4.ウルトラマンジャック

名前ウルトラマンジャック
地球人名郷秀樹
出演団時朗
客演日2007年2月24日
客演時サブタイトル第45話「デスレムのたくらみ」
現れた場所東京モノレール沿線及びGUYS基地近辺
使用した技ウルトラVバリヤー、スペシウム光線
来星目的20年前にヤプールを閉じ込めてそのまま残留。
変身シーン
戦った相手策謀宇宙人デスレム
スタイルレーシング教官(※劇場版に準ずる)
テレパシーを送った相手ヒビノ・ミライ、イカルガ・ジョージ
顔を合わせたGUYSメンバー
言動 前週、月面にてウルトラマンエースと供に満月超獣ルナチクスを撃破したフェニックスネストは地球への帰還途中、策謀宇宙人デスレムの攻撃を受け、爆煙と供に消息を絶った。
 空中爆発(実際にはそうではなかったのだが)を目の当たりにして愕然としていたのはヒビノ・ミライだけではなく、一般民衆も数多く驚愕し、大空に散った(と思われた)GUYSクルーの犠牲を悼んだ。そして大空を見上げる人々の中にはジープに乗った郷秀樹もいた。

 絶望的な空中爆発の中、ジョージだけが帰還したが、奇跡の生還はデスレムがGUYSクルーを人質に取り、地球人達の前でウルトラマンメビウスが無惨に敗北する姿を晒すのが目的としていることを伝える為だった。
 メビウスに変身したものの、からのテレパシーでフェニックスネストが人質に取られていることを知らされ、存分な戦いが出来ず、敗退したミライとジョージは、供に戦った仲間の仇も満足に打てず不甲斐ないと民衆に罵られた。
 そしてミライの口からフェニックスネストごとクルーが生きてデスレムの人質に取られたと知るや「生きて虜囚の辱めを受けず」の思想を持ち出したかの如く、今度はクルー達を罵り出した。

クルー達が死んだと聞いた時はその死を悼み同情した民衆が、生きて人質になっていると知ると掌を返したような痛罵にミライは仲間を救えない時には自分と地球人の双方を許せなくなる予感に恐怖した。そしてこのメビウスと地球人の不信からくる不協和音をもって、ミライの心を折らんとしたことこそ、デスレムの策謀だった。

 そんな打ちひしがれ、恐怖に怯えるミライの元に現れたは、悩めるミライに、「それでいいんだ。」と語り出した。
 「人間を愛するには人間を知らなければならない。人間の強さも弱さも、美しさも醜さも、その両方を知らなければ、お前はこの星を愛することは出来ない。」と語るは自分達兄弟が地球人が守るに足る存在と信じて戦い続けてきたことを告げ、地球の未来がミライと地球に生きる人間達に託されている、と説いた。

 再度現れて地球人とメビウスの双方を嘲るデスレムと、人質となったGUYSクルーを罵る地球人達の罵声の狭間で、それでも地球人を庇いつつ、人質を前にデスレムに攻撃を仕掛けられず,ひたすら陰湿な攻撃に耐え、倒れ伏したメビウスに、彼を督戦するリュウの激励の声が浴びせられた。
 それはテッペイの機転でフェニックスネストよりキクチ電器商会の無線機に電波を送ることに成功したクルーの声を、キクチ社長(きくち英一)の通報を受けたテレビ局が流したものだった。

仲間達の熱い想いと、クルーが自らの身を省みず地球の為にメビウスと戦って着たことをして認識を改めた民衆のGUYSを救って欲しい旨を伝える声に力を得たメビウスは猛然とデスレムに反撃開始!
 デスレムは人質としての用を為さなくなったGUYSクルーを抹殺せんとして火球をフェニックスネストにぶつけんとしたが、事の成り行きを見守っていたは1974年11月29日放映の『ウルトラマンレオ』第34話、「ウルトラ兄弟永遠の誓い」以来、32年3ヶ月ぶりにウルトラマンジャックに変身し、ウルトラVバリアでもってフェニックスネストに襲いかかる火球を次々と弾き返し(何と9発も弾き返したのだ!)、フェニックスネスト護衛の任を引き受けるかの様に、メビウスに「デスレムを倒せ!」と命じた。

 自らの犠牲を省みないクルー達、限られたメンバーで民衆を庇いつつ奮戦するジョージとミサキ総監代行、完全に改心した民衆達、ウルトラマンが…帰ってきた…」と感泣する電器屋の親父(笑)、と上空を見上げていた全ての地球人達の心が一つとなった。こうなるともう怖いものなど何もない。
 全ての地球人の声援を受け、バーニングバーニングブレイブに変身したメビウスはデスレムに容赦のない攻撃を加え出した(肉弾戦になるとデスレムは信じられないぐらい弱かった!)。

