第12頁 蝉怪獣キングゼミラ………短命さもキング級?

怪獣名キングゼミラ
肩書蝉怪獣
出身地地球・東京ニュータウン地下
初登場『ウルトラマンタロウ』第21話「東京ニュータウン沈没」 
キング度3
キング要素サイズ


概要 さすがにマイナー化してきたなあ………(苦笑)。蝉怪獣キングゼミラはそのまんまの肩書からして「蝉」そのものである。
 前頁のキングトータス同様に、「でっかくなり過ぎた蝉」である。実際、背景となるストーリーの悲壮感を初めとする軽重を別にすれば、この第21話と第4話・第5話は酷似している。

 東京武蔵野のマンモス団地・東京ニュータウンの地下から出現した怪獣で、実在の蝉同様幼虫時は地中に生息して大地震を起こした。羽化して成虫になることで地上に出て来た訳だが、一言で云って、「生きてる騒音公害」だった。
 健康を害するほどではないが、実在の蝉類に足しても、真夏の集団大音声にウザさ・不快の念を感じる人は決して少なくないだろう。加えて、飛び去る際の放尿も団地居住者達にとって多大な迷惑だった。

 これに対してZATは異常振動を検知して出動していたのだから、当然団地に住まう一般ピープルは「早く何とかしろ!」とがなり立てることとなった。
 ただ、ここに蝉を初めとする昆虫類を愛する正一(石井秀人)という少年がいたことで話はややこしくなった。正一は母親から「赤ちゃんが眠れない。」と叱られても、地中に七年もいて、ようやく地上に出ても1週間しか生きられない蝉を害したり、処分したりするのは可哀想だとして、ZATに対してもその巨躯故に周囲に大迷惑を掛けているキングゼミラを殺害することに断固反対した。

 これに絆された東光太郎達も巨大ネットで拘束したキングゼミラを殺すことに躊躇。早く何とかしろと激昂する住民達に対し、「蝉の寿命は1週間」として、しばしの我慢を説いたが、感情的になった集団に理屈や情は通じない。案の定、住民達はキングゼミラを焼き殺そうした。
 キングゼミラは焼けた網を破って逃走。その後東京タワーに留まったために電波障害をもたらし、更なる敵視を受けて警察官から銃撃を受けたことから炎を吐いて抵抗した。
 ウルトラマンタロウによって口吻を折られたことで炎を吐けなくなったキングゼミラは、その炎で命の危機に曝されたにも関わらず、尚もその助命を請うた正一の意を汲んだ太郎によって宇宙に送られたのだった。


怪獣としての立場 既に上述しているが、人間が絡まなければただただ「デカい蝉」に過ぎない。攻撃を受けたことで炎を吐いて抵抗したことから、実在の動物が持ち得ない特殊能力を持った怪獣に違いは無いのだが、自衛の為以外には炎を吐いていなかったし、意図的に人を殺したり、建物を壊したりした訳でもなかった。

 勿論、45m、2万8000tの体躯は身近にあって充分な脅威で、実際にキングゼミラが地中で生息することで地震が起き、地表に出るだけで団地に停電が起きたりしたし、東光太郎が、「(住民達が)1週間ぐらい我慢出来ないんですかねぇ?」と云ったのに対し、北島哲也隊員(津村秀祐)が云っていた、「不眠症になってしまう。」と云っていたのも、それを理由に住民が早期に駆除を求めたのも批難は出来ない、とシルバータイタンは考える。
 騒音の悪影響に対して詳しい訳じゃないが、実際に騒音公害で不眠症に陥ったことで起きた訴訟の話は聞いたことがあるし、『ミンボーの女』という映画ではホテルに嫌がらせをするやくざが街宣車でがなり立てたことで赤ちゃんがひきつけを起こしたという苦情がコールセンターに入るシーンがあったことから、キングゼミラの鳴き声に対し、「1週間我慢してくれ。」と云われても、「冗談じゃない!」と激昂するものが現れても全くおかしくないと考える。

