第3頁 宇宙ロボットキングジョー………セブンが「倒せなかった」故に
怪獣名 キングジョー 肩書 宇宙ロボット 出身地 ペダン星 初登場 『ウルトラセブン』第14話「ウルトラ警備隊西へ(前編)」 キング度 9 キング要素 怪力、耐久性
概要 策略宇宙人ペダン星人によって作られたスーパーロボットで、ウルトラシリーズのファンなら説明の必要が無いと云っても良いだろう。。宇宙金属製による堅牢な装甲にバリアー機能というウルトラシリーズに登場した怪獣・ロボットの中でも屈指の防御力を持ち、ウルトラセブンによる如何なる攻撃も弾き返した。加えて、10万tタンカーを簡単に持ち上げる強腕、目のような部位から怪光線デスト・レイを放つ能力を持ち、4つに分離出来る体は個々に飛行と潜水が可能という斬新なデザイン且つ特殊能力も名高い。
ペダン星人の指令を受け、国際会議場に向かう科学者を乗せた原子力潜水艦アーサー号を分離形態で破壊して六甲山に飛来し、合体して防衛センターに迫る。
防衛設備による砲撃には当然の様に全くダメージを負わず、建物破壊寸前に駆けつけたセブンによるエメリウム光線やアイ・スラッガーも全く通じず、セブンもあわやという状態にまで追い込まれた。
だが、4万8000tの体重故、セブンによって脚を背後から掴まれて仰向けに転倒すると起き上がれず、再び分離して飛び去った。
詳細は割愛するが、ペダン星に現れた地球の観測衛星は侵略を意図したものではないとモロボシ・ダン(森次浩司)が訴えたことでペダン星人は和解交渉に応じ、拉致していた科学者ドロシー・アンダーソンを解放したが、美しい地球が欲しくなったペダン星人はダンとの約束を反故にし、キングジョーは神戸港に送り込まれた。
建物や船舶を次々と破壊し、ウルトラ警備隊とセブンをパワーと堅牢さで圧倒するキングジョーだったが、記憶が戻ったドロシーの協力によって完成したライトンR30爆弾の砲撃を受け、「気を付け」の姿勢で機能停止すると、そのまま後方に倒れ込んで爆破・破炎し、神戸港に沈んだ。
怪獣としての立場 キングジョーの注目すべき強さは、腕力と、それ以上の堅牢さである。
ただ強いだけの怪獣はごまんとそんざいするし、ウルトラ兄弟を瀕死の重傷や、時に死に追いやったりした強敵も数々存在する。そんな中、キングジョーが『ウルトラセブン』は元より、ウルトラシリーズにあっても屈指の知名度を誇り、強敵キャラとして認知度が高かったりするのも、「ウルトラセブンが倒せなかった。」という一点が大きい。
また、それまでウルトラシリーズに登場したロボット怪獣はどこか有機的な生命体を想像させるものであったが、このキングジョーは完全に無機質な金属ロボットであったことも大きい。、後年『ウルトラマンタロウ』第40話で暴君怪獣タイラントと戦うウルトラ兄弟の戦歴が回想シーンで語られた際にも、ナレーション(瑳川哲郎)はキングジョーを「ウルトラ史上初のスーパーロボット」と紹介していた。
上述した様に、キングジョーはセブンではなく、ウルトラ警備隊の手で倒された。セブンは敗れこそしなかったものの、数々の武器・抗戦を悉く弾かれ、腕力でも優位に立てず、そこをウルトラ警備隊の新兵器が倒した訳だから、どこか「ウルトラマンを倒した宇宙恐竜ゼットンを科学特捜隊が新兵器で倒した。」という過去(『ウルトラマン』第39話)がダブる。
また、『ウルトラセブン』は前作と比べて侵略的宇宙人との戦いが多く、登場する怪獣の多くも侵略者の手先だった。当然作られた存在であるロボットも基本は侵略者の手先として登場する訳だが、「異星人の手先となった怪獣」に比べると、「異星人の手先となったロボット」は同作のみならず、ウルトラシリーズ全般を通じても、怪獣に比べると遥かに少ない(同作では宇宙竜ナース、地底ロボットユートム、軍艦ロボットアイロス、ロボット怪獣クレージーゴン、ロボット超人にせウルトラセブン)。それゆえ、キングジョーの強さ、戦歴は一際光る。まあ、分母が少なければ嫌でも目立つと云えなくもないが(苦笑)、それを差っ引いてもやはりキングジョーのスーパーロボットとしての存在感は大きく、ウルトラシリーズ史上に大きな足跡を残している。
「強いロボット」という意味では、後年『ウルトラマンメビウス』に登場した無双鉄神インペライザーの方を強いとする意見が多いが、最強ならずとも、キングジョーの存在感が色あせることはないだろう。
また、モロボシ・ダンのトラウマも見逃せない。