 グロッキー且つ自棄になったデスレムは火球を今度は民衆に放ったが、それさえもジョージの放ったメテオールキャプチャーキューブに遮られ、メビウスのメビュームバーストとウルトラマンジャックのスペシウム光線のダブルパンチの前に爆破炎上した。
 ジャックはフェニックスネストを地上に下ろすと上空に飛び去った。

 重軽傷を負いながらもようやく地球に帰還したサコミズ隊長・リュウ・マリナ・テッペイ・コノミを迎え、無事(とは云い難かったが)を喜び、迎えるミライとジョージ。言葉とは裏腹に何人かは涙を堪え切れず、同様に嬉し涙で彼等を見守るキクチ社長と店員(シンスケ)がいた。
 それを更に遠くから見ていたミライに、地球において帰るべき家と仲間があることを祝し、ただ一人、ジョージがその気配に気付いた時にはの姿は消えていた。


注目点 いっぱいありすぎて困るぞ!(笑) シルバータイタンは『ウルトラマンメビウス』におけるウルトラ兄弟客演の中で、最終回を別にすればこの第45話が一押しと見ている。

 まずは只の地球人でありながら非常にいい味を出していたキクチ電器商会社長が挙げられる。演じたきくち英一氏は知る人ぞ知るスーツアクターで、『帰ってきたウルトラマン』放映時に、新マンの中に入っていたのはこの人物なのだ!
 時折、MAT基地内でレーダー監視員を務めたりもしていた(最終回で伊吹隊長にゼットンの出現を報告している)が、ウルトラマンジャックの客演にこれほど相応しい脇役も早々いるものではない。
 役所は、メビウスに自分達の犠牲を厭わず戦うことを勧めんとして無作為電波を発信したGUYSクルーの電波を傍受した電器屋の社長だが、非常に涙脆い人物を演じていた。
 クルー達の自己犠牲の精神に涙し、32年ぶりに体を張って地球人を守るウルトラマンジャックの雄姿に涙し、互いに傷だらけの姿で再会を果たしたクルー達の姿に涙し、その最中に放った名台詞(迷台詞?)が前述の台詞だった(笑)。

 次に注目したいのは僅か30分枠で為された地球人達の精神的成長である。最初はデスレムに殺されたと見たGUYSクルー達の死を悲しみ、彼等の仇は何としても討たなければ、との意を漲らせていたのが、クルー達が生きて人質となっていると知るや、人質を前に全力で戦えないミライとジョージ、メビウスまでをも罵り出した。

 クルー達が人質になりながら命を惜しむ連中でないことを知る視聴者にしてみれば、掌を返す様にクルー達を罵る民衆達の衆愚に対する怒りを感じてしまうのだが、キクチ社長の助力でクルー達の心根を知るや、彼等に対して無知だったこと恥じ、メビウスにクルー達を助けることを懇願し出したのだから憎めない。
 途中まで身勝手に見えた大衆だったが、考えてみりゃメビウスとデスレムの死闘の最中、彼等はデスレムの火球に襲われている。云いたい放題云いつつも、彼等は安全地帯ではなく、いつ危険に見舞われるかもしれない、実際に危険にさらせれた場で自らの主張を為していたのだ。ウルトラマンメビウスにも、GUYSにも云いたい事を云う以上、彼等の命のやり取りの場に丸腰でいた事実を無視するのは止めようと思った。

 悪い見方をするなら、クルー達の人質にされた報や当の本人達の声を聞いて、その度に180度認識を転換する地球人達は「単純」とも、「節操無し」とも取れかねないが、30分枠ではこれが限界だろう。
 シルバータイタン的にはメビウスジャックが期待し、本当に愛した地球人の姿は最終回三部作に現れていると信じる。

 最後はウルトラマンジャック郷秀樹その人である。が具体的行動に出たのはフェニックスネストを守る為にウルトラマンジャックに変身してからになるが、9発もの火球を防ぎ切ったジャックの能力を見ると、彼がその気ならとっくにフェニックスネストの防衛を引き受け、メビウスにデスレムを倒させることは可能だったと云える。
 ジャックが最初にメビウスに送ったメッセージは、GUYSクルーの面々がデスレムの人質となった事実だけで、具体的な手は一切打たなかった。上っ面だけを見ると初っ端に具体的な行動を何一つ起こさなかったの無行動には疑問が残る。