 とはいえ、騒音(鳴き声)・悪習(放尿)・自衛の為の抵抗を除けば、キングゼミラは多くの怪獣の中に在って明らかに大人しい方である。巨大ネットで捕捉された際にも暴れた訳でもなく、火を放たれて暴れたのはある意味当然である。
 正一少年に感情移入すればキングゼミラを殺害することに逡巡するが、日本国憲法第25条に記されている「健康で文化的な最低限度の生活」を送る権利を考慮すれば住民に味方したくなる。「我慢してくれ。」と云われても、実際にキングゼミラが1週間でくたばるかどうかは分からないのである(蝉に似た全く別種の生き物であることが考えられてもおかしくない)。
 チョット想像して欲しいのだが、怪獣と呼ばれる存在に遥かに及ばずとも、ヒグマやトラやワニの様な人間を遥かに越える体躯と、人間を容易に殺傷する爪牙を持つ猛獣が近所を闊歩していたら、貴方ならどうするだろうか?
 まず間違いなく警察か自治体に通報するだろう。そして通報を受けた側は、良くてもその地域からの追放、それが叶わない(相手が激しく抵抗or追放しても戻ってくる)場合は獲殺されることとなる。なかなかに複雑な問題であることをこの第21話には考えさせられる。


余談 特撮とは少し離れるが、この第21話における巨大生物と近隣住民の問題から世に訴えたいことがある。それは令和7(2025)年に東北地方を中心とした日本各地を騒然とさせた熊問題である。

 うちの道場主は動物好きで、その中でも自分と同じ性向を持つ熊類(執着心激強等)を愛でているのだが、それでも人間の生活圏に入り込んで出て行かなくなった個体、人畜を襲った経験を持ってしまった個体の駆除は止むを得ないと考えている。
 だが、報道で有名な話だが、熊類が駆除されると自治体に対して「熊を殺すな!」というクレーム電話が鬼の様に入るという事態が続発した。

 動物愛護の観点からこれらのクレームに対して感情論として共感する面が無いでもないのだが、人よりは熊類を(素人ながら)研究してきた身としては、「現実が分かってねぇな、こいつ等。」との想いを禁じ得ない。

 確かに、「捕えて山に戻せないのか?」との意見には頷きたくなるのだが、特定の土地を餌場として執着した熊は追放しても何度でも現れる。また、熊類の生け捕りは想像以上に困難である。麻酔銃が効くまでにタイムラグがあり、至近距離からこれを撃つのはベテラン猟師にとっても多大な危険が伴う。
 加えて、2時間3時間と延々とヒステリーぶつける輩や、「熊じゃなくてお前が死ね!」という輩はただの悪質クレーマーでしかない。そして腹の立つことに、かかるモンスタークレーマーの多くが、熊による事件の起きた県の外からクレームを入れているとのことである。
 熊類の恐ろしさを充分に認識した上で、それでも「何とか殺さない方法は無いものか…。」と訴える分には大いに共感するし、可能であればそうあって欲しいとも思っている、熊好きとして。  キングゼミラ駆除を訴えていた一般ピープルを安直に非難するつもりはないが、彼らほどに距離的に接しておらず、実害も被っていない者達がただただ感情的に、鬱憤晴らし的に悪口を並べ立てるだけの行為には断固として異を唱えたいし、役所関係者には損害を訴える権利が立派に存在することを訴えておきたい。


注目の「キング」要素 身も蓋もない云い方だが、単純に「デカさ」で「キング」と呼ばれている典型である。決して好戦的な性格ではないから単純には断じ難いが、キングゼミラを「めちゃくちゃ強い!」と認識している方はまずいないと思う。
 また生態的にも、炎を吐くことを除けば「蝉」の域を出ず、行動や思想や社会体制的に「キング」と呼べる要素を持っている訳でもない。
 本作で採り上げている他の怪獣に「キング」と呼べる要素を豊富に持っている者もいることから、キングゼミラに関してはここでコメントを留めたい。


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令和八(2026)年三月一七日 最終更新