『ウルトラセブン』の放映を経ること33年、『ウルトラセブン1999最終章6部作』の第5話「模造された男」にて、地球防衛軍のカジ参謀(影丸茂樹)が新甲南重工と協力して、かつて神戸港に沈んだキングジョーの残骸を海底から引き上げ、ペダン星のテクノロジーを解析してレスキュー用の電子頭脳を搭載して復元・改修した。建前は「平和目的のレスキューロボットとして利用する」だったが、本作における地球防衛軍は「地球防衛の為には侵略する可能性のある異星への先制攻撃も辞さない。」という危険思想が蔓延しており、実際には対侵略者用に量産し、ゆくゆくは先制攻撃への尖兵となることが意図されていた。
この動きに「ウルトラセブンでさえ倒せなかった。」という過去を巡って、様々な想いが作中に交錯した。セブンに倒せなかった身体能力を「頼もしい。」と見る向きもあれば、「暴走したら手に負えない。」という危惧の声もあった。
そんな中、ダンもキングジョーに懸念の想いを抱いていたが、それを「キングジョーを倒せなかった。」という過去のトラウマから来る自身の偏見ではないか?とも思い、葛藤していた。
結局キングジョーは1万5000年前のオーパーツ・ラハカムストーンがカジ参謀の侵略者を恐れる心をコピーして具現化させた影響で暴走し、再びセブンと戦うこととなった。基本的な能力はかつてと一緒だが、33年時を経た地球の最先端科学技術が導入されていたこともあり、分離・合体のスピードが以前とは比べ物にならないほど早くなっており、セブンのワイドショットを分離して回避し、そのままセブンの背後に回り込んで再合体するという荒技も披露した。
勿論、装甲の強固さも健在で、エメリウム光線を足に受けても大したダメージを負わなかった。だが、セブンは過去にキングジョーがライトンR30爆弾で損傷していた箇所へアイ・スラッガーを四連続で食らわせるによるウルトラノック戦法で破壊された。
かくしてセブンは33年前に倒せなかった難敵の打倒に成功した訳だが、このとき、アイ・スラッガーの一部が欠け、平成12(1999)年のビデオ発売直後にこれを見た道場主は顎を落としたものだった。それゆえ、キングジョーは敗れたりといえども、「何て固い奴なんだ……!!」との認識を視聴者に改めて、深く植え付けたと思われる。
かかるエピソード満載故に、スーパーロボットとしてキングジョーの持つ存在感が揺らぐことはないだろう。
注目の「キング」要素 まず、キングジョーが登場した『ウルトラセブン』第14話、第15話の作中において、「キングジョー」の名は登場しなかった。一貫して「ペダン星人のロボット」と呼ばれ、有名過ぎる程有名なこのスーパーロボットの名が初めて世に出たのは、本編終了の翌年だった。
昭和43(1968)年にマルザンから発売されたソフビ人形で公式名称として設定され、同年2月頃から、各媒体において「キングジョー」の名称が用いられるようになった。
名前の由来については、脚本の故金城哲夫の名を採ったというものが有名だが、「金城の父のあだ名から採った。」というものや、「戦艦のキング・ジョージから採ったもの。」との説もある。
満田かずほ氏の証言によると、「金城の父が海外へ行った際に「キンジョー」と呼ばれず「キング、ジョー」と発音されていたことから、金城は「チャンスがあれば『キングジョー』という名前を使ってみたい」と話してい。」とのことである。
とはいえ、その強さは充分に「キング」である。上述した様に『ウルトラセブン』には数体のロボットが登場したが、正直キングジョー以外、クレージーゴンを除けばそんなに強くなかった(特に等身大とはいえ、ユートムは弱かった!)。だが、ロボット同士は云うに及ばず、他の怪獣・巨大宇宙人と比べても「セブンが倒せなかった。」という強さは登場怪獣・ロボット間でも充分「キング」たり得ただろう。
当時に、ペダン星人にとってもキングジョーは「自慢の戦力にして、最先端ロボット」だったと思われる。後年、『ウルトラギャラクシー第怪獣バトル』にペダン星人が再登場した際には当然キングジョーも要され、これを改造・強化したキングジョーブラックが登場した。
それもこれもベースであるキングジョーの強さがあればこそだろう。その後様々な作品にてキングジョーブラックが量産されるようになり、かつての様な強敵感が薄れたのは惜しまれるが、ベースとなったキングジョーが優秀であればあるほど、その改造・量産を進めるのはペダン星人にとって当然の選択と云える。
このことから、キングジョーの「キング」振りは、単純な強さや存在感に加え、歴史を綴った存在という意味も大きいと云えよう。
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令和七(2025)年一一月一三日 最終更新