第2頁 結託部族の特徴と構成員−ツバサ一族

File2.ツバサ一族
族長ツバサ大僧正
活動拠点地中海→チベット→日本
登場期間第36話〜第40話
宗教卍教
構成員火炎コンドル、木霊ムササビ、殺人ドクガーラ、バショウガン、死人コウモリ
戦歴
18世紀中頃 ヨーロッパ某国に後にツバサ大僧正(富士乃幸夫)となる男児誕生。
18世紀後半 ツバサ大僧正、余りの残忍さゆえに地中海の断崖に立つ寺院に幽閉される。その地でコウモリ1万匹との生活を送る内に超能力を身に付け、チベット高原に渡り、卍教の教祖となる。
1973年10月20日 首領の招聘により、ツバサ一族挙って空を飛んで来日。同時にツバサ大僧正デストロン日本支部第三代幹部に就任。
 怪僧に化けた火炎コンドルを派して「日本乗っ取り作戦」に従事させ、一度は仮面ライダーV3を破るもリベンジ戦に敗れて失敗。
1973年10月27日 木霊ムササビに「ムササビ作戦」を命じるも、V3の妨害で失敗。
1973年11月3日 殺人ドクガーラにアジトの電源用に電力を盗むというセコイ作戦(笑)に従事させるが失敗。
1973年11月10日 バショウガンに「保存人間計画」を敢行させ、改造人間用人員の確保を図るも失敗。
1973年11月17日 首領より最後通告を突き付けられ、ヨロイ元帥(中村文弥)の影におびえながら「ヒマラヤの悪魔」と呼ばれるヴィールスで首都圏団地を支配下に置かんとする。死人コウモリとして戦い、一度はV3を破るもリベンジ戦で戦死し、ツバサ一族滅亡。


対仮面ライダーV3戦線
 飛行能力を活かし、火炎コンドル死人コウモリが一度は仮面ライダーV3に完勝した。勿論一時的にV3を破ったのはツバサ一族だけではないが、彼等に敗れた際のV3・風見志郎の動揺は大きく、第7話でナイフアルマジロに敗れて以来の特訓を始めた程だった。また死人コウモリに敗れたときには完全に心が折れ、立花藤兵衛(小林昭二)のビンタ叱咤激励を要した程だった。

 少し話は横道に逸れるが、仮面ライダーV3・風見志郎を演じた宮内洋氏は、「生身で抗い、そう簡単に変身せずハラハラさせるヒーロー」にこだわった。それを反映したかどうかは詳らかではないが、ツバサ一族に敗れた際の風見志郎の姿は見た目的にも痛々しく、その時のインパクトの強さは後々にも尾を引いた。
 『仮面ライダーZX』に登場したバダン怪人タカロイドツバサ一族のデータを元に改造されていた。また『仮面ライダーSPIRITS』ではツバサ一族の飛行能力に良い様に翻弄されて敗れた村雨良を藤兵衛が励ます際に前述の風見の二度の敗戦を教えていた。このことからも「たった5話の間に2度V3を破った」という戦歴はツバサ一族の存在感を高めていると云えよう。惜しむらくはツバサ大僧正と一族の最期が些か弱々しかったこととだろうか?


特徴
 ツッコミどころ満載である(笑)。いの一番に挙げたいのは、「ツバサ」という名前にそぐわぬメンバー構成である。
 先陣の火炎コンドルと殿軍の死人コウモリの基となったコンドルとコウモリこそ「翼」を持っているが、木霊ムササビの素体であるムササビが持つのは「飛膜」で、殺人ドクガーラの素体である毒蛾が持つのは「」で、バショウガンの素体であるバショウに至っては植物で空すら飛ばない…………これのどこが「ツバサ一族」だ!?思いっきり看板に偽りがあるじゃないか……(苦笑)。
 まだ「羽根一族」か「飛行一族」の方が実態に即していた気がするが、少しだけ弁護するとツバサ大僧正は「すべての翼をもつ動物の頂点に立つ、空を支配するもの」と自認していたので、自分の持つ「翼」を頂点に飛行能力を持つすべての生物を率いんとしていたと考えられなくはない。
 族長である彼自身はヨーロッパ出身でチベットにて開宗した身だが、配下である一族は火炎コンドルがインカ帝国(南米)出身、木霊ムササビが日本東北出身、殺人ドクガーラがビルマ(現ミャンマー)出身、バショウガンがボルネオ出身、と構成員はワールドワイドで、幅広い一族と云えよう。

 ともあれ、本題としてツバサ一族の特徴を挙げたい。
 ツバサ一族キバ一族同様、邪宗教団が基となっている。ただ同じ邪宗徒でもツバサ大僧正が卍教の教祖であるツバサ一族の方が宗教カラーは濃く、ツバサ大僧正の装備やアジト内のオブジェは鳥や翼を象ったもので、戦闘員達もツバサ大僧正と似た房飾りを纏っていた。また第38話では殺人ドクガーラがV3抹殺に関して「卍教の神に誓って必ず!」と宣言するシーンがあった。
 但し、卍教の教義については一切作中で触れられておらず、キバ男爵の様に儀式や祈祷を行うこともなかった。火炎コンドルが怪僧に化けていたことを除けば、毒やヴィールスを駆使したBC兵器によるテロが中心だった。

 次に注目したいのはツバサ一族が展開した作戦への奇妙なこだわりである。
 死の間際にツバサ大僧正は「デストロン首領よ、永遠に栄えあれ…。」と讃えていた様に、彼は族長にして教祖でありながらデストロン並びにその首領に固い忠誠を誓い、組織の是に従ってテロリズムに勤しんでいた。その中で日本における主要施設の乗っ取りや、大量殺戮や、大量人員略取といった悪の組織にありがちな悪だくみを敢行したが、そこに妙なこだわりが見られた。
 「日本乗っ取り作戦」では呪いや怨念を脅迫材料とし、「ムササビ作戦」では何故か「死んだムササビにする」ということにこだわっていた。ただの脅迫や毒殺じゃいかんのか?かと思いきや次に従事したのはアジト電源確保の為の盗電と云う極めてセコイ悪事で、一気にスケールダウンしていた(苦笑)。
 続く「保存人間作戦」では改造人間用の人員確保が目的ゆえか、捕らえた人々に毒液を注射し、翌日まで生き延びた者の体を縮小して瓶に保存していたが、当然多くの人員を死なすこととなり、無駄の多いものとなっていた(←生かしておけば強制労働などに使えた筈)。
 これはシルバータイタンの推測に過ぎないが、この妙なこだわりが首領から「使い勝手の悪い奴」と見做され、信頼されない基になったのではなかろうか?ツバサ一族自体は単純な戦闘ではV3を二度に渡って破っており、V3も勝利を得るのに特訓、ハリケーン、逆ダブルタイフーン、と様々な手を尽くしてようやくの勝利を得たほどだった。これらの戦績を鑑みれば、ツバサ一族はもっとデストロン内にて優遇されてもおかしくなかった。
 にもかかわらずデストロン首領のツバサ一族への信頼は薄く、たった5話でツバサ大僧正は最後通告を突き付けられ、後釜であるヨロイ元帥の陰に急き立てられるように最終決戦に挑むという些か情けないものだった。

 「自らの身体的特技を活かした格闘術」+「デストロンの生物化学力」−「妙な作戦遂行へのこだわり」という図式が成立していれば、ツバサ一族キバ一族ヨロイ一族に劣らなかっただろうと推測されるから余計に惜しまれる。



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令和三(2021)年六月一〇日 最終更新