六月一〇日 最終更新