2 ロン………懐古と躊躇

名前ロン
肩書さすらい怪獣
登場作品『ウルトラマンレオ』第10話「かなしみのさすらい怪獣」
出身 L77星
悪辣度★★★☆☆☆☆☆☆☆
最期矮小化光線を受けて放逐(?)
概要 元はウルトラマンレオの故郷・L77星に住む生物、地球でいるところの飼い犬に等しい存在だった。
 平和の内に、友とも、家族とも云える時をレオと共に過ごしていた。

 一言で云えば、ペットで、漫画『ウルトラマンSTORY0』では少し甲羅っぽい皮膚を混じえた猟犬的な存在としてウルトラマンになる前のレオ・アストラと狩猟に勤しんだりしていた(但し、『ウルトラマンレオ』の回想シーンでは過去においてもレオもロンも寸が違うだけで作中と全く同じ姿だった)。
 レオ同様、マグマ星人の襲撃で故郷L77星を失ったロンは当てもなく宇宙を放浪。おゝとりゲン(真夏竜)の推測によると孤独且つ苛酷な宇宙放浪の中で体が巨大化し、それ以上に心を荒ませ、ただただ暴れ回るだけの害獣と化して地球にやってきた。

 勿論、地球に元の主人であるレオがいることなど知る由もなく、ロンはただただ破壊衝動の権化の如く、MACの攻撃を物ともせず暴れ回っていた。マッキー2号からロンを視認し、「L77星の生き残り」は(少なくともこの時点では)自分しかいないと思っていたゲンは思いがけない再開への驚きと、懐かしさからロンを攻撃出来ず、それを甘えとしてモロボシ・ダン(森次晃嗣)隊長に詰られた。
 まあ、ロンに対するゲンの想いや、それを巡るMAC内でのいざこざはロン本人(?)には関係ないので割愛するが、ロンが火山地帯の地中を激しく動き回っていたことで数々の火山噴火が誘引され、MACは再度出撃した。

 MACの攻撃を物ともせず、MAC機を次々と撃墜し、ベイルアウトした隊員のパラシュートにまで火を放つという執拗な攻撃を加えるロンだったが、押し潰した筈のMACロディーから旧主・ウルトラマンレオが現れると明らかに狼狽し、それまでの好戦的な姿勢が鳴りを潜め、どうしていいか分からない状態に陥った。
 レオから(ジェスチャーで)地球を去るよう促され、それに応じたかのように振る舞ったロンだったが、レオが安堵した隙をついて攻撃に出て、旧交は崩されてしまった。

 不意を突いたことで少しの間優勢に立ったロンだったが、程なく形勢は逆転し、旧交を忘れたかのようなレオの猛攻を受けたロンは、今度こそ本当に降伏すると云っているかのように平身低頭して無抵抗の意を示した。
 そんなロンをやはりレオは殺すに忍びなかった様で、縮小光線を浴びせてL77星時代のペット時の大きさにした。ナレーションはこれを「最後の友情」とし、その後のロンが、宇宙放浪の旅に出たのか、ラストに山口百子(丘野かおり)・梅田カオル(富永美子)の元に連れて来られた子犬に変化したのか、それは詳らかにされなかった。



悪辣振り 当然の事だが、シルバータイタンにも、本作を閲覧されている方々にも、生まれ故郷である星を滅ぼされ、宇宙を放浪したなんて経験をした者はいない。
 『ウルトラマンレオ』には、そんな稀有な経験をしたL77星出身者が三者登場した。ウルトラマンレオ、アストラ、そしてロンである。
 『ウルトラマンSTORY0』や、内山まもる版漫画『ウルトラマンレオ』によるなら、レオ兄弟やロン以外にも生き残りが居ても不思議はない(後者ではレオはババルウ星人に捕らえられていた両親と再会している)のだが、本編序盤ではレオは、生き残りは自分一人と思っていたし、ロンはレオと再会した際の狼狽え振りからも、旧主にして同郷者との再会が全く予期していなかったものだったことが分かる。

 そんな懐かしくも、数少ない同郷者との再会と、「第二の故郷」とした地球の平和を守る者として平和を乱す怪獣と戦う使命を負ったレオの葛藤が第10話のコアなのだが、本作ではロンの心情に話を絞り込む。
 ロン自身は全く言葉を発しなかったので、ゲンの台詞や、ナレーション、そしてロンのジェスチャーからその心情を推測するしかないのだが、はっきり分かっているのはロンが相当心を荒ませていたことである。
 故郷を失い、それまでの人生(?)を共にして来た者達すべてと死に別れ(或いは生き別れ)、完全な孤独の内に宇宙各地を彷徨い、悲しみ・寂しさ・居場所のない辛さに苦しんで来たことは想像がつく。
 恐らくはそんな生活を送って来たことで、近づいてくるものは皆敵に見えたのだろう。地球にやってきた途端いきなりMACからの攻撃に曝されたことに若干の同情の余地はあるが、とにかく地球にやってきたロンは攻撃して来たMAC機を含め、自分の周囲にあるものすべてを当たるを幸いとばかりに薙ぎ倒す破壊の権化でしかなかった。地球人にとってはただただ危険物でしかなかった(終盤で子犬の名前がロンであることを教えられた百子は露骨にその名を嫌がっていた)。

 そんなロンも、その後思いも掛けず再会したレオの宥めに完全に服従していればまだ救いはあった。結果的に殺されなかった様に、大人しくすればレオはとことん庇ってくれたし、実際、再会直後のレオはロンに自分に従うよう促しはしたが、攻撃は仕掛けなかった。
 だが、ロン恭順の意を示したと見せかけて不意打ちをすると云う卑怯な行動に出た。故郷を失い、すべての友を失くした悲しみと孤独の中苦難の放浪を続けていたことで心を荒ませたことに同情したとしても、旧主で恩義や友情こそ有れど怨みも仇もないレオに姑息な攻撃を仕掛けたことは「悪辣」の一言で、地球人は勿論、レオがロンを駆除対象としたとしても云い訳の余地はなかっただろう。



垣間見せた良心 身も蓋も無い云い方をするとロンは畜生である。人間(?)的な「良心」を語るのは無理があるかも知れない。ただ、現実の動物(=ペット)を観ていても、動物が主としての性(さが)や本能を消せずとも、人間の心が通じることは実際にあると確信している。
 数々の動物番組で飼い主に対して犬や猫が人間臭い行動・態度を見せている例は枚挙に暇なく放映されてきた。
 過去に『動物奇想天外』という番組にて、若くして事故死した象使いの告別式に「参列」していた象三頭が出棺の際に一斉に声を挙げて泣き出した映像を観たことがある。象が仲間の死を悼む習性のある動物であることを考慮に入れてもここまで感情を露わにするのは自然では考えられない。
 まして恭順の意を示した振りをして不意を突くという「悪知恵」を働かせたロンなら人間にある程度近い意志や思考を持っていたとしても不思議はない。

 まして再会直後の反応からして、ロンがL77星でのレオとの平和で楽しかった日々の記憶が有ったのは明白である。故に降伏した振りをしてレオに不意打ちを食らわせた行為には酷評を浴びせざるを得ないが、それでも再会直後の周章狼狽振りに、シルバータイタンはロンが善良なペットだった時代の心の一欠けらは残していた、と見る。


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令和四(2022)年一月三日 最終更新