 だが、これは心から地球人を愛し、それを守らんとするミライに、だからこそ地球人の良き面も悪しき面も見させた上で、ミライメビウスがどういう決意を示すかを見届けた上で加勢せんとしたのだろう。
 そしてそれはが弟・メビウスと地球人双方の心根を信頼していればこそだろう。自らが地球に常駐した『帰ってきたウルトラマン』の時代に第33話「怪獣使いと少年」で宇宙人への偏見から暴徒と化して殺人まで犯した地球人に失望しかけたり、第43話「魔神月に咆える」で怪獣出現の責を今まで自分達を守ってくれたMAT隊長に帰して激昂する住民の身勝手に怒りを感じたり、第31話「天使と悪魔の間に…」で弱き存在に化けて自分を利用して悪事を働いた宇宙人に騙されても優しさを失わなかった少女を見たり、と地球人の様々な面に接してきた上で地球を守る為に死力を尽くすウルトラマンジャック郷秀樹の言動には今更ながら重みがある。流石は先輩ウルトラマンであり、兄貴分だ。そして、セブンと並んで最も数多く地球を訪れたウルトラマンでもある(その他のウルトラ兄弟も地球の為に尽力した点ではジャックに引けを取らないが、地球に降り立った回数ではセブンジャックが二大双璧だろう)。

 そんなは地球人の改心振りと、メビウスが地球人の美醜両面を見た上で地球人の為に戦うことを決意したのを見届けた上でウルトラマンジャックに変身し、フェニックスネストを守る為に飛び立った。そんな流れを見ると、きくち社長の「帰ってきた…」の台詞には、「ウルトラマンジャック」という呼称に馴染めない古きファン層へのサービスと、地球人のことを真剣に想い続けてきたウルトラマンが「帰ってきた」ことを感じさせてくれる。


惜しむべき点 シルバータイタンが僅かながらに期待していた事に坂田次郎(川口英樹)との再会があったがこれは叶わなかった(川口氏は現在俳優活動を行っておらず,近況も不明である)。
 それはこの『ウルトラマンメビウス』の第1話でリュウが唱和していた「ウルトラ5つの誓い」が、前隊長セリザワ・カズヤ(石川真)から教わったものであり、セリザワ前隊長はそれを子供の頃の友達に教わったと述懐していたので、その友達が次郎である可能性は高く、『ウルトラマンA』の第10話「決戦!エース対郷秀樹」で成立しなかったと次郎の再会に期待したのだが、さすがにこれは贅沢だった様だ(苦笑)。
 後はウルトラブレスレットの未登場ぐらいである。ウルトラブレスレットは『ウルトラマンA』では客演した際にジャックがブレスレットを発動させる際のポージングを取ることで初代ウルトラマンとの際を示していたが、エースキラーに奪われてエースを散々苦しめたり、ヒッポリト星人のカプセルに閉じ込められた兄を救う為に使用しようとした途端にジャック自身がカプセルに閉じ込められたり、『ウルトラマンタロウ』で改造ベムスターには通用しない過去の遺物的扱いを受けたり、とウルトラマンジャックのアイデンティティー的存在でありながら、その見せ場と扱いは恵まれていない(映画『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟』では少しだけ登場していた)。
 やはりもっとウルトラブレスレットを活用して欲しかった。単にブレスレットを持っているだけならタロウレオも持っているのだから。


統括 この回は前述した様にシルバータイタンの一押しなので、殆ど書き尽くしてしまったので(苦笑)、郷秀樹=ウルトラマンジャックが弟・ウルトラマンメビウス=ヒビノ・ミライに真に地球人に接し、愛し、守ることの要諦を説いた事を重ねて統括に変えさせて頂きたい。


余談 この回の放送の約2週間後、居酒屋でちびりちびりやっていたシルバータイタンは酔っ払い親父の会話を偶然耳にした。その内容は、
 「この間、うちの子が『ウルトラマンメビウス』を観ていたら、中村玉緒の旦那とカウスボタンの背の高い方が出ていたんだけど、玉緒の旦那って死んでなかったっけ?」というもので、おっさんの記憶と放映内容を重ね合わせると、どうやら、白髪混じりになって髭を生やし、グラサンを掛けた団時朗氏を故勝新太郎氏と、泣き顔を笑顔に目尻を下げるきくち英一氏を中田カウス氏と思い込んでいたようであった(笑)。



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令和三(2021)年六月一〇日 最終更新